「あー、あんたあの時のおっぱい!」
「そーだよ、美人のお姉さんだ!」
お姉さんはボク達に気づくとチャーミングな笑顔を向けた。だが次の瞬間、それが嘘のように硬い表情に変わった。
「君達、罪も無い子を殺す気かと言ったが」
お姉さんは倉庫の扉の前へ立つと、
「これを見ても、そんな事が言えるか?」
ドゴンッという音を立てて、分厚い鉄の扉を蹴り壊した。しかし、扉の中は予想もせぬ光景が広がっていた。
「見てみろ、これが帝都の闇だ………」
その光景を見て、ボクは思わず顔をしかめた。
「な、なんだよ………コレ…!?」
天井に吊るされている死体
臓物を引き摺り出された男
壁に貼られた四肢
薬漬けにされて病気になった女
人間のやっていい事の常識を大きく逸脱した光景が広がっていた。
「地方から来た者達を甘い言葉で誘い込み、己の趣味である拷問に掛けて死ぬまで弄ぶ………それがこの家の人間の本性だ」
ボクは堪らず、胃の中の物をすべて吐き出した。
「サヨ……?」
タツミは、天井から吊るされた一人の少女の死体へと歩み寄った。
「おいサヨ………サヨなのか?」
「知り合いもいたのか………」
見れば、白い肌は無残に傷つけられ、右脚は太腿から切り落とされている。それでも、長く伸びた黒髪は、切られることなく残っている。
「おっと、逃げようなんて虫が良すぎるぜ、嬢ちゃん」
しれっと逃げようとしていたアリアが、首根っこを掴まれて苦笑いを浮かべている
「この家の人間がやったのか」
「そうだ、護衛達も黙ってたので、同罪だ!」
するとアリアは往生際悪く喚いた。
「う、嘘よ!私はこんな場所があるなんて知らなかったわ!タツミとユウキは助けた私とこいつ等と、どっちを信じるのよ!」
「…………タ…ツ…ミ…?」
タツミは声を掛けられた方向へ、恐る恐る振り向いた。
「タツミ……だろ、オレだ」
「……い、イエヤス!?」
鉄格子から必死に手を伸ばす少年がいた。彼がタツミの言っていたイエヤスって子らしい。
「俺とサヨはその女に声を掛けられて、………メシを食ったら意識が遠くなって、気がついたらココにいたんだ」
彼は涙を流しながら、憎しみと怒りと無念さを込めて言った。
「そ…その女が、サヨを虐め殺しやがった……!!!」
それを聞いた瞬間、ボクは反射的に動いた。ダッシュでアリアの所まで行くと、そのまま押し倒し馬乗りになって言った。
「ねえアリア、なんでこんな事をするの?」
ボクはアリアを殴った。
「ねえなんでそんなに人の命を弄べるの?」
殴って殴って殴りまくった。すると最初は「違う!」などと言っていたが、だんだん静かになりそして、ボクを突き飛ばして言った。
「お前達は何の役にも立てない地方の田舎者でしょ!家畜と同じ!それをどう扱おうが私の勝手じゃない!」
その言葉は、
「だいたいその女、家畜のくせに髪がサラサラで生意気すぎ!私がこんなにクセっ毛で悩んでいるのに!!!」
誰がどう聞いても、
「だから念入りに責めて上げたのよ!むしろこんなに目を掛けてもらって感謝すべきだわ!!!」
外道の塊以外の何者でもなかった。
「善人の皮をかぶったサド家族か………。邪魔して悪かったな。君も邪魔する気はないだろ?」
「もちろん、許す気もないよ」
「葬る」
だが、タツミだけは違った。
「待て」
「タツミ、まさかアリアの味方になるの?」
タツミはアリアに近づきながら剣の柄に手を伸ばし、
「いや、俺が斬る!」
なんの躊躇いも無く、アリアを真っ二つに斬った。
(どこの世界も、こういう奴は居るんだ)
ボクは真っ二つにされたアリアを見て思った。
「へへ、さすがはタツミ、スカッとしたぜ……ッゴフッ!」
「!イエヤス!」
その笑顔の直後、イエヤスは大量の血を吐いて倒れた。
「ルボラ病の末期だ…、ここの婦人は人間を薬漬けにし、その様子を日記に書いて楽しむ趣向があった。そいつはもう助からない」
アカメは淡々と口にしたが、確かに言う通り、イエヤスはもう助からない。
「……タツミ」
彼の喉から弱弱しく発せられた声。タツミは泣きそうな顔でそれに答える。
「サヨはさ………あのクソ女に、最後まで屈しなかった……。カッコ良かったぜ……!だから、このイエヤス様も最後は……カッコ良く………!」
強く握った拳が、音も無く崩れ落ちた。
「もう、気力だけで保っている状態だったな……」
「…どうなってるんだよ、帝都は……」
タツミの呟きに、哀れむような目をしたアカメだが、すぐに背を向けた。だが、
「なあ、この少年持って帰らないか?」
「「ん?」」
お姉さんの意外な一声に、思わずアカメとボクの声がハモッた。
「アジトは何時だって人手不足だ、運も度胸も、才能もあるんじゃないか?君はどうする?」
「行くとこ無いし、ボクも付いていくよ!」
引っ張られていくタツミを哀れに思いながら、ボクは二人に付いて行った。
「俺は二人の墓を!」
「ああ、遺体なら後で私がアジトまで運んでやるから安心しろ!」
「はあ?放せ!」
そんなこんなで屋根の上、
「遅い!何やってたのよ!ッてレオーネが抱えている奴と隣にいる奴、誰?」
少女はボクとタツミにビシッと指をさして言った。
「仲間だ」
「はあ?」
間入れずにお姉さんが言った。
「あれ?言ってなかったっけ?」
お姉さんはタツミを落とすと、ボク達にこう宣言した。
「今日から君達も私たちの仲間だ!!ナイトレイドに就職おめでとう!!!」
ボクとタツミの頭の上にはてなマークが浮かんだ。
「なんでそうなるんだよ!」
「諦めろ、レオーネは言い出したら聞かない」
「さすが親友、分かってるね!ブラッち、コイツよろしく!」
ブラッちと呼ばれた鎧の男は、タツミを軽々小脇に抱えた。
「放せよ、俺は殺し屋になんかなる気は……」
「大丈夫だ、すぐに良くなる!」
もうツッコむのはやめよう。キリが無い。
「作戦終了、帰還する!」
皆の後ろを付いて行く最中、僕の胸にはさまざまな思いが駆け巡っていた。
(スリーピング・ナイツの皆はどう思うかな。ボクが殺し屋になったと知ったら。悲しむだろうな。アスナもきっと怒るだろうな………)
その時、鼓膜の奥からアスナの声が木霊した。
(いいんだよ、ユウキの生きたいように生きて。誰も責めないよ。だから、自信を持って………)
それを聞いたボクは、
(そうだよね。うん、ありがとう、アスナ)
ボクは決意を固め、付いて行く。この先がどんなに過酷でも、生きるために!!!
原作で行こうか、アニメで行こうか………う~ん。