遠き郷から来たシンオウチャンピオン   作:gp真白

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ジムリーダー・ヒョウタとの再戦

 

テルはジュンが仲間に加わってくれたことに安堵したが、冷静になり、一つの疑問を投げかけた。

 

「ジュン、ありがとう。頼りにしている。……だが、一つ聞かせてくれ。君はもうシンオウリーグの四天王に挑めるだけのバッジを手にしているはずだ。確か、八つ全て集めていたはずだが?」

 

テルは、自分にはない「チャンピオンになる前の記憶」を辿り、ジュンのジム巡りの進捗を確認した。

 

「ああ、そうだ。その通りだぜ!」ジュンは誇らしげに胸を張った。

 

「なら、どうして今、クロガネシティのジムに挑んでいたんだ? さっき、イシツブテにやられたと聞いたが、ここはシンオウで一番最初のジムだ。まさか、一からやり直しているわけじゃないだろう?」

 

ジュンは、途端にバツの悪そうな顔になり、頭をガシガシと掻いた。

 

「う、うるせぇな、テル! 別に一からやり直してるわけじゃねえよ! ただ、再戦を挑んでただけだ!」

 

ヒカリは腕を組み、冷ややかな視線をジュンに向けた。

 

「再戦? **『罰金100万円』**を自分に課すほどの敗北を、なぜシンオウ最弱のジムで繰り返しているのですか、ジュン。まさか、弱体化したのではありませんわよね?」

 

「弱体化なんかしてねえよ!」ジュンは顔を真っ赤にした。「ちくしょう、聞いて驚け! オレ様は今、**『究極の自己研鑽』として、全ジムリーダーの『エースポケモンだけ』**を相手に、残りの手持ち一匹で勝つ、という縛りプレイをしているんだ!」

 

「は?」テルとヒカリは声を揃えた。

 

ジュンは興奮気味に続けた。

 

「今日はクロガネのジムリーダー、ヒョウタのエースであるズガイドスを相手に、オレの手持ちをあえて五匹倒させた。そして、最後に残ったマリルリで勝負を決める、最高のロマン戦術だ!」

 

「なるほど、それはジュンらしい、せっかちで大仰な戦術ですわね……」ヒカリは半ば呆れたように言った。

 

「それで、どうして負けたんだ?」テルが冷静に尋ねた。ジュンの勢いがしぼんだ。

 

「くそっ……最後の最後で、ヒョウタが繰り出したのは、ズガイドスじゃなくて、イシツブテだったんだ……」

 

「え? イシツブテ?」

 

「ああ。そいつが残り体力ギリギリになった時に、オレはマリルリで勝負を決めようとしたんだ。だが、そのイシツブテが、まさかの**『だいばくはつ』**を使いやがったんだ!」

 

テルとヒカリは、想像しただけでその光景の悲惨さが目に浮かんだ。

 

「『だいばくはつ』……!」

 

「マリルリの残り体力は満タンだったんだが、イシツブテが繰り出したあの究極の自爆技は、オレのマリルリを一撃で戦闘不能にしやがった! ぐおおお! あと一歩だったのに! ロマン戦術の前に、まさか不意打ちの自爆に遭うとは! 悔しくて、自分に罰金100万円を課したんだ!」

 

ジュンは頭を抱え、再び地面に座り込んだ。

 

ヒカリは深々とため息をついた。

 

「そういう**『無駄なロマン』を追求するから、貴方は永遠にチャンピオンになれないのですわ、ジュン。そして、その不必要な出費が、貴方を真の債務者**へと貶めるのです」

 

テルは、ジュンのその熱意と、どこまでもポケモンバトルにロマンを求める純粋さに、安堵した。この男の力は、必ずやギンガ団との戦いで必要になる。

 

「ジュン、そのロマン戦術は一旦置いておいてくれ」テルはジュンの肩を叩いた。「今は、シンオウの平和を守る、もっと大きな**『究極のロマン』**が待っている。テンガンざんだ」

 

「おう!」ジュンはすぐに立ち上がり、その瞳には再び闘志が宿った。「行くぞ、テル! ギンガ団の残党だろうが何だろうが、オレ様のポケモンで全部ぶっ飛ばして、テンガンざんまで最短距離で突っ走るぞ! 遅れたら罰金100万円な!」

 

テルは、また始まったジュンのせっかちな号令に苦笑しつつも、心強い仲間を得たことに感謝した。時空を越えた旅の最終局面は、三人の絆を賭けた戦いとなる。

 

クロガネシティからテンガンざんを目指すには、再びコトブキシティ方面へ戻り、そこから東へ抜けるのが最短だ。ムクホークの背で移動中、ヒカリはテルのポケッチをチェックしながら、突然厳しい声を出した。

 

「ちょっと待ってください、テル!」

 

「どうした、ヒカリ?」

 

「貴方、このポケッチの**『おこづかい帳』**機能、使っていますか?」

テルは首を傾げた。

 

「おこづかい帳? いや、ヒスイの時代にはそんなものはない。それに、この現代に戻ってきてからは、旅を始めたばかりで……」

 

ヒカリはテルのポケッチを奪い取り、目を剥いた。

 

「ゼロ! 貴方のお金、ゼロ円ではありませんの! チャンピオンになった賞金や、防衛戦の収入はどうしたのですか!」

 

テルは思い出したように言った。

 

「ああ、そういえば、ナナカマド博士に『君の貯金は全て、シンオウのポケモン保護基金に寄付されている』と聞かされたな。俺が失踪したことで、勝手にそう処理されたらしい」

 

「無一文ですって!?」ヒカリは驚きで目が点になった。

 

ジュンは胸を張って言った。

 

「ふん! オレ様は持ってるぜ! 罰金100万円を自分に課したから、今残ってるのは200円だがな! しかし、心意気は満タンだ!」

 

「たった200円!? 情けなく感じますわ!」ヒカリは頭を抱えた。「チャンピオン経験者が二人もいて、このパーティの総資産が200円ですって!? 回復道具や便利グッズ、特にゴールドスプレーが一つもない状態では、テンガンざんへ向かうどころではありませんわ!」

 

ヒカリは、心底呆れたように二人を見た。

 

「全く、貴方たち二人とも、ポケモン勝負のことしか頭にありませんのね! これだから脳筋トレーナーは! 貴方たちに**『利息付き過払い請求』**を課している私が、一番の被害者ですわ!」

 

テルとジュンは、ヒカリの正論の前に、何も言い返せなかった。

 

「よろしい。こうなったら、お金を稼ぐのが最優先ですわ!」

 

ヒカリはカバンから、見慣れた赤いバッグを取り出した。

 

「私は探検家ギルドの会員ですから、探検セットは持っています。幸い、私たちはコトブキシティのすぐ近くにいる。この探検セットで地下大洞窟に入り、三人のチームで手分けして、宝石を見つけて資金を稼ぐんですのよ!」

 

 

ジュンは目を輝かせた。

 

「おお! 地下大洞窟か! 掘り掘りロマンだぜ! よし、オレ様が一番多くのきんのたまを見つけてやる! テル! 遅れたら罰金100万円な!」

 

「もう、罰金はいいから、ちゃんと資金稼ぎをしろ!」テルは苦笑しつつも、この方法が最も早いと納得した。

 

ヒカリは二人に厳しい表情で指示を出した。

 

「ジュン、あなたは発掘名人ですわね。テルは岩や化石の見立てが上手い。さあ、一刻も早く資金を調達して、旅に必要なものを買い揃えるんですのよ! 私の**『過払い請求』**を早めに清算するためにも、頑張ってくださいまし!」

 

こうして、伝説のポケモンが関わるシンオウの命運を賭けた戦いの前に、テル、ヒカリ、ジュンという三人の英雄は、地下大洞窟での必死の資金調達という、あまりにも現実的なミッションに挑むことになったのだった。

 

テル、ヒカリ、ジュンはムクホークでコトブキシティ付近まで戻り、ヒカリが取り出した探検セットを使って、地下大洞窟へと降り立った。

 

地下は広大で迷路のようだが、ジュンは得意の発掘に夢中になり、ヒカリはテルの指導役として目を光らせていた。

 

「テル! 貴方のあの野生の勘とやらで、一番大きな壁画がある場所を探すのですわ! そこには必ず、高価な宝石が埋まっています!」

 

「わかった」

 

テルは、ヒスイで培った洞察力と、野生のポケモンに対する直感を働かせ、壁のわずかな光沢や土壌の変化を読み取った。

 

「ジュン! あそこの岩壁だ! 僅かに光ってる」

 

「おう! オレ様に任せろ!」

 

ジュンはせっかちながらも的確にハンマーを振るい、壁を崩していく。テルとヒカリも協力して掘り進めると、次々と高価な宝石が顔を出した。

 

「すごい! これはだいでんきだまに、みどりのたま! 高く売れますわ!」ヒカリは目を輝かせた。

 

ジュンも負けじと、別の壁を掘り当てていた。

 

「どうだ、テル! きんのたまを三つも掘り当てたぜ! これでオレ様の罰金200円も、すぐにチャラだ!」

 

「罰金は清算できたかもしれませんが、私への過払い請求はまだですわよ、ジュン!」ヒカリがピシャリと言い放つ。

 

テルは、掘り出した宝石をヒカリのバッグに集めながら、改めてジュンの力を実感していた。ジュンはせっかちだが、その集中力と発掘技術は一流だ。

 

「ジュン、君の力は本当に頼りになる。ギンガ団との戦いでも、その爆発力に期待しているぞ」

 

「任せろ! ギンガ団の残党どもなんか、オレ様が全力でぶっとばして、テンガンざんから蹴り落としてやるぜ!」

 

順調に資金を稼ぎ、三人は地上に戻ることにした。ヒカリのバッグは高価な宝石でパンパンに膨れ上がっていた。

 

「これだけあれば、回復薬もゴールドスプレーも大量に買えますわね! さあ、コトブキシティに戻って換金し、すぐに準備を整えますわ!」

 

しかし、地下から地上への階段を上る最中、ヒカリはテルに小さな声で尋ねた。

 

「テル……あの、ギンガ団の基地で、貴方はヒスイのポケモンを出しましたわよね。あの、青い炎のバクフーンと、銀色のゾロアーク……」

 

「ああ、そうだ。あれが、俺が過去の世界で共に戦ってきた仲間たちだ」

ヒカリは不安そうに顔を曇らせた。

 

「あのポケモンたち、凄まじい強さでしたけれど……あの異様な姿が、本当にギンガ団の**『定着させる実験』の影響で、この時代から抹消**される可能性があるのですか?」

 

テルは立ち止まり、ポッチャマを抱き直した。

 

「シロナのメッセージを信じるなら、そうだ。俺は、あの仲間たちと共に、**この時代の『異物』**として認識されている。ギンガ団は、それを排除することで、何か恐ろしい力を得ようとしているんだ」

 

ジュンは二人の会話を聞きつけ、焦ったように言った。

 

「なに!? テル、お前のポケモンが消えるかもしれないってのか! それは困るぜ! オレ様のライバルとして、最強のポケモンじゃなきゃ意味がねえ!」

 

「だからこそ、急ぐんだ、ジュン」テルは強く頷いた。「テンガンざんでギンガ団を叩き潰せば、この問題に終止符を打てるはずだ」

 

テルはヒカリに目を向けた。

 

「ヒカリ。君には、俺のこの**『秘密』**を誰にも話さないでほしい。ナナカマド博士と君、そしてジュン以外には」

 

ヒカリはテルの真剣な眼差しを受け止め、ギュッとテルの手を握りしめた。

「わかっていますわ、テル。この秘密は、私と貴方だけのものです。……そして、貴方たちをこの戦いから無事に帰還させ、過払い請求を完了させるまでが、私の責任ですわ」

 

その言葉には、テルへの深い信頼と、この旅への強い決意が込められていた。

三人は、大量の資金と、固い絆を手に、地上へと戻る。シンオウの運命、そしてテルの存在を賭けた最終決戦の地、テンガンざんへの準備が、今、整ったのだった。

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