テル、ヒカリ、ジュンは、ヒョウタに後を任せ、爆発で開いた「くろがねのいせき」へと滑り込んだ。遺跡内部は、古代の石壁に覆われた広大な空間になっており、中央には金属製の巨大なポケモン、レジスチルが立っていた。
レジスチルはプルートの装置に反応し、激しく暴れていた。その鋼の体から放たれる圧倒的なエネルギーは、遺跡全体を振動させている。
「急げ! プルートの装置がレジスチルの力を完全に引き出す前に止めないと!」テルが叫んだ。
その時、テルたちの背後から、プルートの甲高い声が響いた。
「逃げられると思うなよ、チャンピオン!」
プルートは、テルたちが遺跡に入る隙にヒョウタの牽制を振り切り、奥まで追いついてきたのだ。プルートは手に持ったボールを投げ、再びヨノワールとポリゴンZを繰り出した。
「お前たちがレジスチルの暴走を止められるわけがない! それが、アカギ様の残した**『時空固定化装置』**のエネルギー源となるのだ!」
「させないわ! ジュン! 私たちのポケモンで、プルートの邪魔をするわよ!」ヒカリが叫んだ。
「おう! オレ様のエンペルトが、奴らをぶっ潰すぜ!」ジュンがエンペルトに指示を出す。
テルは冷静にレジスチルを見つめた。暴れるレジスチルを止める唯一の方法は、シロナのメッセージにあったように、「抹消装置」の起動に必要なエネルギーの源を断つこと―――つまり、捕獲するしかない。
テルはヒスイの仲間たちを召喚した。
「バクフーン、ダイケンキ! レジスチルの動きを止めろ!」
青い炎を纏うバクフーンと、荒々しい水流を操るダイケンキ(ヒスイのすがた)が、レジスチルを取り囲む。
「バクフーン、かえんほうしゃでレジスチルの動きを鈍らせろ! ダイケンキ、みずのはどうで攻撃を集中だ!」
炎と水の複合攻撃がレジスチルの鋼の体に命中するが、レジスチルの防御力は凄まじい。しかし、ヒスイのポケモンたちのオヤブンの力は、わずかにレジスチルの動きを鈍らせた。
その隙に、ジュンとヒカリがプルートのポケモンたちに集中攻撃を仕掛ける。
「ヒカリ! ポッチャマだ! エンペルトと共に、ポリゴンZを狙うぞ!」テルが指示する。
「ポチャマ! ポチャ!」ポッチャマは生意気な態度そのままに、エンペルトの横に並び立つ。
「ポッチャマ、バブルこうせん! エンペルト、ラスターカノン!」
二体の水ポケモンによる連携攻撃が、ヨノワールとポリゴンZに襲いかかる。特に、ポッチャマの初々しいバブルこうせんは、テルが失った記憶を取り戻すための、新しい絆の証でもあった。
プルートは形勢不利を悟り、焦りの色を見せた。
「ぐっ……このままでは、レジスチルのエネルギー固定化が間に合わない! やむを得ん!」
プルートは、テルたちに背を向け、懐から**「あなぬけのひも」**を取り出した。
「この借りは必ず返す! 時空固定化装置は、必ずや完成させてみせるぞ、チャンピオン!」
プルートがあなぬけのひもを地面に叩きつけると、白い閃光が遺跡を包み込んだ。閃光が収まった時、プルートの姿は既にそこにはなかった。
「ちくしょう! 逃げやがったか!」ジュンが悔しそうに叫んだ。
テルは逃げたプルートよりも、目の前の脅威に集中した。プルートの装置はまだレジスチルのエネルギーを吸い続けており、このままではいつ炭鉱全体が崩壊するか分からない。
「捕獲するぞ! これ以上、暴れさせるわけにはいかない!」
テルはポッチャマとダイケンキに、レジスチルの足元を凍らせるように指示を出した。その隙に、テルはハイパーボールを握りしめる。
「行け! ハイパーボール!」
テルが投げたボールは、暴れるレジスチルの頭部に正確に命中した。レジスチルの強大な力によって、ボールは一度激しく揺れ動いたが、テルとヒスイの仲間たちの絆が、ボールを支える力を与えた。
やがて、カチリ、と静かな音を立てて、ボールは沈黙した。
レジスチルの暴走が止まったことで、遺跡の揺れも収まった。テルは、崩壊の危機を回避したことに安堵の息をついた。
「やった! レジスチルを捕獲したぞ……」
ヒカリは安堵の表情を見せ、テルのもとに駆け寄った。
「テル! お見事ですわ! これで、ギンガ団の野望は、ひとまず阻止できましたわね」
ジュンは悔しそうに地面を蹴った。「くそっ、あと一歩だったのに、あなぬけのひもで逃げやがったか! あなぬけのひもにも罰金100万円だ!」
テルは、レジスチルの入ったボールを手に、改めてシロナのメッセージを思い出した。
「プルートは必ずまた来る。やつは**『時空固定化装置』の完成を諦めていない。急いでテンガンざんに向かい、シロナが託した『創造の場所』**を守り抜かないと」
クロガネ炭鉱での騒動は、プルートの逃走という後味の悪さを残したものの、レジスチルの捕獲という形で一応の解決を見た。テルたちが地上に戻ると、炭鉱の入り口は警官隊とマスコミで大混雑していた。
テルとジュンはヒョウタの無事を喜び、すぐにジュンの手持ちポケモンでヒョウタの怪我の応急処置を施した。
この事件の解決に尽力したことで、テル、ヒカリ、ジュンには、現場に駆けつけたジュンサーさん(女性警官)から、公的な表彰と、ささやかながら賞金が下された。
「皆様の勇気ある行動と、ギンガ団の悪事の阻止に感謝いたします!」ジュンサーさんは敬礼をした。
「ありがとうございます!」
ヒカリは、賞金と表彰という言葉に、一瞬で顔を輝かせた。彼女は、ポッチャマを両手でしっかりと抱きかかえ、テルとジュンに並んでカメラの前に立つと、まるでポケモンコーディネーターの表彰式のような、凛々しい笑顔を振り撒いた。
「ポチャマ!」ポッチャマも主人に合わせるように、胸を張った。
ヒカリはカメラに向けて深くお辞儀をした。「私たちは、シンオウの平和を守るため、今後も力を尽くしますわ!」
これで、失われた資金は無事回収できた。テルはヒカリの**「現金への執着」**が、最終的にシンオウの平和に貢献していることに、改めて感心した。
一方、ヒョウタはマスコミの記者たちに囲まれていた。
「ヒョウタさん! この事件について、心当たりをお聞かせください!」
「ギンガ団の残党が、なぜレジスチルを狙ったのでしょうか!」
ヒョウタはヘルメットを取り、真剣な表情で答えた。
「今回の事件は、チャンピオンのテル君の機転と、協力者のおかげで、なんとかレジスチルの捕獲に成功し、大事には至りませんでした」
ヒョウタは、テルたちの方をちらりと見た後、低い声で続けた。
「しかし、ギンガ団がレジスチルという伝説のポケモンを狙ったということは、彼らが次にレジアイスとレジロックを狙う可能性が高いということです。彼ら三体、レジトリオの強大な力を、ギンガ団は悪用しようとしています」
ヒョウタは炭鉱の入り口を振り返った。
「くろがねの遺跡には、まだプルートが残した装置の一部や、何らかの手がかりがあるかもしれません。私は、ジムリーダーとしての職務を一時休業し、この遺跡を徹底的に探索する必要があります」
ヒョウタの言葉に、テル、ヒカリ、ジュンは顔を見合わせた。レジトリオが狙われるということは、シンオウ全体が危機に晒されるということだ。
ジュンは焦燥感を露わにした。
「おい、テル! ギンガ団って言ったら、前にアグノムやユクシー、エムリットの時もそうだっただろ!? あのシンオウの三湖のポケモンたちみたいに、また伝説のポケモンが狙われたら大変じゃねえか!」
ジュンは、テルに向かって強く言った。
「俺たち、テンガンざんへ行く前に、レジトリオが隠されているであろう場所にも寄った方が良いんじゃねえか!? ギンガ団を叩き潰す前に、そいつらを確保しないと、後が怖すぎるぜ!」
ヒカリも深く頷いた。
「そうですわね。レジトリオの危険性を見過ごして、テンガンざんへ直行するのは無責任ですわ。プルートがあの『時空固定化装置』のエネルギー源としてレジスチルを狙ったのなら、レジアイスとレジロックのエネルギーも利用しようと企んでいるはず」
ヒカリはテルの腕を掴んだ。
「テル。テンガンざんへ向かう前に、レジトリオの残り二体、レジアイスとレジロックが隠されている遺跡へも調査を行う必要がありそうですわ!」
テルは、レジスチルのボールを握りしめ、二人の意見に同意した。シロナが目指した「創造の場所」へ向かう前に、シンオウの平和を脅かす新たな脅威を排除する必要があった。
「わかった。テンガンざんへ向かうルート上にある、レジトリオの残りの遺跡を急いで探すぞ。ギンガ団に先を越されてたまるか!」
テルたちの「空白のシンオウ再調査」は、レジロック、レジアイスを巡る、新たな緊急ミッションへと移行したのだった。