テル、ヒカリ、ジュンは、マスコミとジュンサー隊の目を避け、ムクホークでシンオウ地方の北東、228番道路へと急いだ。この道路の先の洞窟に、レジロックが眠る遺跡があるという情報を、ヒカリがポケッチで収集したのだ。
228番道路は、強い風が吹き荒れる砂漠地帯だった。一面の砂塵が視界を遮り、テルたちは作業服の上からさらにバンダナで顔を覆った。
「うわ、すげえ砂だぜ! ゴールドスプレーを撒かないと、ポケモンがすぐに襲いかかってきそうだ!」ジュンは目を擦りながら言った。
ヒカリは大量に買い込んだ回復薬と並んで詰まっているゴールドスプレーをジュンに渡した。
「ほら、ジュン! 貴方の**『罰金100万円』と、テルの『過払い請求』**で手に入れた、貴重なゴールドスプレーですわ! 無駄遣いしないように!」
「わーってるよ!」
テルは砂嵐の中を歩きながら、改めてヒカリの資金管理能力に感嘆していた。
(この砂漠で資金が尽きたら、本当に終わりだったな……)
「テル、レジロックの遺跡は、この道路を抜けた先の**『石の洞窟』**の中にあるはずですわ」ヒカリがポケッチの地図を確認しながら言った。
テルは強い風を受けながら、前を歩くヒカリとジュンに声をかけた。
「気をつけろ。レジロックはレジスチルと同じく、古代から眠り続けているポケモンだ。ギンガ団の装置に反応して、暴れている可能性がある」
「レジロックか! 岩ポケモンならオレ様のエンペルトの敵じゃねえぜ!」ジュンは砂塵の中でも闘志を燃やしている。
228番道路を抜け、テルたちが目的地である石の洞窟の入り口にたどり着いた。
洞窟の内部は、外の砂漠とは打って変わって静寂に包まれていた。だが、その静けさこそが、不気味な違和感を放っている。
「なんだ、この空気の重さは……」テルは警戒心で身構えた。
ヒカリは不安そうにテルの腕を掴んだ。「テル、なんだか変ですわ。レジスチルの遺跡と同じような、異様なエネルギーを感じます……」
ジュンは一歩前に出て、ライトで洞窟の奥を照らした。
「くそっ、やっぱりギンガ団が先に来てやがるんじゃないだろうな!」
三人が慎重に奥へと進むと、洞窟の最深部、広大な空間が開けていた。そこには、古代の文字が刻まれた巨大な石像と、その中央に立つレジロックの姿があった。
レジロックは、全身を強固な岩に覆われ、まるで微動だにしないかのように静止していた。しかし、その周囲の岩壁には、爆発によって開けられたような、不自然な新しい亀裂が走っている。
そして、その亀裂のそばには、テルがクロガネ炭鉱で見たのと同じ、ギンガ団が使っていた装置の残骸が散乱していた。
「やっぱりだ! プルートの野郎、レジスチルを逃したから、こっちに先に来やがったんだ!」ジュンが悔しそうに拳を叩いた。
テルはレジロックに近づき、警戒しながら観察した。
「レジロックはまだ静止している。プルートは装置を仕掛けたが、何らかの理由で捕獲に失敗したか、あるいはレジスチルの時と同じように逃げたのかもしれない」
テルがそう推測した瞬間、静止していたレジロックの目が、赤く光り、ゆっくりと動き出した。
ドォン……ドォン……
レジロックの足音は、洞窟全体を揺るがす地響きとなった。レジスチルとは違う、大地と一体化したような、圧倒的な存在感だ。
「まずいですわ、テル! 装置の影響か、暴走していますわ!」ヒカリが叫んだ。
テルはすぐにボールを構えた。
「ジュン、ヒカリ! レジロックの攻撃は防御力が高い。レジスチルと同じく、捕獲で動きを止めないと、この洞窟が崩壊する!」
「おう! オレ様のエンペルトが、この岩の巨人を打ち破ってやるぜ!」ジュンがエンペルトを繰り出した。
「ポッチャマ! 貴方も援護射撃ですわよ!」ヒカリはポッチャマに指示を出し、テルの隣に立つ。
三人の英雄は、ギンガ団の残した脅威、レジロックの暴走を止めるため、砂塵の先にある遺跡で、新たなバトルへと挑んだのだった。
テル、ヒカリ、ジュンは、暴走を始めたレジロックと対峙した。レジロックは巨体を揺らし、ストーンエッジのような強烈な岩の攻撃を繰り出してきた。
「くそっ、やっぱり硬いぜ! エンペルト、アクアジェットで動きを攪乱しろ!」ジュンは高速移動で攻撃をかわす戦術を指示する。
ヒカリも冷静に指示を出した。「ポッチャマ! うずしお! 渦でレジロックの足元を狙うのですわ!」
テルはヒスイの仲間たちに目を向けた。レジロックの岩の防御を崩すには、物理攻撃では分が悪い。
「来い、ヒスイのバクフーン! 特殊攻撃で攻めるぞ!」
青い炎を纏うバクフーンが、砂塵舞う洞窟に現れた。
「バクフーン! ふんえんだ! レジロックの周囲を一気に炎で包み込め!」
バクフーンの吐き出した炎は、レジロックの硬い体を焼き付けるように、熱を集中させた。レジロックは炎に怯み、わずかに動きを止めた。
「今だ、ジュン! エンペルトのラスターカノンを顔面に集中だ!」テルが叫んだ。
エンペルトの放つ光のエネルギーが、レジロックの顔部分に直撃する。レジロックは痛みに唸りを上げ、さらに暴れ出した。
テルは間髪入れずハイパーボールを握りしめた。
「これで最後だ! ハイパーボール!」
テルが投げたボールは、レジロックの胸部に吸い込まれるように命中した。ボールは激しく揺れ、レジスチルの時よりも強力な抵抗を見せたが、テルと仲間の集中攻撃により体力を削られたレジロックは、最終的にボールの中に静まった。
カチリ。
再び、シンオウの危機は回避された。レジロックが入ったボールを手に、テルは安堵の息を漏らした。
「やったな、ジュン、ヒカリ。これでレジロックも確保した。残るはレジアイスだけだ」
ジュンはエンペルトをボールに戻しながら、興奮気味に言った。
「さすがテルだぜ! よし、この勢いでレジアイスも一気に捕まえに行くぞ! 遅れたら罰金……」
「ストップですわ、ジュン!」ヒカリが鋭い声で二人の言葉を遮った。
ヒカリは、先ほどまでレジロックが立っていた場所の周囲を、探検セットから取り出した小型のスコップで掘り始めている。
「どうしたんだ、ヒカリ? 何を探してるんだ?」テルが首を傾げた。
ヒカリは額の汗を拭いながら、真剣な眼差しで言った。
「決まっていますわ! お金を稼ぐのです!」
「え? またか? さっき稼いだ分で、まだ十分足りるだろ?」ジュンは戸惑った。
ヒカリはスコップで掘り出した、数個の黒い岩を掲げた。
「このレジロックの遺跡は、岩と鋼のエネルギーが凝縮された、最高の金脈ですわ! 貴方たち、レジロックの暴走で岩壁に走った亀裂を見ましたわよね?」
「ああ、爆発で開いたのかと思ったが……」
「違いますわ! あの亀裂は、レジロックの体から放たれたエネルギーの余波です! その亀裂の周辺の岩には、高純度の黒い化石、つまり売れば高値になる鉱物が大量に含まれているはずなのです!」
テルとジュンは、その貪欲な発想に唖然とした。
「あの暴走の余波を、金脈と見立てるなんて……」テルが呟いた。
「フフフ。当然ですわ! この危機的状況で、無一文になるような脳筋チャンピオンと、罰金男を二人も抱えているのですから! 私は常に、最悪の事態に備えた資金を確保する必要がありますのよ!」
ヒカリはテルの腕を掴み、興奮気味に言った。
「テル! 貴方の野生の勘と、ジュンの発掘技術が必要ですわ! さあ、このレジロックの遺跡を、究極の金脈に変えるのです! レジアイスの遺跡へ向かう前に、ここで利息付きの過払い請求を、半分でも清算させていただきますわ!」
「ヒョ、ヒカリ……」
ジュンは呆れながらも、その話に乗った。「ちくしょう! 悔しいけど、ヒカリの言うことには一理あるぜ! よし、ロマン掘り掘りタイムだ!」
かくして、シンオウの運命を賭けた冒険は、レジロックの遺跡を舞台にした、チャンピオンによる必死の金策へと、再び一時停止したのだった。