夜が明け、テルたちは再び黒曜の原野の調査に出る準備を進めていた。朝食を取りながら、ヒカリはショウと、ジュンはテルと、それぞれの時代の**「ギンガ団」**について話し合っていた。ヒカリとジュンにとって、ギンガ団といえば、悪の組織の代名詞だったが、このヒスイの地では、村を守る調査隊の名称なのだ。
ヒカリは、ショウの純粋な顔を見ながら、戸惑いを隠せない。
「あの……ショウさん。何度聞いても信じられないのですけれど、貴方たちが所属している**『ギンガ団』って、本当に悪の組織ではないのですよね? 私たちの未来では、ギンガ団は世界を創り変えようとした、極悪非道なテロリスト集団**なんですのよ!」
ショウは、驚きながらも、自分の所属する組織に誇りを持っていた。
「ええっ!? テロリスト? 世界を創り変えるなんて、そんな大それたことは考えていませんよ! 私たちのギンガ団は、みんながポケモンを恐れないで暮らせるように、ポケモン図鑑を完成させるのが目的の、平和な調査隊です!」
ヒカリは、ため息をついた。「ああ……目的が全く違いますわね。私たちの未来のギンガ団は、アカギという男が率いていて、ディアルガやパルキアの力を利用して、**『感情のない新しい世界』**を創ろうとしていましたわ」
ショウは目を丸くした。「感情のない世界……? そんなの、寂しいだけじゃないですか! 私たちの目的は、ポケモンと人が仲良く暮らすことですよ! 全然違います!」
一方、ジュンのロマンは、この**「時空を超えたギンガ団の対比」**に燃え上がっていた。
「チクショー! テル! 面白いぜ、これ!」ジュンは、テルの調査服の胸にあるギンガ団のマークを指差した。
「未来のギンガ団は、世界征服とか時空の創造とか、壮大すぎるロマンを追求していたのに対して、この時代のギンガ団は、ポケモン図鑑とかムラの調査とか、地味すぎるロマンじゃないか!」
テルは、カバンからギンガ団のバッジを取り出し、現代のそれと見比べながら言った。
「目的が違うのはもちろんだが、構成員も全然違うぞ。未来のギンガ団は、ほとんどが目的のためなら手段を選ばない、悪事を働く団員だった。でも、この時代のギンガ団は、ラベン博士みたいに純粋な学者や、デンボク団長やシマボシ隊長みたいに、真面目にムラを守ろうとする人たちの集まりだ」
ジュンは、フン、と鼻を鳴らした。「フン! 未来のギンガ団の方が、悪のカリスマが立っていてロマンがあったぜ! 罰金100万円だ、この真面目すぎるヒスイのギンガ団に!」
しかし、テルは首を横に振った。
「待てよ、ジュン。未来のギンガ団にも、元は優秀な研究者だったのに、アカギの思想に染まってしまったプルートみたいな危険な奴がいたんだ。このヒスイのギンガ団も、未来の悪の組織の『起源』になるかもしれない危うさを秘めているんだぞ」
テルは、現代で出会ったギンガ団の幹部たちの顔を思い浮かべた。彼らの強引さや排他的な思想は、今のヒスイのギンガ団の**『一部の思想』**と繋がっているように感じられた。
ヒカリは、ショウとの会話で、一つの結論に達した。
「ショウさん。わたくしたちは、同じ名前の組織が、時空を超えて全く逆の目的を持っているという、歴史の皮肉を見ていますわね」
ショウは、メモ帳に**『未来のギンガ団:世界破壊、感情否定』**と書き記しながら、テルの方を見て言った。
「そうですね……。でも、テルさんが、未来で悪のギンガ団と戦って、ヒスイで平和なギンガ団の一員としてポケモン図鑑を完成させたことは、時空を超えて『ギンガ団のロマン』を守ったってことになりません?」
ショウの純粋な言葉に、ヒカリとジュンは、「悪の組織」と「調査隊」という二つのギンガ団が、テルの存在によって**『正しく導かれた』**という、壮大な歴史の物語を感じた。
ジュンは、再びロマンに目覚め、興奮のあまり地面を叩いた。
「チクショー! そうか! テルは時空を超えたギンガ団の救世主ってわけか! 罰金1000万円だ! この壮大すぎるテルの使命に!」
ヒカリは、テルの**「空白の旅」**の重さを改めて実感し、静かに頷いた。
「貴方は、本当に歴史の結び目のような存在ですわね、テル。…さあ、行きましょう。ヒスイのギンガ団の一員として、ポケモン図鑑を完成させるのですわ」
こうして、未来の来訪者たちは、「ギンガ団」という名前が持つ時空を超えた二つの顔を胸に刻み、ヒスイの調査任務を続行した。
テルたちが黒曜の原野の調査を進めていたちょうどその時、上空の景色が不気味に歪み始めた。快晴だった空の一部が、まるでガラスにひびが入ったかのように黒く割れ、その奥から紫と緑の不吉な光が漏れ出している。
**「うわっ、なんだありゃ!?」**ジュンが驚きの声を上げた。
ヒカリも空を見上げて、信じられない光景に呆然とした。「な、なんですの、あの空のひび割れは……まるで、空間が破れたみたいですわ!」
テルとショウは、その光景を見て、即座に緊張に包まれた。二人にとって、この**「時空の裂け目」**は、ヒスイ地方で幾度となく発生した、ポケモンや空間の異常の源であることを知っていたからだ。
テルは、すぐにヒカリとジュンに警告した。「気をつけろ! あれが**『時空の裂け目』**だ! あそこから、ヒスイにはいない強力なポケモンや、空間の異常が流れ込んでくるぞ!」
ショウも、警戒しながらヒカリとジュンに説明を加えた。「裂け目の下で、ポケモンが**『いっちゃってる』状態になると、危険なキングやクイーンのように暴走**してしまうんです! 近づいちゃだめですよ!」
ヒカリは、**「空間が破れる」**という現象に、物理法則の崩壊という恐怖を感じた。
「空間の破綻ですって!? そんなことが、物理的にあり得るのですか! 貴方たち、この異常な現象を、何の規約も設けずに放置していたのですか!?」
テルはため息をついた。「ヒカリ、規約を作っている暇はないんだ。この裂け目は、ディアルガやパルキアの力が不安定な証拠なんだ」
ジュンは、その**「時空の裂け目」**からほとばしるエネルギーに、悪のロマンを感じていた。
「チクショー! 時空をぶっ壊すほどの巨大なロマンだぜ! テル! そこから、未来のギンガ団の団員とか、別の時空のロマン溢れるポケモンが降ってこねえかな!」
「来るのはロマンじゃなくて、災厄だ! 警戒しろ!」テルはジュンの軽口を一蹴した。
ヒカリは、空の裂け目から目を離さず、恐怖を抱きながらも、トレーナーとしての好奇心が勝った。
「テル。この裂け目が、貴方と私たちを現代からヒスイに引き戻した原因の一つなのですわね?」
「ああ、そうかもしれない。この時空の裂け目は、時間と空間のエネルギーの異常な結び目だ。俺たちは、その結び目に捕まって、ヒスイに戻されたんだろう」
ヒカリは、その説明を聞いて、**「時空の異物」としての自分の存在を改めて理解した。そして、この現象を「現代の知識」**でどうにか解決できないかと、頭をフル回転させた。
「待ってください。時空の歪みということは、プルートの残した時空固定化装置の技術を応用すれば、未来に戻る手がかりになるかもしれませんわ!」
ショウは、ヒカリの**「未来の技術」による解決案に、懐疑的な目を向けた。「ええと……ヒカリさん。私たちは、木のぼんぐりと石ころ**でモンスターボールを作っている時代ですよ? 時空固定化装置なんて、どこにもありません」
テルは、ヒカリの肩に手を置いた。「ヒカリ。今は、未来の技術に頼るな。俺たちがやるべきことは、この裂け目から現れる災厄から、ヒスイのムラを守ることだ。それが、この時代のギンガ団としての使命だ」
テルは、エンペルトのボールを握りしめ、裂け目の下で異変を起こしそうなポケモンがいないか、注意深く周囲を監視した。
時空の裂け目は、テルたちの**「空白の旅」が、まだヒスイの歴史**と深く結びついていることを示していた。