遠き郷から来たシンオウチャンピオン   作:gp真白

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プレートの記憶と、ウォロの影

 

コギトの元を離れたテルたちは、ギンガ団本部のラベン博士の研究室へと戻った。テルは、コギトから聞いたプレートが**「創りし者の魂の欠片」**であり、全てのタイプの力の源であるという話を、興奮気味にラベン博士に伝えた。

 

「なんと! プレートが、この世界を創りし者の魂の欠片じゃと!?」

 

ラベン博士は、ゴーグルを光らせ、テルの胸元にあるプレートを熱心に観察し始めた。

 

「こ、これは神話級の発見じゃ! テルの持つプレートの力を、様々な道具やポケモンの行動にどのように応用できるか……ヒカリ君! 君の未来の科学知識と、わしのヒスイの博物学を合わせれば、世紀の大発見に繋がるかもしれんぞ!」

 

ヒカリは、**「未来の知識」を、「世界を創りし者の魂の欠片」**の研究に活かせるという事実に、興奮を抑えきれない。

 

「フフフ。ラベン博士! 科学者として、こんなにロマン溢れる研究テーマはありませんわ! 私の持つ量子力学と古代文献の知識を、全て開放します! まずは、このプレートのエネルギー周波数を測定し、タイプの分類との相関関係を分析すべきですわ!」

 

ヒカリは、早速ラベン博士と並んで、テーブルに広げられた文献と、テルのプレートを前に、熱心に考察と議論を始めた。二人は、**「古代の神秘」と「未来の科学」**という、時空を超えたタッグで、互いの知識をぶつけ合っていた。

その間、暇を持て余したジュンが、ヒカリと博士の研究を邪魔しないよう、テルの傍に来て尋ねた。

 

「おい、テル。そのプレートに、創りし者の魂が込められているのはわかったぜ。ロマンは十分だ!」

 

ジュンは、プレートに刻まれた謎の文字を指差した。

 

「だが、このプレートに書かれている文字だぜ。これ、なんて書いてあるんだ? 未来でもシロナさんが、この文字の解読に苦労していたって聞いたが……」

 

テルは、ジュンに聞かれて初めて、プレートの文字について深く考えた。ヒスイに来て以来、彼はこの文字を解読する暇もなく、ただ**「古代の文字」**として認識していただけだった。

 

「この文字か……」

 

テルは、プレートの文字に意識を集中させた。すると、脳裏に、かつてイチョウ商会の一員として身を預けていたウォロの顔が、フラッシュバックした。

 

(そうだ……あの時、ウォロは……)

 

テルは、ウォロの**「真の顔」**を知る前の、好奇心旺盛な行商人としての彼が、プレートの秘密について熱心に語っていた記憶を思い出した。

 

「ああ。これは……ウォロに教えてもらったんだ」

 

「ウォロ?」ジュンは首を傾げた。

 

テルは、遠い目をしながら、ウォロから聞いたプレートに刻まれた言葉を口にした。

 

「『ありとあらゆる タイプが 集いて はじめて 世界は 生まれる』……って、ウォロは言っていた」

 

「……」ジュンは、テルの言葉に衝撃を受けた。

 

「そして、その世界の創造のロマンを、ウォロは**『その全てを己が手に収める』**って……」

 

テルは、ウォロが**「世界の全てを己の手に」という恐ろしい野望を抱いていたことを思い出し、僅かに顔を曇らせた。ウォロは、このプレートの真の力**を知り、その力を悪用しようとした、ヒスイの真の悪意だった。

 

ジュンは、ウォロの野望までは理解しなかったが、プレートの言葉のロマン的な重みに圧倒された。

 

「ありとあらゆるタイプが……集いて……世界は生まれる……! なんて壮大すぎるロマンだ! 罰金500万円だぜ、世界を創造するという、この究極のロマンに!」

 

ヒカリは、ジュンの絶叫と、テルの口から出た**「世界の創造」**という言葉を聞き逃さなかった。

 

「世界の創造ですって!? 全タイプの統合こそが、世界の誕生の鍵……! ラベン博士! タイプ毎のエネルギー周波数が、『創りし者』の創造の仕組みを解き明かす鍵になりますわ!」

 

ラベン博士も、**「世界の創造」**という言葉に、興奮のあまり立ち上がった。

「おお! そうか! 全てのタイプが揃った時、世界は真の姿を現す! ヒカリ君! 君の周波数分析を、すぐにタイプ毎のプレートのエネルギーに当てはめるのじゃ! ポケモン学の根源を解明するぞ!」

 

こうして、テルのウォロの記憶から引き出された言葉は、ヒカリとラベン博士のプレート研究を、**「世界の創造」**という、新たな次元へと進ませたのだった。

 

ラベン博士の研究室では、テルがウォロの記憶から語ったプレートの真実、すなわち**「世界の創造の鍵」**という言葉に、興奮の渦が巻き起こっていた。ヒカリとラベン博士は、プレートの謎に没頭し、互いに協力しながら研究を進めている。

 

そんな中、テルは、改めて自分の使命を再認識していた。

 

(プレートの謎、時空を超える方法、そしてヒカリとジュンを未来に帰す方法……全ては、**『創りし者』**に辿り着くしかない)

 

テルは、強く決意を固めた。「ラベン博士、ヒカリ。プレートの研究は進めてください。ですが、俺はもう一度、アルセウスを追います」

 

ラベン博士は驚いたように顔を上げた。「アルセウスじゃと? しかし、テル。**『創りし者』**は、そう簡単には姿を見せぬぞ」

 

「わかっています。ですが、プレートの真の力を知り、時空を超える方法を見つけ出すためにも、アルセウスに会う必要がある。俺がヒスイに戻ったのは、ヒスイの歴史を修復するためだ。そして、未来の二人を連れてきてしまった以上、彼らを無事に帰す道を見つけなければならない」

 

 

テルは、ヒカリとジュンに視線を向けた。

 

「俺は、テンガンざんへ向かう。そこで、何か手掛かりがあるはずだ」

 

ジュンは、テルの**「アルセウス追跡」という言葉に、飛び上がって喜んだ。

 

「うおお! 神話のポケモンを追跡するのか! それこそ究極のロマンだぜ! よし、オレ様も行く! 罰金1000万円だ、このロマン溢れる冒険**を逃すわけにはいかねぇ!」

 

一方、ヒカリは、テルとラベン博士の研究が進む傍らで、ショウから借りた**「テルの過去の調査記録」の分厚いファイルを読んでいた。

 

それは、ショウがテルと共に行動した最初の日々から、時空の歪みに消える直前までの、テルの行動、消費、感情の全てが記録された、詳細な日記兼調査報告書**だった。

 

ヒカリは、その中の初期の記録を見て、思わず声を上げた。

 

「フフフフ……なるほど! そういうことでしたのね!」

 

彼女が読んでいるのは、テルが初めてキングやクイーンを鎮めるために、危険なポケモンに立ち向かった時の記録だった。ショウの筆跡で、**「テルさんの無謀な行動。キズぐすりの消費量、大。私の心配指数、極大」**といった、調査報告と日記の中間のような文章が綴られていた。

 

ヒカリは、そのページをジュンに見せつけた。

 

「見てください、ジュン! このテルの記録! 『マメの採集をサボり、しょくざい係のシマボシ隊長に激しく叱られるテル』 『ギンガ団本部で、夜な夜な食料を盗み食いした容疑で、ラベン博士に事情聴取されるテル』」

 

ジュンは、その**「未来のチャンピオンの黒歴史」に大爆笑した。「チクショー! 未来のチャンピオンの裏の顔だぜ! これこそ究極のロマンだ! 罰金200万円だ、この面白すぎる黒歴史**に!」

 

ヒカリは、さらに興奮のボルテージを上げた。

 

「そして、これですわ! 『初めて団員服のボタンを失くし、裁縫担当のショウに、厳しい指導を受けながら繕うテル。ショウへの態度が終始、素直すぎる』」

 

ヒカリは、ショウの**「テルの過去の相棒」としての立ち位置と、自分とテルの「未来のライバル関係」の対比に、強いテンションの上昇**を感じていた。

 

「わたくしといる時の、あの偉そうな態度はどこへ行ったのですか、債務者テル! **ショウさんの前では、素直で従順だったのね! ムフフフフ……!」

ヒカリは、未来のチャンピオンが、過去の相棒の前で無力で従順だったという事実を**「過去の債務者の精神的弱点」**として捉え、満足そうに顔を歪ませた。

 

テルは、ヒカリの笑い声に気づき、青ざめた。

 

「ひ、ヒカリ! 勝手に俺の過去の記録を読むな! それは調査のデータであって、黒歴史じゃない!」

 

ヒカリは、テルに向かって、ショウの記録を掲げた。

 

「いいえ、テル! これは、貴方の『債務』の起源を知る上で、極めて重要な文献ですわ! 素直なテルと生意気なテル……どちらがテルの真の姿なのか、**『債務者の精神分析』**を進める必要がありますわね!」

 

テルは、アルセウスという神を追う決意をした直後に、過去の生活の恥部を未来のライバルに暴かれるという、人間的な屈辱に苛まれるのだった。

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