トバリジムの扉の前。ヒカリの容赦ない債務通告に対し、ジムリーダーのスモモは、悪びれる様子もなく感謝の言葉を述べた。
スモモ:
「ああ、あのごちそうのことかぁ……本当に美味しかったよね。ありがとう!」
その悪気のない「ありがとう」が、ヒカリの理性のタガを完全に外した。
ヒカリ:
「……あ、あ、あ、あ、あ、あぁ……」
ヒカリの顔から、一瞬にして血の気が引いた。彼女は、世界を救う論理や時空の法則を司る未来の科学者であることを忘れ、私財を投じた債権者としての感情を爆発させた。
ヒカリ:
「ぷっつんしましたわ!!」
その叫び声は、トバリシティの静寂を切り裂いた。
ヒカリ:
「スモモさん! **『ありがとう』**ではありませんわ! 『ごめんなさい、そして今すぐお支払いします』ですわ! 債務の踏み倒しは、時空の法則よりも重い罪ですわ!!」
ショウ:
「ひぇっ! ヒカリさんの怒り……時空の奔流よりも恐ろしいであります!」
ジュン:
「チクショー! ロマンが現実を侵食し始めたぜ! ヒカリの感情の暴走に罰金500万円だ!」
テル:
(ヤバい、ヒカリがウォロよりも破壊的な存在になってる……!)
ヒカリ:
「こうなったら、力尽くですわ! チャンピオンのジムではないですが、ジムリーダーという公的地位にある限り、ポケモンバトルで債務の決済を求めます! 勝ったら全額返済ですわ!」
スモモ:
「ええ……借金取りって、バトルするんだ……。わかった。修行だと思って、受けるよ」
ヒカリ:
「来なさい、スモモさん! 未来の科学の力を見せてやりますわ!」
ヒカリは、猛烈な勢いでポケモンたちを繰り出し、スモモのポケモンに立ち向かった。しかし、スモモはジムリーダーとしての実力を侮れない。特に、彼女のエースポケモンは、ヒカリの猛攻を圧倒した。
スモモ:
「ごめんね、ヒカリちゃん。力業でいくよ。ルカリオ!」
スモモが繰り出したルカリオは、メガストーンの輝きと共に、メガシンカを遂げた。時空を超えた旅を経たとはいえ、ヒカリの手持ちポケモンは、この時代の最高戦力であるメガシンカの前に、次々と倒されていく。
ヒカリ:
「なっ……メガシンカ! 未来の科学の粋をもってしても……この暴力的な力は……!」
ヒカリは、最後のポケモンを繰り出すが、メガシンカしたルカリオの波動弾の前に、為す術もなく全滅させられてしまった。
スモモ:
「ふぅ……ありがとう、ヒカリちゃん。いい修行になったよ」
ヒカリ:
(膝から崩れ落ちて)
「ま、まさか……食費の債務を、バトルで踏み倒されるなんて……論理が破綻していますわ……」
絶望に打ちひしがれるヒカリのそばに、テルの相棒であるポッチャマが駆け寄った。
ポッチャマは、未来の科学者としてのプライドをメガシンカに粉砕され、悔し涙を流すヒカリの頭を、小さなフリッパーで、優しく、ゆっくりと撫で始めた。
ポッチャマ:
「ポッチャ……ポチャマ……(大丈夫だよ、ヒカリ)」
テル:
「ヒカリ……」
ジュン:
「チクショー……ロマンが切ないぜ……」
ショウ:
「ひ、ヒカリさん……ポッチャマの優しさが、食費の債務を上回ったであります……」
ヒカリは、相棒の温かさに、なんとか涙を堪えた。しかし、食費の債務は未回収のままだ。テルは、チャンピオンとして、この現実的な問題に、最後の切り札を切ることを決意するのだった。
メガシンカしたルカリオの圧倒的な力の前に敗北し、ポッチャマに慰められていたヒカリは、なんとか立ち上がった。彼女の顔には、科学者としての冷静さと債権者としての執念が同居していた。
スモモ:
「ごめんね、ヒカリちゃん。修行の邪魔をさせちゃって。あの……食事代のことだけど……」
スモモは、申し訳なさそうに、しかし穏やかな表情で言った。
スモモ:
「本当にごめんね。 今、ジムの運営費と新しい道着の製作費で、手持ちがほとんどないんだ。でも、いつか必ず返すから。 約束だよ」
スモモの真剣な目を見て、ヒカリは**「債務の踏み倒しではない」**ことを理解した。しかし、未来の科学者として、金銭の原則だけは曲げられない。
ヒカリ:
「……仕方ありませんわ」
ヒカリは、一呼吸置くと、冷徹なビジネスウーマンの顔になった。
ヒカリ:
「スモモさん。 あなたの誠意は受け取ります。ですが、わたくしが立て替えた金額は、公的な債務として記録されますわ」
ヒカリは、スマホロトムに新たな計算式を入力しながら、スモモに現実の厳しさを突きつけた。
ヒカリ:
「いいですか? 金銭には時間的価値というものがあります。あなたが返済を延期するということは、わたくしの未来の経済的機会を損失させているのと同じですわ」
ヒカリ:
「ですから、早めに返さないと、利子が膨れ上がりますわよ! 複利計算で、時空を旅した日数分、確実に利息を請求させていただきます。金額は、どんどん高くなりますわ」
ヒカリの言葉に、テルとジュンは冷や汗をかいた。ヒカリの論理は、ディアルガの時の力よりも正確で容赦がない。ショウは、未来の経済の厳しさに、思わず背筋を伸ばした。
テル:
(小声で)「な、なんか、ウォロよりもヒカリの方が金銭感覚が次元を超えてるぞ……」
ジュン:
(小声で)「チクショー、未来の科学者は現実がロマンチックじゃねえぜ……罰金どころじゃ済まねえ!」
「利子が膨れ上がる」という恐ろしい言葉を聞いたスモモは、流石に顔色を変えた。
スモモ:
「えーっ!? そ、そこをなんとかできないかな? トバリジムの運営費はカツカツなんだよぉ……」
スモモは、ジムリーダーとしての威厳をかなぐり捨て、必死に交渉を始めた。
スモモ:
「ね、ね、テルくん! チャンピオンなんだから、利子とか免除してよ! タタラの鉄場で砂嵐をどうにかしてくれたお礼とか、相殺できないかなぁ?」
テルは、チャンピオンとしての甘さを見せてしまいそうになったが、背後からのヒカリの冷たい視線に、思わず体を硬直させた。
ヒカリ:
(テルの耳元で、冷酷に)
「債務者テル! 私情を挟むと、あなたの未払い分の宿泊代に利子が加算されますわよ」
テル:
(顔を引きつらせて)
「す、スモモさん、ごめん! ヒカリの言う通りだ! 利子は発生する! 早く返済してくれ!」
スモモ:
「ええ〜!? チャンピオンまで利子に厳しすぎるよぉ! じゃあ、ヒカリちゃん! 利子の代わりに、トバリジムで特別な修行をさせてあげるのはどうかな? 絶対に強くなれる保証付きだよ!」
ヒカリは、「金銭」と「ポケモンバトルの修行」という、価値観の全く異なるものを比較され、再び頭を抱えた。
ヒカリ:
「くっ…… その価値の換算は非論理的すぎますわ! 修行でお金は稼げません!」
しかし、ショウは、スモモの提案に調査隊員としての本能を刺激された。
ショウ:
「ヒカリさん! 未来のジムリーダーからの特別な修行は、ポケモン図鑑完成のために極めて重要な経験であります! 利子の代わりに、スモモさんの修行を受け入れるべきであります!」
テル:
(金銭の厳しさとプロの修行……究極の選択だ……!)
結局、ヒカリの金銭的な執念とスモモの必死な交渉、そしてショウの熱意が混ざり合い、トバリジムの食費の債務問題は、一筋縄ではいかない展開を迎えるのだった。