遠き郷から来たシンオウチャンピオン   作:gp真白

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ハナタバコウゲンへの道と、ヒカリの独占欲

 

ナタネに案内され、テル、ヒカリ、そしてポッチャマは、ハクタイシティの「サイエンスの殿堂」の裏口から、秘密の地下通路へと足を踏み入れた。

 

通路は薄暗く、金属の匂いが立ち込めていた。テルはすぐに、ヒスイの時代にコトブキムラの裏山で見つけた、ウォロが隠れ家にしていた洞窟とは全く違う、現代の科学技術の結晶であることを悟った。

 

「ここが、ギンガ団のアジトの入り口だった場所ですわ」ヒカリは警戒心で声をひそめた。「今は閉鎖されているはずですが……」

 

ナタネは懐中電灯を取り出し、壁の古びたレリーフを照らした。

 

「心配ないよ。ギンガ団は解散したけど、裏のセキュリティシステムは生きてる。彼らが『最後の研究』のために使っていた隠し通路は、ここだよ」

 

ナタネは壁の一部を押し、音もなく開いた隠し扉を指差した。

 

テルは一歩前に出た。

 

「さすが、ジムリーダーですね。頼りになります」

 

「ふふん、これで少しは私の株が上がったかな?」ナタネはいたずらっぽく笑ったが、すぐに真剣な表情に戻った。「でも、気を付けて。奥にはまだ監視カメラが生きている可能性もある。それに、さっきの残党が戻ってくるかもしれない」

 

三人は、ギンガ団の秘密基地の奥へと進んだ。内部は広い空間が広がり、使い捨てられた科学機器や、奇妙な設計図の切れ端が散乱していた。

 

テルは新品のポケッチを取り出し、辺りの環境をスキャンし始めた。

 

「俺の失われた記憶の中で、この場所がどう使われていたか、確認しないと……」

 

ヒカリはテルのポケッチを覗き込みながら、小声で言った。

 

「それにしても、ナタネさん。貴方、本当にジムリーダーとしての職務だけでここに来たのですか? まさか、本当にテルの**『ヒスイポケモン』**目当て、とかでは……」

 

ナタネはテルとヒカリに聞こえるように、わざと大きな声で言った。

 

「もちろんさ! チャンピオンが隠し持っているという、歴史に名を残していないポケモンなんて、植物を愛する者としては、この目で見て研究しないと気が済まないじゃないか!」

 

「ほら、やっぱり! ギンガ団の悪事なんて、二の次ですわ!」ヒカリは憤慨し、テルの腕をさらに強く掴んだ。

 

テルは二人の間で苦笑しつつも、集中力を研ぎ澄ませていた。そして、部屋の隅にある、古びたモニターに目が留まった。

 

「これだ」

 

テルがモニターを起動させると、画面には数ヶ月前、ギンガ団がこの基地を使っていた頃の、監視カメラの映像が断片的に映し出された。

 

そこに映っていたのは、ギンガ団の残党が、巨大な金属製のロッカーを運び出している映像だった。

 

「あのロッカーは……」テルは記憶の断片を辿る。「アカギが、ディアルガやパルキアの力を制御するために作っていた、何かだ」

 

さらに、映像を早送りしていくと、ロッカーを運び出した後の空になった場所に、一人の人物が立っている姿が映し出された。

 

その人物は、顔の判別はつかないほど画質が悪かったが、テルには見覚えのある、長い金色の髪と、トレンチコートのような服装をしていた。

 

「まさか……シロナ?」テルは息を飲んだ。

 

ナタネはテルの横から画面を覗き込み、鋭く指摘した。

 

「これは……ギンガ団が撤退した直後の映像だね。この金髪の女性は、何かを調べているようだよ」

 

ヒカリは信じられないといった様子で言った。

 

「シロナ様が、こんな場所に? まさか、テルが失踪した理由と、ギンガ団の**『最後の研究』**が繋がっていると知って、彼女も調査していたの!?」

 

テルは画面を食い入るように見つめた。シロナがここにいた。つまり、彼女はテルが辿り着いた**『時空の真実』**に限りなく近づいていた、ということだ。

その時、ナタネがもう一つの、重要な事実に気が付いた。

 

「待って、テル。この映像の隅を見てごらん」

 

ナタネが指差す先、シロナが立っていた足元には、かすかに植物の葉っぱのようなものが落ちていた。

 

「これは……シェイミが咲かせる、グラシデアの花びらに似ている」ナタネはハクタイの森のジムリーダーとして、植物に対する並々ならぬ知識を持っていた。「なぜ、こんな地下の基地に、シェイミが関わる花びらが……?」

 

テルは、頭の中のパズルのピースが一気に組み合わさっていくのを感じた。

ギンガ団の『最後の研究』。

 

失踪したシロナ。

 

そして、感謝の気持ちを花に変える伝説のポケモン、シェイミ。

 

「シロナは、このギンガ団のロッカーから、何かを見つけた。そして、その『何か』は、シェイミや、感謝を伝える場所に関係しているはずだ!」

 

テルはポッチャマを抱きしめ、新たな目的地を定めた。

 

「ハクタイシティから北へ向かい、シェイミが辿り着く場所……花の楽園を探す。そこに、シロナが残した、次の手がかりがあるはずだ!」

 

ヒカリはすぐに頷き、ナタネは目を輝かせた。ナタネは、ギンガ団の残党が言っていた**『最後の研究』**の鍵が、植物に関係していると知り、俄然やる気になった様子だった。

 

「よし! シェイミが関わるなら、私の出番だね! チャンピオン、急ごう!」

 

三人の調査隊は、失踪したチャンピオン、シロナが残した新たな痕跡、そしてギンガ団の最後の野望を追って、ハクタイシティを後にするのだった。

 

ハクタイシティを抜け、テル、ヒカリ、ナタネの三人はシェイミが訪れるという「花の楽園」を目指し、北へ向かう208番道路を駆け上がっていた。ナタネの知識とギャロップの速さに助けられ、移動は迅速に進んだ。

 

しかし、三人の間の空気は、ギンガ団の緊迫感よりも、二人の女性によるテルの**「取り合い」**の様相を呈していた。

 

テルがポケッチで地図を確認しようと立ち止まると、ナタネがすぐに寄り添った。

 

「テル、この辺りの地形なら私が詳しいよ。シェイミが来る場所は、普通のトレーナーには見えない隠された道があるからね。私の言う通りに進めば、迷わないさ!」

 

「ポチャ!」ポッチャマはナタネの明るい声に反応し、興味深そうに顔を上げた。

 

その瞬間、ヒカリがテルの反対側の腕を掴んだ。

 

「大丈夫ですわ、テル! 私が貴方の腕を掴んで離しませんから、道に迷う心配はありません! ナタネさんは、植物の知識は豊富かもしれませんが、人の気持ち、特にチャンピオンの気持ちを理解する上では、私の方が適任ですわ!」

 

「おや、ヒカリちゃん、それはどういう意味かな?」ナタネは目を細めた。

 

「そのままの意味ですわ! 貴方はテルが持つ**『ヒスイのポケモン』という珍しい植物を研究しに来ただけでしょう! 私は、テルという『幻のチャンピオン』**が、再びシンオウの頂点に立てるよう、精神面でサポートしているのです!」

 

「ふふん。私はテルがチャンピオンとして戦う姿を間近で見たいだけだよ。それがジムリーダーとしての職務だろ? 自分の縄張りで悪の組織の残党に邪魔させないためにね!」ナタネはわざとらしく「職務」を強調した。

 

テルはため息をついた。(もうわかってる、二人の目的は完全に後者だ)

 

「あの、二人とも……その話は一旦置いておいてもらえないか? ギンガ団の残党に見つかるわけにはいかないし、シェイミが関わっているとなると、あまり騒ぎを起こしたくないんだ」

 

 

テルがそう言うと、ヒカリは甘えるような声で言った。

 

「まぁ、テル。貴方は本当に冷静ですわね。まるで、ヒスイの時代の開拓者の精神ですわ。ええ、分かりました。ナタネさん、貴方の植物への**『好奇心』が爆発する前に、さっさと『ハナタバコウゲン』**へ案内してくださいますか?」

 

ナタネは舌をペロリと出し、ギャロップを一歩進ませた。

 

「ハナタバコウゲン? 聞き慣れない場所だね。でも、ヒカリちゃんが言うなら、間違いなさそうだ。よし、そこを目指すよ!」

 

テルはポッチャマを撫でながら、ぼそりとつぶやいた。

 

「ヒカリ……『ハナタバコウゲン』じゃなくて、**『はなのらくえん』**だ……」

 

ヒカリは一瞬固まったが、すぐにポーズを決めた。

 

「ポチャマ! 細かいことは気にしないのが、一流のコーディネーターですわ! さあ、ハクタイの森の**『ガーデン・オブ・フラワー』**へ、レッツゴーですわ!」

 

(完全に開き直ったな……)

 

テルは疲労を感じながらも、この二人の女性の明るい騒々しさが、孤独な時空の旅人である自分にとって、確かに必要なものだと感じていた。

 

そして、ナタネの植物の知識と、ヒカリの機転という二つの強力な武器を得て、一行は、伝説のポケモンが待つ、秘密の花畑へと急ぐのだった。

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