(書けたら続きます)
その少年は、誰にも知られずに産まれ落ちた。
いつ産まれたか。 どこで産まれたか。
母は誰なのか。
全てが謎である。
謎の少年は、泥まみれの体を這わせて、森の中を彷徨う。
行く当てもなく。 帰る当てもなく。
ただただ。
彷徨い続けていた。
彼が産まれて初めて見たモノは、自らの母親の亡骸だった。
元より衰弱しきっていた母の体は、彼を出産した衝撃に耐えきれず、そのまま生を手放した。
産まれたばかりの彼は、全身を母の血で濡らしながら、母の凹んだ腹の上で蹲っていた。
ぐに、と母の着ている服を噛んだ。
産まれたばかりのの癖に、泣き声すら発しない彼は、その大きく見開かれた目で辺りを見回した。
何も映らない。曇った目だった。
死人かと見間違えるほどに黒く澱んだ彼の目には、ただただ生への渇望だけが浮かんでいた。
どうすれば生き残れる? これから先どうする? これから先どうなる?
産まれたかばかりの幼い脳味噌が、脳波をビリビリと巡らせる。
原来、人間の脳は10%しか使われていないらしいが、彼は違った。
生き延びるためにはどうするか。赤子の及ばぬ知識で、脳を必死にフル回転させて考えた。
考えに考えた。
頭がズキ、と痛み出した頃に、彼は考えるのを止めた。
異様に早いが、思考を止める少し前に、首が座ったらしい。
止めて、母の二の腕に噛み付いた。
まだ歯すら生えていない彼にとって、物を噛みちぎるのは不可能に近しい。
彼は腕を噛むのを止めた。
諦めたのだろうか。
だが、彼の目から生への渇望は消えない。
彼には、とある術があった。
彼は、
まだほんの赤子の手だ。母の顔全体を覆う様にはできなかったが、彼はそれだけでよかった。
母の顔から、紫色のナニカが現れた。
ソレは少しずつ移動して、彼の手の穴に吸い込まれた。
彼は手をグーパーグーパーながら二の腕に手を翳した。
瞬間、二の腕がバチュン、と捻れ、一口サイズに切断…いや、引き千切られた。
彼は、それをぷくぷくとした小さい手で掴み、口に運んだ。
グチュグチュ、ニチュニチュと言った感じの不気味な音が辺りに響き出す。
彼は、飴玉を舐める様に肉片を口内で舐めまわし、時に柔らかい歯茎で肉片を噛んだ。
彼の細く小さい喉を、肉片が通過する。
肉片を完全に嚥下してから、彼は母の腹の上から移動し始めた。
およそ産まれたばかりの赤子にできる芸等ではないのだが、人間危機に瀕すると自信にできないことだってできてしまうらしい。
明らかに新生児にはできない動きで辺りを這いずった。
彼に、赤子らしい動きはなかった。
不気味なほどかっ開かれた曇った目で、先を見据える様にしていた。
彼は、這いずり回るのを止めると、母の元へ戻ってきた。
その手には、若干鋭利な石や、先が尖った木の枝が握られている。
何をする気なのかと思えば、彼はそれを母に突き立てた。
いや、正確には、服を剥ぎ取るために体ごと枝に突き刺した。
おぼつかない手で、枝を突き立て石で切り裂いた。
彼は、母の血や肉片が付いている服を、自分のサイズに切り取り、それにすっぽりとくるまった。
彼の顔以外見えなくなっている。
さながら、外套の様だ。
服とも言えない服を獲得した彼は、今度は血塗れになった母の凹んだ腹に再び体を埋めた。
こうして、彼はこの地へ生まれ落ちた。
彼と同じ様に、外と隔絶された…。
そう。幻想郷に。
最近ヒロアカ書いてるのと、たまたま東方の小説読んだのが重なって書きましたが、続くかどうかは気分次第です。
好評なら多分続く…かなあ…?