日本政府side
首相官邸
首相執務室では男が2人きりで密談していた。
「中国国内の反共産党勢力と接触出来ました。
どうやら今回の戦争、国内では歓迎されていないようです。」
内閣情報調査室長はそっと言った。
「そうかそれで先方は何と言っている?
我が方でできることなら良いのだがな。」
「民主化運動に対する直接及び間接的な支援。
新政府樹立の後の経済支援等です。」
「そのグループの戦力はどのくらいかね?」
どうやら首相は乗り気の様だ。
「グループのメンバーだけで数百万人。
無論彼らに公安の手はまだ届いていません。
一部は人民解放軍北京軍区の軍人も混じっているようです。」
「では武装クーデターが起こせるでしょうな。
我が方は、中国に対しての経済制裁を強化します。
そして彼らの出した条件を呑みます。
急ぎ彼らと連係を取れるようにしておいてください。
停戦協定締結はクーデターの後でということをよく伝えておいてください。
それも海上自衛隊が敵揚陸船団を撃滅できるかにかかっているがね。
今回の戦争は綱渡りみたいだな。
突然始まり、いつ終わるか分からないというか予想できない。
そうだろ。
内閣情報調査室長?」
「はい。
そうですね。
明治時代の日本帝国政府首脳部は日清、日露両戦争の際は開戦の時及び停戦講和の時期すらも開戦前に検討したそうですからね。
今回は、押すも引くも相手次第、正直言ってつらいですな。」
「ふむ。」
考え込んだ首相を前に内閣情報調査室長は新たな報告を付け加えた。
「在留邦人の保護に関してですがかなり困難なようです。
海路及び空路での中国脱出を計画しておりますが、中国軍及び中国の秘密警察である国家公安部それに中国海警の監視及び妨害が予想されます。
中国政府は彼らを人質にするつもりなんでしょうかね。」
「その件についてだが、在留邦人の帰国について中国の日本大使館を通じて申し入れてはいるがね。
相手側からそのことは何も言ってこなかったよ。
むしろ、」
首相はそう言って苦笑した。
その顔は内閣情報調査室長の予測が間違っていない事を示していた。
「無事に返してほしくば周辺の陸海空自衛隊を撤退させ、尖閣諸島を含む沖縄県全域を無条件で明け渡せと言ってきおった。」
その顔には憤怒が溜まっていた。
「我々はそれに屈する訳にはいかん。
この問題は官房長官に公表するように伝えたがね。
これはもう完全に戦争だ。
未だ宣戦布告されていないからと言って戦争ではない訳じゃない。
外務省には大使館を格下げさせ連絡事務所に中国国内の全領事館を閉鎖するように命じたよ。
どちらにしても外務省官僚というのはどうして愚図ばかりなんだ。
さらには外務省官僚の無能共はさっきの要求を呑むように強要してきた。
領土より人命だ等と詭弁を並べ立ててな。
自国の国益より相手国の利益を優先するあいつらを売国奴というんじゃないかね。
強要しに来た職員全員懲戒処分にしてやったよ。
外務省監察部によると、あれは外務省内の派閥だそうだ。
監察部に早急に調査するように命じたよ。」
まくし立てるように言った首相はすっきりしたような顔をしている。
外務省と内閣との戦いは中国との停戦後も続いた。
日本政府side out
外務省監察部という架空の組織を作りました。
この組織は財務省職員や警察官、自衛隊警務官等の捜査や調査のプロを集めて、外務省職員の素行調査や犯罪捜査を行うものです。
直木内閣発足時に外務省の暴走を懸念して設置されました。