はるさめside
「落ち着かないんですか?」
はるさめの艦橋でそわそわしている艦長に副長が聞く。
「いやぁ、なあ。」
「最後の機体は、今救助中です。」
「分かっているよ。」
モニターには、最後の一人を吊り上げるSH-60の姿があった。
最後の一人に目をこらすと、上条だった。
神山の眼が涙で滲む。
「上条二佐に敬礼。」
そこには海の男としての敬意しか存在しない。
「上条二佐を救助したSH-60と通信が繋がっています。
うちの艦のSH-60の戦術航空士が乗っているようです。」
顔には"報告は直接聞きたいでしょう"と言わんばかりの副長が、通信機を渡してくる。
通信機を受けとると言った。
「はるさめ艦長の神山だ。」
海に生きてきて、20年はじめてこんなに背中がぞわぞわする。
「はっ、SH-60J戦術航空士、野中二尉であります。
たった今、上条二佐含む全員の救助完了しました。」
1番気になっていたことを真っ先に言ってくれた。
安堵が、涙が身体を巡っている。
「そうか、よくやった。」
はるさめside out
SH-60side
「何か騒がしいな。」
この機体は最後に上条を救助したヘリコプターである。
「マスコミのヘリです。」
「やまとの方に向かっているのではないか?」
窓から外を見ていたソナー員が目測を元に報告する。
「それが、全部が全部こっちを追ってるみたいで。
航空法スレスレに近い高度を飛んでます。
一部はそれを超えてます。」
「高度を落とせ。
機体は揺れるが、致し方ない。」
「了解。
それにしてもスクープを狙ってんですかね。」
コ・パイロットはつぶやいた。
「阿呆か、何してるか分からないヘリの映像より、横倒しのやまとの方が絵になるじゃねぇか。」
機長の言っていることの方が道理ではある。
「マスコミの山勘てやつかもしれませんよ。」
「おいおい、怪我人は寝といた方がいいんじゃないのか?」
後ろから響いた声に機長は言葉を返す。
「いやぁ、振動が気になって、おちおち寝てられないんですよ。」
「お前はそんな玉じゃないだろう。
無茶してると身体に来るぞ。」
「それはお互い様でしょう。」
互いに笑い合う中で、ソナー員は窓の外を眺めていた。
というか現実逃避したい気分だったのだ。
なんで足以外骨折っぽい人が処置も受けずに元気にふらふらしていられるのか、何故機長はそれを笑いで済ませるのか、心は状況は混沌としていた。
そこであることに気づいた。
「1機が前方を塞ぎにかかってます。」
「はあ。」
ソナー員の報告を聞いて機長は気の抜けた声しか出せなかった。
「前方を塞いで、奴らに何の得があるんだ?」
「分かりません。
けれども銃器の使用許可を願います。」
と言いつつも、ソナー員はドアを開けて何処から取り出したのか機関銃をマウントに据える。
「仕方ない。
進路妨害を確認すれば、撃って良し。
警告は行うが、無視する可能性もある。」
「了解。」
言いながら、機関銃に銃弾を装填する。
ドアのところからもう一度、外を覗いて現状を確認する。
「進路上を交差する機体が1機あります。」
「分かった。
警告を開始する。」
そう言った機長はスピーカーの電源を入れ、警告した。
「こちらは海上自衛隊だ。
貴機は既に本機との進路と交差している。
本機との衝突も懸念される。
こちらの警告を無視しこの進路を維持する場合は進路妨害と判断し、貴機を撃墜する。」
機長は言い終わった。
ソナー員はドアから相手の動きを見守る。
「相手は動きません。
進路、速度そのまま。」
「しゃあない、威嚇射撃用意。
撃て。」
「了解。」
曳光弾を中心に装填された銃弾は、光の尾を引いて、報道ヘリに集中する。
「命中。
進路変更を確認しました。」
「良し、これで搬送に集中できるな。」
SH-60side out
報道ヘリside
「大丈夫なんですか?
他の人と同じように距離を開けて追跡しましょうよ。
というか前を塞ぐのをやめましょうよ。
先輩。」
「大丈夫やて、俺の勘を信じひんのか。」
「あのヘリコプターのドアのところ、何か銃みたいなの構えてるんですけど?」
「いやいやそんなわけあるかいな。」
しかし、その先輩記者も見た瞬間絶句した。
間違いなく機関銃が、こちらを狙っていたからだ。
『 こちらは海上自衛隊だ。
貴機は既に本機との進路と交差している。
本機との衝突も懸念される。
こちらの警告を無視しこの進路を維持する場合は進路妨害と判断し、貴機を撃墜する。 』
スピーカーから聞こえた声に、記者達は目に見えて震え出す。
「せ、せやかて、あ、あんなんブラフやて。」
銃声とともに、機体に何かが当たった金属音が響く。
「う、撃ってきましたよ。」
「おいっ、まずいぞ。
たっ退避ぃ。」
報道ヘリside out