三週間の入院の後、上条は職務に復帰した。
やまとは、佐世保のドック内にて修理の真っ最中である。
佐世保の自衛隊病院を出た上条は知り合いの海上自衛官に声をかけられた。
「上条二佐、少し来てくれ。」
「神山か、何だあらたまって?」
第二護衛隊群護衛艦はるさめ艦長、神山二等海佐その人である。
神山に連れられて来たのは、佐世保地方総監部である。
そして総監部の周囲をかなりの数の自衛隊員が銃を持って警備していた。
しかも人数が足りなかったのか、大半が水上艦艇の乗員達であった。
「やけに物々しいだろう?」
苦笑しながらも、神山は言う。
「まぁ、それは無理も無い話だが、取り敢えずこっちだ。
こっちに来てくれ。」
「何なんだ?」
神山が上条を連れてきたのは、大会議場であった。
「香田海将。」
そこには、統合幕僚会議議長、海上幕僚長、やまと乗員達の直属の上官である自衛艦隊司令官はもちろん、護衛艦隊司令官、航空集団司令官、潜水艦隊司令官、横須賀・佐世保・舞鶴・呉・大湊の地方総監、横須賀・佐世保・舞鶴・呉・大湊の警備隊司令、第一から第四までの護衛隊群司令、すべての護衛隊司令、そしてすべての護衛艦の艦長と言った統合幕僚会議議長を除いてはありとあらゆる海上自衛隊の上層部の集まりであった。
「上条二佐、君に話がある。」
重々しく海上幕僚長が口を開く。
「何でしょうか?」
「今朝の会議で決まったことだ。
落ち着いて聞いてほしい。」
海上幕僚長がそこまで言い切る事なのだから重要なのだろう。
「上条二佐、君は本日付けで一等海佐に昇進。
改めて、やまと艦長に任ず。
これはきわめて異例な事態だよ。」
確かに新任の一等海佐がやまと艦長に選ばれたことは無い。
なぜなら、大型艦の操艦には、かなりの経験が必要だからである。
どんなに優秀であっても、やまとの艦長に経験も無しに選ばれることは無い。
「しかし、今回の紛争の功績を踏まえて昇進するだけなら納得できますが、経験も無い私にそのような期待はかけないでいただきたい。」
「その言葉は確かに尤もではある。
しかし、中国紛争における大金星は、何処の誰だと思う?」
「は?
何処のどなたでしょう?」
「君だよ、君。
やまと単艦で圧倒的な敵海空軍の戦力を薙ぎ倒し、第二護衛隊群にあっては対空戦闘に全力を尽くしたそうじゃないか?」
「しかし、あの程度やまとがあれば誰にだってできることです。」
「謙遜は良くないよ。
やまとに着任したのは、紛争勃発の一週間前だったそうじゃないか。
それであそこまで活躍できたんだ。
経験は十分だと思うが?」
「はあ。」
「もういい、一切の抗弁も許さん。
本日付けで一等海佐に昇進。
改めて、やまと艦長に任ず。
これには一切の拒否も認めん。 」
「拝命します。」
渋々と上条はやまと艦長の任を引き受けた。
「無論、経験の無い上条に、一佐の為にやまとの役職を増やした。
それには、君の知っている人物が就任しているはずだ。」
海上幕僚長の言葉に続き、よく画面越しに通信をしていた自衛艦隊司令官が発言する。
「分かりました。
全力で務め上げます。」
今回は明確なsideが無いので付けていません。