『運命の出会いが欲しい』と願っていたら、モニターから男の子が生えてきました   作:おにぎり・S

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3話ー① ギャル時々プレゼント

「プレゼントぉ!?」

 

 大学の学食。

 対面でカレーを食べていた孝弘が、スプーンを止めて顔を上げた。

 

 俺は続ける。

「お、おう。ちょっとお世話になった人がいてさ。お礼に何か渡したいんだけど……お前そういうの詳しいだろ?」

 

 怪訝そうだった孝弘の表情が、一転してにやりと歪む。

 

「女か」

 

「なっ……!?」

 

 思わずスプーンを落としそうになる。

 図星だった。優愛とあっこにお礼をしたいと考えていた。

 こいつは本当に、人の心が読んでくる。

 

「大方、知り合った女に世話になったから、お礼を口実にもっと仲良くなりたいってとこか」

 

 本当に……どこまで見えてるんだ。

 二人への感謝の気持ちも、お礼をしたいっていうのも本当だ。でもそれだけじゃなくて、また会いたい、もっと仲良くなりたいと思っていたのも本当だった。

 

「そ、そうだよ!でも何選んだらいいかわかんなくてさ。せっかくなら喜んで欲しいし。お前こういうの得意だろ?助けてくれよ」

 

 孝弘はモテるし、彼女もいる。

 大学の成績は俺とどっこいどっこいでも、恋愛経験では圧倒的に上。

 見た目にも気を使っていて、俺から見てもおしゃれな奴だ。

 

 正直、プレゼントは自分で選びたかった。

 でも、変なもの選んで引かれるのは嫌だし。

 女の子が喜ぶものって分からないし。

 だったらセンスのある孝弘に頼った方が確実だと思った。

 

「いいぜ~手伝ってやるよ」

 にやにやしながら孝弘が言う。

「で、その子とはどんな関係なんだ?」

 

 関係か、どう説明すればいいだろう。

 ワープの話は流石にできないし、”泊めてもらった”なんて言えば誤解されるのは目に見えている。

 

「えーっと、俺が困ってる時にすごい良くしてくれてさ、お金立て替えてくれたり、コンビニで物買ってきてくれたり。後日また会ったんだけど、その時も俺お金持ってなくて……ごはん奢ってもらった。で、もう一人はその子の友達で、その子にもお金出してもらって……」

 

「え、なに?二人いるの?ていうかお前、なにやってんの?」

 

 呆れ半分、ツッコミ半分の声。

 孝弘は頭を押さえてため息をついた。

 

「……つまりお前、二人の女に金出してもらってんのか」

 

「言い方ぁ!」

 

 思わず声が大きくなり、周りの席の学生が一斉にこっちを見る。

 慌てて息をひそめた。

 

「いやそういうんじゃなくて……ほんとに助けてもらっただけで……」

 

 孝弘はスプーンを口に運びながら、あきれたように肩をすくめた。

「それ、完全にヒモ寸前じゃねえか」

 

「ヒモじゃない!!」

 

 借りたお金はちゃんと返すし、次出かけることがあったら、俺がお金を出すつもりだ。ヒモになる気なんてさらさら無い。

 

「まぁ、まだ深い仲って感じじゃなさそうだな。で、プレゼント候補はあんのか?」

 

「い、一応……ネックレスとか、指輪とか、アクセサリー系。あと、その子がコートを欲しそうにしてたからそれとか。……あとは花とか?」

 

 孝弘が深いため息をついた。

 

「お前マジか。……唯一褒めるとしたら、プレゼント買う前に俺に相談したことだけだな」

 

「そ、そんなにダメか?」

 

「ダメだね。知り合って間もない子に渡すにしては重すぎる。そんな高いもん贈ったら相手が困るぜ。想像してみ?その子がブランド財布とか贈ってきたら、お前だって遠慮するだろ」

 

 確かに。

 この間、優愛が1万円近くする靴を「買ってあげる」と言ってきた時も、申し訳なさ過ぎて断ったっけ。

 

「なるほど……」

「ほかにもツッコミ所はあるけどな。とりあえず、相手が受け取りやすいものにしとけ」

 

 孝弘はカレーを食べ終え、口を拭くと立ち上がった。

 

「とりま、この後時間空いてるだろ?一緒に買いに行くぞ」

 

 ◇

 

 駅近くのショッピングセンター。

 ガラス張りの吹き抜けに、キラキラとおしゃれな店が並んでいる。

 あまりこういう場所に来たことが無いから、場違い感がすごい。

 孝弘は慣れた様子で進んでいき、俺は必死に後を追った。

 

 エスカレーターに乗りながら孝弘は言う。

 

「こういう時は、あんま高すぎないほうがいい。値段の大きさは気持ちの大きさになるからな。服やアクセサリーも避けとけ。好みが分かれやすいから」

 

「それは分かった。でも、何を買えばばいいんだ?」

 

「おすすめは3つ。バスソルトとか入浴剤系、フレーバーティーとかおしゃれなスイーツ系、あとは小物とか雑貨系だな。まぁ、選ぶのにセンスがいるが。」

 

 ……難しそうだな。

 とりあえず順番に回ってみるか。

 

 最初に入ったのは雑貨店だった。

 日用品から、ちょっとデザインのきいたアイテムまで並んでいる。

 しかし、いったいどれを選べばいいんだろうか。よくわからないまま棚に並んでいる商品を眺めていると、孝弘が苦笑した。

 

「何選んだら分かんねーって顔だな」

 

「うっ……いや、難しいぞこれ。今まで女の子にプレゼントなんかしたことないし」

 

 孝弘が笑いながら言う。

 

「その子たちも見返り目当てに、お前に優しくしてくれたわけじゃないんだろ?善意には誠意で返すもんだぜ。お前がちゃんと相手を想って選べば、気持ちも伝わるだろうさ」

 

 そういうものか。

 優愛のことを考える。彼女は何が好きだろう。

 可愛くて、優しくて、いちごのドーナツが好きで……大学生で。

 

 ふと、棚に並んでいたボールペンが目に留まった。

 白いボディにピンクゴールドの装飾。普段使っているものより少し上質なボールペン。上品で可愛らしい印象で、優愛に似合いそうだと思った。

 

「なぁ、孝弘。こういうのって、どうかな?」

 

「ん?ボールペンか。いいじゃん。お前にしちゃなかなかセンスあると思うぞ」

 

「”お前にしちゃ”は余計だ!……でもそっか、これにしようかな」

 

 大学生ならボールペンを使う機会は多いはずだ。

 それに、もし気に入って使ってくれたら、俺の渡したものをずっと持っていてくれる。そう思うと、少し胸が嬉しくなる。

 

「あと、こういうのもアリだぜ。」

 

 孝弘が手に取ったのは、小さいメッセージカードだった。

 

「やっぱ、形にしたほうが気持ちは伝わるもんでさ。別に短くてもいいから、お前の気持ちを書いて渡してあげな」

 

 メッセージか……。正直そういうの慣れてないし、恥ずかしい気持ちがある。

 けど、優愛に喜んでもらえるなら頑張ろうって思えた。

 

「そっか、ありがとう。やってみる」

 

 ◇

 

 あの後、優愛とあっこに、バスソルトとフレーバーティーを一つずつ買った。

 お菓子にしようかと思ったけど、いつ向こうにワープするか分からなかったから、日持ちのするものにした。

 

「ほんと助かったよ。お前にもお礼しないとな」

「別にいいって。お前もデートで金かかるだろ。礼は、俺が困った時に助けてくれよ」

 

 ……こいつは本当に。

 孝弘がモテる理由が、少し分かる気がする。

 相手の立場になって考えるのがうまいんだ。

 

「プレゼント、しくじんなよ。付き合えたら報告よろしく」

「なっ……お、おう。がんばるわ」

 

 そう言って、孝弘と別れ、家路についた。

 

 ──付き合えたら、か。

 多分俺は、優愛のことが気になっている。

 いや、違うな。好きなんだと思う。

 

 あんな不思議な出会い方をして、優しくしてくれて。

 可愛くて、気が利いて、一緒にいると楽しくて。

 気づいたら、好きになってた。

 

 優愛と、もし付き合えたら。

 

 ……優愛は俺の事、どう思っているんだろう。

 というか、恋人とかいるんだろうか。

 あんなにかわいくて素敵な子、周りの男が放っておくはずがない。

 でも、最初に会った時、俺を泊めてくれたし。恋人がいたら、そんなことしない……よな?

 

 俺、優愛の事何も知らないんだな。

 好きなタイプも、どんな生活しているのかも、連絡先すら知らない。

 そもそも、どうやって向こうにワープしてるのかも、まだ分からない。

 

 もし連絡先が分かれば、メッセージのやり取りだってできるのに。

 

 そんなことを考えながら帰り道を歩いていた。

 

 突然だった

 

「うあっ……」

 視界がぐらりと揺れた。

 足元がふらつき、立っていられない。

 思わず壁に寄り掛かる。

 気持ち悪くて、目を閉じる。

 そして、浮遊感。

 

 ……どれくらい経っただろう。

 落ち着いて目を開けると、見慣れた街並みは消えていた。

 

「あ、れ……?」

 

 そこは、狭い路地だった。

 民家が並んでいる。

 後ろを振り返っても、知っている道では無い。

 

 ──まさか、またワープしたのか?

 

「スマホは……!」

 

 ポケットを探る。今日はちゃんと持っている。

 すぐにマップを開いて位置を確認した。

 

「つながらない……なんで!?」

 

 通信が切れていた。マップを開いても現在位置が表示されない。検索しても”インターネットに接続されていません”と表示されるだけ。

 ワープの時に壊れたのか?

 

 とりあえず、広い道を目指そう。

 駅に出られれば、どのあたりかも見当がつくだろう。

 

 そう思って歩き出す。

 道は細く、曲がり角が多い。

 だからだろう、前から来た人に気付けなかった。

 

「うわっ!」

「きゃっ!」

 

 ぶつかって、二人してよろける。

 向こうは小柄なブレザー姿の女性で。尻もちをついて倒れた。

 

「す、すいません。大丈夫ですか?」

 

 駆け寄りながら気づく。

 ──あれ、この人、どこかで。

 

「いてて……ちゃんと前見なさ……え?この間のお兄さん?」

 

 その顔に見え覚えがあった。

 以前フードコートで話しかけてきたあの子。

 

 確か名前は、

 

「神崎……陽依?」

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