TS転生した俺は魔法少女になれないらしい   作:環状線EX

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サブクエ!

 

 白衣の少女、琴浦レンズ。

 彼女こそが俺がネットで知り合った自称魔法少女言語学者だった。

 しかし、彼女の天職はネットストーカーか特定犯あたりだろう。

 

 嬉々として語るのは俺の正体を突き止めるまでの道のりだった。

 二度の通話からの情報とカゲのSNS、綾谷もみじの魔法少女朝桜としてのアカウントと活動記録。

 そこから魔法少女コフィンと俺を同一視した彼女は、正体をバラされたくなければなんていう脅しをして俺を呼びだしたのだ。

 

「しかし、それも私のこの「魔眼」があってこそです!魔法少女ではない一般魔法少女言語学者でありながら軽度の認識阻害を突破するこの力こそがヒーコさんと魔法少女コフィンを結び付けたのです!」

「その目ぇくりぬけば解決か」

「ワハハ!無駄ですよ!魔眼はくりぬかれようと再生します!……あ、ちょっとっ、痛いのは痛いんです!まって、ダメですって!やばいです。指が爪がささりますぅ!」

 

 自称似非言語学者と言うだけでも痛々しいこと極まりなかったが、「魔眼」とか言い出したぞコイツ。

 

 ──魔眼か。未だ現存したとはな。

 ──え?ガチなん?

 

 俺の後ろに佇む美少女化したカゲが訳知り顔でテレパシーを送って来た。

 この女の妄言ではないのか?

 

 ──我もそう詳しくないが、術者にはごくまれに魔眼を持って生まれる者もいた。ただ、我が封印される頃にはその数も減少していて、魔眼が現存しているとは思わなかった。

 

 確かに今でこそ魔法少女と言うシステムがこの世界の神秘だが、よく考えればカゲの時代には術者とかがいたのだった。では、こいつがその末裔とかなのだろうか。

 正直、カゲを人化させたのは俺に執着する琴浦の生贄(友達)に捧げようと思ったからだった。しかし、こいつが「魔眼」なるものを持つような人間であれば話が変わる。

 ゲーム本編に関わるキャラの可能性が高まったわけだ。まあ、似非とは言え魔法少女言語の翻訳を出来る存在と考えれば予想の範疇ではあるのだが。

 

 よく考えれば、強引なコンタクトもシナリオ上でプレイヤーに接触する上では必要な行為なのかもしれないし。

 

「何ですか、そんな顔して?もしかして、魔眼が羨ましいのですか?」

「ちがう」

「ワハハ!ですが、それは出来ない話と言うものです!でも、そうですね。丁度研究をお手伝いしてくれる人を探しているんです。報酬にいいアイテムを差し上げちゃってもいいですよ!いいですよぉ!」

「話聞けや」

 

 しかし、手伝いか。

 このワードも含めて結構重要キャラなんだろう。

 ゲームにおけるサブ(おつかい)クエスト。その受注もとが彼女のゲームにおける役割なのだろう。

 

「……はぁ。で、アイテムって?」

 

 酷くゲーム的な表現だが、魔法少女に付与された特典などで得ることが出来る支給品は一括で「アイテム」と称される。それを考えれば不思議な表現の方法ではなかった。

 俺のため息交じりの問いに琴浦は「ふっ」と笑う。ウザい。

 

「実は、古代の魔術師が作成したと言ういわくつきの指輪がありまして……。私の魔眼によると魔法少女の俊敏性を高めると」

「魔眼便利過ぎじゃねぇか?」

 

 認識阻害のレジストだけじゃないのかよと内心思いながら、アイテムについて考える。出自はともかくとしてステータスの微量アップの類のアクセサリーアイテムなのだろう。

 そう重要なものでもないだろうが、クエストをこなしていけば便利なものも貰えるかもしれない。手始めに受諾しておこう。

 

「わかった。手伝おう」

「ホントですか?では、そうですねぇ。サムライタイプのインベーダーを倒してデータを取ってきてください」

「サムライ?」

 

 「そうです!」と彼女は頷いた。

 意味が分からずに呆けていると琴浦は説明をした。

 

 彼女の目的は魔法少女言語の手がかりを一つでも多く見つけることだと言う。

 その一つの手段として存在するのが、インベーダーからの情報の収集。エネルギーの波長、運用方法を読み取り分析しそれを魔法少女言語翻訳に適応する。

 通常の言語とは違い、秘匿性を持たせるために様々な神秘的手法を駆使したそれを紐解くことにこの手段は有効だと言う。

 更に、インベーダーの中に存在する地球由来の文化を反映したものに限っては特に当時の神秘的手法が多く取り入れられていることが多いと言う。手の届かない過去の情報をAIのごとく食い取り込んだインベーダーから逆に情報を得ようと試みるんだとか。

 似非とは言え意外と考えているのだな。ただの可哀そうな少女ではなかったと言う事だ。俺の中の評価は可哀そうな似非魔法少女言語学者にあらためられた。

 

 まあ、そんなことより、インベーダーって地球由来の要素を取り込んでいるなんて知らなかった。

 確かに、虎型とかいたもんな。

 

「まあ、取り入れると言ってもこちらの世界へ身体を転送するときに一度分解した身体に地球の情報が紛れ込むために起こる現象だからインベーダーも意図した事ではないですがね!」

 

 物知り顔でそう力説した。

 「ちなみに知性体はある程度意図して行うこともあるようですよ!」と続ける少女を皆がらふと疑問が湧いた。

 

「あれ?でも何でサムライ?」

「そりゃ、カッコいいからですよ!」

「はぁ」

 

 正直、年代があってれば侍だろうがそうだろうがジャパニーズ舞子でも芸者でもフジヤマでもいいはずだ。そんな思いのもとにした質問の答えは只の彼女の趣味嗜好によるもの。

 大体、指定が細かすぎて最初のクエストには無理があるだろう。くさむらにいるわけじゃねぇんだ。

 そう思っていたのだが──

 

「聞こえましたか!?」

「うん」

 

 甲高い悲鳴があたりに響いて俺たちは振り向いた。

 そこには、悲鳴を上げた女性とインベーダー。それもサムライを彷彿とさせる刀を携えたそれが立っていた。

 

「ああ、そうだった」

 

 プレイヤー的な恩恵があるのだとすれば、受注したクエストに応じたインベーダーが出ないわけがなかった。

 丁度良いなどと言いながら目の前に現れるのは必然とも言えた。

 だが、まあいい。俺に不利益はないのだ。

 

「カゲ」

「了解。ご主人様」

 

 カゲを人型からマスコットに戻して戦闘態勢に入る。

 認識阻害をかける際、一応蝶で身を包んでフードを被る。

 そうして悲鳴をあげた女性を避難させて、サムライの前へと立った。

 

 真っ赤な和甲冑に身を包み、刀を携えた姿はさながらサムライ。

 しかし、インベーダーであると直感できるのは決して歴史上のそれらとは違うからだろうか。

 

「勝負」

「知性体か」

 

 言葉を吐く姿から知性体だと断定する。

 しかし、正々堂々って感じだ。よく考えれば、悲鳴を上げていた人も襲われたわけじゃなかったしな。

 サムライは居合の姿勢を取った。

 

「悪いね」

 

 相手が正々堂々と戦おうと俺は命が惜しい。卑怯な手でも確実に勝てるのなら打って見せる。

 抜刀の構えから抜かれるであろう刀を出力によって作った鎖で縛る。鍔と鞘に引っかけたそれはギシギシと音を立てるだけで抜刀の失敗に終わる。

 その隙を逃さずにこちらは地面から槍を生成した。三本もあれば避けるのは至難だろう。

 だが──

 

「まじか」

 

 刀を捨てて、槍を避け、こちらに接近した。

 ステゴロかよ。

 思わず、その場から後退する。蝶で身を隠しつつ攻撃の波涛を何とか防ぐ。

 蝶程度でも身体を視認させない手はそこそこ有効に見える。まあ、全身を隠すと前が見えないから攻撃が来そうなところだけわずかに認識をずらす程度だが。

 問題があるとすれば、大量の虫に群がられているちょっと気持ちの悪い光景ではあることだろう。しかし、刀のままだったら切られて終わりだったな。徒手空拳のおかげで点の攻撃が幸いした。

 しかし、そうこちらも避けるのが上手いわけでもないし、奴も俺の出力による足止めを捌き続けることも出来ないのか、ついに鎖と槍はサムライの動きを止めるに至る。

 

 そして、俺は近づいて吸収をして消滅させた。

 

「ん?」

 

 サムライが消え去ってなお地面に転がる刀を見る。

 ドロップアイテム的な話か?

 ついぞ、抜かれなかった刀を抜いて刀身を見る。鏡のように俺の顔を写した。うん。美人!

 

「あ、壊れた」

 

 ゲットできるのかと期待させやがって。結局、全身エネルギーのインベーダーの持ち物もエネルギーなわけだ。

 ある程度の時間供給無しでも形を維持できたんだろうが、時間経過で壊れたのだろう。

 

 あれ?でも、エネルギーで出てきてるってことは再現できるんだろうか。

 試しに、先ほどの刀を思い出して出力してみる。うーん。なんか違う。

 

 ──我なら、先ほどの刀の形覚えてるぞ。

 ──マジで?

 

 そんなカゲの言葉に頼り刀を生成すれば、先ほど手に取ったそれと同じ形になる。

 少し振ってみるがいい感じだ。ただ、脆いな。インベーダーには使えない。

 

 ──エネルギーを消費するが硬度は上げられるぞ。

 ──こんな感じか。……いいね。

 

 光の塊のようなそれにエネルギーを圧縮すると黒く濁っていき、漆黒の刀に変わる。

 どんな原理で色が変わったのか知らんが、これならインベーダーにぶつけても折れないだろう。

 でも、どうせこれで殴っても攻撃入らないんだよなぁ。

 

「いや、行けるか」

 

 妙案を思いついて口元に笑みを浮かべた。

 

「ヒーコさん!これが報酬です!」

 

 刀の運用法をひらめき、戻った俺に琴浦はアイテムを差し出した。

 正直、刀の方に心躍っていたから完全に忘れていた。男の子だからオシャレより刀にテンションが上がるのは仕方ないよね。

 まあ、一応指輪もつけておくか。俺の格好に違和感がある物じゃないし、命には代えられないからつけておいた。

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