TS転生した俺は魔法少女になれないらしい   作:環状線EX

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【急募】魔法少女になる方法

 

 アニメのような可愛らしい制服。

 かといってコスプレじみていない絶妙なデザインの中に、真っ黒いジャケットとネクタイを締めた俺がいた。

 怪物に襲われるからこれを着ていると言うのは事実であるが、実のところこれしか制服を持っていないのも事実であった。

 どうにも学生証からして入学時からこの格好で学校へと通っていたらしい。

 

 皆慣れているのか、反応があるわけではないがそれでも廊下を歩けば視線が突き刺さった。

 文句言わずにデフォルトの制服を着せておけば良かったと今なら思う。

 少なからず制服の改造を施している人物たちが目に映るが一つとして既存の物を身に着けていない俺は特に目立っていた。

 

 居心地が悪い。

 

「……はぁ」

 

 思わず嘆息が漏れる。

 今からでも制服を買うか?

 今までこれで登校してきて変えるのも目立ちそうだしなぁ。

 大体、命には代えられないし。

 

「あ、あの!比果(ひが)さん。だ、大丈夫?」

 

 ふと考え事に耽っていると、可愛らしい声が掛けられた。

 そっちこそ大丈夫か?めっちゃ声震えているけど。

 そんなことを思ってみるも理由は分かっている。俺が不良生徒だからだ。

 指定の制服を着用せず、あまつさえ髪を染めている。

 キャラメイクをしていた時は、気にならなかったが大学生で金髪になっていようが高校でもそうだとは限らない。

 それに似たような経験は俺にもある。

 大学入る前の高校三年の大学の模擬授業の時に輩みたいな服を着た金髪女子がいて少し気圧された。

 入学後には金髪なんて珍しくはなかったが、当時は黒と精々茶髪の中で一人だけ金髪なのは相当な存在感があった。

 

「大丈夫。気にしないで」

「そ、そう?」

 

 俺が言葉を返せば少女はおずおずと頷いた。

 

「で、でも、困ったことがあったら言ってね!力になるから!」

「ありがとう」

 

 足早にかけていく少女を俺は見る。

 優しい子だ。

 名前はなんて言ったっけ、えーと綾谷、そう綾谷もみじ。

 ああいう子が魔法少女だったりするのだろうか。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 怪物はどこからやって来たのか。

 転生して襲われた後、最初に疑問に思ったのはそれだ。

 どこからともなく目の前に襲われるとなれば魔法少女なんかよりも詳細を掴みたい存在だった。

 

 そして、魔法少女が浸透した世界でそんなことは一般常識に等しいらしい。

 教科書を見ればすぐにわかった。

 まず、怪物と呼称したが正式な名称として侵略者(インベーダー)と言う呼び名が存在する。

 侵略者の名の通りこの世ならざる異空間から時折この世界に降り立っては暴れると言う。

 そして、中には知性体が存在し、そいつらの目的がこの星の侵略であると考えられるためその名称が付いた。

 

 そしてそんなインベーダーを倒す使命を持つのが魔法少女だ。

 インベーダーと言う存在が世界には現れたが、時を同じくして守護者(ガーディアン)と呼ばれる者もあらわれた。

 ガーディアンはインベーダーに対抗する存在であり、彼らがこの世界に来たのを追って現れたと言う。

 しかし、インベーダーと違いガーディアンはこの世界にそこまで多くの干渉力を得ていなかった。

 正確に言うのなら、そもそも異空間からの世界干渉はその世界に負荷をかける行為であり、インベーダーがそれを行って侵略をしてきているためにガーディアンが更なる干渉をすることはこの世界に対して不利益につながるためであると言う。

 しかし、インベーダーに対抗する勢力であるガーディアンは自分たちで介入できない状況下において一つの対抗策を取った。

 それが、魔法少女計画だ。

 

 かつてより、魔法、魔術、呪術と言う様々な力があったと言うこの世界の失われた理をガーディアンが利用することによってこの世界に奇跡を取り戻すに至った。

 既存の地球由来の儀式構造を利用しているためか巫女としての力を持つ生娘にしかその効果を得るに至っていないが、人類は魔法少女によってインベーダーに対しての対抗力を得た。

 そして現代では魔法少女が活躍していると言う事だ。

 

「それにしても青春も出来ずにインベーダー退治か」

 

 スマホでインベーダーと戦う魔法少女を見て呟く。

 前世で大学に行きながら何もしていなかった俺と比べて彼女らは大半が高校生なのに世界のために戦っている。

 全く頭の下がる思いだ。

 俺が登校中に通報すれば、学校に向かうはずだった魔法少女が少なくとも一人は一限を飛ばす羽目になる。

 自分で対処できるならしたいくらいだ……。

 

「いや、待て。毎度毎度インベーダーに襲われるから参ってたが、俺が魔法少女になればいいんじゃねぇか?」

 

 剣と魔法の世界に転生したら魔法を試してみる。

 なら、魔法少女になれる世界でなんで俺はこの発想に至らなかったんだ?

 完全に盲点だった。

 つーか、大体ゲーム世界に転生したとするなら一応プレイヤーのキャラとして作られたこの身体に才能がないわけがない。

 成功が約束された道じゃないか。

 

 それに人とは違う制服を着てようが、あの子って魔法少女だからそう言うこともあるよねってなりそう。分からんけど。

 よし、そうと決まったら行動あるのみだ。

 今のまま一人黒制服で序盤スイミーの立場を甘んじて受け続けるものかよ。俺は終盤スイミーになる。

 

 と言う事で、魔法少女になるにはなんて検索をネットで掛けてみる。

 一般論的にはガーディアンの使い魔であるいわゆるマスコットキャラみたいなやつに選ばれるとなれるようだ。

 それでは俺が行動してもあまり意味はなさそうだ。どうしても受け身になってしまう。

 

 そう思っていたが、特例はあると言う。

 と言うのも、魔法少女がいなくなった使い魔は新たに別の人間と魔法少女契約を結ぶことが出来ると言う。

 実際に魔法少女に憧れた少女が契約者がいなくなった使い魔を見つけて魔法少女になった事例もある。

 

 しかし、あまり気が進まないな。

 契約者がいないと言うことは、まあ、基本的にインベーダーに殺されてしまった後なわけで。

 傷心中の使い魔に図々しく「前の人なんか忘れて私に乗り換えてよ」なんて言えない。

 しかし、使い魔は契約解除後に一定時間で魔法少女からの魔力供給が切れて元の空間に帰ってしまうため、後日素知らぬ顔をして契約を持ちかけることはできないのだ。

 

 どうしたものかと俺は唸っていたが、一つ妙案を思いついた。

 

「契約するより早く見つければいい」

 

 使い魔と言うのはこの世界に来て少しの間は実態を持たないエネルギーの塊である。

 その状態のものを見つけて声をかければいいのだ。

 

 そんなこんなで気合いを入れてみたものの実際どこに言えばそんなものがあるのかなんて言うことは分からない。

 そう簡単に見つけられるような代物ではないだろうし。

 そんなことを思いながらふと思いついた。

 

 それはとてもメタい話であった。

 仮定として俺はプレイヤーキャラだ。

 で、あるならば魔法少女イベントなど彼方からやって来てもおかしくはない。

 しかし、受動的にそれが行われないのであれば、シナリオ内では主人公が何らかのアクションを起こしているはずだ。

 例えば、騒動に巻き込まれて止むに追われて魔法少女になるとか。

 他にも、外部的な何らかの影響を受けて行動した結果、偶発的に巻き込まれるとか。

 

 だが、巻き込まれると言う話であれば、俺は毎日のように襲われている。

 ゲーム的に考えれば一度はピンチに陥るとしても、二度目はないだろう。

 なら、もっと前か。

 ゲームスタートした直後に何らかのイベントがあってしかるべきだ。

 恐らく本来であればとっくに俺は魔法少女になっていると考えて良い。

 

 なら。

 

「自室か」

 

 プレイヤーキャラが始めに目覚める場所。

 外に出ればインベーダーにエンカウントするのならば、恐らくきっかけは部屋にある。

 

 下校し家に帰って来た俺は至ることろを探した。

 いたって普通の物件だ。

 俺が前世で住んでいたところとは違うが、モデルであるのかスポンサーにその会社があるのか知らんが、間取りは結構似ている。

 だから、収納の位置などは大抵把握しているつもりだが……。

 

「最後はここか」

 

 大方調べ終わったところで収穫はゼロ。

 最後に俺はクローゼットを目の前にしていた。

 後回しにした理由はここが本命であったからだ。

 目覚めたあとひとしきり家を見て回った俺はこのクローゼットで今着ている疑似制服を見つけた。

 

 制服の方に気を取られていたが、まだ何か残っているかもしれない。

 そう微かに期待を寄せた俺は口元に笑みをたたえた。

 

「あった」

 

 収納と言う収納を漁り、最終的に高い位置においてあった段ボールが崩れてきてそれを見つけた。

 段ボール箱の中身は骨董品とイメージしたものをそのまま再現したかのようなものだった。

 ガラクタにしか見えないが、その中にあった一つの紙が俺の目を惹いた。

 

 よくわからないミミズがのたうち回ったようなクネクネした字で書かれたもので、俺の直感がこれだと告げていた。

 しかし、読めなければ意味がない。

 どうしたものかと頭を悩ませ、何か手がかりはないかとネットの海をさまよった。

 

 そして「魔法少女言語」なるものを唱える人間を見つけた。

 魔法少女と言うのは近代におけるガーディアンを発端とするものでありながら、その前身はこの世界に存在していたと言う失われた神秘にある。

 そんな神秘を扱うものたちが古来にいたであろうと言う事は当たり前として教科書に載っていて、そんな彼らが使ったとされる言語を「魔法少女言語」としているようだ。

 しかし、歴史はともかく「魔法少女言語」はこの人物独自の研究だ。

 要は、黒歴史ノートに書き連ねるような内容と言えた。魔法少女がいても中二扱いされるとは可哀そうな人だ。

 

 だが、だ。

 俺が見つけた文章とこの人物がネットに上げている画像は酷似しており、そこに一筋の希望があるのではないかと考えた俺はすぐに連絡を取った。

 

 ──やっと私の研究の素晴らしさを分かってくれる人が現れましたか!

 ──わかりますわかります

 ──いやぁ、なかなか見どころがありますね。いいでしょう!今回は無償で引き受けますとも!

 ──わかりますわかりま……ありがとうございます。流石「魔法少女言語」を研究してらしているだけある!

 ──ワハハッ!任せときたまえ!

 

 と、そんなこんなで翻訳を頼んだ俺に数時間後、結果が送られてきた。

 こんな短時間で解読してくるとは思わず訝しんでしまうが、その内容は目を見張るものがあった。

 添付画像にどこがどのようにして翻訳に至ったのか赤のマーカーで細かく書かれていた。

 それはとても似非翻訳者の仕事には見えなかった。

 

 ──あっもしもし!見てくれましたか!私の力作を!

 ──間違いないんですか?

 ──もちろん!天才魔法少女言語学者の私にかかればこの程度──ブチッ

 

 よし、これが本当なら希望は見えて来たぞ。

 

 彼女が送って来た情報には以下の旨が書かれていた。

 それは古代に封印された従魔──今でいうところの使い魔が契約した術者からの魔力供給が途絶えたことにより生命維持が危うくなり封印されたと言う事。

 そして、その封印場所だった。

 

 当初の目論見である発生直後の使い魔への接触ではないが、流石に数百年前の術者に未練たらたらでなければ芽はあるだろう。

 つーか、翻訳には字がかすれて読めない所があって虫食い状態であったが、それでもこの従魔に対して切り付けたり魔術を使ったりとしていたことも描かれていたので従魔虐待の線もある。

 DVこわい。

 まあ、当時の倫理観的には躾の範疇だったのかもしれんが。

 でも、再生したとはいえ頭割るのはやばいよ。

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