TS転生した俺は魔法少女になれないらしい   作:環状線EX

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独占欲!

 

 カゲと出会ったときに話していた闇の魔法少女の話。

 恐らくゲーム本編では、魔法少女を模倣したそれをカゲが作るのだろう。

 そう言った背景があって、俺はインベーダー因子を植え付けられたヒナリ、ティナから命令の元を取り除くことが出来ていた。

 とは言え、残りのキイナと言う少女については本人がいない限りは、俺にどうすることも出来なかった。

 

「で、肝心のキイナは?」

「学校には来てるみたいなんですけど、放課後クラスに向かったらすでにいなくて……。あとを追ったんですけど、巻かれてしまいました」

 

 そう言うヒナリは、キイナと同じ高校に通っているらしい。

 彼女らは、魔法少女になる前に接触し同じ学校に進学することにしたらしい。

 密に情報共有することを考えると妥当なんだとか。確かに、ランクが違うと魔法少女コミュニティを使って接触することも出来ないし。

 まあ、インベーダー側の人間が集まっていることは怪しいが、まんまと内部に入られている委員会がその程度のことで真実にたどり着かない気もする。いいのか?それで?

 

「家は……いないんだよね?」

「はい。一応行って見たんですけど、いなくて。ごめんなさい。比五子ちゃん」

 

 ヒナリは謝る。

 まあ、彼女のせいではない。

 それに、ヒナリ、ティナはあっさりだったが、キイナが自身の意思でインベーダーに従っている可能性だってある。

 だからこそ、早く見つけたいところだが。

 

「私、もう一度探して来ます!」

 

 そう言って、カフェを飛び出したヒナリを見送って、俺も鞄を持つ。

 

「どこかに行くんですか?」

「ん?ああ、ちょっと勉強しようと思ってな」

「勉強、ですか?」

「ああ、今テスト期間中なんだよ。今日が一日目」

 

 二日目の勉強をしなければならないと言えば「なるほど」とティナは言った。

 

「うちは先週でしたので」

「学校によって違うのか」

 

 そう言えば、彼女の着ている制服もなんだか格式高そうだ。

 Theお嬢様学校って感じだ。

 まあ、現実のは知らんから、フィクションのだが。そう言えば、キャラクリの時にこの制服を見た気もする。

 

「でも、勉強と言うなら、カフェでもよかったのでは?」

 

 ティナがそう言うのは、俺たちのたまり場のようになっている例の琴浦がバイトをしているカフェだ。

 俺だって、本来ならそこでしたさ。本来ならな。

 

「だって、琴浦がいるだろ」

「ああ……」

 

 そりゃ奴は頭が良いが、喋り過ぎる。

 勉強するには、邪魔過ぎる。

 まあ、別の奴を話し相手にさせればいいが、今の人数では無理だろう。

 

 とは言え、前世でちゃんと勉強したことを覚えていれば勉強などしなくても良かったのだが。

 しかし、前日の一夜漬けだけで済んでいるのは前世あってだろう。

 まあ、別に特段勉強が出来たわけでもないが。

 

「それで、どちらに?」

「まあ、図書館かな。近くにあるっぽいし」

 

 未だこの街の施設は知らないものが多いが、確かこの辺りに図書館があった気がする。

 前世では、碌に使ったことはなかったが、どうせなら行ってみてもいいだろう。

 そう思って、図書館の前についたのだが。

 

「あっ」

「え?」

「あれが、久篠キイナです」

 

 二つ結びの少女が、ティナを見て声を出し首を傾げた俺にティナはあれがキイナだと教えてくれる。

 意図せず、目的の少女を見つけてしまった。

 この状況でどう出るべきか俺の頭は高速で回った。

 と言うか、仮にもインベーダーに情けをかける気はない。ここで、慎重に接して逃げられて、命令によって割を食うのは御免だ。

 まあ、仕方ないか。強硬手段だ。

 

「あ、え?ちょっと?なにすん──いだだだだ!」

 

 キイナの頭を掴み、強制的にことを成す。

 

「っ!?」

 

 くそ。やっぱ俺一人じゃ完璧には出来ない。

 カゲを顕現させてしっかり時間をかけなければ、上手くいかない。

 

「痛ったぁ~。……っ!」

「あ、待て」

 

 頭を押さえて、唸った後に我に返ったようにティナと俺を見たキイナは逃走した。

 俺の指は彼女を掠めるが、逃げられる。

 

 

 

 

 

 ◆

 

「はぁはぁ」

 

 キイカは足を止めた先で身体を上下させる。

 生身での全力疾走。魔法少女と言えど、疲労はする。

 しかし、逃げたは良いが、状況を正確に理解できているわけではない。

 

 あそこには、ティナがいた。

 キイカと同じ魔法少女であり、何よりインベーダーである死神の子同士だ。

 そして、思い出すのは先日のヒナリの話だ。

 

 『頭にくるインベーダーの命令。それを断ち切れる方法があるって言ったらどうする?』

 

 彼女は確かにそう言っていた。

 だが、それはありえない話だと切り捨てた。

 いや、それ以前にキイナはそんなことを望んでいない。

 

 それに、ティナと一緒に居た少女も気になる。

 いきなり頭部を掴まれて何か魔力の流れのようなものを感じたのは確かだ。

 そこで、不意に気付く。

 

「ホントに何を……。え?あれ?なんで?」

 

 頭の声が完全に聞こえなくなったわけではなかった。

 だが、頭をひしめいていたはずの声は、大部分が鳴りを潜めていた。

 

「聞こえない……なんで?」

 

 頭を押さえて、蹲るように頭を抱えたキイナの顔面は蒼白になる。

 

「いや。いやだ……。どうして……」

 

 靄がかかったような、耳をふさがれてしまったように命令が聞こえない。

 唯一自分を求めてくれた声が聞こえない。

 これではもう。

 

「アイツが」

 

 そこで、金の髪の少女の顔が浮かんだ。

 名も知らぬ少女だ。だが、あれが原因だろう。

 

「許さない。許さない。許さない。許さない。許さない」

 

 憎悪の念が駆け巡る。

 そして、手繰り寄せた声は言う。

 

 ──殺せ。

 

 思考が誘導される。

 一つの結論が口からこぼれる。

 

「殺す」

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 衝動のままに手を出さぬようにこらえたキイナは少女の情報を集めることにした。

 インベーダーの呪縛に干渉できるものだ。素性は分からぬが相当な強者に他ならない。

 もしかしたら、すべての魔法少女よりも……。

 

「ッ!」

 

 度し難い。

 だが、抑える。

 

 少女の名前は、比果比五子と言うらしい。

 学校指定の制服ではなく、黒で統一された制服を着こんでいる。

 今はテスト期間らしい。

 二日目のテストを終えた彼女は、通常日程よりも早く学校を出た。

 

 今、襲撃するか?

 いや、実力が見えない段階で、反撃を喰らうと不味い。

 もう少し観察すべきか。

 

「ヒナリ、キイナは?」

「今日は学校にも来てないです」

 

 そうこうしていると、比果比五子はキイナも良く知る人物と接触した。

 相手は、ヒナリだ。

 これで、彼女がインベーダーの呪縛を解くための方法が比五子であったことが確定となった。

 だが、彼女の態度が気になる。

 猫を被ってフレンドリーに接しているのであれば納得が出来るが、敬語など聞いたことがない。

 それにあそこまで素直に接しているとなると、比五子の内包する力はヒナリ以上か?

 

「マジか。キイナがいないのは困るな」

 

 比五子のそんな言葉が耳に届く。

 困る?それに引っ掛かるが、呪縛を完全に解くのを失敗した以上おかしな発言ではない。

 

「まあ、このまま完全に姿を消すことはないだろうから、また何か情報があったら頼むよ。冗談抜きで、キイナが居てくれないと人生詰む可能性あるしな。俺」

 

 「は?」と言う言葉が漏れる。

 キイナがいないと人生が詰む?意味が分からない。

 必要とされている?いや、そんなはずはない。

 何かの比喩だ。

 

 頭を振る。

 すでに、ヒナリはこの場を去っていて比五子だけが立っていた。

 

「ん?」

 

 いらぬ考えを振り払っていると、不意に比五子が息を洩らした。

 遅れて気付くのは、空の罅。

 察知までの速度が尋常じゃなく早い。

 それに目をむいているとインベーダーが現れる。

 B級が精々だろう。

 

 比五子がどのような存在かは分からなかった。

 だが、光で出来た蝶が舞い、変身したのを見れば魔法少女だと分かる。

 そして、その姿をキイナは知っていた。

 魔法少女コフィン。

 

 なら、相手の手札は分かる。

 

 仮にもインベーダー側の人間だ。

 主要な魔法少女の情報は持っていた。何よりヒナリが彼女を孤立させるために動いていたはずだ。

 だが、今はそんなことはどうでもいい。

 

 もう様子見の必要はない。

 呪縛に対しての特効は持っていたが、実力は大したことはない。

 B級インベーダーが消滅すると同時に入れ替わるように、キイナは接近する。

 

 即座に変身をする。

 インベーダーの力と魔法少女の力は併用可能だが、魔法体においては干渉しあう関係で両方の力を使おうとすると効果は弱まる。

 魔法少女の変身した際に身にまとうコスチュームは実力が高いほど造りが細かくなる。

 故に、通常変身ではなくインベーダーの力を併用しようとすれば干渉しあった結果により極めて、変化は簡素なものとなる。

 

 一見すれば、魔法少女ではないただの少女が舞い降りたように見えるだろう。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 突然現れたB級インベーダー。

 それに今更驚くこともないが、しかし、突如として高所からの少女の襲撃には俺も驚かざるを得なかった。

 

「キイナ」

 

 顔を見れば分かる。

 認識阻害は恐らくない。

 いや、そもそも生身に極めて近い。しかし、俺の魔眼は魔法体だと判断する。

 

 コンタクトとしてつけることが出来る眼球もろとも使い捨ての魔眼。

 琴浦からクエスト報酬として受け取ったこれは、魔力を追う。

 こいつを付けていたのは偶々だ。もらったので試しにと言った程度。

 

 だが、そいつはキイナの攻撃を避けることにつながった。

 

 ───パチンッ!

 

 逆行。

 地面に穴が開くのを見ながら後退する。

 つーか、人目がない場所で襲われたのは偶々か?

 ヒナリと別れて近道しようと裏路地に入ったらインベーダーがコンニチハしてキイナ現れた。

 まあ、どっちでもいいか。

 

 それより、コイツは明確に敵だとわかった。

 インベーダーからの命令を断ちたがらず、尚且つ攻撃までして来た。

 

「一応聞くけど、キイナ……さんであってる?」

「殺す」

 

 会話できねぇ。

 いきなり襲って来て会話も……あれ?

 思い返せば、俺が勝手に頭掴んで魔力流し込んだのが悪いのか?

 敵対してきたからインベーダーだと思ったがよく考えてみれば、初めにやったのは俺じゃね?

 まあ、じゃあ怒るか。

 だって、俺が命令を断つためにやったって知らないしな。それに、完全に解けてないのも確かだ。

 

「あー。待て、話をしよう」

「殺す」

 

 キイナは、俺の言葉を聞かずに行動を開始する。

 左目が光った。

 通常の魔眼ではないが、ヒナリによると死神の子は皆、魔眼に近いモノを持っているらしい。

 頭に響く声は眼球と脳とを神秘的手段の媒介として利用する関係で、眼球が魔眼のようなそれに変質する。

 能力は固有の物で発動するまではわからない。

 

 だが、俺の魔眼には魔力が彼女の手に集まっていくのが見えていた。

 

「ブラフかよ」

 

 手元から現れるのは、魔力の塊。

 圧縮されたそれは、魔法でも何でもない。

 だが、こいつは。

 

 ──インベーダー由来のソレだ。威力は相当なものだぞ。

 ──分かってる。

 

 黒く禍々しいそいつを刀で受け流す。

 いや、受け流すことも出来ずに、武器が飛ぶ。

 そのまま、懐に潜ったキイナの攻撃を盾を出してガードする。だが、こいつが破られるのは分かっている。

 同時に、右の壁から白武器による槍の生成を行い、それが飛び出るのと同時に俺の身体は横へズレる。

 無理やり服に引っかけた力業だ。そのまま、蹴りを繰り出すもキイナには防がれる。

 

「ちっ」

「殺す」

 

 鋭い殺意を秘めた目と目が合う。

 だが、その顔が一瞬で視界から消える。

 瞬間、背後からの攻撃を壁を作りつつ、避ける。

 

 短距離転移か?

 ギリギリで攻撃を避けつつ彼女の動きを考察する。

 しかし、生成した盾が簡単に割れないのを見ると、転移後の攻撃力は何らかの制限によって落ちるのだろう。

 

 なら、此処を叩く。

 攻撃が落ちると言うことは防御も万全ではないだろう。

 後ろに流れるように動くからだと入れ違うように、背後で生成していた黒武器を飛ばす。

 槍型が四本。黒武器の特性上触れていなければ生成、そして吸収の付与と原型をとどめることが出来ないがケーブルのように魔力を伸ばすことでなんとか体を成す。

 しかし、難なくそれを避けるキイナは次の一手を打った。

 

 だが、避けた先こそが本命。

 見るからに頭に血が上っているキイナはこれに引っ掛かる。

 黒武器として生成した拘束具がキイナを壁に貼り付ける。

 その一瞬までの間にそれに攻撃を始めとしたいろいろな手段を得しても、刀と違い前面に吸収を施したそいつは魔法体をも削る。

 まあ、実際は吸収の付与できるのは一瞬だから、気付かれたら終わりだが、初手で無理をしたおかげでこれ以上は無理だと判断したようだ。

 

「……悪いな。どうしても、キイナをインベーダーには取られたくないんでな」

「とられたく……?」

 

 溢した声は意外にもキイナに拾われる。

 

「……ああ、インベーダーにキイナを取られたら死ぬかもしれんし」

「私が、取られたら生きていけない?」

 

 なんかブツブツと言っている。

 しかし、敵意がなくなったようでよかった。

 

「まあ、さっさとすませ──」

「独占欲ってこと?」

「え?あー。まあそれでいいや。顔貸して」

「は、はい」

 

 キイナは目を瞑ってわずかに口を突き出した。

 そんな踏ん張るほどこの前は痛くしたのだろうか?

 まあ、今回は頭を鷲掴みするわけではないから大丈夫か。

 

「じゃあ、行くぞ」

「はい!いつでも来てください!」

 

 謎に気合いが入ったキイナから命令の根幹を断ち切った。

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