TS転生した俺は魔法少女になれないらしい   作:環状線EX

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駐車場!

 

 林間学校は二日間。

 とは言っても、二日目の昼過ぎにはバスに乗って帰途につく。

 もみじが快く俺を隣に誘ってくれたのであぶれることなく、俺は席に座ることが出てきていることを感謝しつつ窓の外を見た。

 

「あっと言う間だったね。比果さん」

「うん」

 

 不意に言葉を吐いたもみじに頷き返す。

 確かに思い返せばあっという間だった。

 なかなかしない経験を出来たし、何より楽しかった。だからこそ、一瞬で過ぎてしまったと感じたのだろう。

 クラスの皆とは相変わらずではあるものの、もみじでも友達として接してくれるだけで随分と違う。

 本来なら、こっちから積極的に友達を作るくらいしても良いが、悲しいかな話しかけられるだけで、謝られて逃げられるのだ。

 まあ、仕方ないね。やっぱもみじは最高ってこと。

 

 そんなことを思い出を思い返しつつうんうんと頷いて見せるともみじは首を傾げた。

 

「いや、本当に楽しかったと思っただけだよ。久しぶりだったし、林間学校は初めてだったし」

 

 今世でのイベントとしては久しく、そして、前世でも林間学校はなかった。

 俺の居た地域も関係しているだろうが、単純に現代では学校行事の多くが縮小傾向にある。

 余計に林間学校が特別に感じたのだ。

 

「そっか。私も比果さんと一緒に来れてよかった」

 

 眩しい。

 にっこりと笑いかけて来るもみじはやはり天使。

 それに何事もなかったかのように笑顔を浮かべるが、林間学校中に何かしらの騒動に巻き込まれていたはずだ。

 ゲームではなく本編における何かしらの出来事だろうが、それを全く感じさせないのは凄い。

 

 と、そんな俺の思考に割って入るようにスマホが震えた。

 どうせニュースアプリの通知だろうとホーム画面を見たが、一見のメッセージだった。

 

 それに一言返信して、俺はバスにまた揺られた。

 すでに学校近くまで移動してきていたバスは、暫くして高校の駐車場へと止まった。

 担任がそれぞれのクラスごとに解散を言い渡すと皆が思い思いに思い出を話し合って、背筋を伸ばしているのを見ながら俺は足を進めた。

 

 話しかけてくれたもみじには悪いが用事があると返答すれば「また月曜!」と元気良く返してきた。

 

 ──どうするんだ?

 ──どこでもいいけど、“人目の無いところ”と言う一個しか思いつかんかった。

 

 それは先ほど俺に送られてきていたチャットの内容であり、そしてこれから足を延ばす場所についての事だった。

 俺に届いたメッセージはただ一つ、「話したいことがあるから、他の三人がいない場所に来て欲しいです」と言う文面の物だ。

 少し首を傾げつつも、俺は適切な場所を思い浮かべる。

 彼女らの話を考えると、必然他の三人以外にも聞かせることが出来ないものだろう。

 それを考えると、人目の無い場所と言う結論が出たのだ。

 

 そして一つの場所を思い描いた俺はバスの中でその場所を指定したのだ。

 十数分後徒歩でやって来たのは地下駐車場だった。

 利用客はいるだろうが、今の時間は人と鉢合わせることもないだろう。それに、人がいたとしても隅にでもよれば内緒話くらいは出来る。

 それでも少し怖くて変身だけした。

 死神の子の関係するだろう話をしていて、万が一にでも比果比五子として人に見られたくはない。コフィンであれば、まあ、何とでもなるが。

 

 まあ、そんなことはともかくここの思い出と言えば、初めて魔法少女統括管理委員会の副会長森峰と会話した事だろうか。

 あの時はどこから入るか迷ったが、二度目ともなると覚えている。

 そして、覚えているからこそ入り口で違和感を覚えた。違和感と言っても些細なことだ。脇に避けるように置かれているバリケードと立ち入り禁止の文字が書かれたプレート。以前はなかったような気がしたとなんとなく思った。

 

 そしてそんな些細なことが頭に引っ掛かりながら地下駐車場に入った時、更に違和感を感じた。

 と言うより、これは違和感と言うレベルでは済まない話だ。

 それなりに広い駐車場には、一台たりとも車が止まっていなかった。

 同時に脳裏に流れるのは、入り口で見たバリケードとプレート。そして、悪寒が背筋を流れるのと同時に一つの足音がカツカツと空虚に響いた。

 

「初めまして、魔法少女コフィン。僕は魔法少女逆鳴」

「だれ?」

 

 手を大きく広げてイリュージョニストのように大げさな動きで名乗った少女に俺は思わずそう言った。

 俺は、知り合いの少女に呼び出されたのだ。決して、新キャラ発生フラグを引いたわけではない。

 

「誰とは酷いね。自己紹介はしたじゃないか。そこはよろしくだろう?」

「はぁ」

 

 面倒だなコイツ。

 つーか、何者だって意味だろ普通に。

 と言うか、俺は呼び出したアイツはどこだよ。こんなんと話したくはないからいないなら帰るぞ。

 

「そう怪訝な顔をするものじゃないよ。……まあ、君からすれば驚いたことだろうけどね。我々が動き出したと同時に雲隠れしていたのに、まさか、自分の居場所がバレて待ち伏せされていたとあっては」

「何の話?」

「ごまかさなくてもいい。大体、協力者から得た情報通りにこの場所に来た以上、弁解の意味はないからね」

 

 ツラツラとよくわからないことを喋る逆鳴。

 そして、頭の理解が追い付く前にまたも新キャラの登場である。

 

「あまりしゃべり過ぎるな逆鳴。意味もなく協力者について洩らしても益はない」

「別に益だなどと求めてないよ。既に王手、チェックメイトも目前。別に話したところで損はない。零、君は少々急きすぎだ」

「油断するなと──チッ!」

 

 ペラペラと言葉を重ねる逆鳴に釘を刺した白髪の魔法少女──零と呼ばれた彼女は舌打ちをした。

 それを俺は睨む。

 躱されたか。

 白武器を生成して頭上から降らせた一本の槍は彼女が後方へと飛ぶことで難なく防がれる。

 危険そうな方からやっておきたかったが。

 

 正直、今の状況は分からない。

 知り合いに呼び出されて駐車場に行ったら、知らん魔法少女が二人。わけわかめだ。

 しかし、逆鳴は敵意を持ち、話しぶりから俺を何かの容疑者か何かだと断定したらしい。

 これで攻撃をすれば、事態の悪化は必然だが、残念ながら相手は武力を持つ魔法少女だ。警察が来るまで待とうなんて話は通じない。

 

 最優先は魔法少女零。こいつを潰す。

 俺は、すでに踏み込み接近していた。

 だが、そこへ側面から逆鳴が攻撃を繰り出す。しかし、想定済み。

 そのまま方向転換して、奴の腹に蹴りを入れる。

 前へと突っ込もうとした彼女は腹への攻撃に怯み、その隙に生成した刀を滑り込ませようとして零の攻撃が迫る。

 完全に背を向ける形になっているが、すでに白武器は生成している零の背後を狙うようにそれは突き出された。

 

 だが。

 

「な」

「こんなもの」

 

 背中に目でもあるのか。

 そう考えてしまうほどに、最低限の体重移動だけでそれを躱した。

 そして、そのまま繰り出される攻撃を刀で弾き、反対側から迫る魔力の気配にガードしようとして──

 

「がはっ」

 

 逆鳴の蹴りを腹に喰らった。

 おぼつかない足取りは容易に相手に隙を与える。

 繰り出される魔法少女二人分の攻撃に盾を添加して、生成した槍を自身に引っかけて後方へと強引に離脱した。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 協力者によってもたらされた魔法少女コフィンの情報。

 それによりとある地下駐車場に潜伏していた二人はコフィンと対峙した。

 魔法少女零と魔法少女逆鳴は二人がかりでコフィンに攻撃を加えていた。

 

 だが。

 

(しぶとい)

 

 零はそんな感想を心の中でもらした。

 攻撃を入れる寸前で刀による妨害を受けて今一歩届かないと言った印象だ。

 だが、それ以上に、情報が不足し過ぎていると感じた。

 

 魔法少女コフィンについては、遠隔生成が可能な白い武器と遠隔生成は出来ないが威力の高い黒い武器が存在していることなどは分かっていた。

 だが、戦い方については完全に未知数。

 白武器での不意打ちには魔法「空位」を使って、周囲の情報を取得することで対応は可能だ。

 だが、やはり変則的な戦い方に対応するのは簡単ではない。

 

 技量以上に手数が多い。

 本人の強さはさほどではないだろうが、攻撃の選択肢が多すぎる。

 それをこちらが対応するのにリソースを使い過ぎる。

 

 それに攻撃も当てられていない。

 逆鳴の魔法によって一撃入れたがそれだけだ。

 次の二人がかりでの攻撃は奴が自身の身体を強引に引っ張り上げたことで回避されている。

 

 しかし、追撃を止める手はない。

 魔法を発動し、飛ばされる槍を回避する。

 最低限の動きで時間をロスすることなく接近する。

 

 そして、零と逆鳴の攻撃を受けようと後方へ跳んだところで──雷鳴が走った。

 

 首を狙うように魔法「導歌(シルベウタ)」で紫流は軌道を描いた。

 そして、それをコフィンは首に盾を生成して受ける。ひびが入り、盾ごと両断するかに思われたときにはコフィンはしゃがみ込んで首をひっこめていた。

 紫流の剣は首を落とすことなくフードが外れ舞い上がったコフィンの髪を掠めるに至った。

 そして次の瞬間にはその場から姿を消し、ほんの数歩前に降り立った。踏み込むコフィンにそれ以外の者たちが対応が遅れる。

 コフィンの転移は後方へのみ可能であったと言う情報の齟齬が、一瞬思考を遅らせる。

 だが、コフィンが踏み込む瞬間、一瞬で二つの影が懐へと潜り込んだ。「虎」の二人だ。

 そしてそれをコフィンが生成した武器で振り払おうとした時、鈴の音が鳴った。

 

 魔法少女鈴神の力は、ほんの一瞬魔力を乱す。

 それだけで、コフィンは武器の機能を一時失い、無手の状態へ強制的に強いられた。

 本来、乱される程度のそれが、完全に消えたのは生成方法によるものだろうか。そんな疑問を抱くより前に、その場の全員がコフィンの意識を刈り取らんと動いた。

 

 

 

 ◆

 

 漫画とかで、拘束されるシーンがあると思う。

 手錠とか縄とか。

 後は、ベルトの様なもので固定されるとか。

 

 で、例えば、何かしらの超常的な力を有する人間が出て来る漫画とかだと力の源を封じる特殊な素材が使われている、なんてことがある。

 この世界の魔法少女で言えば、変身できないとか、だろうか。

 あるいは、魔法体の魔力を吸い取ってしまうとか。

 

 じゃあ、答え合わせ。

 魔力で武器を試しに生成してみても、うまくいかない。

 魔力が吸い取られている気配はない。

 ただ、強制的に霧散させられているようだ。

 

 と言う事で答えは、魔力散らしちゃうぜ布で縛られるでした!

 

 うん。そうだね。摑まったみたい。

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