TS転生した俺は魔法少女になれないらしい   作:環状線EX

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初討伐!

 

「なあ、変身ってどうすんの?魔法のステッキってどう出すの!?」

「へ?」

 

 カゲが成功したとかいうから、「変身!」とか言っても変身できないし、「いでよ」とか「来い」とか言って見たけど全然ステッキが出ない。

 なんで呆けた顔してんだよ。え、なんでぬいぐるみにプリントされたような顔で表情作れんの?

 

「魔法少女になれたんじゃないの?」

「待て待て。さっきからその魔法少女ってのはなんだ?」

 

 頭と胴がつながっているくせに器用に首を傾げられる。

 まさか、知らないとは言わんよな?

 

「ああ、そうか。名称が違うのか。ほら、こういうの」

 

 取り出したスマホで魔法少女の写真、動画、情報を見せる。

 術者とか言ってたから、呼び方が違う可能性は大いにある。

 

「いや、知らん。既存の儀式構造を応用して巫女としての役割を変質させたものだろうが、こんなものは我の時代にはなかった」

「は?」

 

 待てよ。じゃあ、なんでここへ繋がる紙が初期リス地点にあんだよ。

 無関係なわけないだろう。

 

「それに、真似をして似たようなことはできるが、キサマは魔法少女とやらにはなれぬぞ」

「え?なんで?」

「原型が巫女である以上生娘でないといけない」

「いや待て、経験してるのか?この身体」

 

 待て待て、コンセプトとしては彼氏が途切れない女だが、プレイヤーとしての俺がプレイする前に自キャラがプレイしているとか有り得ねえだろ。

 大体、コンセプトとしてこんな設定にしたが、リアルなら黒髪清楚美少女が俺は好きなんだぞ。俺の魂は童貞なんだ。そんな事実は受け止められない。

 

「いや、体は正真正銘生娘だ。だが、魂がそれと対を成している」

「魂?」

 

 身体は処女だけど魂は生まれながらにってこと?

 いや、違うか。

 多分、俺の男の方の魂の事だろう。

 恐らく、こいつには俺の魂に備わった珍棒と〇玉(キャンタマ)が見えていると言うことだろう。

 でも、これじゃあ〇玉(canタマ)じゃなくて×玉(can'tタマ)だよ……。

 

「恐らく素質としてはこれ以上ないモノだ。本来なら家から出た瞬間に勧誘が来てもおかしくない」

 

 マジかよ。

 じゃあ、正規ルートはやっぱり登校中にピンチになって変身!ってこと?

 あるいは勧誘されて「ちょうどいい。あのインベーダーを倒してみよう」とかって感じだろう。

 

 

 

 

 ◆

 

 魔法少女になれないことに落胆しながらも、俺は帰りの新幹線の中でカゲと色々と話をした。

 無論、声は出していない。

 テレパシー的な便利機能だ。

 鞄にカゲを突っ込んでチャックを閉めて会話ができるなんて便利なものだ。こいつ呼吸しないしな。

 流石に見た目ぬいぐるみのこれを抱えているのは恥ずかしいしな。

 行きはともかく帰りは新幹線の自由席座れなかったし、抱えて立つのは目立つ。

 

 とまあ、そんなこんなで色々と分かったことがあった。

 まず、俺はカゲにスマホを渡して情報をインプットした。

 現代の常識を最初から教えつつ話していれば、いちいち引っ掛かりを覚えるだろうと考えたからだ。

 そして、暫くした後奴は手慣れた手つきでSNSをしていた。つーか、スマホ反応すんの?と聞けば、静電容量の変化が出来るとかなんとか。

 日本語で頼むわ。

 

 ──大体、カゲ。現代知識の呑み込み早くない?

 

 もはや使い慣れたテレパシーで鞄の中のカゲに話しかける。

 情報処理以前にいちいち検索して知識を得ると考えれば検索だけでも日が暮れるだろう。

 それなのにこいつはSNSまでいじっている始末。俺はSNSをやってないので、すでに現代人レベルはカゲの方が高い可能性もある。

 そう思ったのだが。

 

 ──いや、大体の知識自体はキサマの記憶から読み取った。

 ──えっち。……いや待て、何処まで読み取れるんだ?

 

 前世の記憶とか言わんだろうな。

 

 ──そう大したことはできない。キサマがどんな生活を送って来たかは知識量を見えれば察することはできるが、我の力は一般常識を知れる程度で記憶を閲覧できるものではない。

 

 よく考えたら口止めも出来るし、態々隠す必要もないがそうか。

 あくまで常識的な知識だけを汲み取っていると言うわけか。

 

 ──ん?待てよ。なら何で、言わなかった?

 ──……少し興味があったのだ。

 ──何か企んでるんじゃないだろうな。取りあえず、今後の俺に命に関わることとか取り返しのつかない事とかで害になるようなことは禁ずる。

 

 すべて言いなりでは、それはそれで居心地が悪いと思いつつも条件を追加する。

 まあ、「誓約」の効力で命を取れなくなったことを考えると必要ないかもしれんが。

 新幹線から降りて、なおもスマホを触るカゲを見てこいつはほんとにスマホが楽しいだけだと実感した。

 そりゃあ、活動していた時代が違えば依存症はまっしぐらか。

 

 ああ、それでカゲと話して分かったことだった。

 まず、簡単なとこから。

 俺が先ほど行った「ついの村」と言うのは漢字で書くと「終ノ村」と言うらしい。

 なんだか怖いね。と言う事で少しカゲの情報を踏まえて推測したことがあった。

 

 カゲに寄れば、もし俺が転生者でなかった場合。

 要は通常のプレイヤーとして生きていた場合に魔法少女へなる手段は探すまでもなく彼方からやってくる。

 家を出ればアンケートを取られるよりも早く魔法少女の勧誘に使い魔が現れる。

 

 で、正規ルートがそうであればあのクローゼットにあったついの村への情報が書かれた紙は何だったのかと考えた。

 一つ思いついたのは、恐らく終盤、最悪ラスボスへとつながる手掛かりであったのではないかと言う事だ。

 

 ここで新たな情報だ。

 カゲは当初想定していたプレイヤーの先祖の従魔とかではなかった。

 カゲはそう言い、さらに付け加えるならば仇敵とも言える存在だった。

 プレイヤーの先祖が死闘の末に封印してあの場にいたと言うわけだ。

 そりゃ、頭も割られる。あの影を割るってどうやるか知らんが。

 

 そして、カゲが魔法少女について造詣を深める中で、奴はこう言ったのだ。

 『キサマに捕まってなければ復活を遂げた後、インベーダーを利用し人間の一人でも使って魔法少女技術を模倣しただろうな』

 それで俺はピンと来たわけだ。

 カゲはこのゲームのラスボスとして用意されていた、と。

 多分闇の魔法少女とか作ってプレイヤーたちを苦しめるのだろう。

 

 で、そんなカゲへと続く情報はゲーム開始時に見つけることが出来る怪しげなアイテムとつながっていた。びっくり!と言うわけだ。

 まあ、俺の予想が正しければシナリオを変えてしまったわけだけど、世界の平和を守ったと言う事で許してほしい。

 大抵の漫画やゲームが結局あのイベントが無かったら人類滅びてたよね、みたいなのが多いから不安もあるけど……。

 まあ、やばそうだったらカゲを段ボールにでも入れて社に返しに行こう。

 

 

 

 

 ◆

 

 日は跨ぎ、今日も今日とて学校だ。

 そして、通学路にはインベーダー。

 金曜の俺なら絶望してただろうが今日の俺は一味違う。左右に移動してビーム砲をぶち込んでやる。

 

「ビームは出んぞ」

「マジかよ」

 

 かっこよくポーズをとってみるもカゲからのそんな言葉しか返ってこなかった。

 続いてインベーダーの攻撃を何とか転がるように躱した。

 今回のインベーダーは虎型だ。いや、型と言うと違うか。

 ベースは虎だが、頭は三つあってくそデカい。

 外来種のインベーダー君は「虎」と言われてきっとこれを出すのだろう。

 すでにAIに負けてんじゃねぇか?

 

 まあ、それはともかくカゲと契約したとはいえ油断したら普通に死ぬ。

 足は止めずに、出来るだけ背後に回り込むように移動する。

 だが、ダメか。

 カゲの時は思考能力を有しているが故の作戦の成功だった。それを考えると知能のないインベーダーの方が厄介だ。

 

「ビームがないなら、他は?」

「そうだな。エネルギーの吸収なら。インベーダーは体のすべてがエネルギーで出来ている。効くはずだ」

 

 なら、それで行こう。

 攻撃を避けつつ、取り出したハサミで前髪を切る。

 

 ──パチンッ

 

 ハサミの締まる音と共に俺だけが逆行する。

 少し色気づいた小学生女子が自分で切って失敗しても安心のこの現象は俺の命までも守ってくれる。

 それと、試した結果カゲも契約のせいかついて来る。

 

 何とか、腕の振りを避けて、そのまま背中に触れる。

 

「カゲ!」

「わかっている!」

 

 その瞬間、エネルギーが触れた手のひらから伝ってくるとわかった。

 そして俺が吸収した分だけ、インベーダーは自壊するようにその体積を減らしていった。

 インベーダーが次のモーションに入る前に行動不能となり、完全にエネルギーとなって姿を消した。

 

「ふう」

 

 どっかと俺は尻もちをついた。

 ケツが痛てぇ。とは言え、いつも泣かされていたインベーダーに勝った記念すべき瞬間だ。

 

「そういや、吸収したエネルギーってどこに行ったの?」

「本来ならキサマを経由して我の体内に貯蔵しようと思ったが貴様の身体が吸収したようだぞ」

「それって最終的に破裂したりしない?」

 

 まん丸になって風船のように割れるのをイメージする。

 

「いや、それはないだろう。大体、キサマの身体ではキャパオーバーだと思ったから我の身体へ送ろうと思ったが、それがないと言う事はキサマの身体でも許容できると言う事だ」

「よくわからんがまあいいか」

 

 一息ついたところだったが、登校途中だった。

 遅刻しないうちにさっさと行こう。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 魔法少女と言う存在がこの世界に及ぼした影響は多い。

 その筆頭が彼女らをサポートするために作られたアイテムやサービスだ。

 一つ例を挙げるなら魔法少女御用達とも言える「魔法少女NET」と言うアプリだ。

 

 このアプリは魔法少女ランキングを見たり様々な特典を受け取ることが出来る。

 そんな中に「使い魔収納」と言う機能がある。

 それは、契約した使い魔に対して学校だとか仕事だとかで「鞄の中に隠れていてね」的なイベントを回避することが出来る超便利機能だ。

 よくわからない凄い技術でスマホアプリの中に使い魔を収納できるとなれば驚きだろう。

 最近のゲームに登場する便利アプリってこういうの多いよね。

 

 とは言え、その代償か、くそほど容量を食う。

 某悪魔を召喚するプログラムを見習ってほしいものだ。10MBだぞ。

 

 とはまあ、そんな有難い機能を使うことで俺は学校でカゲを鞄に詰め込むことなく生活が出来ている。

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