TS転生した俺は魔法少女になれないらしい   作:環状線EX

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にんにん!

 

 魔法少女統括管理委員会におけるランキングはA級までにしか適応されない。

 最高戦力と言えるS級には順位が存在しておらず、細かな優劣が付けられるのはA級までと言えた。

 そんなランキング制度の評価基準は平時のインベーダーの撃破数と滿汐時の貢献度が加味され、月末締め、翌月5日に反映される(滿汐時例外あり)こととなる。

 インベーダーの脅威度と数は独自に点数化されており、滿汐の評価は会議により決められる。

 

 では、滿汐を除きランキングを上げるために有力な方法として存在するのは、大きく分けて二種だ。

 一つは、脅威度の高いインベーダーを倒すこと。

 そして、もう一つは数、それも大量のインベーダ―を撃破する方法だ。

 

「とは言え、数をこなす戦略に出たとしても、机上の空論。実際、一人の魔法少女が行うには現実的な量ではない」

 

 カゲはそう言う。

 

「だが、A級1位。赤鞘(アカサヤ)はそれを成す。魔法「朱鎧」によって傀儡を作り出し、自ら手を下すことなく大量のインベーダーを狩る」

「じゃあ、この鎧は……?」

「赤鞘の物だろう」

 

 「魔力で構成されているわけではなさそうだし、本当にただのリビングヨロイじゃないの?」と聞けば、「特性の鎧を作成したうえで魔法を発動させているためそれはない」と言われた。

 それに、家紋みたいなマークがついていてカゲによると正真正銘のそのものと言う事らしい。

 

「つーか。お前が、言ってたのって」

「ああ。これの事だ。魔法少女と言う存在が公になる今でも、日常的に魔法の産物を見ることのできる珍しい場所だからな」

 

 つまり、魔法少女が身近にあっても、一般人はあまり見ることのできない魔法と言うものを身近で見ることのできる数少ない町と言うことらしい。

 で、パトロールしていた和風鎧を俺が斬ってしまったと……。

 

「魔法少女と言えど勝手にパトロールさせるのはどうなん?」

「無論、法的にも許されていることだ。どうにか、自分を正当化しようとしているのだろうが、無意味だぞ」

 

 ま、いいや。

 どうにか何だろ。知らんけど。

 

「なんか、気配がこっち向かってきてないか?」

「喧嘩を売られたんだ。赤鞘の行動は想像に難くないだろう」

 

 恐らく近辺にいる鎧がこちらに向かってきているだろう。

 認識阻害をかけているから、人目があっても別にいいが、赤鞘はこんなに大々的に動くのかよ。

 

 視認できるだけで、三体。見えないが周囲の奴らも合わせた七体か?

 密集し過ぎじゃないかと思いながらも、結構バリエーションがある。

 スピード特化、重量級、異形型。まあ、どれも赤い鎧を模したようなデザインであるのは共通しているか。

 

 スピード特化は、なんかシノビみたいだ。

 正面を、囮にした背後からの攻撃。挟まれるが、まあ、普通に防ぐ。

 弧を書くように刀を振り抜き、二体を割る。

 相撲レスラーみたいなやつが追い付いて来るも、俺のジャパニーズハリテで吸収を発動する。

 

「ん?」

 

 ──恐らく物質自体は魔力で構成されてないのだろう。既存の物質に対して時間をかけて魔力を練り込んだ代物だ。

 

「なるほどね」

 

 なら、そのまま手を付けた位置から黒武器を内部から生成させて、貫いた。

 少し調整をミスって、自分に当たりそうになって首をかしげるように避けた。

 そして、まだいる。

 猿みたいなやつだ。電柱や建物を伝って、機動力を得ているのか、多角的に攻撃してくる。

 とは言え、まあ、こいつらの対処はそう難しくない。

 突っ込んでくるのをいなして、切り伏せるだけだ。

 体感だとシノビの方が強い。

 

 ん?

 猿に気を取られていると妙な気配を感じる。

 反射的に、首の後ろに刀を移動させれば、火花が散った。

 

「魔法少女か?」

「っ」

 

 猿、と言うか、シノビ型に紛れていたのだろう。

 リビングヨロイと似たような色合いの深紅の防具を身に着けている。

 

 ──あれが、赤鞘か?

 ──いや。確かあれは……。

 

 カゲが何かを言う前に、またも攻撃が迫る。

 だが、今度は俺ではなくカゲにだ。

 

「一般人にも手を出すのか?」

「お前が連れている。そして、今の今まで逃げようともしない。それが一般人か?」

 

 うーん。確かに違うかも。

 しかし、カゲは影木うるしとして一般人に徹している。今の攻撃を俺が防いでなきゃ当たっていたんだが。

 

「……ところで、そっちは何?赤鞘の友達?」

「私ごときが、赤鞘様のご友人なわけないだろう」

 

 どんな謙遜だよ。

 なんか、悲しくない?それ。

 

「じゃあ、なに?」

「赤鞘様の手を煩わせるお前を、私が先に排除しに来た」

「あ、そう」

 

 そんなことを言われてもなぁ。

 別に俺も戦いたくないんだけど。と言うか、よく考えてみたら魔法少女同士が戦うのって駄目じゃない?

 いや、ちょっとしたのはあるかもだけど、マジ殺しはダメな気が……。

 なんか少し前にあったいざこざは恐らく秘密混成部隊とか言う表向き存在しない部隊だったからそう言う事してたと思うし。

 

 まあ、今はそんなことを考えている暇はない。

 今の一連の動きはしかりと俺の目に焼き付いているが、カゲへの攻撃の際に目の前のコイツは動いていなかった。

 そして、カゲを攻撃したのはこいつと瓜二つの少女だった。

 双子、とは言わないだろう。

 恐らく、魔法。それも、分身を作り出す類のもの。

 

 一瞬にして、実体を消した分身の発動条件は分からない。

 俺たちの背後から分身は現れた。

 それを考えると少なくとも、奴の半径数メートル以内に出現させることが可能と言うことになる。

 だが、そうなると分身と言う脅威以前に、俺の背後すれすれに出現させて刃物をあてられれば、容易く攻撃は入ってしまう。

 

 もう一つの考えとして、あらかじめ設置していた可能性もある。

 その辺の鎧と紛らせて設置したか、遠回りしてきたか。

 出来れば、後者の方がありがたいが。

 

「そう都合よくはいかないか」

 

 現れたのは、眼前。

 手に持ったクナイが迫る。それと同時に手裏剣のようなものが飛来する。

 刀を短刀に生成しなおして、対処する。

 手裏剣の方が先に到達して、それをはじく。

 クナイには間に合わないと見切りをつけて、クナイではなく胴に蹴りをぶち込む──いや、叩き込んだはずの脚はすり抜ける。

 それに疑問を抱く前に迫るクナイに身体を捻り、空中で半ば回転しながら弾いた。

 身体が宙に浮いたタイミングで彼女が指を動かす。ワイヤーか何かがついていたのだろう。背後に移動していた手裏剣が方向を転換して俺に迫った。

 

 間に合わない。

 

 そう判断した瞬間に、ピンポイントで盾が生成されて寸でで防ぐ。

 

 ──助かった。

 ──気にするな。

 

 カゲがバレない最小限でガードしてくれたのを察して感謝する。

 そのまま、距離を取って相手を観察する。

 

 奴の魔法は、分身を作り出す、これは確定。

 分身の出現可能場所は、恐らく彼女からの一定距離内。

 視覚内と言うのも考えたが、分身を出現させる一瞬、視線を敢えて動かして俺を誘ったが、実際に現れたのは眼前だった。それを考えるとその可能性は消える。

 そして、一番の特記事項は、奴の身体に実体がないと言う事。

 奴の、武器には実体がある。彼方が、武器でしか攻撃でないだけに攻撃は読みやすく、分身との見分けを付けることができる。

 だが、逆に言えば、こちら側から干渉できるのは武器だけだ。

 

 マジでめんどくせぇ。

 こいつ一人の対処はともかく、カゲを影木うるしとして擬態させながらの戦闘が途方もなくめんどい。

 いや、こいつも認識阻害かけているから、いっそ構わずやるか?

 

 そんな思考をしていたせいだろうか、少女の動きに出遅れた。

 自身への攻撃であれば、対応できてもカゲへの攻撃であると一瞬遅れる。

 本来、カゲもこれくらい簡単に対処できるだろう。

 だが、影木うるしは違う。

 敢えて受ける。そして、薄皮一枚切れる。

 それだけだ。

 

 だが──

 

「っ!?」

 

 変に血が上ってしまったことを反省する。

 カゲが見かけ上傷を負っても別に大したことはない。

 だが、俺の身体は奴の様々な手を無視して、最短で首に武器を沿えた。

 

 ああ、まずい。

 魔法体は一度命を守る。だが、俺のこの少女の首をかき切りそのまま刃を添えていたら生身の少女の首も切れてしまう。

 自身の行動を自制して刃を納めようとした時、俺の足元に一本の矢が刺さった。

 

「ん?」

 

 よく見れば、何かがくくりついている。

 紙か?

 なになに。

 

「これ」

「……こっちだ」

 

 矢にくくりついていた紙を広げてシノビ少女に見せると苦々しい顔をして、俺たちを先導した。

 

 ──なんて書いてあったんだ?

 ──やつらのボスが根城においでよってさ。

 

 シノビ少女は単独で俺を撃破しようとして、此処まで来たが、彼女のボスは俺をお呼びらしい。

 となると、赤鞘の魔法で動いているだろう鎧も俺に襲い掛かって来た気がしたが、まあ、オートなんだろう。

 

 連れてこられた場所は、道場のような見た目をしていた。

 まあ、内装はと言った方がいいかもしれない。

 外装はなんか、豪華な感じだ。ファンタジー感のある。

 

 そのまま入っていくとまず目についた少女がいた。

 サムライキャラって感じだ。

 和風な感じの衣装をまとった少女がいる。彼女が赤鞘だろうか。

 そして、脇に立つのは弓の様なものを持った少女。こっちが、先ほど矢をうってきた方だろう。

 

「───」

 

 赤鞘が、何かを発そうとした。

 それは、彼女の息遣いだけで分かった。

 今の一瞬で注目を集められる。そんな人物なのだろう。

 

「よ、よくぞきたっ!あ、貴方がわたぬ……私に挑もうとする挑戦者しゃん……さんねっ!」

 

 気取った喋り方。

 滅茶苦茶噛んでる。

 なんか、違ったみたい。

 

 顔赤くなっている。

 

「えーと。魔法少女コフィン、貴方が赤鞘?」

「そ、そうで……そうだっ!」

 

 そうらしい。

 だが、こいつがA級1位には見えない。

 いや、漫画とかで実力者が以外にも、弱そうなキャラとかあるあるだしおかしな話ではないか。

 多分、こういうタイプは「ふぇ~強い敵さんいっぱいだよぉ~」とか言いながら、適当にステッキを振り回すだけであたり一帯が焦土と化すタイプだ。

 

 あ、転んだ。

 今の、転んだ時に地面が消し飛ばなかったから、そう言うタイプではないかも。

 

「赤鞘のタイプ気になるな」

「え?」

「え?」

 

 無意識に口に出ていた。

 つーか、なんでみんなしてそんな反応すんだよ。

 赤鞘本人もそうだが、シノビと弓の子。あと、何故かカゲも言葉には表せない顔をこちらに向けている。どんな顔だよ。

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