切れば良いのだ、何事も!   作:葛城

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※ ちょいえちぃ表現あるかも


第9話: 広いようで意外と狭い世間

 

 やあ、夏休みがもうすぐ終わろうとしているので、地味にペースをキツクしている小山内ハチです。

 

 

 ひょんな事で、なんか同居する形になったレイダ……謝られてしまったから、今後は名前を呼ぶことにしたけど、レイダも色々と頑張っている。

 

 正直、僕もほとんど初対面の相手に言い過ぎだなって思って謝ったのだけど、僕が謝ると立つ瀬が無くなるから謝らないでと言われてしまった。

 

 そう言われてしまうと、僕の方こそ立つ瀬が無くなるというか……いや、止めよう。

 

 こればかりは、最初に怒った僕の方に非がある。

 

 レイダの言う通りだとして、彼女の方に落ち度があるにせよ、彼女の内心を聞く前に一方的に怒鳴りつけたわけだし。

 

 その点に関しては、僕の方からも頭を下げた……で、だ。

 

 それで、この話はお終いにしたわけだけど……それから、僕は改めてレイダと話し合って、取決めというか、ルールを設けた。

 

 これは一見すると僕だけが負担するように見えるけど、ところがどっこい、そういう話ではない。

 

 ていうか、そういう話とか以前に、僕は思い違いをしていた。

 

 僕が思っている以上にレイダは肝が据わっていて、僕が思っている以上に僕はヘタレだったってことに。

 

 

 ……そうだね、何も分からないだろうから、軽く説明をするね。

 

 

 これはレイダと行動するようになって4日目ぐらいから分かって来たのだけど……レイダが話していた自身の超特殊体質、相当に荒事向けだったのだ。

 

 具体的に言うなら、とにかく肉体が強いというか、フィジカルがヤバい。

 

 代償として人一倍お腹が空いてご飯を食べるっぽいのだけど、それでも人によっては喉から手が出てしまうぐらい、とにかくフィジカルがヤバい。

 

 なにせ、明らかに僕の体重よりもありそうな大岩を軽々と持ち上げるのだ。そのうえ、それをおもいっきり放り投げても、ケロリとしている。

 

 反射神経も常人のソレじゃなく、なんかモンスターが放った矢を、あっさり片手で掴んで止めた……といえば、想像できるかな。

 

 そんだけ反射神経があるわけだから、全体の動きもめちゃ素早いわけ。そして、握り締めた拳も滅茶苦茶硬くて強いの。

 

 初めて見たとき、自分の目をマジで疑ったね。

 

 だって、拳でモンスターを殴り殺しているんだもの。

 

 最初はバットとか使えって言ったけど……バットが、レイダのパワーに耐えきれなかったんだよね。

 

 木製バットだと一撃で確実に折れちゃうし、金属バットでもあっという間に変形しちゃうし、だいたい途中で折れ曲がっちゃって、逆に使いにくいってことになって。

 

 結果、素手で殴った方が早いってことになったんだよね。

 

 実際、下手な武器をレンタルするより、レイダ自身の拳の方が強いんじゃねってことが分かったわけだし。

 

 もうね、マジでえげつない。

 

 なんで、こんなえげつない人材がこれまで見過ごされていたのか、僕は心から不思議に思えてならなかった。

 

 まあ、レイダ曰く『普通の量のご飯だと、こんなに力が出ない』ってことらしいのだけど……さもありなん。

 

 

 まあ、それはそれとして。

 

 

 なんか、レイダも日を追う事に自分の強さというか、自分の超特殊体質を実感というか、理解を深めているようで。

 

 最近だと、モンスターからこん棒で殴られてもケロッとした顔で、最初の頃はあんなにビクビクしていたのが演技だったのではと思うぐらい、様変わりしていた

 

 あ、ちなみに、そのモンスターはゴブリンって名前なんだよ。

 

 基本的には小学生ぐらいの背丈で、こん棒片手に襲い掛かってくる人型モンスターだけど、たま~に弓矢を使ってくるタイプも居るから、ダンジョンでの初見殺しって言われているんだ。

 

 

 ──で、話を戻すけど、レイダは体力だってヤバい。

 

 

 4日目の時点で、ダンジョンに行けるようになったその日からダンジョンで金稼ぎをしている僕よりも、余裕を見せていた。

 

 7日目の時点で、なんかもう全体的にふっくらし始めていた。

 

 言っておくけど、デブになったとかそういうのじゃない。

 

 なんと言えば良いのか、それまでは痩せ形で髪さえ誤魔化したら、後ろ姿は男の子に見える……といった感じだったのが、7日目にはもう、そうではなくなっていた。

 

 ハッキリ言うなれば、誰が見ても、女の子にしか見えない体形になっていた。

 

 肋骨が浮いていた胸は、乳房と呼べるだけの膨らみができていて、うっすら骨が浮いていたお尻も、明らかに女の子のソレになていた。

 

 

 ……なんで、分かるのかって? 

 

 

 そりゃあ、一緒の布団で寝ているからだよ。

 

 僕としては、別々の布団でって言われたんだけど、布団代が勿体無いってからって言われた。

 

 当然、僕は怒りました。ええ、怒りましたとも。

 

 男だと思っていないからそんな事を言うんだろ、次にナメたことを言ったら、夢見が悪いとか関係なく叩き出すぞ、と。

 

 もちろん、言葉だけじゃないっすよ。こういう馬鹿にはね、態度ではっきり示さないと駄目なんすよ。

 

 冗談じゃなく、僕はスパッとその場で服を脱ぎました。

 

 文字通りのフルチンスタイル(フリチンの上、全裸)になって、その場でチンを扱いて立たせましたね。

 

 冷静になって考えると、ものすごくマヌケな構図っすよね、後で自己嫌悪しました。

 

 まあ、とにかく、怒りに血がのぼった僕は、大して自信があるわけでもないチンを勃起させて、ズイッと突き出したわけですよ。

 

 それでね、ズバッと言ったんです。

 

 

『あんた、これと一緒に寝るつもりか? その気も無いのに半端な遠慮なんぞするな!』って。

 

 

 そしたら、レイダは……いや、駄目だね。

 

 レイダなんて呼び捨てできない、レイダさんは、何をしたと思います? 

 

 

『馬鹿にしないで! 覚悟もしないで一緒の布団に入ったりしないわよ!』

 

 

 そう、怒鳴り返してきたんですよ、これにはね、さすがの僕もビックリしました。

 

 でも、それだけで終わらなかった。

 

 何をしたかって、レイダさん……なんと、その場でパパパッと服を脱いじゃったんですよ、止める間もなく。

 

 これには、僕もギョッとしてしまって……と、同時に、見惚れちゃったんですよね。

 

 

 いや、だってさ。

 

 

 この時のレイダさんって、ジャージが明らかに体形に合っておらず、手首足首の肌が見えていて、七分袖のジャージみたいになっていたんだよね。

 

 なんでかって、レイダさん、日に日に目に見えて変化していたから。

 

 そう、七分袖みたいになるってことは……身長も、伸びているんだよね。

 

 最初の頃は僕よりも少し目線が高いなってぐらいだったけど、10日目の時点で、ちょっと見上げる必要があるぐらいになっていたわけよ。

 

 だから、キモいエロ野郎って言われたらそれまでですけど、無理ですって。

 

 僕だって男なんですから、目の前に裸になった女性が立たれたら、視線が動いちゃいますって。

 

 せめて隠してくれたら良いんですけど、レイダさん、隠さないんですよ。女の子の胸になった上も、毛が生えている下も、まったく隠さない。

 

 加えて、レイダさんは、アレですよ……自分の私物入れにしてある100均で買った箱から、ボトルを取り出したんですよ。

 

 それが何なのかは知らないですけど、レイダさん……そのボトルの中の液体を手に取ると、それを……その、女性のアソコにべチャッと塗ったんです。

 

 なんていうか、すごい卑猥な音でした。

 

 ぬちゃぬちゃ、ぴちゃぴちゃ、って。

 

 それから、レイダさん……ポイッてボトルを投げ捨てると、僕に向かって両腕を広げて……こう言ったわけです。

 

 

『取引とか、そんなのじゃない。アタシは、ハチくんになら抱かれてもいいっていうか、抱きたいなら全然OKだよって本気で思っているの!』って。

 

 

 これにはね、僕も本気で面食らいました。

 

 だって、出会ってまだ一ヶ月も経ってないわけで。

 

 初めからソレ目的ならともかく、まさか、一目惚れされていたとか……いや、まあ、どっちでもいいわけで。

 

 

『ちょ、ちょ、そこまでしなくていい! そんなことしなくても、追い出したりしないから!』

『言ったでしょ、取引とかじゃないって! アタシは、ハチくんとならSEXするよって言ったの!』

 

 

 ジリジリと近付いてくるレイダさんに、僕は逃げようにも逃げられなかった。

 

 だって、裸だから『部屋』の外には出られないし。

 

 その『部屋』だって、大して広くないし。

 

 あと、今ではもうレイダさんの方が色々大きくなっちゃっているし。

 

 

『待て、待って! 自分を大事にしなよ! こんなのが初めてとか嫌でしょ!?』

『女に夢を見過ぎだよ、ハチくん! だいたいの女が気にするのはシチュエーションじゃなくて、誰に抱かれたかってことだから!』

『え、えぇ!?』

『大丈夫! お互い初めてだから! 一緒に頑張ろうね!』

『待て! 待って! 分かった! 分かったから!!』

 

 

 もうね、心臓が止まるかと思った。

 

 なんとか宥めすかして、今後もしも気持ちが変わらなかったら……っていうことで、なんとかその場はお流れになった。

 

 もちろん、服を着た後で思ったよ。

 

 

 すっっっっっっごく、もったいないことしたかもぉぉぉぉおおおおおお…………ってね!!!!! 

 

 

 でもさ、なんか嫌なんだよね、こういうの。

 

 だってさ、いくら当人がそうじゃないって言っても、状況的には……生活の基盤を、僕が支えているわけよ。

 

 そう、レイダさん……う~ん、レイダは、そりゃあ日に日に元気になって強くなっているし、大岩を投げ飛ばせるぐらいになったわけだし。

 

 

 ──ぶっちゃけると、管理センターで部屋を借りた方が良いんじゃないのかって、思わないわけではない。

 

 

 最初の頃こそ警戒心バリバリ&栄養失調&手持ちほぼ0でどうにもならなかったけど、今はもう借りるぐらいはできる。

 

 ていうか、食費の事を考えると、そっちの方が絶対お得だし、僕に気を使う必要も無くなるんじゃね……って、思ったんだけど。

 

 

『……やだ』

『え、なんで?』

『他の人、嫌い』

『どうして?』

『今まで見向きもしなかったのに、ちょっと見た目が良くなったら何食わぬ顔で近付いて来るの、虫唾が走るから』

『そりゃあ、見た目が良くなったら人が寄ってくるのは当たり前でしょ』

『私の見た目が悪くなったら離れていくってことじゃん。ハチくんと一緒がいい』

『……まあ、僕も1人でやるより2人の方が賑やかだから、いいけど』

 

 

 なんか知らないけど、レイダってけっこうな人間不信だったみたいで、その分だけ稼ぐから私を捨てないでって逆にお願いされてしまった。

 

 僕が言うのもなんだけど、他人が聞いたら誤解をまねきそうな発言だ。

 

 まあ、レイダのおかげで、僕も地下3階とか地下4階とか行けるようになって、収入が以前より段違いに上がった。

 

 ひとまずの学費代とかも工面できそうだし、レイダが望むなら構わなかったのだけど。

 

 

 ……あ、そうそう。

 

 

 さっきも話したレイダの食費なんだけど……値段安めのチェーン店での朝食ですら、毎回5000円は余裕で超えるんだよ。

 

 なんでかって、同じのばかり食べていると途中で飽きるから。

 

 やっぱりさ、サイドメニューとかも頼むから、けっこう普通に超えるわけよ、漬物とかサラダとかも食べたくなるのは当然なわけ。

 

 朝食だけで、それだから。お昼とか夜は、もっと掛かる。

 

 値段安めチェーン店より少しグレード高めなお店に行けば、10000とか余裕で超える。焼き肉とかは、食べ放題以外は怖くていけない。

 

 実際、夜にラーメン食べに行ったら、替え玉含めて17杯も食べて、餃子(3人前)に炒飯(大盛り)にから揚げ(10ヶ)を食べても満足げな顔をしていただけだったし。

 

 その合間にオヤツとかも買うわけだから、食費だけでも毎月50万とか60万とか掛かるんじゃないかなって。

 

 

 ……そりゃあ、一般家庭では気付かんわ。

 

 

 見た目は長身な女の子なのに、大食いタレントなみの量を毎日食べないと超特殊体質を発揮できないとか……普通は、気付けんよな。

 

 せめて溺愛されていたならともかく……まあ、そんなわけで、ある種のペースというか、リズムというか、そういうのが出来上がりつつあった頃……ついに、その時は来た。

 

 

「……それじゃあ、僕は昼間学校に通うけど、レイダも一旦は家に戻るの?」

「うん。出席足りてないから留年していると思うけど、アタシだけ学歴が中卒っての、嫌だしさ」

「それを言い出したら、僕だって退学届出されている可能性があるんだけど」

「そしたら、アタシたち中卒コンビで頑張ろうよ」

 

 

 ──良くはないんだろうけど、それでもいいかなって、ちょっと思った。

 

 

「じゃあ、基本的には17時に管理センター集合ってことで」

「うん、それじゃあ──あ、ハチくん」

 

 

 『部屋』を出て、互いに背を向けようとしていたところで、レイダから声を掛けられた。

 

 振り返れば、「そういえば、ハチくんってどこの学校に通っているの?」って聞かれた。

 

 ……本当にそういえばなんだけど、言ってなかったな。

 

 

「大台学校だよ。○○駅から降りて、徒歩で15分ぐらい歩いたところの」

「え? 大台高校?」

「ん? どうしたの?」

 

 

 特に隠す必要もなかったので、素直に答えた……のだけど。

 

 

「アタシも」

「え?」

「アタシも、大台高校」

「…………」

「…………」

「……あの、プライベートな事だし聞かなかったけど、何年生?」

「えっと、高校1年生で、入学してそんなに経ってないうちに家出したから……」

「嘘でしょ?」

「その、本当です……」

 

 

 まさかの、同級生だった。

 

 

 

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