切れば良いのだ、何事も!   作:葛城

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※ ちょい、センシティブかも?


第16話: とても、不思議な気持ちになった

 

 

 ──まあ、食べてしまったものは致し方ない。

 

 

 そんな感じで、僕はあっさり気持ちを切り替えた。おおよそ、10秒ぐらいかな、これでも落ち込んだ方だと思う。

 

 捨ててしまったとかならともかく、食べた以上は僕たちの血肉になっているのは明白。

 

 ならば、無駄ではない、その時点で僕にとっては有益な失敗であり、それで健康的に体力もついたわけだから、まあいいか……で済ませられる話であった。

 

 

「…………ズーン」

 

 

 しかし、レイダはそう思わなかったようだ。

 

 外に出ている間はまだよかったけど、『家』に戻ってからは、傍目から余裕で分かるぐらい落ち込んでいる。

 

 いや、口で『ズーン』って効果音を付けているあたり、余裕が……逆かな、余裕が無さ過ぎて変な所でふざけないと気が持たないのかもしれない。

 

 それはもう、このまま布団の中に入って出て来なくなるのでは……そう思いたくなるぐらい落ち込んでいて、食欲も無いようだった。

 

 正直、僕は食欲が出ないというレイダの言葉に、心底驚いた……というか、そこまで気にする事なのかと首を傾げた。

 

 おそらく、レイダが気にしているのは、『自分が食べ過ぎたから』という部分。普段から食べているものが高級品だったというわけだから、気持ちは分かる。

 

 

 まあ、それとは別に、実際のところ、レイダは食べる。

 

 本当に、よく食べる。

 

 

 パクパクモシャモシャと、まさしくそんな感じで好き嫌いせずなんでも食べる。僕の2倍、3倍、4倍……力士かと思うぐらい、とにかくいっぱい食べる。

 

 その事について、僕は何一つ嫌な気持ちにはなっていないし、遠慮してほしいとも思っていない。

 

 さすがに目に見えて日常生活に影響が出るぐらい太り始めたら止めるけど、そうではなく、お腹が空いているなら、お腹いっぱい食べてほしいって心から思う。

 

 だって、ひもじいって、辛いんだもの。

 

 お腹が空いて空いて、それでも食べる物がないから公園の水を飲んで誤魔化したり、スーパーの試供品とかをちょろっと食べたり……その時の辛さを、僕は知っている。

 

 とても、情けなくなるんだよね。

 

 お腹の中を水で満たした帰り道……それでもお腹が空いたって感覚が辛い中で、他所様の家から漂ってくるご飯の匂いを嗅いだ時の、あの泣きたくなる辛さ。

 

 スーパーの試供品とかを食べた時の、店員の冷たい眼差し。もね、『おまえ、どうせ買わないだろ?』っていう目で見られる時の、惨めさ……今でも、胸がキリキリ痛む。

 

 そんなわけだから、僕としてはお腹が空いているのを我慢している姿なんて、出来る限り見たくないわけ。

 

 少なくとも、どこか遠い場所ならともかく、傍にそんな人は居て欲しくない。

 

 だから、そんなの見るぐらいなら、財布の中がスッピンになろうとも僕としては大した問題じゃなくて……という話を、レイダにしたわけだけど。

 

 

「そういう問題じゃないんだよ……」

 

 

 グッタリと、力無く横になっているレイダには、あまり届いていないようであった。

 

 まあ、僕が逆の立場だったなら、同じように落ち込むかもしれないけど……う~ん、とはいえ、どうしたものか。

 

 

(こうなった女の子の慰め方なんて、知らないんだよなあ)

 

 

 言葉で慰めるというのは、もうやった。

 

 なら、言葉以外だが……現状、僕が知る限りレイダが一番好きな行為である『食べる事』が先手で封じられてしまっている以上、もう僕に手が無い。

 

 こういう時、お洒落なモノとかあげたら……いや、そもそも、お金という部分が引き金だから、ここでさらにお金を費やしたら、余計に落ち込みそうだ。

 

 ならば、力いっぱいダンジョンで頑張ってもらう……う~ん、そういう張り切り方は危ないから、却下。

 

 ただでさえ、前のめり気味にダンジョンに向かいそうな感じなのだ。

 

 大した経験があるわけじゃないけど、そういうい前のめりの姿勢は怪我の元。僕は、そういうのには詳しいんだ、伊達にオムツを履いたわけではないのだ。

 

 

 まあ、それはそれとして。

 

 

 実際、そういう感じに気ばかりが焦っている人を管理センターなんかで見掛けた事が多々あるけど、そういう人たちって……だいたい、次に見掛けた時は包帯を巻いていたりするんだよね。

 

 たぶん、中にはもう……ってな人も居たと思う。

 

 原則として、ダンジョン内は自己責任だし。保険とかも、ダンジョン内での死亡の場合は適用外って話らしいし。

 

 そんなわけだから、僕としては、もう打つ手も無いし、勝手に復活するまで待とうかな……と、思っていたわけなのだけれども。

 

 

「……そうだ! ハチくん、おっぱい揉んで!!」

「待って? 何がどうなってそうなったの?」

 

 

 何かしら頭の中で変なスパークでも発生したのか、いつの間にか布団に入っていたレイダが、その布団を跳ね除けて立ち上がった。

 

 いや、布団はどうでもいい。

 

 とにかく、急にテンションを上げて叫んだかと思ったレイダは、これまた僕の言葉など右から左に流すと、パッと……服をまくって、一息に脱いでしまった。

 

 しかも、勢いそのままに、パッパッとブラまで外す。

 

 あまりの早業にポカンとしている僕を尻目に、僕の手よりも確実に大きいと思われる乳房が、ズズイッと僕の眼前へと迫って来た。

 

 おっぱい自体は僕にもあるけど、形が全然違う。乳首の色もそうだし、膨らみ方もそうだし、色々な大きさが違っていた。

 

 

「さあ!」

「さあ、じゃないよ?」

 

 

 勢いが強過ぎて目を逸らす事もできないまま理由を尋ねたら、これがまあ力技というか、そんな結論あるかって話だった。

 

 簡潔にまとめると、要は『身体で支払おう』というやつで。

 

 ダンジョン内での頑張りはそもそも当たり前なので除外、料理云々は僕もレイダも同レベルだから除外、報酬から支払いとかは僕が却下するから除外。

 

 と、なれば、後は身体しか残っていないわけだが、そういうのを盾にしてSEX云々は僕が嫌がるからとして除外。

 

 そう、レイダの方はそれでまったく問題無しということなんだけど、僕がそういう流れは嫌がるから……って、念入りに言われ。

 

 じゃあ、肉で育ったこの身体……おっぱいとかを快く揉ませるのがベターでは……と、考えたらしい。

 

 そんな馬鹿な話あるかって思ったけど、立場的に対等でいたいと思って考えた結果がソレなので、なんとなく、突っぱねる気にならない。

 

 なんとなく、といった話なのだけど。

 

 僕かもし女でレイダの立場だったら、守られる側というか、庇護されるばかりって立場は嫌だなあ……って、ちょっと共感できるから、余計に。

 

 逆に、あれこれ屁理屈を並べて守られる立場を当たり前の事だと思っている人からしたら、理解出来ないことなのかもしれないけど……なんとなく、納得はできた。

 

 

「……正面からだとやりにくいから、背中側からにして」

「前からだと、嫌なの?」

「正直、どこに目を向けたら良いのか分からないから困る」

「好きなだけ見たら良いんじゃないかな?」

「あんまり、からかわないでよ」

 

 

 まあ、異性の胸を揉む経験なんて無かったわけだし、ある意味、役得程度に考えた方が良いのかな? 

 

 色々考えたけど、よく分からなくなった僕は……もみもみと、僕の手より大きいレイダのおっぱいを掴んだのであった。

 

 

 ……正直、言葉にはできない、不思議な温かさと柔らかさだった。

 

 

 そう、とにかく温かい。

 

 今しがたまでブラと服に包まれていたからなのだろうけど、はっきりと温かいと思えるぐらいに、とにかく温かい。

 

 下から支えるように持っても、上から被さるように揉んでも、揺らすようにおっぱいを震えさせても、温かさに途切れがない。

 

 そして、なんとも表現し難い柔らかさだ。

 

 手応えがあるようで、どうにも手応えがない。

 

 いや、ちゃんと詰まっているのが分かるのだけど……ふとした拍子に触れる、ちょっとばかり固いのは……たぶん、先端部分。

 

 あまり力を入れたら痛いだろうなと思って気を付けているが、油断すると力が入りそうになる。とりあえず、レイダは平気な顔をしている。

 

 あと、なんか良い匂いがする。

 

 汗の匂いというか、甘い匂いというか、シャンプーなどの匂いか……なんだろう、生々しい感じがする。

 

 これまでふとした時に感じる事はあったけど、ここまで強く感じたのは初めてだった。

 

 

「遠慮しなくていいよ」

「そう思う?」

「思う、だって手が震えているもの」

「そ、そう?」

「うん、あと、手汗がすごいし、指先まで冷たくなっているから」

「ご、ごめん……」

「謝らなくていい、好きでやってもらっているわけだし」

 

 

 しばらく、そのままモミモミしていると、ポツリと話し掛けられた。そんなつもりはなかったのだけど、とても緊張しているようだ。

 

 誰がって、お互いに。

 

 指をいっぱいに広げると、余計に大きさが伝わる。「F寄りのEカップだよ」そんな僕の内心を察したかのように、ポツリとレイダは呟いた。

 

 

 ……それって、大きいのだろうか? 

 

 

 それとも、小さいのだろうか……たぶん、大きい方なのだろう。

 

 だって、クラスメイトの女子に限らず、街中を歩いている女性に比べて、明らかに大きいように見えたし

 

 

 ……まあ、どっちでもいいか。

 

 

 これに包まれたらさぞ安心するんだろうなあ……と思わせるナニカを前に、僕は……一旦休憩してとレイダから言われるまで、とにかくモミモミし続けたのであった。

 

 

 

 

 

 

 ──さて、と。

 

 

 それから、お互いにちょっと気まずくなり、そのうえで、お互いに気を取り直してから……改めて、準備をしてからダンジョンに向かうことになった。

 

 口座のお金はマイナスになっているが、万が一を考えていくらかの現金は手元に置いてある。

 

 なので、準備することは可能であった。

 

 最初は全て自動的に引き落とされるのかと危惧していたけど、どうやら、そこらへんはちゃんと考えて(?)いるようだ……で、だ。

 

 僕たちは『鍵&家』があるし、僕は無限に生み出せる斧があって、レイダは下手したら素手の方が良い場合もあるから、とにかく頑丈な棍棒を片手に、えっちらおっちら。

 

 魔石探しをしている探索者たちを尻目に、地下1階~地下2階~地下3階~地下4階へと進む。

 

 地下3階あたりから、『え、こいつらマジか……』みたいな目を同業者たちから向けられるようになったが、構うことなく先へ。

 

 

『──プギャァァア!!! ──』

 

 

 その途中、ばったりオークと出くわした。

 

 地下4階のオークは、身長2m50cm近くの巨体で、おおよそ200kgは確実に超えてそうな、ブタ顔の人型モンスターだ。

 

 でっぷりと脂肪を蓄えた腹だけを見ると鈍臭い肥満体に見えないこともないが……当然ながら、そんなわけもない。

 

 少なくとも、普段から運動していない人よりも明らかに速く走ってくる。

 

 近くで見ると威圧感が半端無く、こんなの覚悟無しだったら成す術も無くミンチにされてお終いだろう。

 

 

 ……でもまあ、僕とレイダにとっては、今はもうお金を乗せた肉にしか見えなかった。

 

 

 それは、油断ではない。

 

 危険な相手であるのをちゃんと理解したうえで、もはや……僕たちにとって、『オーク=美味い肉』という認識だった。

 

 だって、まずはレイダだが……既に、4階のオークは敵ではなかった。

 

 『超特殊体質』のおかげで、殴り合いでは100%レイダが押し勝つ。武器を手にしたところで、オークの腕力ではせいぜいレイダの身体を跳ね除けるのが限度。

 

 頭に当てたって、今では『ちょっと、くすぐったい』で終わり。むしろ、ブチ当てたオークの方が困惑して手を止めるぐらいであった。

 

 対して、だ。

 

 レイダがこん棒を……例えば胴体に叩きつければ、ほぼ確実に骨が砕け、肉が潰れ、内蔵が破裂し、一撃で致命傷一歩手前のダメージを負わせられる。

 

 ガードした腕に当てたら、確実に腕が衝撃でねじれて使い物にならなくなるし、足に当てたら立てなくなる。

 

 頭に当てたら、ほぼ確実に即死だ。

 

 大人と子供と言っても過言ではない体重差ですら、物理法則を無視した異常な腕力であっという間にひっくり返してしまう。

 

 ぶっちゃけ、こいつ1人だけで……というぐらい、もはや子の階層でレイダを止められるやつはいなかった。

 

 

 ……それなら、僕の場合は、だって? 

 

 

 あいにく、僕はレイダのように頑丈ではない。

 

 身体は小さく、腕力だって、とてもじゃないけどオークの腕をねじ切れるようなレベルじゃない。

 

 ……じゃあ、何が出来るのか……それはまあ、単純明快。

 

 

「ふぬぬぬぬぬぬ!!!!!!」

 

 

 とにかく、距離を取って斧を投げまくる、それだけである。

 

 本当に、それだけ。

 

 なお、謎のお姉さんが話していたとおり、『戻ってお~の』がパワーアップしているようで、何本も斧を召喚できるようになっていた。

 

 つまり、連射性能アップである。あとは、せいぜい隙を見せたら斧で頭をかち割るだけかな。

 

 もうちょっと他にやり方は無いのかと言われたらそれまでだが、残念ながら、僕にはそんな器用な事ができるだけの頭が無い。

 

 僕は実戦したことがない(できない)けど、対オーク戦法というやつがあるらしい。

 

 というか、オークに限らず、モンスターの特性や弱点に関しては管理センターで知る事が可能で、ほとんどタダみたいな値段で実践的な講習を受けることも可能である。

 

 

 ……じゃあ、なんで僕がそれをしないのかって? 

 

 

 それは、単純に……対オーク戦法に限らず、対モンスター戦法って、多数で取り囲んで機動力を奪いながら仕留める……ってのが基本なんだよね。

 

 冷静に考えたらさあ、当たり前じゃん? 

 

 単純に、自分よりも100kg以上体重差があって、搭載している筋肉量に違いがあって、そのうえ、死を恐れず向かってくるような相手だよ。

 

 どれだけ鍛えた軍人だろうと、そんなやつと真正面からぶつかるわけないじゃん。

 

 だから、チームを組んで1対多数の状態にもっていくのが普通で、僕たちみたいに2人で戦う(地下1階、地下2階ならまだしも)やつなんて……止めよう、この話は。

 

 とにかく、やる事は単純だ。

 

 難しく考える必要など、無いのだ。

 

 とにかく、投げまくる。

 

 距離を詰められたら、斧で頭をかち割る。

 

 こん棒を振られても、拳を向けられても、心を無にして斧で叩き切れば良い、死ぬまで切って切って切って切り続ければ良いのだ。

 

 そう、切れば良いのだ! 

 

 これが、『戻ってお~の』を手にした僕の必勝法である。

 

 まあ、言いかえると、これ以外の戦い方を知らないので、これが通じない相手が出ると逃げるしか手がなくなるんだけど……とにかく、だ。

 

『鍵&家』のおかげで、仕留めたオークをそちらへ一時的に安置しておくことが可能になった以上……僕たちにとって、オークはやはり、肉なのであった。

 

 

 

 

 

 

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