切れば良いのだ、何事も!   作:葛城

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※ あんまり話が進んでいるようで進んでない、周りは青ざめて慌てふためいているけど、ハチたちは呑気な感じ


第18話: ま、わ、り、くどいんじゃぁぁぁ!!! 結論から言えや!!!

 

 

 結局、一度気持ちがリセットされた状態での地下5階探索は止めよう……ということになり、今回の探索は終了となった。

 

 臆病と言われたらそれまでだけど、命が掛かったここで楽観視は良くないし、まあ仕方がないよねってことである。

 

 ただ、何もしないで帰るわけではない。

 

 

 

【あなた】: 小山内ハチ・16歳

【生 命】: 235

【 力 】: 170

【 防 】: 136

【 速 】: 210

【 魔 】: 589

【おまけ】:自己回復(小)、キャパシティ(極)、等価交換(魔力)、『鍵&部屋』、『戻ってお~の!』、『出し入れ自由魔改造を添えて』

【ひみつ】:童貞、猪突猛進、頑固、開きかけの蕾

【私からの一言】:思っていたよりも体質改善が早いですね、良い事です。そういった属性持ちの人の目を引き付けます、間違っても女装をしてはいけません

 

 

 

 見よ、これが小山内ハチ16歳の、現在のステータスである。

 

 

 色々と気になる点はあるけど、今回僕が言いたいのは、【おまけ】の項目にある、『出し入れ自由魔改造を添えて』のところ。

 

 コレ、最初は何なのだろうかって思ったけど、ちょっと考えたら不思議と使い方がすぐに分かった。

 

 結論から言うと、コレはいわゆる漫画とかアニメとかではお馴染みの、『アイテムボックス』あるいは『インベントリー』とかいう名前が付くやつだ。

 

 どちらが正しいのかは知らないけど、なんとなく、『インベントリー』の方が格好いいので、今後はそちらの名前で呼ぶことにする。

 

 で、この『インベントリー』なのだが、使い方は単純明快。

 

 一定範囲まで近付かないとダメだけど、頭の中で『インベントリーに保管する~』みたいな感覚で、対象のモノをそこへ放り込むようにイメージすると、パッと対象物が消えて『インベントリー』に保管される。

 

 

 原理は、さっぱり分からない。というか、自分で説明してもよく分からない。

 

 

『インベントリー』に保管って、いったい何なのだろうか? 

 

 なんとなく、『インベントリー』という名の謎空間に物質を移動させ、必要時にその空間から取り出す……といった感じなのだろうか? 

 

 この謎空間、個別にあるっぽくて、同じように移動させても、一つ一つが場所分けされている……う~ん、どう言葉に表したら良いのだろうか。

 

 考えれば考え出すとキリが無いし頭オカシクなりそうだから、この話はここでお終いに……あ、まだ説明が足りなかった。

 

 この能力の下の部分、『魔改造を添えて』の部分なんだけど、コレは……正直、今はよく分からない。

 

 なんとなく使い方は分かるのだけど、ちょっと僕は語彙(ごい)が少なくて、一番近しい言葉が思いつかない……話を戻そう。

 

 とにかく、この『インベントリー』というか、『出し入れ自由魔改造を添えて』の能力によって、僕は外に散らばって放置されたままのデカダンゴ虫を回収することに成功した。

 

 

 たぶん、あのお姉さんが今回ばかりは気を利かせてくれたのかもしれない。

 

 

 何故ならば、モンスターたちは普通、倒されると魔石になるか、そうならないやつは、しばらく放置すると煙を上げて一瞬で消えてしまうらしいのだ。

 

 それを防ぐには、リュックに入れたり鞄に入れたり引きずったり持ったりして、とにかく所有者を明確に示す必要があるらしい。

 

 

 なんでそれで大丈夫なのか? 

 

 そんなの分かるわけないじゃん、ダンジョンのやることだよ? 

 

 

 なので、シャワーを浴びたり休憩したりな流れて放置していたら、普通は間違いなく煙になって消えているはずなのだけど……お姉さんに感謝である。

 

 ちなみに、レイダは目に見えて腰が引けていたし、死体でも極力近づきたくないみたいな反応だったので、僕が黙々と処理した。

 

 命が掛かっている時は『殺さねばこちらが殺される』のモードなので誤魔化せるようだけど、一旦冷静になっちゃうとダメっぽいようだ。

 

 人間、一度でも苦手意識が根付いちゃうと、頭では分かっていてもどうにもならないよね。

 

 おそらく、レイダにとってこいつらはデカダンゴ虫じゃなくて、デカゴキブリにしか見えていないのだと思う。

 

 特に、仕留めた後、ひっくり返ってからはもう、そのようにしか見えないのだろう。僕の後ろに隠れようとしたぐらいなのだから、こりゃあもうどうにもならん。

 

 そりゃあ、嫌だよなあって思う。

 

 僕だって、こいつら資源になりますぜってお姉さんから言われてなかったら、そのままスルーしていただろうし……仕方がない、ああ仕方がない。

 

 で、まあ、そんな感じなので、気持ちを一旦切り替える意味でも、今回は終了ってことにしたのだけど。

 

 これがまあ、運が良いのか悪いのか。

 

 帰り際というか、そういうタイミングで……なんだろう、オークなんだけど、ちょっと体毛の色が違うというか、そういうのが現れてさ。

 

 こういう場合、いきなり戦闘に入るのはまずいから避難するぞ……ってレイダに言おうと思ったら。

 

 

「──ふんぬ!!!!」

 

 

 レイダさん、デカダンゴ虫に対するフラストレーションがとんでもなく溜まっていたんだろうね。

 

 僕の目から見て、明らかに4階のオークより俊敏でパワーもありそうだったのだけど、瞬殺だった。

 

 一回りデカいこん棒を拳で迎え撃って粉砕し、ビックリしたオークの腹にずどんと一発、くの字になって下がった頭にアッパーパンチ。

 

 頭から上が、ぐちゃぐちゃの粉々でしたね。

 

 僕からしたら、そっちの方がグロくて嫌じゃないって話なんだけど、レイダからしたら、そうでもないみたい。

 

 ……そういえば、前に気持ち悪くなったりしないのって尋ねたことあるんだけど。

 

 

『別に、普段からお肉食べているじゃん? こんなので気持ち悪くなるって、普段何を食べているのか何も考えてないってことでしょ』

 

 

 って、あっけらかんとしていたっけ……まあ、そんなわけで。

 

 僕たちは、最後に何時もと違うオークと、帰り道の途中で遭遇したモンスターをインベントリーに回収しながら、その日を終えるのであった。

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………総合センターには行かないのかって? 

 

 

 別に行っても良かったのだけど、なんだろうか……なんか、『管理センター』も『総合センター』も、騒ぎになっているようでさ。

 

 なんか、どこもかしこも慌ただしいというか……まあ、ロボット受付の総合センターの方は、まだマシだけど。

 

 でもまあ、なんか……ねえ? 

 

 別に急ぎの用事でもないし、なにより、オークはともかく、デカダンゴ虫は……アレを人前で出してしまうと、さらに余計な騒動になるかも……って、思ったわけで。

 

 

 

 ──そんなこんなで、とりあえず、翌日に日を改めた。

 

 

 

 まだ騒がしい感じは続いているけど、それでも昨日よりはマシで……まずは『総合センター』にて解体処理をしてもらう。

 

 

(う~ん、グロい)

 

 

 ……僕が言うのもなんだけど、改めて明るい場所に出したら、デカダンゴ虫の見た目ってけっこう気持ち悪いな。

 

 いや、もうね、ダンジョンの中だからあまり気にならなかったけど、センターみたいな照明がたっぷりある場所で出すとさ。

 

 

 うわぁ……(ドン引き)、みたいになるわけで。

 

 

 実際、オークの死体ですら、ちょっと顔をしかめる人が居るぐらいなのだから、レイダがコイツを嫌がる気持ちが……いや、これ、バカにしているとかじゃなくてね。

 

 外国とかは違うらしいけど、日本って良くも悪くも、やっぱりまだまだ生のモンスターの死体を見た事がない人が大半でさ。

 

 地下1階しか行ったことが無い人からしたら、その下から死体を運んでくる人たちと遭遇したり、受付とかで鉢合わせしない限りはまあ、目にする機会がないわけで。

 

 探索者の中でも……いや、まあ、モンスター相手とはいえ殺し慣れている僕たちが変なのだろうけどね。

 

 

 そんなわけで、だ。

 

 

 見た目くそキモいデカダンゴ虫を、燃料オイルに変えてもらう。量にして、合計約5t。

 

 まさか液体のまま出されるのかって警戒したけど、そうじゃなくて、約200L入るドラム缶での提供だった。

 

 つまり、石油5tっていう表記だけど、200Lドラム缶一つずつ(中身は選べる)といった感じらしい。

 

 肉に例えると、オーク肉100kgって表記で、2kgずつ肉を取り出せ、その際にどの部位の肉かを選べる……といった感じか。

 

 はたして、5tという量が多いのか少ないのか知らないけど、個人で所有するとなるとすごい量になる……そんな量になった。

 

 

 当然、売る。全部、売る予定。

 

 ……だったのだけど、そこで問題が生じた。

 

 

 ガソリンとかの売り先って、どこよ……ってな事になったわけ。

 

 なにせ、石油燃料だもの。

 

 最悪腐ってハエがたかるだけの食物ならともかく、石油燃料って発火するし、モノによっては爆発するし。

 

 というか、爆発物だから、そこらの倉庫にポツンと保管しておくってのが駄目らしいんだよね、なんか、爆発物の取り扱いがどうとかで規制があるんだとか。

 

 だから、管理センターですらも、『え? そ、それは……』といった感じで、どう取り扱って良いのか分からなかったみたい。

 

 ただ、あくまでも取扱い方が決まっていないし、そんなモノの取引なんて前例が無いから困っただけで、モノ自体は欲しいらしく。

 

 というか、だよ。

 

 なんかセンターのお偉いさんが小走りにやってきて、そのまま別室とやらに通されて……で、まあ、そこで色々話し合いをされた。

 

 

「……え~っと、つまり、この先石油危機が確実視されているから、少しでもショックを和らげるために、どこで石油を手に入れたのかを教えてほしい、と?」

「すまないが、これは人類全体の問題に直結する話だ。嘘や誤魔化しを行った場合、君たちは非常に重い罪に問われる……どうか、教えてほしい」

「はあ、まあ、隠すことでもないので構いませんけど……レイダは、どう?」

「好きにしていいよ。ハチくんの言う通り、隠す事でもないし」

 

 

 で、まあ、そんな感じで、だ。

 

 センターの所長さんの話を僕なりに簡潔にまとめると、だ。

 

 

 ──つまり、『世界から石油が3割消えちゃうの確定、これから先爆発的に石油の値段が上がるから、ダンジョンで石油が確保できるなら、その方法を教えて、教えないと捕まえて刑務所送るよ』ってことだ。

 

 

 正直、『なんだぁ、てめぇ……』って思ったけど、なんだかんだ管理センターにはお世話になっている身だし。

 

 レイダも同意してくれたけど、本当に隠すような話でもないし、むしろ、広めた方が良いっぽいので、僕たちは素直に話した。

 

 何をって、あの地下5階のデカダンゴ虫のこと。

 

 仕留めるのは簡単だけど直撃したら死んじゃうよってな話だけど、なんか所長さんを始めとして、職員の皆様方の顔色が悪い。

 

 

 いったいどうして……って尋ねてみたら、『モンスターが……』と言われて、ちょっと察した。

 

 

 確かに、冷静に考えてみたら、だ。

 

 僕のように無限に遠距離攻撃が可能だったり、レイダのような戦闘向けの超特殊体質持ちだったりじゃなければ、普通は5階層なんて無理。

 

 最近では晩御飯にしか見えなくなっているオークなんて、基本的には1対多数で仕留める相手。

 

 そんなオークが居る階層を突破して、しかも5階層には、さらに強力になっているっぽいオークが出現する。

 

 そのうえ、当のデカダンゴ虫さんたち……動きを止めたからといって、別に誰しもにとって楽勝というわけではない。

 

 オークの腕力を逆にねじ伏せることができるレイダだから楽勝なだけで、一般人の腕力だと……おそらく、加速不十分のタックルでも押し負ける可能性高いし。

 

 まあ、それ以上に、極めつけは僕のように『インベントリー』に入れて持ち帰られないこと。

 

 オークの時もそうだったけど、やっぱり1匹あたり二ケタkgとかを運んで持ち帰るって、滅茶苦茶大変なんだよね。

 

 幸いにもレイダは全然苦にせず運べたけど……アレを僕1人で運ぼうと思ったら……いやぁ、キツイって、マジで大変だったと思うよ。

 

 

 ……でも、所長さんたち曰く、四の五のまごついている場合じゃないんだってさ。

 

 

 今はまだ混乱と不安だけで済んでいるけど、そのうち現実になってくる。それも、下手したら年内にはもう始まるかもって。

 

 年内って、嘘でしょって思った。

 

 だって、2ヶ月も無いんだよ、そんなに早く影響が出るのって思った。でも、所長さんたちの顔が、もうマジでね。

 

 ガソリン代がリッター4~500円越えとか、灯油一缶(18L)が1万円越えとかが普通になってくるって。

 

 だから、ダンジョンで燃料が手に入るってのが分かったのは、本当に地獄に仏みたいな感覚ううだったんだってさ。

 

 まあ、効率性は皆無だし、個人で運べる量なんて限りがあるし、なにより、モンスターが跋扈《ばっこ》する地下5階層まで行ける人となると、自然と限られ……え? 

 

 

 国が、先陣を切って取り組めば良いのではないかって? 

 

 

 残念だけど、それは無理なんだよね。

 

 これまた何度も言うけど、ダンジョンって不思議と政府とか、一部の組織的なグループを嫌うらしくてね。

 

 政府の場合、武器防具を用意したり、治療施設を用意したり、それぐらいのサポートなら問題ないんだけど……政府主導で探索専門チームとか作って突入させたりすると、駄目らしく。

 

 それとは別に、組織が利益をあげるために、下部組織を作ってその者たちに突入させる……つまり、傘下を作って突入させるって行為も、けっこうアウトなわけ。

 

 下部組織を作らず、その組織が直接突入する分には問題ないんだけど……話が色々と逸れたので戻そう。

 

 

「で、引き取ってくれるの、くれないの?」

 

 

 とにかく、結局のところ、僕たちが所有しているこの5tの石油はどうすんねん……てな話なんだけど。

 

 これがまあ、回りくどく面倒臭い。

 

 欲しいなら欲しいって言えば良いのに、なんか言い回しが回りくどい。

 

 結果的に管理センターが購入するという形になるけど、それは積極的な取引ではなく、あくまでも探索者である僕たちを守るため……というていで。

 

 事がダンジョン関係なので、探索者を危険物取扱違法だとか、爆発物不法所持だとか、そういう法的な問題から守るためだとか。

 

 緊急的な案件というか、人命救助的な話というか、とにかく、管理センターからの申し出でもなく、探索者側からの販売でもなく、あくまでも、そう、あくまでも、安全性を確保するために仕方がない処置だった……まあ、うん。

 

 

 ……役所に限らず、こういう回りくどい言い回しって本当に嫌いだなって僕が思ったのは秘密だよ。

 

 

 まあ、管理センターは国の管轄だし、その国が率先して法を破って危険物の取引(本来は資格が無いと駄目)ってのは、あまり良くないのは分かるんだけどね。

 

 でもね、それで2時間も3時間も拘束されることになったのは……まあ、言うだけ無駄か。

 

 そう諦めた僕たちが、ようやく管理センターを後にしたのは……それからさらに、2時間後のことだった。

 

 

 

 

 

 

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