切れば良いのだ、何事も!   作:葛城

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第4話: まあ、もう終わった事ですし、それよりも金!金!金!

 

 

 ──やあ、さっきぶり、僕だよ。

 

 

 花の16歳男子、小山内ハチ。

 

 色々あって家なき子、スマホも捨てて心機一転、金稼ぎのためにダンジョン突入を果たした僕である。

 

 

「はて? せっかくの証拠を破棄したのですか?」

「よく考えたら、一度は好いた女が他所の男とハメている動画とか持っていたら、なんか気色悪いじゃないっすか? なんかスマホから精子の臭いが漂ってきそうで……」

「そういうものなのですか?」

「僕が好きだった子はもう死んだようなモノだけど、それはそれとして、別に不幸になってほしいわけじゃないしね、どっか他所で幸せになってくださいってやつです」

「なら、動画を消せば良いのでは?」

「ほら、『穢れ』ってやつ? 元々、あのスマホって元家族との繋がりっぽくて手元にあると気持ち悪いんだよね。アイツに対してはあくまでも変な事をするなよって脅しだし、噂立てられたなら殴りに行けば良いわけだしさ」

「なるほど、暴力は大事です。だいたいの事は、力で解決しますから」

「それって、褒めているの?」

「心から褒めていますよ。私ならそこらのパイプ椅子で、相手の頭が陥没するぐらい叩きつけてから、手が痺れて物が持てなくなるまで徹底的にボコボコにします」

「えぇ……(ドン引き)、さ、さすがに僕もそこまではしない……かもだよ?」

 

 

 そんな僕を出迎えて……というか、なんかまたボケ~っと突っ立っている謎のお姉さんを見かけたので、声を掛けた。

 

 そこから、ポツポツと世間話をして……途中、家出というか勘当というか逃走したという話をしたわけだけど。

 

 

「しかしまあ、貴方がなんだかんだ回りから冷たい仕打ちを受けるのも、致し方ない話ではあります」

「へ? それって、僕の性格がゴミ屑だから?」

 

 

 怒りよりも前に、困惑が強く出る。

 

 これまでの仕打ちを理不尽に思った事は多々あれど、まさか、僕自身がゴミ屑みたいな性根だからとか言われたら、さすがに凹む。

 

 

「違います。貴方は、言うなれば突然変異。そのデメリットの結果でしょうね」

「デメリット?」

 

 

 首を傾げる僕に、謎のお姉さんは……理解させるつもりがあるのか疑ってしまうような、回りくどく分かり難い説明をしてくれた。

 

 その内容を簡単にまとめると、だ。

 

 どうも、僕は先天的な突然変異みたいなモノで、良くも悪くも僕自身もそうだけど、他者からの認識に対しても、フラットな目線になるらしい。

 

 分かりやすい例だと、美形無罪・美人は得、というやつだ。

 

 同じ行いでも、美形の人がやると好意的(あるいは、同情的)に受け取られやすく、不細工がやると否定的(あるいは、悪意的)に受け取られやすい、というやつ。

 

 美形の方が周りから好かれやすく、不細工は周りから好かれ難い……という、普遍的な影響を、僕はどうやら無効化してしまうらしい。

 

 

 つまり、だ。

 

 

 一般的な基準に比べて、目がパッチリで、顔が小さく、スタイルが良くて、ハキハキと元気よく喋る……といった、美人として扱われる要素が。

 

 一般的な基準に比べて、目がなんか人より大きくて、人より顔が変に小さくて、不自然に背が高かったり体形が奇形だったり、それでいてなんか声はデカい……といった感じになるらしい。

 

 

 そんな馬鹿なとは思ったけど、言われてちょっと納得してしまう部分があるので、言い返せない。

 

 人間に限らず、自分たちとは違うというのは、それだけでも警戒の対象であり、本能的に嫌う。

 

 その警戒を解きほぐす行為がコミュニケーションであり、そのコミュニケーションを円滑にするのが会話だったり、服装だったり、臭いだったり……つまり、見た目である。

 

 

 そう、最初の入り口は、見た目から。

 

 人は、自分が思うよりはるかに見た目から人をまず判断する。

 

 

 見た目が悪くても好かれる者はいるという話はあるけど、それは、それ以前からの様々な情報、会話などによって警戒を解いた結果、好かれたというだけ。

 

 名前も顔も誰も知らない、何をしているのかも分からない、見た目もけして良くはなく、むしろ奇形にすら見える。

 

 そんな人がいきなり話し掛けてきて、一切警戒せず不審な目を向けず好意的に対応する者が、はたしてどれだけいるかと言えば……むしろ、そんな対応をする者が変なわけで。

 

 

「私の姿を認識できたのも、おそらくソレが原因でしょうね。貴方が成長するにつれて、その特性が少々暴走した結果、私を認識出来るようにもなった……といったところです」

「はぁ……あの、ちなみになんですけど、フラットな目で見た僕の評価って、どんな感じなんですか?」

「一般的な基準で、背が低くて、男と呼ぶにはヒョロくて、女と呼ぶには顔だけ、目がなんかデカくて、顔が不気味に小さくて、手足もちょっと長い……結論、人間のフリをした宇宙人、ですかね」

「ひ、ひでぇ……」

「せめて、貴方が平均的な見た目をしていたら話は別だったのですが、見た目が少々平均から外れていますので……何をしても、気味の悪い宇宙人がナニカしている、といった感じだったのでしょう」

「おぉ……まあ、僕の性格がゴミ屑でなかっただけ、マシか……」

「思春期のニキビみたいなもので、そのうち改善しますよ。たぶん、今もちょっとずつ治っているんじゃないですかね、知りませんけど」

「これまでの苦労を、思春期のニキビに例えられてしまう僕の気持ちを少しは考えてよ……!!」

 

 

 あまりに衝撃な事実に、思わずその場に尻餅をつきたくなる。

 

 と、同時に……なんだか、みんなに可愛そうな事をしたかも、という気持ちもあった。

 

 何時頃からその特性とやらが強まり始めたのかは知らないが、なんとなく見当は付く。

 

 向こうからしたら、なんかコイツ人間だったはずなのにいつの間にか気持ち悪い姿に……みたいな感じなのだろう。

 

 人によって、その特性とやらの影響がどれほどなのかも分からないが……むしろ、これまで直接的に殺されなかっただけマシなのかもしれない。

 

 

(……いやでも、血の繋がった子供にやる行いじゃないよな。結果的に死ななかっただけで、下手したら死んでいたし)

 

 

 とはいえ、それとは別に、僕が皆様方を許す理由にはならないし、寛大になる必要は欠片もないのだけど。

 

 だって、やっている事は、『さすがに死なせるとヤバい、気に入らないけど死なない程度に面倒をみてあげていた』、というだけの話だし。

 

 たぶん、スマホも『コイツだけ持たせていないと、なんか露見した時、世間体が悪い』とか、そういう理屈なのだろう。

 

 そもそも、そういう特性が有ろうが無かろうが、激烈な贔屓を行う性根に変えている……というわけじゃない。

 

 純粋に、僕の見た目がそんなのとは関係なく滅茶苦茶悪かったら、似たような事をされていたし、今みたいな状況になっていただろ。

 

 結局のところ、魔法の力で心を操っているとか、そういう話ではない。

 

 単純に、見た目が一般的に好まれる容姿に見られなくなっていただけで、そういう容姿の相手に素直な対応を取っただけ。

 

 僕自身は、何も変わっていない。

 

 あくまでも、本音が言葉や態度となって露見しただけ……という感想しか僕にはなかった。

 

 

(……そう考えると、島田さんも可愛そうだな……好きだった子が、なんか途中から不気味な宇宙人みたいな風貌になっていくというか、そう思うようになるわけだし……気色悪かっただろうなあ……)

 

 

 でもまあ、それはそれとして。

 

 

(なら、他に好きな人が出来たとか、好きじゃなくなったとか、言えば良かったのでは……あ、そうか、そんな事を言うと、逆上されると思われていたのか……)

 

 

 結局のところ、やっている事は僕ではなく他の男を選んで股を開いたというだけの話である。

 

 そう、何度も言うが、謎のお姉さんが語る僕の特性とやらは、他者の心を変えるような代物ではない。

 

 あくまでも、その人の性分が土台にあるわけで。

 

 誠実な態度を取る相手ではないし、取る必要はない、そう思われて、そのように行動されただけの話でしかなく。

 

 

「……まあ、お互いに運が悪かったってことなんかなあ」

 

 

 結局のところ、それ以上でもそれ以下でもないかなあ……というのが、僕の結論であった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………とまあ、1人しんみりしている僕を尻目に。

 

 

「そんな貴方のために、せめてもの慰めとしてコレをあげましょう」

 

 

 実にマイペースな謎のお姉さんは、やっぱりマイペース。

 

 まさか、二日に渡って同情の品をプレゼントしてくれるとは思っていなかった。

 

 まあ、浮気されたからというのは情けないというか、素直に喜ぶにはプライドが……いや、今は少しでも余力が欲しい、素直に受け取ろう。

 

 

 そう思って、謎のお姉さんから受け取ったのは……『鍵』だった。

 

 

 鍵の外見は、年代を感じされる、古い南京錠の鍵のようなシンプルなモノ。防犯的な意味では信頼性に欠けるかもしれない。

 

 いったい、どこで使うものなのか。

 

 率直に尋ねてみれば、『プライベート空間へと通じる、唯一の鍵でございます』とのことだった。

 

 

 ……改めて思うけど、謎のお姉さん……説明、下手くそすぎじゃない? 

 

 

 言葉が足りないというか、言葉の使い方が独特というか……まあ、悪い人(?)ではないのだろうけど。

 

 とにかく、それだけだと分からないので、改めて……こう、具体的にどうなの……といった感じで尋ねて。

 

 そうして、この『鍵』の能力を改めて確認したわけだけど……正直、ぶったまげて思わず真顔になるぐらいであった。

 

 

 ──簡潔に述べるなら、この『鍵』は僕と、僕がOKを出した者や物だけが入れる異空間への扉の鍵である。

 

 

 天井でも床でも地面でも、とにかく僕の身体より大きい壁(に、あてはめられるものなら何でも良いらしい)に鍵を差し込むと、そこに扉が出現する。

 

 その先には、おおよそワンルームぐらいの部屋というか、特殊な空間があるらしくて。

 

 家具の類は一切置かれていないが、壊れず劣化しない照明はちゃんと設置されていて、電気も通っているので、家電を持ち込んで使うことは可能とか。

 

 これから先、色々と購入して部屋を拡張したり、増設したり、自由に快適な空間を作って……という感じの『アイテム』であった。

 

 ちなみに、空調とかその他諸々は自動的に行われている優れ物らしく、窒息とかそういうのは無いのだとか。

 

 

「購入って、業者に頼むの?」

「いえ、私に頼んでください。メニューを渡しますので」

「はい?」

「代金は……考えるのが面倒なので、日本円での支払いになります」

「なんか変な所で雑っすね……」

 

 

 まあ、それはそれとして、だ。

 

 改めて思うのだけど、やっぱ謎のお姉さん、見た目からして思ってはいたけど、人間じゃない可能性が極大である。

 

 まあ、改めて思ったところで、やっぱり改めて思うほどではないかと思い直すだけで……とりあえず、ありがたく頂戴した。

 

 

 ……さて、状況を整理しよう。

 

 

 現時点では、『鍵』とやらで行ける部屋は、本当にただの一時避難所みたいなモノである。

 

 布団はおろか寝袋すらないから、寝るにしては床で直接。翌日、全身がバキバキになって大変な有様になるのは想像するまでもない。

 

 金を注ぎ込めば注ぎ込むほど快適な空間になるにしても、先立つ物がないわけで……あ、そういえば、学費とかも考えないとダメかもしれない。

 

 

(さすがに、高校ぐらいは出とかないと……最終学歴中卒とか、間違いなく不審者扱いっすよなあ……)

 

 

 そうなると、生活費とは別に、またお金が掛かるわけで……となれば、なおさら地下2階より下で活動する他、ないわけで。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………ヨシ、当面の目標は決まった。

 

 

(なんとか、夏休み中にある程度生活を安定させておかないと、下手したら留年……それは、避けねば!)

 

 

 猶予は、約1ヶ月。とにかく、魔石集めである。

 

 それも、より高く売れる高品質の魔石……地下2階以下より手に入るやつを! 

 

 そう、改めて決断した僕は……謎のお姉さんに手を振ってから、ダンジョンの奥へと向かったのであった。

 

 

 

 





※ 結局、主人公にそういう特性が無かったとしても、激烈な贔屓で冷遇されるのは確定ですし、幼馴染ちゃんも……まあ、なにかの切っ掛けでコロッといっちゃうタイプではあります

思春期ですしね、見た目は男らしくないし、見た目も含めて男らしい年上に、コロッと股を開いちゃいますよ
ビッチとかじゃないですよ、ただ、筋を通さなかっただけで
ハチくんより魅力的に思った相手に股を開いただけなのです
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