切れば良いのだ、何事も!   作:葛城

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第4話: あまりの切れ味に、ちょっとビビった

 

 

 

 その日はセンター内にて『鍵&家』を使用して一泊した僕たちは、さっそく……地下12階の探索を始めた。

 

 ここまで来ると地上へと伝わる情報は真偽不明なモノが多く、いちおうかつての管理センターにも情報はあったけど……やはり、餅は餅屋というやつで。

 

 

「ロボットさん、この階の情報って教えてもらえるかな?」

『ダメダヨ!! ズル良クナイ!!』

「それじゃあ、この階で気をつけなければならないポイントで、教えられるところまで教えてくれない?」

『ヨロコンデ―!!』

 

 

 尋ねたら、ある程度は教えてくれた。

 

 それぐらい教えてくれた方が良いじゃんって思ったけど。

 

 あのお姉さんの性格上、おそらくこれぐらい情報無しで突破できるレベルじゃないと下の階層では……という感じなのかもしれない。

 

 

 まあ、それは置いといて、だ。

 

 

 受付ロボットより教えてもらった地下12階の構造だが、基本的には円形状に広がったフロアで、森が6割、残りは荒野だったり湖だったりで構成されているようだ。

 

 しばらく下まで、似たような感じらしい。あと、基本的に、日は落ちない。

 

 ダンジョン内なのに日が落ちないとはこれ如何にって話だが、なんか天井に青空が広がっていて、太陽が浮かんでいるのだから、そうとしか表現しようがないのだ。

 

 今さらな話だけど、ダンジョン内って空間とかそういうのが常識では……まあ、本当に今さら過ぎて、気にするだけ無駄だけど。

 

 で、話を戻すけど、地下12階に出現するモンスターは、基本的に大型タイプらしい。

 

 いや、正確には、地下12階よりしばらく下層のモンスターは、比較的大型なモンスターが多いのだとか。

 

 

 それ以外の傾向としては、主に獣系。

 

 

 いわゆる、巨大な狼とか、巨大なゴリラとか、極稀に『一つ目巨人』を始めとして、珍しいタイプのモンスターも居るのだとか。

 

 交換の旨味はあまり無い階らしく、量も少なくあまり美味しくない肉とか脂とかと交換なんだとか。

 

 なお、毛皮関係もゴワゴワしていて肌触りがあまり良くないらしく、保温性こそ高いけれども、重いし扱い辛いらしい。

 

 ただ、先述した珍しいタイプのモンスターに限っては、けっこう珍しいアイテムだったり、中々良質なモノとの交換になったりするので、狩れる実力があるならビシバシ狩った方が良い、とのことだ。

 

 

『旨味無イヤツ、経験値イッパイ!! 狩ルベシ! 狩ルベシ!』

「経験値……?」

『オット、コレ以上言エナイヨ!! ガンバッテー!!』

 

 

 それと、なんか非常に聞き捨てならない単語がロボットからポロっと零れたが……と、とりあえずは、だ。

 

 食料は十分、休息も取れた。

 

 センター内では武器防具の手入れもしてくれるので、お願いしてキッチリ修理済み(なお、対価は必要)。

 

 そうして、しっかり不備が無いことを確認してから、僕たちは……センターを後にしたのであった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………それから、おおよそ15分後。

 

 

 木々が邪魔をしているので、振り返ってもセンターの姿は見えないけど、そこまで対して離れてはいない……そんな場所で。

 

 

 ──ブモォォォオ!!! 

 

「おうぇえええ!!?!?!?」

「ま、愛ぁ──!!!!」

 

 

 巨大なイノシシ……僕の手斧がまるで刺さらないイノシシに突進された愛が、誇張抜きで傍の樹木より高くまでぶっ飛ばされたのであった。

 

 

 

 

 

 ──愛は、『もちふわプルプル柔らかむっちりボディ体質(衝撃・斬撃耐性大)』という超特殊体質である。

 

 

 冗談みたいな名称だが、その性能はかなり優れている。

 

 まず、衝撃耐性というだけあって、殴られたりぶつかったりした時への耐性がとにかくすごい。

 

 実際、身長2m強のオークのこん棒をまともに受けても、ケロッとしている。

 

 やられる当人曰く、『攻撃を受けたって感触はあるのだけど、それだけ』ということで、実際に擦り傷一つ負わない。

 

 そして、『斬撃耐性』というのも、単純に刃物などで身体が切れないというだけではない。

 

 モンスターの角を受けたり、あるいは切り立った枝葉が肌をかすめてもビクともしないという意味で、とにかく物理的な攻撃に対して強いのだ。

 

 もちろん、耐性範囲外の攻撃を受けたら普通にダメージは受けるし、副次的なダメージに関してはしっかり受ける。

 

 

 たとえば、突進を受けてぶっ飛ばされた場合。

 

 

 直撃した時も、地面を転がった時も、愛はほとんどダメージを受けない。内臓も適応されているのか、臓器が負傷するなんてこともない。

 

 ただし、三半規管などの繊細な感覚器官まではどうにもならない。

 

 負傷こそないが、衝撃を受けてぶっ飛ばされ、地面を何回転と転がれば、視界が回って平衡感覚が狂う。

 

 また、その際に身構えて息を止めたら普通に苦しくなるし、何度も何度も地面を転がれば、息切れして体力も消耗する。

 

 いくら耐性があるとはいえ、無効化ではない。それ以前に、素のフィジカルはけして高くはないのだ。

 

 何度も攻撃を受け続けたら徐々にダメージとして現れ始めるし、壁に挟まれる形で攻撃を受けたら、衝撃を受け流しきれず耐性の効果も鈍る。

 

 ……まあ、つまり、何が言いたいのかといえば。

 

 

「……キュ~」

 

 

 ぐるぐると空中大回転をキメてから樹木にツッコんだ愛は、すっかり目を回してしまい、ぐったりと枝葉に引っ掛かった状態で動けなくなってしまった。

 

 

「──んのやろう!!」

 

 

 それを見てブチ切れた僕は、手斧を力いっぱいぶん投げる──が、しかし。

 

 どすん、と。

 

 手斧は、確かにイノシシの身体に当たった。

 

 しかし、刃は完全には食い込まず、その大半が体毛と体表に阻まれる形で止まっていて、かすり傷程度に終わっていた。

 

 

 これには、僕もビックリである。

 

 

 なにせ、投げつけた手斧は遠心力も相まって、普通に叩きつけるよりも深く食い込んでくれる。

 

 これまで、固い甲羅を持ったモンスター以外にはまず食い込んだし、甲羅のやつでも何回かやれば一本ぐらいは深く食い込んでくれたのだけど。

 

 さすがは、地下12階。初めて相手にするモンスターだったが、一段と頑丈さが増している。

 

 ていうか、マジで固い。

 

 うまく食い込まないのは分かるとして、飛び出た鼻先の硬さがヤバい。向かってきた斧を、ゴンと跳ね飛ばしたぐらいには──っげ、こっち来た!! 

 

 思いっきり、横っ飛び。

 

 巨体な見た目とは裏腹に意外と素早く、何度も集中的に狙われたらいずれは餌食に──が、それよりも早く、レイダが動いた。

 

 

「──ふんぬ!!」

『プギャァアア!!!!』

 

 

 それは、こん棒によるフルスイング。

 

 モンスターより獲得したソレは、レイダ以外では振り回すことはおろか、持ち運ぶことだって大変な重量である。

 

 そんなモノを、野球選手のようにスイングされ、胴体に叩き込まれては……さすがのイノシシも、耐えられなかったようだ。

 

 血反吐と共に野太い悲鳴をあげたイノシシは、そのままドスドスッと少しばかり走ったかと思えば……そのまま、ドシンと倒れて力尽きたのであった。

 

 さすがは、我がチーム最大の攻撃力を誇るレイダの一撃。

 

 僕の手斧や愛のゴーレムのような搦め手はないが、純粋なフィジカルは僕たちより桁違いに高い。

 

 重さにして数十キログラムは有りそうな、鉄のように固い棍棒を目で追えない速度で叩きつけられて……はたして、無事な生き物など居るのだろうか? 

 

 答えは……絶命したイノシシモンスターが身をもって教えてくれた。

 

 

 ……ふんす、と。

 

 

 大きな鼻息を吹いて、胸を張るレイダに拍手をしつつ……僕は、今更ながら、このパーティの弱点というか、早急に克服しなければならない点に……目を向けるのであった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………まあ、具体的に何が足りないのかと言うと……結論を言わせてもらうなら、火力……すなわち、攻撃力である。

 

 

 なんでかって、僕たちは3人しか居ないから。

 

 言い換えたら、一人でも戦闘不能に陥ったら、途端に戦力がガタ落ちする。特に、レイダがそんな状態になったら、全滅の危機すらある。

 

 愛が吹っ飛ばされて目を回してしまったことで、ゴーレムの制御が解けて壁役が出来なくなったし、僕の手斧も瞬間的な攻撃力が欠けている。

 

 これまでは、一人が動けなくなっても十分に対処できる相手だったから無事に終わっていたが……ここから先は、そうも言っていられない。

 

 

 ──しかし、だ。

 

 

 単純に筋トレをしたところで(無駄ではないけど)、たかが知れている。そもそも、効果が出るのは数か月は先……気が長すぎる話だ。

 

 と、なれば……取れる手段は二つ。

 

 一つは、謎のお姉さんが話していたように、ダンジョン内よりレベルアップ系のアイテムなどを入手して、フィジカルなどを底上げするというもの。

 

 これがまあ、一番地道なのかもしれない。

 

 ただ、確実性はあるのだけど、残念ながら、そのアイテムを手に入れるということに多大な運が関わる……とにかく、今すぐどうのこうのってモノではない。

 

 では、二つ目は……『出し入れ自由魔改造を添えて』、である。

 

 これは、僕が日常使いになっている『インベントリー』に付属している能力で、これまで使い方というか、用途が分からず放置していた。

 

 

 だが、しかし……今は違う! 

 

 

 謎のお姉さんより飲まされたジュースのおかげなのか、実は分かるようになっていた。

 

 まあ、すぐには分からず、時間経過でちょっとずつ思い出してくるといった感じで……とにかく、『出し入れ自由魔改造を添えて』の、魔改造の部分は……アレだ。

 

 その名の通り、インベントリーに入れたモノを素材として分解したり、組み合わせたり、融合させたりして、新たな道具を生み出すというモノだ。

 

 

 つまり、クリエイト。

 

 

 それだけならば、だいぶ便利な能力といった感じだけど……レベルが上がったことで発覚したのだが、この能力は、そんな単純なモノではなかった。

 

 有り体に言えば、僕の知識に無いモノも勝手に作れるし、その規模はどうやら僕のレベルに応じて拡大していくようなのだ。

 

 

 たとえば、『机』を作ろうと思ったら。

 

 

『インベントリー』に木製のモノを入れて、『素材:材木』というモノに分解。他にも、適当にモノを入れて、必要となる素材を用意すれば、準備OK。

 

 頭の中で、なんかこう……『『〇〇』×『□□』=『△△』』といった感じで表示され、作ろうと思う場合は実行するよう念じれば、表示された『△△』が完成するようだ。

 

 しかも、既に完成形が表示されていて、必要な素材がある程度は分かるようになっている。

 

 例えば、『鋼鉄の剣』を作る場合、『素材:鉄×3』と『素材:材木』といった感じで、どういうわけか分かってしまう。

 

 

 ……なんでそれだけで出来るのかって、考えるだけ無駄なのだろう。

 

 

 この製造過程において、僕が『△△』に関する知識が無くても問題は無いようで、必要なのは……『△△』を作るために必要な『〇〇』と『□□』なだけのようだ。

 

 しかも、どうやらこの魔改造……色々と条件があるようだけど、僕のレベルが上がればいずれは『超特殊体質』も……まあ、それは未来の話で。

 

 なんとも、凶悪な性能だが……いちおう、デメリットはある。

 

 それは、センターに預けて交換してもらう場合に比べて、かなり量が減る、というもの。

 

 種類にもよるけど、センターに預けたら100kgの肉が、この『出し入れ自由魔改造を添えて』を使って行うと、約30kgぐらいに……といった感じで、かなりロスが生まれる。

 

 とはいえ、僕には『インベントリー』があるから持ち運びの手間はなく、そこまでではないデメリットだけれども……で、だ。

 

 僕は、この二つ目の選択肢である『出し入れ自由魔改造を添えて』を活用することにした。

 

 初めて魔改造を行うので、どのような結果になるかは分からないが……とりあえずは、だ。

 

 

「──というわけで、ちょっとナニカ作ってみてもいい?」

「いいよ」

 

 

 枝に引っ掛かったままの愛を下ろしてきたレイダからの返答は、速かった。なお、まだ頭がしっかり動いていないようだ。

 

 とりあえず、『インベントリー』内の資材を使って……そうだな、なにか武器でも作れたら良いかなと思った僕は。

 

 ズラーっと頭の中に表示されるリストをスクロールさせ続け、意外とサイズも細かくあるのだなと……見ていた、そんな時であった。

 

 

『レーザーアックス』

 

 

 なんか、急に機械系、すなわちSF系の武器をリストの中より見つけてしまったのは。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………無言のままに、それを選択して……僕の手が、クリエイトされた『レーザーアックス』を手にしたのは、それから2分後の事だった。

 

 

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