切れば良いのだ、何事も!   作:葛城

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※ センシティブな表現アリ、注意要





第5話: 世界が変わる前なら、普通に捕まっていたところだ

 

 

 ──結論から言おう、『レーザーアックス』の切れ味、あまりにもヤバ過ぎた。

 

 

 空気を切るってのは言い過ぎだけど、木綿豆腐を切る程度には……とにかく、明らかに手ごたえが違った。

 

 直接切り落とす時の手ごたえも、これまでは骨に当たれば止まるし、投げた時も固い部分に当たれば反動で抜けたり……それが、『レーザーアックス』にはない。

 

 軽い力で振るっても、手ごたえの無さには思わず面食らう。

 

 刃の部分が、ビュンっと淡いレーザー光で形成されている格好良さにも、面食らう。

 

 先ほど戦ったイノシシ……さっきよりも小さかったけど、また登場したので……その結果が、切れ味ヤバ過ぎぃ、であった。

 

 

 もうね、スパーン、な感じ。

 

 

 ぶっちゃけ、勢い余って自分の身体を切りつける方にも気を付けなければならないぐらいだ。

 

 しかし、その分だけ殺傷能力はけた違いで。

 

 前回の時は10本投げて1本刺されば上出来だったのが、レーザーの場合は角度さえズレなければほぼ100%ダメージを与えられる切れ味であった。

 

 そのうえ、どうやら斧を作るたび、『戻ってお~の!』にて出現させられる手斧の種類が増えるようで……一度作れば、同じ斧を何本も作れることが分かった。

 

 以前から察していたけど、とんでもない能力だ……まあ、その代わり、『レーザーアックス』には重大な弱点が二つあった。

 

 

 それは、射程距離だ。

 

 

 これは、使用している中で気付いたことなのだけど。

 

 どうやら、レーザーのエネルギー源は僕から流用しているみたいで……僕の手から離れると、瞬く間に威力が減退してしまうようだ。

 

 以前の斧ならば、全力投擲にて数十メートル先への攻撃が可能だったのだけど……『レーザーアックス』の場合、手から離れて数秒ぐらいだろうか。

 

 しかも、普通の手斧の時とは違い、『レーザーアックス』はそのレーザーを形成している間はずっと……こう、なんか、己の中のエネルギーが減っていく感覚がある。

 

 たぶん、本当に自分の中のエネルギーが減っているのだと思う。

 

 さすがにフラフラになるまで使うつもりはないけど、何回か戦闘を重ねると……まあ、ちゃんと休息を取れば、回復する話なのだけど。

 

 

 ──で、だ。

 

 

 そうして、武器が出来上がれば……今度は、僕だけでなく、二人の武器もそうだし、防具だって必要だと思ったわけだ。

 

 なんでかって、やっぱりさあ……怪我したら、最悪そこで動けなくなって死んじゃうわけよ。

 

 体力は、休めばなんとかなる。気力だって、休めばなんとかなる。

 

 でも、消耗はとにかく避けた方が良い。慣れるのは大事だけど、無駄に戦闘を長引かせてクタクタになるのは本末転倒だ。

 

 戦いにおいて、先手必勝、一方的に勝利すること以上に消耗が少なく終わる戦いはない。

 

 そこで負傷してしまったら、これはもう自然治癒に任せるしかないわけだし、体力と気力の消耗は取り返しがつかないわけだ。

 

 レイダだって、骨折したら短くても一か月ぐらいは……え、ヒビぐらいなら数時間で治るって? 

 

 

「噓でしょ?」

「昔、肋骨をボキッとしたことあったけど、3日後にはもう触っても痛くなくなったし」

 

 

 冗談かと思ったけど、マジだった……いや、でも、それはレイダだからで、僕たちはそうじゃない。

 

 なので、僕たちは各々の武器防具を作るために、色々なモンスターを狩っては地下12階の『出張・簡易総合センター』へと持ち運んだ。

 

 幸いにも、地下12階にはまだ僕たち以外に人の姿は無い。

 

 世界から石油が消える前はともかく、今は上の階にて縄張り争いでも起こっているのか……ひとまず、今はまだ平和であった。

 

 なので、僕たちはあまりのんびりしてはいられない。

 

 上の縄張り争いがひと段落して、人々が下りてきたら……その時、僕たちはそいつらからしたら部外者であり、勝手に入り込んでいる害虫のような扱いをされるだろう。

 

 勝手な言い草だし、誰のモノでもないけれども、彼らからしたら、その時にはもう協定の末に割り振られた、彼らの所有物みたいな扱いになっている可能性が極めて高い。

 

 だから、とにかく、平和なうちに、溜め込むだけ溜め込んで、上の階のやつらが下りてきたらさらに下って……という方針に決めたわけだ。

 

 まあ、『出張・簡易総合センター』は一定期間が過ぎると別の場所に移動するらしいから、下りて来なくてもさらに下に下りなければならないけど。

 

 

 ──とにかく、だ。

 

 

 新たに手に入れた『レーザーアックス』のおかげで、手こずっていたモンスターも、けっこう容易く倒せるようになった。

 

 おかげで、素材回収の効率が段違いだった。

 

 まあ、その分だけ僕の休憩が必要になったわけだが……しかし、そのおかげで、レイダと愛の武器クリエイトが完了した。

 

 まず、レイダの武器は……なんかこう、『パワーメイス』って名前のやつだ。

 

 漢字で書いたら戦棍《せんこん》あるいは槌矛《つちほこ》と呼ばれるやつで、棒の先に固い金属などを取り付けた棍棒の一種。

 

 作る際に簡単な説明というか、詳細が少しばかり分かるのだけど……この『パワーメイス』、直撃した際の衝撃の大部分を直撃部分に流すようになっているらしい。

 

 

 つまり、アレだ。

 

 

 バットなどを思いっきり地面に叩きつけた際、衝撃で手がジーンと痺れる……反動分を含めて、攻撃に回してくれるようなメイスのようだ。

 

 これね、最初は手首とか痛めない優れものじゃんって思ったけど……レイダが実際にコレを振り回し始めてから、これの凶悪さが良く分かった。

 

 具体的に言うなれば、この『パワーメイス』……使う者のパワーが強ければ強いほど、破壊力が比例して跳ね上がる代物だった。

 

 いや、まあ、冷静に考えたら、そりゃあそうだって話でね。

 

 どんなモノでも、叩きつけられるパワーが強ければ強いほど反動も大きくなるわけで……その分が、そのまま相手側へと載せられるわけで。

 

 イノシシの突進……真正面からぶち当てた瞬間、ドバっと頭が潰れて弾けたのを見た時にはもう、変な笑いが出た。

 

 もうね、一撃必殺。

 

 レーザーなんて使っていないのに、明らかに僕の『レーザーアックス』より威力ある。

 

 やはり、パワー……パワーが全てを解決するのか。

 

 まあ、その代わり、さすがに飛び散る血飛沫まではどうにもならないようで、そのたび血濡れになったレイダはものすごく嫌そうな顔をしていたけど……で、愛の方はというと。

 

 

 ぶっちゃけ、愛の場合は……こう、運動オンチってわけじゃないけど……やっぱり、愛自身が戦うのはリスクが高い。

 

 

 けして、鈍くさいわけじゃないんだ。ちゃんと、目では追えているんだ。

 

 ただ、身体がそれに追いつかないだけ。

 

 僕とレイダに比べたら、1テンポ、2テンポは反応が遅いというか……たぶん、『もちふわプルプル柔らかむっちりボディ体質(衝撃・斬撃耐性大)』のデメリットなんだと思う。

 

 レイダがそのフィジカルを発揮する代わりに、男性顔負けな大食漢と同じく、レイダは人並み外れた耐久性を持つ代わりに、反射的な動きに……なので、だ。

 

 愛には、『土属性魔法』を伸ばすための武器……というのとは違うけど、道具である『ピアス』を耳に付けてもらうことにした。

 

 この『ピアス』は、クリエイトにて製造したのだけど……効果は、『土属性魔法能力向上』というものだった。

 

 僕は魔法なんて使えないから、何がどう向上するのか、感覚的な話になるので分からないが……愛曰く、だいぶ違う、とのこと。

 

 感覚としては、『スーッと、頭の中が澄み渡るような……』というモノらしい。

 

 

 実際、『ピアス』の効果は、傍目にも分かった。

 

 

 具体的には、ゴーレムの動きが明らかに良くなった。さすがに僕とレイダに比べて遅いけど、一般人なみに速くなった。

 

 発動し、ゴーレムが形作られるまでの時間も短くなったし、ゴーレムもこれまでより大きく……そのうえ、ゴーレム自身も固くなった。

 

 どれぐらいかって、それまではイノシシの突進を受けたら一発で破壊されてしまっていたのに、三発ぐらいは耐えられるようになった。

 

 これ、めちゃくちゃ強い。

 

 なにせ、その三発を受ける前にゴーレム自身が再生を始めるので、実際はもっと攻撃に耐えるし、痛覚なんてないから、その最中も普通に反撃する。

 

 相手からしたら、『肉を切らせて骨を断つ戦法』を当たり前のように……肝心の愛も、『かくれんぼの達人(極)』のおかげで、まず気付かれないし。

 

 

 そんなわけで、だ。

 

 

 武器を揃えた僕たちは、次に防具クリエイトを行うための素材回収のために、モンスターをぶち殺す日々が始まるのだが……ここからが、苦行の始まりであった。

 

 有り体に言えば、クリエイトできる『防具』の数と種類が、『武器』よりもはるかに多く……いや、少し違う。

 

 武器の場合は必然的に今使っている武器の延長線上、あるいは相応なモノという基準が有ったので、迷う事がなかったのだけど。

 

 防具の場合は、サイズさえ合えば……という話だし、それ以外の基準が無かったので、ドツボにハマってしまった。

 

 しかも、武器をクリエイトするよりも、防具の方が必要素材が多いようで、その分だけ多く素材回収を……うん。

 

 

 ……先に愚痴をこぼしておこう。

 

 

 正直──気が狂うかと思った。

 

 だって、先に準備を整えておかないと、最悪僕たちは成す術もなく悲惨な事になる……と、分かっていたとしても、だ。

 

 さすがに、起きている間ずーっとモンスターをぶち殺し、食事など身体を休め、またモンスターを……という全く変わらないルーチンを何日も何日も繰り返していたら、頭おかしくなる。

 

 というか、ちょっとおかしくなっていたと思う。

 

 これがね、機械的にボタン操作とかして済ませるようなことだったら、違ったと思う。

 

 

 でも、そうじゃなかった。とにかく、まったく気持ちを変える時間がなかったのが駄目だったんだと思う。

 

 

 いくら武器が用意できたからって、けして油断してよい話じゃない。

 

 やっぱり、万が一を思えば、毎回真剣に、心臓バクバクさせて冷や汗流しながら殺し合いをするわけだ。

 

 後になって実感したけど、やっぱり、そういう緊張状態を何日も繰り返すのって、精神への負担が大きかったみたいでね。

 

 ある時さ……こう、いつものようにご飯とかお風呂済ませて、さあ寝るぞってタイミングでね。

 

 

 なんかね……気付いたら、ガチガチになっていた。

 

 

 好きとか嫌いとか……いや、レイダと愛の事は好意的に思っているけど、そういうのとは別に、なんだろうか。

 

 自分でも、自分がそうなっていることに気付かなくて、二人から指摘されて初めて気付いたあたり、色々とおかしく……まあ、とにかく。

 

 とにかく、いきなりガチガチになった。

 

 そりゃあもう、自分でも意味が分からなくて、でも、グアッとこみあげて来て、もう胸がカーっと熱くなってね。

 

 最初は、例のバナナ関係かと思ったけど、そういうのは食べてないってのがすぐに分かって……そして、二人もまたおかしくなっていたようで。

 

 

 ……たぶん、二人も僕と同じように、ちょっと精神がヤバくなっていたのかもしれない。

 

 

 次に僕たちが我に返ったのは、二日後で。

 

 実質まるまる1日分強、ず~っと『家』から出ないで、互いをぬりぬ~り、ずぶ~り、しまくっていたみたいで。

 

 ようやく頭が冷えてモノが考えられるようになった時に僕たちが思ったのは……とにかく体が疲れているのと、全身べたべただったのと、あとは……めっちゃ股間が痛い、これに尽きた。

 

 それから、僕たちは『1日活動したら、翌日は休むこと』という取り決めを行い、厳守することにした。

 

 幸いにも……という言い方はなんだけど。

 

『家』には、けして多くはないけど娯楽品は置いてあったし、『出張・簡易総合センター』にも小規模ながら娯楽設備があったおかげで、気持ちをリフレッシュすることはできた。

 

 やっぱり、無理を通そうとするとどっかがダメになるようで……仕方がないと、僕たちは諦めたのであった。

 

 そして、そのせいなのかは不明だけど、ここで問題が一つ生じた。

 

 それは、上層階のゴタゴタが治まったのか、いよいよ人が下りて来たのを確認した、ということだ。

 

 直接的な接触は避けて、森の中からこっそり覗いたのだけど……想像していた通り、明らかに雰囲気が以前とは異なっていた。

 

 有り体に言えば、反社会的勢力の集団……といった感じだろうか。

 

 対モンスターと同じくらい、対人間に対する暴力に慣れている……そんな目を、誰も彼もがしていた。

 

 

(……どうする?)

(今日、明日でいきなりセンターが占拠されることはないでしょうけど、かち合えば騒動になると思う。最悪、殺し合いでしょうね)

 

 

 声を潜めて二人に問えば、愛はそう答え。

 

 

(……遠いからうまく声を拾えないけど、やっぱり、地下12階は既に彼らの中で取り決め、所有権が分割されているっぽい)

 

 

 レイダは、吐き捨てるようにそう答え……さらに。

 

 

(それと、なんか焦っているっぽい。地上の軍が突入準備を始めているとかで、なんか既に地下3階ぐらいまでは完全に国が管理下に置いた……そんな感じの話をしている)

 

 

 そんな事を付け足した。

 

 

 ……どうやら国は、『直接中に入って独占する必要がある』と判断して、動き出したようだ。

 

 

 それに関しては、特に驚かなかった。

 

 あの謎のお姉さんの話が、いずれ人から人へ、地上へ流れるのは時間の問題だろうと思っていたからだ。

 

 

(……つまり、あいつらも僕たちと同じく、国に独占される前に少しでも……といった感じかな?)

(そうでしょうね。で、どうしますか?)

(もちろん、地下13階に下りる。幸いにも、付け焼き刃みたいなモノだけど、防具は間に合った)

 

 

 声を潜めたまま愛より尋ねられた僕は……キッパリと、答えた。

 

 そう、本当にギリギリというか、辛うじてというか……万全とは言い難いけど、僕たちは間に合った。

 

 

 その『防具』の名は、『原始のペイント』。

 

 

 見た目はただのペンキの溶液に見えるが、なんとコレ……装備するよう念じながら溶液に触れると、自動的に身体へ付着して……なんかこう、肌を覆うようにバリアが形成されるのである。

 

 つまり、迷彩柄のボディペイント。

 

 見た目は防御力皆無だが、バリアが形成されているおかげで、イノシシの突進を受けても、とりあえず軽く息が詰まる程度の……まあ、その代わり。

 

 

(仕方がないとはいえ、万が一にもこの格好は見られたくないしね)

(それは、同感)

(正直、恥ずかしいですものね……)

 

 

 パンツ一枚だけで、それ以外は裸のうえにペイントという……色々な意味で大変なデザインなのだけれども。

 

 

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