ちょいと、センシティブな感じ?
苦手な方は注意要
──ハズレを引いたのだとようやく頭で考えられるようになったのは、たぶんだけど、翌日の昼過ぎぐらいからだったと思う。
なんというか、熱に浮かされるっていうのは、あんな気持ちなのだろう。
我に返るとしっかり思い出せるのだけど、その時はもう何が何だかみたいな感覚で……気付けば、半日以上僕たちはゴロゴロしていた。
どこにって?
そりゃあ、僕の寝床にて、3人で。
当然ながら、僕たちは全員裸だ。部屋中に、独特な臭いが残っている。床には、空になったボトル瓶が散らばっていて、部屋の端には僕たちの衣服が押しやられている。
寝具はべったり汗やら何やらで湿っていて、レイダと愛の二人は色々と汚れた身体をそのままに、すやすやと寝息を立てていた。
ぶっちゃけ、我に返るまで何の疑問も抱いていなかったのだけど、冷静になると、とんでもない事になったと僕は頭を抱えた。
……と、同時に徐々に実感が湧いてくる、とんでもない疲労感。
そりゃあ、半日以上もハッスルしっぱなしなのだ。
言うなれば、ドーピングで前借りしていたツケが、一気に表に出て来たようなものだろう。
幸いにも、少し前の僕の記憶には、脱水になってはダメだよと二人に水分を取らせ、そのまま行為を続けるという……う~ん、この。
「──あいたたた、こ、腰が……」
と、とにかく、冷たいモノでも飲んで……と思って立ち上がれば、全身がバキバキと軋んで、痛みがビシバシと背筋を走る。
日常動作では使わない筋肉を酷使したのだから、筋肉痛の一つや二つ……いや、確認は後だ。
とにかく、喉が渇いた。
内心、ヒイヒイ言いながらも部屋を出て、飲み物を取りにキッチンへ……そこでまあ、僕はため息を吐いた。
なんでかって……そりゃあ、キッチンのあたりもまあまあ悲惨な事になっていたからだ。
到着してから思い出したのだけれども、そういえば、ここでもハッスル&ハッスルしていた僕たちは、どったんばったんしていたと思う。
おかげで、色々と痕跡が確認できた。悲しいことに、全部心当たりがあるせいで、誰のせいにも出来ない。
それから、お風呂にて汗を流そうと……そこでもまた、色々とハッスルしていた時の事を思い出してしまい。
その後、痕跡も確認できて、色々と頭を抱えたくなったけど……残念ながら、僕にはそんな事をしている時間は無かった。
いったい何故かって、それは……掃除だ。
そう、掃除をしなければならない。
ただでさえ乾いて固まっているところがあるのに、このまま放置しっぱなしではもっと悪化する。
その前に、少しでも汚れを取りやすい時に取っておかねば。
そうしないと後で絶対に後悔すると思った僕は、バケツと雑巾を手にして、記憶を頼りに掃除を始め──あ、その前に、洗濯機は回しておく。
衣服の類は……レイダと愛の分もあるから後回しにして、とりあえずタオルの類を全部まとめて洗濯機へGoだ。
……風呂に入る前に掃除をしたらと、事情を知らない第三者が居たら言われそうだけど……いや、でもさ。
その時の僕って、体中が汗やら何やらでベタベタで……さすがに、そんな姿で掃除を始めても逆に汚しちゃうってわけで。
とにかく、それからはもう無心であった。
全身の筋肉痛や気怠さはあったけど、泣き言をこぼしても綺麗になったりはしないから、やるしかない。
さすがに、自分の出した液で汚れたテーブルでご飯は食べたくないんよ……。
それから、とりあえずテーブルだけは綺麗にした後で、軽く朝食を取る。
なんか感覚がマヒしていたけど、考えたらまともに食事を取っていなかったなと思い出して、ちょっと笑う。
それから、掃除再開。
掃除のセオリーは上から下、つまりは天井から床へってのが基本らしいけど、まずは足を付ける床をキレイにしたい。
正直、歩くたびにねちょっとしたり、乾いてべたつくところを踏んだりすると、その時点でかなりテンション下がるんだよね。
そうして、わっせ、わっせ、と掃除をしているとレイダが起床してきて、僕を見てちょっとびっくりしていた。
「……アタシもやる」
「うん、ありがとう。でも、その前にお風呂で身体洗って、軽くご飯を食べてからね」
そう伝えれば、レイダは一つ頷いてからお風呂へ……30分後、着替えを終えて食事も済ませたレイダが戻ってきたので、交代。
レイダは僕たちの中で一番フィジカルがあるおかげで、僕のように筋肉痛にはなっていないようだが、疲れはちょっと残っているようだ。
レイダですらそうなのだから、僕が全身筋肉痛になるのも当然だよね。
納得する僕をしり目に、ちょうど洗濯機が止まったので、レイダは手早く取り出し、衣類の類を手早くまとめて、洗濯機へ。
それから、足早に外へ。
あっという間にタオルの類を干し終えた後は、手慣れた様子でマットとかもひとまとめにして……僕が使っていたバケツと雑巾を手に、掃除を開始。
さすがに、天井とか高い場所が汚れているなんてことはないけど……床のどのあたりが汚れているかなんて分からないから、サーッと全面を拭いてゆく。
その動きは、筋肉痛やら節々の軋みで悲鳴をあげている僕よりも明らかに違っていて、ちょっと羨ましさを覚えるぐらいにキビキビとしていた。
「……愛は?」
「さっき声を掛けたけど、今日はまともに動けないと思う。ハチくんより酷い筋肉痛」
「ああ、そうなんだ……」
「家の中なら動けるだろうけど、今日はもう休ませた方が良いと思う」
「それに関しては僕も無理だから、お休みするしかないと思う」
ふと、起きてこない愛の事を尋ねたら、なんとも哀れな話をされた。
いや、まあ、うん。
以前に比べて改善しているとはいえ、僕たちの中で一番体力が無い愛なら、そうなっても致し方ない。
僕ですら日常動作が辛く感じるぐらいなのだから、愛は辛いを通り越した状態なのを想像するのは容易かった。
まあ、上から目線で語っている僕だって、動けないのは一緒なわけだし、あまり言えた話じゃないけど。
いや、もうね、本当に無理だわ、これ。
家の中だから平気で動けるけど、正直、まともに走れない。小斧も投げれないし、投げたら体がやばい。
……で、とりあえずひととおりの掃除が終わったあたりで、洗濯機が止まり……そのタイミングで、愛も寝室から姿を見せた。
「おはよう、ございます……」
「ああ、うん、とりあえず水でも……飲める?」
「ありがとうございます……」
髪はボサボサ、表情は疲れ切っていて、明らかに僕よりも回復しきれていないのが一目でわかる。
コップを落とさないよう手を差し出せば、震える両手で上から……ゆっくりと、愛はコップの水を飲み干した。
「トイレに座った後、立てる?」
「……な、なんとか」
「レイダ、愛とお風呂入ってもらえる?」
「あいよ」
洗濯物を入れたカゴを片手に戻ってきたレイダが、愛の手を引いて風呂場へ……それを見送ってから、僕は寝室へと戻り、空いた寝床のシーツとかを全部引っぺがす。
幸いにも……いや、本当にわずかばかり理性が残っていたのか、なんかバスタオルとかいっぱい敷いてあって、そのおかげでギリギリ浸水を免れたようだ。
ただし、掛布団の方はアウトだ。明らかに、汗とは違う液体の跡があった。
不幸中の幸いにも、その掛布団は洗濯機で洗えるタイプだったので……せっかくだから、まとめて洗う。
それから、洗い終えている洗濯カゴを持って、外へと干しに行く。
誤解されるかもしれないけど、『家』の外にはある程度の空間があって、洗濯物などは普段そこで干しているのだ。
ちなみに、物干し竿はけっこう設置している。広さは十分だし、洗える時にまとめて洗いたいから。
幸いにも、今日の天候は晴れのようで洗濯物が良く乾きそうだ……筋肉痛を堪えながら、すべて干し終える。
戻れば、愛とレイダがモソモソと食事を取って……気のせいか、レイダは二回目の……止めよう、お腹が空いているんだし。
僕も誘われたけど、先に無事だった敷布団を干して……押し入れから、予備の布団を出して、設置完了。
そうこうしているうちに、愛が戻ってきて……お礼と共に、震えながら布団の上へ……そのまま、あっという間に寝息を立て始めた。
……本当に、疲れ切っているのだろう。
ただ、そこは僕の寝床であり、正直掃除が終わったら僕も寝たい。愛とレイダの寝床は別に……ああ、頭が上手く回っていないのか。
いちおう念のために愛の寝床を確認したら、特にそういった汚れは無かったし、記憶にも無かったので、たぶんそういった用途で使われてはいない。
……仕方がない、そこで寝よう。
そんなわけで、レイダに僕も身体が限界だから後の洗濯掃除を任せてよいかとお願いしてから、愛の寝床へ潜る。
自分とは違う、愛の匂いを感じたけど。
正直、その事にドキドキするとかよりも、あっという間にやってきた眠気によって僕の意識は遠ざかり。
(なんか、ずっと掃除だけで──)
それが、眠る前に考えていた最後の言葉であった。