切れば良いのだ、何事も!   作:葛城

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第15話: 生まれ落ちた土の上で

 

 

 

 ──結論から述べよう。

 

 

 僕の持っていたクリエイトの能力だけど、どうやらパワーアップして作れるモノが増えたようだ。

 

 具体的には、武器や防具以外……今しがた作った建物もそうだけど、どうやらもっと大掛かりな代物や、逆に小道具のようなモノまで幅広く作れるようになった、というわけだ。

 

 

 で、だ。

 

 

 ここからが本題なのだけど、このパワーアップしたクリエイト能力……どうも、ただ作れるだけではなく、不思議なパワーが付与されたモノまで作れるようなのだ。

 

 分かりやすく言えば、僕が今しがた作った物置小屋だけれども、それはただの小屋ではない。

 

 僕以外には分からないけれども、それは『物置小屋(耐性+1)』という、特殊な小屋である。

 

 いったい何が違うのかって、その名のとおり、この物置小屋は様々な影響に対して耐性を有している。

 

 太陽光や雨風による劣化に対して、あるいは、物理的な衝撃、温度や湿度変化などによるダメージに対しても耐性を有している。

 

 つまり、同じように作られた物置小屋よりも頑丈で長持ちする、といった感じだ。

 

 今回はなんかチュートリアル的な感じでお試しに作ってみようと空中ディスプレイに表示されていたから、その通りに作っただけなのだが。

 

 既にお察しのとおり、先ほど述べた大掛かりな代物や小道具にも、同様に不思議なパワーが付与された状態でクリエイトできる……というわけだ。

 

 

 ……で、だ。

 

 

 これで、僕が最初にしたかと言えば、それは……素材集めである。

 

 レイダと愛に周囲を警戒してもらいながら、僕はひたすら瓦礫やら何やらをインベントリーへ回収し、素材へと変換してゆく。

 

 地味にインベントリーの能力もパワーアップしているっぽい気がする……なんか、分けられる素材が以前より細分化されている気がする。

 

 ちなみに、武器や防具を作る時は『レア素材』を必要とする場合が多いけど、今回得られたクリエイト能力で消費する素材は質より量だ。

 

 質が良ければ、その分だけ変換できる量が増えて、質が悪ければ変換できる量も減るっぽい。

 

 だけど、量が増えるぐらい質の良い素材を用意する手間を考えたら、多少悪くても量で質をカバーできる。

 

 ていうか、現代基準の工場で製鉄された鋼鉄(新品)なんてモノを用意できる環境が残っているのだろうか? 

 

 おそらく残っていない可能性が高い……ので、現状は僕のクリエイトがこれ以上ないぐらいに役に立つわけだ。

 

 このクリエイト能力。

 

 一見しただけだとスゴイ武器や防具を作れるところばかりに目が向くけど、本当にヤバいのは『インベントリー』への保管した際に素材へと分解する際に、だ。

 

 どうも、使用する素材と、実際に出来上がるモノ、明らかに等価交換の法則に喧嘩を売るような結果になるのだ。

 

 具体例として、たとえば5Lの水(汚い)をインベントリーに入れて変換すると……何故か、10Lの綺麗な真水に変換出来たりするのだ。

 

 他には、そこらの砂粒を砂糖に変換しようとすると、1kgの砂粒で砂糖20kgとか、逆に砂糖20kgで砂粒5gとか、レートがよく分からない……あ、もちろん、以前は出来なかったんだよ。

 

 それと、あまりにもかけ離れているモノへの変換はめちゃくちゃ効率が悪いようで。

 

 黄金10tで血液100ccなのに、血液50万ccで黄金2gとか……交換レートが意味不明過ぎて、これも考えるだけ無駄なんだと思う。

 

 とにかく石像の光線を受けてから、なんか出来るようになって……まあ、パワーアップした『クリエイト』はとにかく便利であった。

 

 不幸中の幸いというやつか、周囲にはとにかく素材として使える物がこれでもかと転がっている。

 

 石膏ボードの類は燃えて消失してしまったが、鋼鉄などの金属はけっこう原形が残っているのが多い。

 

 例外なく経年劣化による錆や、火事によって熱せられたり汚れたりで、素材として使うには質が悪いが……質より量だ。

 

 アレも、コレも、ソレも、インベントリーへと放り込んで素材へと変換し。

 

 気付けば、建物数十件分の瓦礫などを素材へと変え終えて、辺りは整地されて掃除されたかのように、キレイになっていた。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そうして、とりあえず僕は二人に相談する。相談内容は、何をクリエイトするか、だ。

 

 

「とりあえず、地上にも寝泊まり出来る建物とか作れたらいいんじゃない? 雨風を気にせず寝られる場所は大事だと思う」

「それも大事ですけど、まずは柵などを作ってここが誰かのテリトリーであることを示しておくのが大事では?」

「こんなところに誰か来たりするの?」

「人相手じゃなくても、イノシシとか野生動物が入ってきたら危ないじゃないですか」

「ああ、なるほど、そっちもあるか……」

「野生動物は雑菌の塊ですよ。感染症に罹っても、今は薬なんて手に入らない……ある意味、不法侵入者より危険な存在かもしれません」

「病気は……う~ん、勝てなさそうな気がするなあ……」

 

 

 こういう時、一人で悶々と考え込むよりは、誰かに相談した方が色々と意見が出てくれて本当に助かる。

 

 実際、僕は瓦礫とか撤去した後のことはあまり考えていなかったし、とりあえず陣地的な意味で柵でも作ろうかなって感じで、野生動物の事とか考えていなかったし。

 

 というか、感染症か……言われてみたら、たしかに今って薬関係はマジで貴重品だものね。

 

 僕たちがダンジョンにこもる以前から『薬』は本当に貴重で、世界がこうなる前では薬局で手軽に買えた風邪薬ですら高級品になっていた。

 

 風の噂だけど、1回分の風邪薬のために女の子が身体を売って融通してもらうぐらいだったって。

 

 それだけありふれていた薬ですら、そうなのだ。

 

 総量が少ない抗生物質とか、特定の感染症の薬なんてもっと貴重品になっているだろう……つまり、もう手に入らないという前提で考えるしかないわけだ。

 

 人間もまた雑菌の塊だけど、基本的に獣の方が素早いし小さいから……二人の意見を聞いて結論を出した僕は、ひとまずエレベーターがある建物を中心に円状に柵を設置することにした。

 

 本当は辺り一帯の瓦礫というか、街があった場所全部を掃除してからにしたいのだけど、それはまだ無理だ。

 

 集落程度の広さならともかく、ここがどこの市か町か村かは不明だけど、その広さは1日で周り切れるものじゃない。

 

 形は歪になるけど、撤去と新たな柵の設置を繰り返してちょっとずつ広げていくしかない。

 

 

「──おお、こういう感じになるのか」

 

 

 とりあえず、『柵(頑丈+1)』をお試しで設置してみたら、見た目は特に変なところが無い柵だった。

 

 なお、この(頑丈+1)の機能は、その名のとおり頑丈さが増しているというもの。

 

 物置小屋の(耐性+1)に似ているが、こっちはもっと限定的というか……とにかく、同じように作られた柵より頑丈というわけだ。

 

 その柵だが、コンクリートなのか何なのかは分からないけれども、フェンスを想像させる形状の柵で、触ってみると硬さと重さが感じ取れる。

 

 フェンスの穴の大きさは、ネズミやイタチ……小柄な猫ならば通れるかもしれないが、イノシシぐらいのサイズは絶対に不可能といった感じだ。

 

 また、視線を下げれば地面にしっかり柵が食い込んだ状態になっているのが確認できる。

 

 インベントリーにて回収してみたら……不思議なことに、食い込んでいたはずの部分は綺麗に塞がっていて、初めからそんなものなど刺さっていなかったかのようになっていた。

 

 

 ……考えるだけ無駄なので、そういうモノだと受け入れよう。

 

 

 とりあえず、ポチポチと空中ディスプレイを操作して、柵を設置してゆく。

 

 素材を回収の際にある程度の整地も済んでいるから、傾斜のせいで倒れたり高さがあまりにも不均一になったりしないのは、地味にありがたい。

 

 そうして……小一時間ぐらいだろうか。

 

 歩いては設置し、歩いては設置し、歪になろうがとりあえず隙間が出来なければOKといった感じで埋めたから、思いのほか早く完了した。

 

 

「……何か変わったわけじゃないけど、ちょっとだけ安心な気持ちになっているの、僕だけ?」

「ハチくんも? 実はアタシもそうなの」

「私もです……なんというか、ちょっとだけ落ち着きました」

 

 

 たったそれだけの事だけど、二人も僕と同じ感覚を覚えたようだ。

 

 これは、なんというか……アレだな、僕が以前暮らしていた物置小屋の時の感覚が近いのかもしれない。

 

 傍から見たら粗末で安全な場所とは思えないかもしれないが、あの頃の僕にとって、あの中は僕が僕としていられる、そういう場所だった。

 

 なんというか、ここは僕だけの居場所なのだと思えていた。

 

 もしかしたら、柵という目に見える形で囲ったおかげで、心理的にそれに近しい感覚を覚えたのか……まあ、考えても仕方がないから、これもそういうモノだと受け入れるとして。

 

 

「どうする? だいぶ日が落ちてきたし、そろそろ休もうか?」

 

 

 二人に尋ねてみたら、二人は顔を見合わせ。

 

 ──出来るなら、地上で寝泊まりしたい。

 

 そう、二人は答えたのであった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………季節は冬だ。

 

 常識的に考えて、そんな時期での野宿はかなり危険を伴う。最低でも、雨風が防げる場所でなければまず凍死してしまうからだ。

 

 クリエイトで作った『物置小屋(耐性+1)』は、そういった外の冷気をいくらか余分に緩和してくれる。

 

 でも、寒い事は変わらない。なにせ、物置小屋だから、そもそも断熱性は皆無で隙間風もそれなりにあるからだ。

 

 だから……『鍵&家』より、毛布やら何やらを引っ張り出して隙間を塞ぎ、保温する。

 

 かつての僕はスーパーなどから持ってきたダンボールを使っていたし、断熱材代わりにもたくさん使っていたけど……さすがに、今はダンボールすらも手に入らない。

 

 食事は、単純に焚火だ。

 

 幸いにも、火種になるモノも、薪も、用意出来ている。

 

 慣れていないのでかまどを作る際も四苦八苦したけど、なんかキャンプをしているみたいでちょっと楽しかったし、ご飯の用意も普段とは違って、妙に美味しく感じた。

 

 それから……僕たちは物置小屋の中で身を寄せ合って眠った。

 

 寒さはあるけど、それ自体は暖房を一晩止めた家の中といった程度で……不思議と、僕たちは『鍵&家』の中に居る時よりも長く、ぐっすり眠りにつけたのであった。

 

 

 ……そうして、翌朝。

 

 

『鍵&家』にて身支度を整えた僕たちは、再び『原始のペイント』を身にまとって、瓦礫撤去&資材回収の作業を再開した。

 

 地上なのだから普通に服を着たら良いのかもしれないけど、とにかく『原始のペイント』の効果が良すぎて……いや、だってさ。

 

 例えるなら、深い森の奥に入る際にブランド物の服&ハイヒールで行くかって聞かれたら、誰だって入らないって答えるじゃん? 

 

 自殺するために向かうならともかく、だ。

 

『原始のペイント』は環境的な要因、万が一獣などに飛び掛かれても噛みつきを防いでくれる、そもそもとにかく身軽なのは有り難い。

 

 普通に服を着ると、どうしてもモコモコ系の状態になってしまうし……そんなわけで、ボディペイントとパンツ装備の僕たちは、ひたすら瓦礫を片付けていく。

 

 瓦礫の種類は、思いのほか大きい。火事の広がりによって大半は燃えてしまったようだけど、燃え残っているのも相応にある。

 

 たぶん、風向きの関係とか、完全に燃え広がる前に雨でも降ったのだろう。

 

 なので、そういった部分をインベントリーで回収すれば、木材として返還することができた。

 

 

 ……ちなみに、だ。

 

 

 この『インベントリー』の能力、実は誰かの所有物や生きているモノは入れられないっぽい。

 

 実際に試した事があるのだけど、例えばレイダや愛の私物を入れる事は出来なかった。

 

 ただし、当人がインベントリーに入れても良いと言葉に出す鳴心で承諾するなりしてくれたら、可能になる。

 

 また、当人が承諾していなくとも、完全にその存在を忘れていたり、所有権があやふやになっていたり、放棄したと見なされるモノの場合は例外のようだ。

 

 具体例は、現在進行形で回収している瓦礫。

 

 言うまでもなく、これらは土地も含めてだ。

 

 法的には違うのかもしれないけど、この能力がそう判断するぐらいは放置されっぱなしなのだから、諦めろって事なのだろう。

 

 同様に、生きているモノは入れられない。言い換えれば、インベントリーに入れられた時点で対象物は死んでいるのが分かるから、生死の確認ができる。

 

 さて、そんな感じで作業を続け、少しずつ柵を広げていくわけだが……そのあたりで、僕たちはどうしたものかと新たな問題が生じた。

 

 

 それは、広げた柵の内側に、何を設置するか……という話。

 

 

 正直、特に何も考えずに素材回収みたいな感覚でやっていたから……いちおう、クリエイトで作れるモノは多岐に渡る。

 

 現在の僕たちが寝泊まりしている物置小屋だけでなく、一軒家もそうだし、なんならアパートやマンションもクリエイトが可能だ。

 

 ただし、建物が大きくなればなるほど必要となる素材の量も比例するので、現在の在庫ではせいぜいアパートぐらいが限界だけど。

 

 他にも、様々な施設もクリエイトが可能のようだ。

 

 ただ、作る施設によって必要となる素材が変わってくるし、中にはここらではあまり手に入らないモノがあるので、今すぐ作れるわけではない。

 

 具体的には、石油関係の素材。

 

 石油由来のモノって良く燃えるから、火事で大半が焼けてしまって……ゴミでもいいからそのまま残っていたら、かなり効率が良いのだけど。

 

 まあ、そんなわけで、だ。

 

 新しい施設をクリエイトするにしろ、このまま陣地を広げていくにしろ、必要となる素材は比例して増え続けるわけだから、結局のところやることは何も変わらないのだけど。

 

 

 ……そんな時であった。

 

 

 高台代わりに残してある半壊の建物……元はマンションなのだけど、その屋上から、こちらへ向かって来る集団の姿を遠目で確認したのは。

 

 

 

 

 

 

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