ちょい短い
冗談じゃなくて、酷い目にあった。
全身レイダからの甘噛みだらけ、キス痕だらけ、髪はボサボサ、体中レイダの液体まみれ、僕の液体まみれ、乾いてなんかすごい事になっていた。
それでいて腰から下の感覚がまるで無いし、ちん〇〇の感覚無いから取れてしまったのかと大真面目に心配したし、僕じゃなかったらトラウマで二度と立たなくなっていたかもしれない。
途中、何度か愛が僕へ水分補給とかしてくれたし、ヘトヘトになりながらも例のバナナを食べさせてくれたおかげで、なんとかしのげた。
──Q.愛が止めに入らなかったのかって?
──A.いや、最中のレイダの顔を見たら、匙を投げるって。
なにせ、僕がむせたりしないよう水分補給とか食事を取らせている最中なのに、レイダはず~っと腰を振り続けていたし。
なんかもう、完全に我を忘れてしまっている状態って感じかな。
僕はもう疲れ切っていて横たわるだけだったけど、そんなの関係なく前を向いたり後ろを向いたり横になったり、かと思ったら抱きしめて動けなくされたり。
とにかく、その時のレイダは普通じゃなかったから、愛も下手に刺激しないようにしていたわけだ。
なお、そのレイダは現在、普通に僕の隣で爆睡していた。『タイガービキニ』も、それに合わせて自動的に外れたようだ。
つまり、素っ裸……その顔は、やる事やってスッキリ……みたいな感じで、子どものような寝顔をしていた。
とりあえず、今は生きている幸せに浸ろうと思う。苦しみが消えるわけではないのが、生きる事の辛さではあるのだけども。
──そうして、翌日。
本当に24時間ぐらい眠り続けていたレイダより深々と謝罪されたので、アレは不幸な事故だったということで流し……結局、アレはなんだったのかを聞いてみた。
その内容をまとめると、だ。
どうも、『タイガービキニ』を装備してすぐに変化が起きて、どうにも記憶が曖昧になっていたらしい。
ただそれは体調不良でそうなったというよりは、極度の興奮のせいで、冷静に頭を働かせることが出来なくなっていたそうな。
なんでも、とにかく今すぐにでも暴れて暴れて暴れまわりたいという気持ちでいっぱいになり、とにかく身体を動かさないとどうにかなってしまいそう……そんな気持ちになったらしく。
実際、自衛隊たちの下へ向かっている最中も疲れとかそんなのはなく、ただただ気分が良くて、息が切れるのが心地よかったのだとか。
そのまま自衛隊と正面衝突して暴れまわっている時は、とにかく楽しくて楽しくて……全滅させた後も、どうにも身体のウズウズが治まらなくて。
なんとか我慢はしていたのだけれども、気合でどうにかなるような事ではなかったらしく、身体を洗い終えたあたりで限界に達し……気付いたら、僕を押し倒していたのだとか。
「……ちょっと、使いどころが難しいね」
「本当にごめんなさい……」
「あ、いや、もうアレは致し方ないことだから……たぶん、装備のデメリットなんだと思う」
率直な感想だけど、またもや頭を下げるレイダに、僕はそう言って慰めた。
実際、レイダの暴走は『タイガービキニ』の副作用というか、いわゆるデバフってやつだというのが僕の結論。
『原始のペイント』がパンツ一枚を強制されるのと同じく、『タイガービキニ』はタイガーな強さを得る代わりに、理性がまるで利かない状態になるようだ。
人間が作り出した薬ですら、人間は容易く理性を失うのだ。
人知を超えたダンジョン産によって理性を失う……それはもはや、人の意思で抗えることではないだろうから。
……ただ、それはそれとして。
正直、『タイガービキニ』を装備するたび、昨夜のような暴走状態になられたら、誇張抜きに身体がヤバいと思った。
実際、24時間爆睡したレイダは平気な顔で普通にご飯を食べているし、なんなら食欲旺盛だというのに、僕はまだ身体を起こすのも辛い。
ぶっちゃけ、自覚するようになってから初めて……その、朝起きた時に下腹部の元気をまったく感じないことに、若干の恐怖を覚えているぐらいで。
文字通り最後の一滴まで、雑巾のように絞られて絞られて搾り取られたかのような……これ、下手したら体重が1,2kgぐらい落ちているかもしれない。
さすがに、こうなってしまえばインベントリーによる素材回収もままならない。だって、そこまで歩けないし。
──とりあえず、しばらくお休みするしかないかな。
そう、僕は二人から承諾を得て、スヤスヤと寝息を立てるのであった。
……それから、3日後。
ようやく身体も起こせるようになり、朝限定だけど、下腹部の元気を感じ取れるようになって。
こっそりホッと安堵のため息をこぼした僕を他所に、どうやら事態は待ってくれなかったようだ。
「……また来たの?」
「うん、今度は強盗集団とも、自衛隊とも、どうにも違うっぽい」
これで3度目となる。
高台に登って周辺を見ていたレイダが、こちらへ向かって来る集団の姿を目視で確認したのは。
1度目は、遠目にも分かるぐらいに気配が下品というか、遠目からでも襲撃目的なのが明白な集団であった。
2度目は、遠目にも分かるぐらい統率が取れていて、車に加えて、明らかに一般人とは異なる自衛隊集団だった。
そして、3度目は……1度目とも2度目とも違う顔ぶれと恰好で……見たままを語るなら、それは老若男女の集団であった。
そう、老若男女の集団だ。
上は60代、下は……子どもか?
レイダ曰く、『着ている衣服はみんなボロボロ、薄汚れていて、みんな痩せている。人数は……20人ぐらいかな?』とのことだ。
これは……どう判断したら良いのだろうか?
これまでと同じく、先手必勝で動けば良いのか。
しかし、レイダの話だと、これまでのような嫌な感じは……いや、ちょっとはあるらしい。
ただ、これぐらいはそれこそ呪いが発動していた時はよくあったとかで……あと、3度目になるこの集団は、明らかに動きが遅いとのことだ。
子どもが居るからという点を考慮しても、明らかに遅い。
それは単純に歩くのが遅いというよりは……疲れすぎて身体が動けなくなっているといった感じに見えるらしい。
まあ、実際に痩せているし、もしかしたら食事をまともに取れていないから体力が落ちているのか……あと、武装もまともにしていないっぽい。
せいぜい棍棒(というか、木の枝?)を持っている者が数名で、大半は素手。刃物は……見たところ、持っていたとしてもナイフぐらいだろうか。
そんな集団が、ゆっくりと……確実に、こちらの方へと向かって来ているようだ。
「……何日ぐらい掛かりそう?」
「夜通し迷わず来ても、今日中は絶対に無理。夜間休んできたら、明日……う~ん、明後日ぐらいになるかも」
「そんなに?」
「たぶんね。もしかしたら、こっちに到着するまでに何人か死ぬかもしれない」
「そんなに!?」
「だって、テントすら持ってないっぽいし。私でも外気を防ぐテントとか無いと、ほとんどまともに寝られないぐらいだし」
言われて、寒い時期に……物置小屋すらいられない状態を想像して……あ、これ下手したら死ぬかなと納得した。
……これ、様子を見に行くべきだろうか?
「ダメ、ハチくんは動けないし、罠の可能性もある。自力でこっちに来るまで様子見一択」
「そうですね。ちょっとタイガーを出して盗み聞きしてきますけど、それでもこうも立て続けに起これば罠の可能性だって0ではありませんし」
気になって尋ねてみたら、二人からはそんな返答が。
とりあえず、愛の提案に従ってタイガーによる盗み聞きを行った……その結果。
どうやら、こっちに向かって来ている集団は、街に居られなくなった難民……の、可能性がとても高いらしい。
罪を犯して難民になったのではなく、内部での圧制……このままでは強者に使い潰され殺されるだけだと察し、どうせ死ぬならばと最後の賭けとして脱走している途中らしい。
そんな事をベラベラ喋るのかと思ったけど、どうやら疲労も限界に達しているようで、何でもいいから話していないと歩いている途中で気絶するように眠ってしまう者が出るやも、らしい。
まあ、それが真実である保証は何もないけど。
とはいえ、難民か……なんとも、判断しかねる相手だ。
突っぱねるのは簡単だし、こちらから先手必勝も簡単だけど……う~ん……マジで、どうしたものか。
結局は、だ。
こちらから助けに向かうということはせず、かといって、排除にも動かず……自力で来るまで様子見、という結論にしたのであった。
何をするにしても、そもそも、今はまだ僕動けないから……。