趣味本意の至らぬ作品ですが、よろしくお願いします。
※3月22日、23日。第一章の大幅リメイクを致しました。
第零頁 終わって始まる
「……うぅ……痛ぁ……」
目覚めてすぐに彼女を襲ったのは酷い頭痛と倦怠感だった。
頭を何度も殴られるような痛みと、何倍もの重力が体に掛かっているようなだるさに耐えられず、しばらくはベッドの上で悶絶していた。全く状況が読めない。いや、読む余裕が無い。私はただ、この状況に悪態を吐く事しかできなかった。
痛みが収まると『何かしなければならない』という不思議な気持ちに駆られて体を起こす。使命感、とでも言うのだろうか。
しかし、この使命感の正体が掴めない。
仕事があったか。行くべき所があるのか。おぼろげな意識の中で数分……いや、数秒だったかもしれない。それほど曖昧な時間の間、何かを思い出そうと懸命に考えた。
何かをやり残したような、そんな気がしてならなかった。しかし、思い出せない。とてももどかしい気持ちになる。
私は考えるのを止めた。すると、今度は眠気が押し寄せてくる。まぶたが重くなるような眠気だ。
しかし何故か横になる気になれなかった。特に何もせず、ボーッと天井を見上げていた。
「ここ……何処……?」
ココハドコ? ワタシハダレ? Who am I ? ワッツワッツ?
はぁ……色々おかしいなぁ。
起きたら知らない場所に居る事とか、記憶がなくなっちゃってる事とか、私のテンションとか。いつもはこんなテンションじゃないのに。
そりゃテンションがおかしくなるに決まってますよ。朝? 起きたら? なんにも覚えていません? なにそれ。
はぁ……本当に何処なのここ。
見たところ……家の中? かな……。
何者かに連れ去られた可能性も考慮しなければ。私の記憶を消して誘拐……ハッ、あり得る。
奴らの目的はなんだ。私の何を狙ってる? ダメだ、思い出せない。早く思い出してしまわないと、世界が危ない……!
…………そんな混乱しまくった状態で、私は自分を落ち着かせようと目を瞑った。
とりあえず状況をまとめよう。
まず、起きたら、記憶がない。以上。なんて日だ。
「――メリアル起きてるの?」
部屋の扉の向こう側から声がした。女性の声だ。
……メリアル、人名だろうか。そうだとすると、この建物の中には少なくとも私、メリアルという人物、先ほど声を出した女性。この3人が居る事になる。
この名前も立派な情報なのだろうが、この名に聞き覚えはない。
「はぁ……」
ため息ばっかだ、私。無理もないかな。
こんな状況に
こんなこと言ってたって何も始まらない! って言えば良いんだろうけど。私には無理だ。何かが始まったからって、良いことあるとは限んないし。
あぁ……テンションが下がってきた。ただいまリラックス中。繰り返す。リラックス中。あー、あー。
「……入るわよー」
おっと? さっきの声だ。 入るって……この部屋に?
ちょ、ちょっと、何で? 誰なの? あれ? メリアルって? 何処? え? あれ? あわわわ……。
この危機的状況、どう回避する?
窓から逃げようか。いや、それじゃまるで空き巣。空いてないけど。
入ってきた人を殴り倒そうか。いや、それじゃまるで強盗。
部屋の何処かに隠れようか。サプライズパーティーかな。
ええっと……大人しく捕まろう。無駄な抵抗はしない方が良い。
そんな覚悟をしていると、扉が開いた。扉の方を向くとそこには、銀髪の女性が居た。その女性は大人びた表情でこちらを見つめている。
「珍しいわね、こんな時間まで寝ていたなんて」
彼女は私に話しかけているようだ。私を捕まえる気はなさそうな話し声だった。
しかし、彼女が声をかけているのは流れ的にメリアルという人の筈だ。
私はメリアルじゃない。この部屋に居るのは私だけだった筈だから、ここにメリアルはいない。
部屋違いかな。どうして私を見てるのかな。
「どうしたの? メリアル。ジッとこっち見て」
言葉の矛先は依然として私に向けられたものだった。驚きが奇妙に成り変わる。
何が起きたのか。今ここで起きている現象は私の常識の度合いを超えている。何もかも投げ出したくなる気分だ。投げ出す物も無いけど。
そもそも、起きたら記憶がないって時点で、平凡な日常生活を逸脱してるのに。平静を保ってられますか?
いや、こういう時こそ冷静にならなきゃ。深呼吸深呼吸。
この人に聞く事はいっぱいある。今は彼女が唯一の情報源なんだから。おかしいと思ったら人に聞くんだよ。
例えば……。
「――あなたは誰?」
銀髪……誰でしょうか。予想の幅が広がるとして。
ここで去る方も、これからこの作品を読んでくださる方も、ありがとうございます。そして、よろしくお願いします。