東方記憶帳~過去を無くした小さな妖怪~   作:ガルナイド.

3 / 7
 どうも、ガルナイドです。
 話題に、段幕ごっことありますが、今回はまだ戦いません。やるなら二章以降ですかね……


第二頁 弾幕ごっこ

 

 

 全てが終わったのは昨日だった。私は記憶を無くし、思い出を全て失った。どんな思い出を失ったのかも、今の私には分からない。

 全てが始まったのは昨日だった。全てを失い、もう一度思い出を培う。失った物を取り戻す。そんな人生が始まった。

 

 正直言って、始まんない方がよかったよ。私は夢オチを期待してたんだから 

 あーよく寝た。長い夢だったなぁ。それで、全てが元通り。いつも通りの日々を淡々と進める。そんな感じでも良かったと思う。

 

 私は眠気を押し退けてベッドを降りた。

 記憶はなくても、身に染み付いているのだろうか、自然と目が覚めてしまった。

 まあ、レティが起きる前にレティの部屋に行って、冬を着け直さないといけないんだから。寝坊するよりは良いだろう。

 記憶を失ってから一日が経った。そんな事を実感しながら、私は部屋を見渡す。

 その時、布の掛かった姿見らしき物が目に入った。

 こんな物があったなんて、気付かなかった。昨日は忙しく、また、疲れていて、気にする余裕もなかったからだと思う。

 そういえば、まだ自分がどんな姿をしているのか知らなかった。

 どんな感じかなー。楽しみだなー。綺麗かなー。フフっ、ジャン!

 私は期待に胸を踊らせながら、布を取って鏡に写った自分を見た。

 髪の毛は方に掛かるくらいの金髪。目は緑色。

 顔は……強力な妖怪ほど綺麗だって言うし、私も強い方だと思うし、顔が良いか悪いかは他人が決めるものだと思うし…………ごめんなさい。

 生まれた時から同じ顔だったら、それが普通になってたりするかもしれないけど、そんなことない。

 たった今、初めて顔を見たから、言ってみれば他人の顔。

 自分の顔なんだけどね。一生この顔で生きるってことだよね。メリアルという妖怪は、たった今ここに生まれたと言っても過言ではないよね。

 次は体格に目を向けた。

 スタイルは平凡だと思う。レティには劣る。

 身長は高くはない。レティよりも低いのは知っていたが、小さすぎる訳じゃないから、不便を感じることはなかった。

 これが私か……。残念ながら、思い出せたことはなかった。

 やっぱり、自分が自分ではないような気がする。馴れなきゃダメか。

 

 鏡の他に何か無いかと、私はさらに部屋を見渡してみる。

 ベッド、姿見、タンス、本棚、机、きれいに片付いている。殺風景だと思えるほどだ。

 本棚には、何冊か厚めの本が入っていた。私ってどんな本を読んでたんだろう。記憶を取り戻す手助けになるかもしれない。

 えっと……『魔法の使い方入門編』『上位魔法』『捨食・捨虫の魔法とは』三冊だけか。

 二十冊くらい入りそうな本棚だけど。

 にしても、魔法の本だけじゃん。魔法の入門読んですぐ上位魔法って、馬鹿か?

 しかも何、捨虫の魔法って。

 捨虫、虫を捨てる? 害虫をこの世から消し去る魔法? 何それすごい。

 私は魔法について勉強してたのか……魔法妖怪を目指してたのかな。格好いいかも。

 興味をそそられ、本を手に取ろうとしたが、その手を止めた。

 今は先にレティの所に行かないと。なんか本に夢中になりそうだ。

 

 私は自室を出て、レティの部屋へ向かった。しかし、部屋の前で立ち止まってしまった。

 ――人の部屋に入るのって罪悪感ありすぎる。しかも、レティまだ寝てるよね? 入っちゃっていいのかな。

 この感情が私を戸惑わせた。

 確かに、人の部屋に勝手に入るのはマナー違反だ。

 私がマナーを守れる人だった事を知れてホッとしたのはおいといて、案外勇気がいりそうだ。

 昔は普通に部屋に入って、普通にレティに冬を着けてたらしいけど。これも記憶を無くした事によるペナルティだろうか。その普通がなかなかできなかった。

 でも、部屋に入んなきゃレティに迷惑かけちゃうし。

 勇気を出して入ろうか。一応ノックはしておいた方がいいかも。でも音で起こしちゃうかもしれないし。どうすれば?

 散々迷った末、「お邪魔しまーす」と、小声で言いながら静かに部屋に入る私。

 根本的な事は何も解決していないようにも思えたけど。この際レティが涼しく起きられればいいや。

 そのレティは、ベッドの上で寝ている。

 長居してちゃ悪いから、さっさと冬を着けて部屋を出ないと。

 レティに冬を纏わせた私は、リビングに戻るために部屋を出た。

 

 さてと、今日は何をするんだったかな……。

 家を見るために外に出てみるんだっけ? そうだそうだ。

 外に出るとしても……この家って魔法の森に囲まれてるんだよね。ついでに森の外へ情報収集でもしたいんだけど……。

 レティに出会う事ができたってことは、そこら辺を適当にほっつき歩いてたって事だから。目撃情報くらいある筈。

 しかし、魔法の森が広そうで困った。

 なんかあの森、昼なのに暗いし、先が見えないし、歩いて抜けられるほど狭くなさそうだし。どうすれば……

 あっ、空飛べばいいんだった。空飛べば森なんか軽く飛び越えられるし、歩くより速そうだし、とっても便利。

 あっ、でもどうやって飛べばいいのか分かんないや。

 いや、もしかしたら案外簡単に飛べるかも。試しに室内で、アイキャンフラァーイ!

 自分を信じてジャンプしてみたが、床に着地してしまった。

 なんで飛べないんだろう。気持ちが足りないのかな。空を飛べ~空を飛べ~、念じながらピョンピョン跳ねてみたけど無理。

 ダメだ、諦めちゃダメだ。もっと熱くなれよ!

 自分で自分を奮い立たせてみたが、できないものはできないようだ。

 ここは諦めて、レティにコツを教えてもらおう。                      

 

 レティが起きてくるまで何をしていようか考えてみたら、外に出る第一の理由が家を見るためだということを思い出した。

 実は私、結構心配している。

 あくまでも、ここは私の住んでいる家なのだ。将来、友達を家に誘うとき、ボロボロな家だったら抵抗感を与えてしまう。それに倒壊するかもしれない。

 私は恐る恐る家を見た。

 ふむ、見た目的にバランスも取れていて、倒壊する心配なし。木目も綺麗で傷が少ない。

 家の周りも、木が伐られていて広いスペースがある。

 ここまでだと、しっかりしている様に思えるが、決定的な欠点があった。

 生活に支障は無いだろうが、とても気にかかる。

 

 その弱点とは、目を疑う程のデザインの雑さだった。

 四角い木箱に窓と入り口を付けただけにしか見えない。って言うか豆腐だ。豆腐ハウスだ。

 内装がしっかりしているから苦にならなかったものの、私の思い描いていた優雅な洋館とはかけ離れている。そもそも家なのか?

 欠点というよりツッコミ所と言った方がしっくりくる。

 もしかすると、これも一種の芸術なのかもしれないが、少なくとも自分にはただの箱にしか見えない。

 私がこの豆腐ハウスに手を加えるなら、白く塗るね。主にネタにする方向で、更に豆腐に近づける。

 豆腐すぎて白蟻が寄ってきそうだが。

 

 ここで一つ、虫で思い出した事がある。捨虫の魔法の本が部屋にあったんだった。今ならじっくり読むことができる。

 私は部屋に戻り、今度こそ『捨食・捨虫の魔法とは』を手に取って読んだ。

 

 ――まず初めに捨食の魔法とは、食べる事を捨てる、すなわち食事を不必要な物とする魔法である。食事のによって得られるエネルギーを魔力によって補う。人間がこの魔法を習得すれば、種族としての魔法使いになる事ができる。

 捨虫の魔法とは、成長を極力遅らせる事で、寿命を非常に長くする事ができる魔法である。この魔法を習得した者はは、より上級の魔法使いだと言えるだろう――

 

 ほうほう、案外、読むのは簡単かもしれない。

 私に捨食の魔法は必要ないね。食べる事だって娯楽の一つだ。お腹が空いてこそ、食べるご飯が美味しくなる。それを捨てるなんて勿体ない。それにしてもお腹空いた。

 しかし、捨虫の魔法って殺虫の魔法じゃなかったのか。本来の効き目も凄いけどね。

 妖怪は元々長生きなのに、加えて寿命を沢山延ばすとか、おいしい話だ。美味しいといえば、お腹空いた。

 偉業を成し遂げて、幻想卿の宝とか呼ばれたりして。

 さてさて、どうやって使うのかな? 捨虫の魔法。

 

 ――次にこの魔法の原理から説明する。捨食の魔法は――

 

 捨食いらん、次。

 

 ――捨虫の魔法で最も重要な事は、甲と清のエネルギーを然の術によって24:13の割合で――

 

 余波で髪の毛が舞い上がる位の勢いで本を閉じた。

 何これ意味不明。難易度上がりすぎでしょ。

 これが魔法入門書を読むだけで理解できるようになるの? 無理だよね?

 まぁ……一応、入門だけでも頭に入れておいて損はないかな。

 しかし、お腹空いた。

 レティには悪いけど先に昼食を食べていようかな。

 

 

 

 昼食を食べ終わり、レティを待っている間、私はリビングで魔法入門の本を読んでいた。

 この本、なかなか面白い。どうやら、魔法使いでない上に、妖力を主力としている私でも魔法を使う事ができるようだ。

 目指すは捨虫の魔法だ!

 こうしてしばらく本を読んでいると、扉の開く音が聞こえた。

 

「おはよう」

 

 レティだ。私は挨拶を返し、作っておいた昼食を食べるよう促す。

 レティが食べ終わったら、空中浮遊の事を聞かなくてはならない。

 私は、レティが昼食を終えるまでジッと見つめていた。レティが気にして食べ難そうにしていたが、そんなことはお構い無し。早く空を飛んでみたくて疼いているのだ。

 

「ご馳走さまでし……」 

「レティって空飛べるよね。飛び方教えてもらえない?」

 

 単刀直入に話題を切り出す。いきなり過ぎて軽く驚かれた程だ。この状況で遠回しに頼んでも意味が無い。シンプルが一番だ。

 でも、なんか図々しいかな。ただでさえ、記憶を無くしたせいで迷惑かけてるのに、その上いろいろな事をお願いしてるんだもん。レティは、無理に思い出さないでもいいって言ってたけど。

 私としては、早く思い出したいと思っている。記憶を取り戻すためにレティの力を借りなければならない。

 いやちょっと待て、私の手伝いが大変だからさりげなく「思い出すな」って言ってるんじゃ…………考えすぎだという事を祈りたい。

 ここはひとつ、誠意を見せるために土下座をした方がいいかな。土の下に座るってやつ。

 

「ええ、いいわよ」

 

 土下座せずとも、レティは二つ返事で承諾してくれた。

 やっぱりレティってば優しい。私には、物事を悪い方向に考える癖があるようだ。レティが「思い出すな」だって? ふっ、あり得ない。

 気を取り直して、私達は外へ向かった。家の周りの広いスペースは練習の為にあるんじゃないかと思う。

 

「さて、どうやって教えればいいのかしら?」

 

 どうやって? なんという素朴な疑問。

 いや……教えるって……教え方かぁ……。

 

「じゃあ……一回飛んで見せてもらうって言うのは……」

「飛ぶ? 分かったわ」

 

 そう言って、レティは軽々と飛んでみせた。空中浮遊なんて歩くより簡単だとでも言うように。

 それが私にはできないんですけどねー。

 私はレティに付いていこうと跳び跳ねるも、足が地から浮き続けることはない。

 

「余分な力を抜くのよ。意識し過ぎるから飛べないんじゃないかしら」

 

 力を抜く、かぁ……。

 私は目を閉じて深呼吸をした。

 何も意識せず、ただ体を浮かすように考えるだけ。

 まだ駄目か。集中が足りない。

 手を動かすように。

 例えば、物を掴むとき、手を動かして掴むのではない。手が動くことが前提なのだ。

 意識するのは手を動かすことではない。物を掴むことだ。

 体を浮かすのは意識して行うことではない。当たり前にできることだ。

 何も意識せず、糸に吊り上げられるように。

 力を抜いて。

 体を軽く。

 楽に。

 あっ、足が地面から離れてく。

 まだいける。

 そうだ。

 そのまま。

 糸に身を任せて――

 

 

 私は目を開けた。

 ほんの僅(わず)かだが、自分の体が浮いている。

 飛べた……飛べたんだ。自己暗示って凄い……

 ……ヤッタ! ワーイワイ! 飛べたー!

 途端に世界が回転した。

 つい気を抜いて、バランスを崩してしまったようだ。そのまま背中から地面に落ちてしまう。

 

「痛たたた……」

 

 すぐに落ちてしまったけど、私は浮いていた。馴れれば気を抜いても落ちなくなると思う。

 こりゃ練習必須かな。

 先日に続いて練習練習。記憶喪失って大変だ。

 

「大丈夫?」

 

 わざわざ下りてきて、こんな私に手を差し伸べてくれるレティ。

 この方に裏の顔は無い。そう確信した。

 

「うん大丈夫。ありがとう」

 

 私はレティの手を取って立ち上がる。

 とりあえず浮くこと自体はできた。後は、空中で移動することと、バランスを取ることの練習になるだろう。

 思い立ったが吉日。今日中に習得して見せましょう!

 私は服に付いた砂を払ってから、もう一度空中浮遊に挑戦する。

 

 浮くだけであれば、さっきよりも簡単にできた。

 しかし、問題はここからだ。

 集中してバランスを取る。地面に足がついていないため、バランスが取りにくい。

 空中移動をまだ習得していないから、重心を移す事しかバランスを取る方法がない。

 私の事は、レティが見てくれている。それだけで、よりやる気が出てくる。

 何度も落ちて、何度も挑戦した。七転び八起きって言うんだっけ。

 少しずつコツを掴んでいき、一回の挑戦に飛んでいられる時間が長くなっていった。

 糸に引っ張られるというよりは、下から不思議な力で押し出されるような感覚を掴んだ。

 

 途中休憩を挟みながら、日が暮れるまで練習をした。

 家に戻った私は、ソファーに倒れ込む。

 なんか昨日より疲れた。今日中に飛行マスターになることはできなかったけど、上達していっているのは確かだ。

 あと数日、一所懸命取り組めば、マスターできると思う。

 私は夕食とお風呂を済ませ、布団に入る。日記を書くのも忘れてない。

 疲れている筈なのになかなか寝付けなかった。

 他に考えることも無いし、今私の記憶に残っていることを整理しようと思う。こうすることで新しい発見があるかもしれないしね。

 

 まず、当たり前のように使っていた「言葉」だ。これを覚えているから会話ができるし、文字も書ける。言葉さえ忘れてしまっていたら本当にどうしようもなかっただろう。

 この世界の基礎知識も結構、記憶に残っている。例えば、妖怪が居て、みんな空を飛べること。ここに例外が居るけどね。魔法の森の近くに人里があったような気もするし。

 道徳や常識だって覚えている。キノコという食べ物、ソファーという家具、人間や妖怪という生き物。人里という集落。無闇に人を殴っちゃダメとか、目上の人には敬語を使うとか。

 あれ? レティって目上の人なのかな。まぁ、敬語じゃなくても大丈夫だよね。

 他には何か覚えてたかな――

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 メリアルが飛行の練習を開始して数週間後、彼女は飛行技術を完全に自分の物にしていた。

 日々、練習を繰り返し、今や、速度調整や精密飛行もできるようになっている。

 しかし、メリアルは魔法の森を一度も出ていなかった。

 何故、彼女は森を出ようとしないのか。それにはある「訳」があった。

 

 ――スペルカードルール

 

 博霊の巫女など、幻想郷の有力者が相談して取り決めた新しい決闘法だ。

 スペルカードルールは主に、妖怪が異変を起こしやすくし、人間が異変を解決しやすくする、ということを理念に置いたルールである。

 他にも、「完全な実力主義を否定する」「美しさと思念に勝るものはなし」など、様々な決まり事によって成り立っている。

 このルールの下であれば、本来比べることすら難しい妖怪と人間が、対等に戦うことができるのだ。

 そして、スペルカードルールでは、「スペルカード」という物を使うという点が特徴であると言えよう。

 

 この決闘法は、魔弾や妖弾、飛び道具などで構成した弾幕で勝敗を決する。

 弾幕の構成によって技名をつけ、その技名を書き記した物がスペルカードである。

 勝負の際、このスペルカードを宣言する事で、スペルを使ったという事を知らせる。

 スペルを仕掛けられた方は、これを避けきるか、相手を倒すことによってスペルを攻略する。これを「スペルカードブレイク」という。

 勝負に使うスペルカードの枚数は戦闘前に予め決めておき、相手のスペルを全て攻略するか、相手を戦闘不能にする事で勝敗が決まる。

 前者で勝敗が決した時、負けた方に余力が残っていても勝負は決着となる。

 異変の場合は、解決側が勝利すれば異変解決となり、異変を起こした側が勝利すれば解決側は出直して、再挑戦となる。

 

 メリアルが森を出ないのは、このスペルカードルールに深い関わりがあった。

 スペルカードルールは異変解決時に使用すると限ったものではない。一種の遊びであり、スポーツでもあるのだ。そして、段幕ごっことも呼ばれ、広まった。

 小さな喧嘩の解決に使う事もあり、出会い頭にいきなり弾幕ごっこを挑まれる事もあるだろう。

 故に、弾幕ごっこを知らずに世渡りをするというのは、なかなかに不便なものである。

 その上、弾幕ごっこが弱いというだけで自身の株も下がってしまうのだ。

 そこで、遠出をするのは、弾幕ごっこができるようになってから、とメリアルは自分で決めていたのだ。

 

 彼女はまず、レティと共に、弾生成の練習から取りかかった。

 レティは弾を楽々と生成するが、メリアルはかなり手こずっていた。これもまた、記憶喪失のペナルティだと言えるだろう。

 メリアルはやはり、努力で実力の遅れを乗り越えていった。

 練習をひたすら重ねていく内に、弾生成、弾の軌道変更、弾の分裂、レーザー、など一つ技を習得すれば、より上の段階へ進む。努力の繰り返しで弾幕構成に必要な技術を身に付けていく。

 こうして、段幕ごっこの基礎を習得していった。

 

 弾幕の部品とも言える弾を完成させると、次は「設計・組み立て」と言える弾幕考案に取りかかった。

 技、駆け引き、個性、これらを織り混ぜ、数多い種類の弾を組み合わせていく。その上で「美」を忘れてはならない。

 敵を負かすことだけに囚われて、美しさを忘れてはいけない。美しい弾幕で相手を圧倒することも、強みであり、それが弾幕ごっこなのである。

 強く、技良く、美しく、この三つに重きを置いて弾幕を構成していく。

 構成が終われば次は練習。高難易度の弾幕を披露するには、やはり多くの練習が必要なのだ。

 類似的な対戦をレティと共に繰り返していく。

 メリアルの弾幕技術は、彼女の協力がなければ上達しなかっただろう。

 

 メリアルは弾幕ごっこを学んでいく内、その魅力に惹かれていった。

 好きな事に熱中している間ほど、時間は早く過ぎるものだ。

 気付けば冬。幻想郷中が寒さに震える季節であり、レティが活気溢れる季節だ。

 レティは冬の間、メリアル邸を出ていくようだ。この楽しい楽しい冬を満喫するためである。

 レティが居ない今、メリアルは外出の準備を整えていた――

 

 

 

 

◎◎◎◎◎

 

 

 <メリアルの日記帳>

 

 遂に明日は外に出る。今まで魔法の森に引き籠っていた、この堕落した生活を脱却できると思うとわくわくが止まらない。むしろ加速する。

 実を言うと行く当ては無いんだけど、何もしないでいるよりはよっぽどマシだ。

 ここまでの努力は涙無くして語れない。

 初めは空も飛べなかったんだよね。今では弾幕も張れるし、精密に弾幕を避ける事もできる。どれ程苦労したことか。

 ああ、感極まってきた。これじゃ眠れん。どうしたものか。

 早く明日にならないかなぁ。

 

 

 




 次回はやっと外出です。
 そうそう、この作品は回収しない伏線も出そうな感じなので、気を付けてください。

 ではでは。次回でまたお会いしましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。