東方記憶帳~過去を無くした小さな妖怪~   作:ガルナイド.

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 何故か前話で閲覧を止める人が多いようです……精進精進。どうも、ガルナイドです。
 
 今回は原作の主人公が……?


第三頁 博霊神社

 冬なのに快適温度、私ってサイキョーだー。

 私は改めて自分の能力の便利さを実感することとなった。

 

 今は冬、寒いのが当たり前だが、能力によって自身に春を纏わせている。

 この効果で周りは春同然なのだ。

 もう一つの能力、段幕ごっこでは役立つんだけど、便利さがなぁ……。需要があるから許そう。

 ここで一句。

 

 楽しいな 清々しいな 森の上  

 

 あ、季語を忘れてた。まあいいや。

 私は今、句の通りに森の上を飛んでいる。遂にまともな外出だ。

 行く当てはないので、とりあえず森を出ようと思ってる。

 しかし、ここでトラブルが発生中だった。

 初めての外出に興奮して、何も食べずに家を飛び出してしまった。そのせいですごいお腹空いた。

 軽い食事でもとっておけば良かった、と少し後悔している。

 だが幸運な事に、私はキノコの森、もとい魔法の森の上を飛んでいるのだ。

 森の上すれすれを飛んでいるので分かる。この森には驚くほどキノコが豊富なのだ。

 若干、毒々しい外観をした物もあるが、空腹には勝てますまい。

 私は森に降り立つと、キノコの物色を始める。

 キノコの知識は全く無いが、誰にでも出来るであろう技を使うとしよう。これで、食べられそうなキノコを探すのだ。

 

 ――茸符「外見判断!」

 

 嘘ですごめんなさい。弾幕ごっこに影響されて、でしゃばりました。

 弾幕ごっこを早くやってみたくて…… 

 

 勿論、練習で、ある程度はレティに付き合ってもらってた。

 でも、レティとやっていた弾幕ごっこは、練習用の類似的な物であって、本当の弾幕ごっことは、違かった。なんか、こう……燃えないんだよね。

 いや、今は食料調達の時間。弾幕ごっこはその内やる。とりあえず弱そうなの見っけて勝負吹っ掛ける。そんで勝つ。

 想像するだけでも楽しくなってきた。早くやりたいなぁ……。

 

 この森のキノコは、赤紫色や青色など、見るからに毒キノコのような見た目のキノコが多く、美味しそうなキノコが見つからない。美味しそうなのは、白色とか、茶色とかだよね。

 急ぐ必要もありそうだ。なんかここに居ると気分が悪くなってくる。視界がぼやけて、体がふらつく感じだ。

 さっさとキノコを見つけて森を出よう。

 えっと……オレンジ色――不味そう。紫色――毒ありそう。緑色――カビですか? 赤地に白の斑点――成長促進? 何それ。 

 しばらくすると、茶色のキノコが多く成っているキノコを見つけた。辺りを見回してみたが、茶色いやつの他に美味しそうな物は無い。

 茶色い種類キノコは、大半が日常的に食べれるのが多い気がする。だから食べる。

 本当はお鍋にして食べたいのだが、吐き気と空腹で今にも倒れそうだったので諦めるとしよう。

 私はキノコに付いていた土を払った。

 早速食べましょうかね。いただきまーす。

 そういえば、キノコって生でたべれるんだっけ……もう食べちゃったし、別にいいかな。

 

 ふむふむ、これはなんとも言えない味ですな……苦味と酸味があって…………美味しくない。

 でも、他に食べれそうなキノコ無いし。食べられないほど不味くはないし。良薬は口に苦しって言うし――

 私はキノコを全てたいらげた。癖はあったが、慣れればイケなくもない。お腹も満たせたし、もう十分かな。

 私は上昇を始めた。そろそろ情報収集をしないといけない。

 ただ、視界のぼやけが治らない。それに、さっきよりも気持ち悪くなってきた。森を出たら少し休憩しよう。

 

「ゲホッゲホッ……」

 

 …………なんか疲れた。

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 『白黒』

 

 魔法の森上空で浮遊をしている物体を一言で表せばこのように言えるだろう。

 この物体の正体は人間である。そしてこの人間、箒(ほうき)に乗って空を飛んでいた。

 箒が特殊なのか。風に飛ばされたのか。両者とも違う。

 空を飛ぶ技術を身に付けた人間だ。

 

 名は「霧雨魔理沙」という。職業は魔法使い。魔法を習得した人間なのだ。空を飛ぶ事ができるのは、それ故。

 この日、魔理沙は博霊神社へ向かっていた。深い理由は無い。単なる暇潰しである。

 彼女の家は「霧雨魔法店」という。いわゆる何でも屋を経営している。

 霧雨魔法店は、魔法の森の奥深くにある。

 魔法の森は、昼でも薄暗く、有害な胞子を撒くキノコが多く生えており、その所為で訪れる人はほとんどいない。

 しかし、魔法の森のキノコはの胞子は魔力を鍛える効果もを持ち合わせていた。魔法使いの魔理沙にとっては好都合なのだ。

 魔法使いでない者が魔法の森に入るメリットは、ほとんど無い。ましてや、霧雨魔法店の存在を知っている人は極めて少ない。

 故に、店にいても暇なだけで、困ることはないのだ。

 では、霧雨魔法店の収入が皆無である魔理沙は、どのようにして生計を立てているのか。

 

 彼女は蒐集家(しゅうしゅうか)である。魔法の森にはよく、価値のある物が落ちている事がある。

 拾ったものに価値がありそうなら、売って資金にするのである。

 しかし、それだけで生活費を賄うのはいささか難しい。

 魔理沙にはもう一つ、生活を続けるために行っている事がある。

 他人から物を借りるのだ。

 人々の助け合いを良く表す例だと思われるが、実際は全く違っている。

 一方的、かつ強引に借りていき、持ち主の元に戻ってこない。

 世間ではこれを「泥棒」と呼ぶ。魔理沙曰く、「死んだら返す」との事だ。

 死んだ後どうやって返すのか。故人に返されて、物を盗られた人は納得するのか。そんな事はお構いなしだった。

 魔理沙は全く悪びれていないようだ。

 ただ、魔理沙は博霊神社から盗みを働く気はない。本当にただの暇潰しだ。

 

 魔理沙は博霊神社へ行くついでに蒐集でもできればと思い、森の中を伺いながら空を飛んでいた。

 しかしその間、魔理沙は妙な物を見つけてしまう。大きめの人形のような物が木に引っ掛かっているのだ。

 かなり不自然な雰囲気であったが、もしかしたら値が付くかもしれないと、人形に近づく魔理沙であった。

 しかし、人形の正体に気付くやいなや、それを抱き抱えて全速力で神社へ向かう。

 

 ――何故こんな所で人が倒れてるんだ!?

 ――キノコの胞子にやられたか。

 

 魔理沙が人形だと思っていた物は少女であった。

 魔理沙は困惑していた。人が木に引っ掛かっている上、意識が無いのである。無理もないだろう。

 あいつなら何とかしてくれる筈だ、という必死の思いで彼女は博霊神社へ向かう。

 窃盗を行っている魔理沙とて、良心が無いわけではない。この少女をなんとか助けようとしていた。

 

 博霊神社には二分ほどで到着した。魔法の森と博霊神社は大して近くはない。

 だが、スピードであれば幻想郷でトップクラスの魔理沙にとっては容易い事なのだ。

 

「霊夢、大変だ! 人が倒れてたぞ!」

 

 神社の前に立ち止まった魔理沙は、大声で叫んだ

 すると、神社の奥から少女が現れた。

 危機感溢れる様子の魔理沙に対して、少女は妙に落ち着いていた。無愛想とも言えるかもしれない。

 

「一体何なのよ、五月蝿(うるさ)いわね」

 

 

 『紅白』

 

 神社から素っ気なく出てきた少女を一言で表せばこのように言えるだろう。

 彼女の名は「博霊霊夢」という。博霊神社の巫女である。

 

「だーかーらー! 人が倒れてたんだって言ってるだろ!」

 

 魔理沙の必死の訴えに反して、霊夢は尚(なお)も冷静に佇(たたず)んでいる。

 魔理沙は霊夢の人徳を疑った。

 霊夢には私が抱えている物が見えていないのか。そんな訳がないだろう。

 何故、あいつは助けに来ないんだ、心配すらしないんだ、と。

 魔理沙はこの怒りを霊夢に向けて思い切りぶつけた。

 

「お前はこいつを見て何故、冷静でいられる。それでも人間か!」

 

 霊夢は大きく溜め息をついた。馬鹿馬鹿しい、とでも言うように。

 霊夢のこの態度は、魔理沙の怒りをより掻き立てた。

 実際、霊夢は呆れていた。この馬鹿は、そこで寝ている奴が普通でない事に気付かないのか、と。

 

「このっ……」 

「あんたが冷静になるべきね。人間じゃないのは私じゃなくて、そこにいる奴よ」

 

 そう言って、霊夢は魔理沙の腕の中でぐったりとしている少女を指差す。

 魔理沙は始め、霊夢が何を言いたいのか分からなかったが、その言葉の意味を理解していくにつれ、呆気にとられていった。

 そして、少し考えるように俯(うつむ)いた後、抱えていた少女を置いた。

 霊夢の言葉が示していたのは、この少女が人外である、という事実だ。

 魔理沙に人外の気を感じる事はできなかった。強い妖怪は、人型に近いものが多い。しかし、ある程度は見た目で判断することはできた。

 妖精の類いであれば羽の有無で見分け、妖獣の類いであれば尻尾や耳で判断できる。

 しかし、この手の妖怪は判断するのが難しい。ほとんど人型であり、見た目は人間と何ら変わらないのだ。

 もし、自分の傍らに居るこの少女がその一種であれば、見分ける事はできないであろう。

 要するに、早とちり、勘違いであったのだ。

 

「……悪かった。キャラじゃなかったな」

 

 霊夢への詫び言の声はくぐもっている。

 自分が冷静でなかった事と、勘違いで霊夢を執拗に責めてしまった事に恥ずかしさを感じていたからだ。

 しかし魔理沙は、必ずしも自分のみに非があるわけではない、と思い始めていた

 確かに自分は冷静でなかった。

 しかし、それは当然な事なのではないか。倒れている人を見つけた時点で、冷静でなくなるのは不思議な事ではない筈だ。例え、倒れているのが人外であったとしてもだ。

 人外というだけで助けないのは差別でもあるのではないか。

 そんな考えは、次の霊夢の言葉を聞いた途端、どうでもいい事になった。

 

「そこの妖怪、別に危険な状態じゃないわよ。何をそんなに騒ぐ必要が……」 

「そうなのか?」

 

 ――そうか、人外であったから助けなかったのではない。自分が魔法の森から連れ出した時点で、もうすることは無かったのか。やはり、自分は早とちりをしていたようだ。

 

 

 

□■□■□■

 

 

 

「……うっ……うぅ……」

 

 目覚めてすぐに私を襲ったのは酷いめまいだった。

 めまいが収まると――はっ、デジャヴュ!? 違うか。

 てか、ここどこ? まさか、また記憶喪失?

 いや、大丈夫の筈だ。私の名前はメリアルで、ここは幻想郷で……ってココドコ?

 和風の部屋の、布団の上で眠っていたようだ。しかし、こんな所に来た覚えはない。

 確か、初めて外出して、お腹空いて、キノコ食べて、気持ち悪くなって…………何でここに居るんだろう。

 

「ハ、ハ、ハックション!」

 

 寒い。私の周りに春が無いようだ。

 至急、対策が必要であります。必殺、暖かい!

 この部屋を春で一杯にした事で、快適温度になった。やっぱりこうでなくっちゃ。

 突然ふすまが開いた。

 

「おぉ! 起きたのか! ……この部屋暖かいな」

 

 見覚えの無い人だった。金髪で白黒の洋服を着ている。昔の友人だろうか。 

 

「木の上で気を失ってたから、一時はどうなることかと思ったぜ。私が助けてやったんだ、少しは感謝しろよな」

 

 気を失う? 助けてもらった? 

 あー思い当たりあるね。キノコか。キノコ食べてから、どーも気分悪いと思ってたんだよね。毒キノコか。ってことは、命の恩人的な? 察しました。

 私は立ち上がって礼をした。

 

「ありがとうございます」

 

 目上の人には敬語を使う。これ常識。

 

「うん? ずいぶん生真面目だな。調子狂う」

 

 お気に召さなかったかな。まぁいっか。

 まずは自己紹介からした方がいいと思う。とりあえず、この人には通りすがりで助けてもらっただけで、友達ではない方に賭けて。友達だったら色々と拙(まず)いことになる。え? 私の事覚えてないの? って。

 旧友じゃないなら、あっちも自己紹介してくれる筈だ。

 

「魔理沙どうしたの。あっ、起きてたのね。……暖かい」

 

 もう一人部屋に入ってきた。

 新参者かっ。こちらは黒髪で紅白の和服を着ている。

 多分この人も恩人だ。これはもう自己紹介の空気だね。

 

「私はメリアルといいます。魔法の森に住んでいる妖怪です」

「霧雨魔理沙だ。んで、この紅白が霊夢だ。魔法の森に住んでいるのか……そういえば、森で、変な家が何年か前に出来てたな。そこに住んでるのか?」

 

 変な家、豆腐ハウスの事か。

 まぁ、あんな家がいきなり建てられてたら、変に思うわな。

 

「そうだと思います」

「そうか、私も魔法の森に住んでいるんだ。魔法使いとしてここは譲れないな」

 

 危ない危ない。まさかこの人も魔法の森に住んでいるとは。友達であった可能性が結構高かった事になる。

 助けてもらって結果オーライだけどね。

 って今、魔法使いって言わなかった?

 

「魔理沙さん魔法使いなんですか?」

「そうだが、珍しくさん付けで呼ばれたな……。ちなみに霊夢は巫女だ。悪さすると退治されるぜ」 

 

 この人に習えば捨虫の魔法が使えるようになるかもしれない。

 やはりここは単刀直入にお頼み申そう。

 

「捨虫の魔法、教えてもらえませんか?」

「お前が使うのか? 私もやろうと思えばやれるが……やる気はない。だからできない。悪いな」

「そうですか……」

 

 むぅ……ダメか。しつこいのは嫌いだし、ひとまず諦めよう。

 まぁ、助けてもらったんだし、お礼をするのはこっちかな。

 何でお礼をしようか。折角(せっかく)だから私にしかできないことを……

 

「そうだ。魔理沙さん、食べ物を持ってきてもらえませんか?」

「食べ物? 霊夢。食い物あったら持ってきてくれ」

「何でよ。一体何企んでんの。怪しい動きをしたら、どうなるか分かってるわね」

 

 さっき会ったばかりなんだ。怪しまれても仕方はなかった。

 でも、どうしてもやりたい事があるんだ。

 

「大丈夫ですから」

「……メリットは?」

「あります」

「ならいいわ」

「いいのかよ」

「ナイスツッコミです」

「おう。ありがとな」

「ボケてないから」

 

 霊夢さんは部屋を出ていった。多分、食べ物を取りに行ったんだろう。案外、楽だった。

 

 しばらくすると、霊夢さんが野菜を持って戻って来た。じゃがいもだ。

 霊夢さんはじゃがいもを投げてよこした。巫女が食べ物投げるってどうなの? と思ったが、この際気にすることではない。

 フッフッフ。私のもう一つの能力はこの使い道において、多大な効果を発揮する。その事を今、思いついた。

 私はじゃがいもに妖力を加えた。すると、じゃがいもが急に大きくなる。両手で持てるほどの大きさだ。

 二人もビックリしている。凄いでしょ凄いでしょ。

 こんな事ができる、私の二つ目の能力。

 

 

 

◎◎◎◎◎◎

 

 

 

<メリアルのメモ帳>

 

 ――大きさを変化させる程度の能力①

 

 私の能力の一つ「大きさを変化させる程度の能力」

 これは、触れた物体を任意に大きくしたり、小さくしたりできる。という物。

 大きくする場合、幅、高さ、奥行き、共に三倍程にした位まで大きくできる。小さくする場合は、共に三分の一程まで小さくできる。

 しかし、大きくしたものは、三日程で元に戻ってしまう。

 ちなみに、私が住んでいる家も、小さな家を三倍サイズに変えた物。要するに、三日以上の外出はできないのだ。

 

 

 

□■□■□■

 

 

 

「フフン、どうですか?」

 

 大きくなったじゃがいもを見て、二人は目を丸くしていた。

 ここまで驚いてもらえると、つい得意気になってしまうね。

 

「…………なんだこれ……」

「あんた、ちょっとこっち来なさい」

「私ですか?」

「そうよ、早く」

 

 私は霊夢さんについていった。それにしても、ここって神社みたいな所だ。そういえば霊夢さんって巫女だっけ。なら、ここは神社か。

 霊夢さんに連れていかれたのは台所だ。何するのか大体分かった。

 

「分かりました。食べ物は何処ですか?」

「察しが早いわね。これよ」

 

 霊夢さんは私の前に、野菜などの食べ物を持ってきた。

 とりあえず大きくする。カボチャなんか、持てないほど大きくなった。

 

「どうやってるんだ?」

 

 魔理沙さんだ。いつの間に来たんだろうか。

 

「私の能力ですよ。大きさを変化させる程度の能力です」

「便利な能力もあったモンだな。商売やったらどんだけ儲かるんだ?」

 

 それもいいかもしれない。を通じて人と接する事で情報が得られる可能性もある。

 それに、楽しそうだ。趣味として成り立つかもしれない。

 まずは霊夢さんをお得意さんにしましょうか。

 やはりここも単刀直入に。

 

「霊夢さん。数日おきに、あなたの所へ行くので、私はあなたの食べ物を大きくします。あなたは対価を支払います。どうでしょう」

「…………」

 

 霊夢さんは考え込んでしまった。

 やっぱり、とても良い話じゃないと、即断してくれないかぁ。

 

「じゃがいもってどのくらいの値段ですか?」

 

 まずはこの世界の金銭の価値を知らないといけない。交渉が不利になる。

 お金が欲しい訳ではないが、ゲーム感覚で楽しむためだ。

 

「このじゃがいもは高くない筈だぜ」

 

 魔理沙さんが答えてくれた。

 その後、何回か質疑応答を繰り返した。これで金銭感覚はバッチリだ。

 ただ、どうやって値段をつければいいか分からない。

 

「その都度で交渉し合ったらどうだ?」

 

 考えていた所へ、魔理沙さんがグッドアドバイスをくれた。

 確かにいいかもしれない。

 私が食べ物を大きくして、「今回はこの位の価格でどうですか?」と提案する。

 すると交渉相手は「もう少しマケて」と返すだろう。

 私は「少しだけですよ」と言うのだ。

 このようにお互いが妥協したり、大きく出たり、粘ったりするのだ。

 両者が納得いくまで繰り返し、最後には気持ち良く終わる。ミスする事もあるだろうが、それも面白そうだ。

 

「霊夢さん、そうしましょう! 今回はこの値段でどうです?」 

 

 私はメモに値段を書いて提示してみせた。私の金銭感覚が正しければ、かなり安いだろう。

 しかし、相手は命の恩人、このまま終わらせる訳にはいかない。

 

「と言いたい所ですが、助けてもらったお礼です。半額のこの値段でどうですか?」

 

 私は書いてある値段に斜線を引き、その半額の値段を書き直した。

 

「随分と乗り気ね。まぁそれで良いんじゃない?」

「交渉成立ですね! ありがとうございます! そうそう、三日で元の大きさに戻ってしまうので、それまでに食べてくださいね」

 

 しっかり、注意点を伝える事を忘れない。臨機応変にサービスをする。我ながら完璧だ。

 楽しいね。赤字になることはないから、相手の事をより考えて交渉できる。

 霊夢さんにお得意さんになってもらう事も忘れてはいけない。

 

「じゃあ……五日後にまた来ましょう。それでいいですか?」

「いいわ。来るときはこの神社にね。ここに住んでるから。後、お賽銭も忘れないように」

「やっぱり神社でしたか。なんの神様を祀ってるんですか?」

「さあね、偉い神様だと思うわよ」

「へぇ……」

 

 霊夢さんって本当に巫女なのかなぁ。

 食べ物投げるし、自分の神社の神様知らないし。

 

「あっ、そういえばここって何処なんですか?」

 

 すっかり忘れてた。

 ここが何処か知らないと帰れないし、また来れない。

 同じ森に住んでいる魔理沙さんなら、私の家まで送ってくれるかもしれない。

 箱家の存在を知っていたし。

 

「幻想卿の東にある、博霊神社よ」

 

 博霊神社、なんか聞いた事ある。参拝した事もある気がするんだけど……気のせいか。

 もし、気のせいじゃなかったとしても、霊夢さんみたいな人が、客をいちいち覚える筈ない。

 

 

「魔法の森はどっちですか?」

「おっと、良ければ送るぜ。四角い家だろ」

「はい、そうです」

「けど、もう帰るのか?」

「……もう少し居ましょう。帰っても暇なだけですし」

 

 そういえば、まだ私の事を全て説明していない。

 今後、付き合っていくのであれば、伝えなければならない情報があるだろう。

 私は記憶喪失なんだから。

 

 

 

 私は、記憶喪失の事、もう一つの能力の事など、色々と話した。

 もう一つの能力とは「自然現象を発生させる程度の能力」の事だ。二人は部屋が暖かかった事を不可解に感じていて、私の能力を聞いて合点がいっていた。

 「お前って随分と便利な奴だな」って言われちゃいました。否定はしない。

 食べ物大きくできるわ、周りが快適温度になるわ、ホントに便利だ。

 

 しばらく話した後、魔理沙さんに家まで送ってもらった。博霊神社までの行き方もちゃんと覚えた。

 交渉の本番は五日後。今日は、半額にしたからすぐに了承してもらったけど、次はそうもいかないだろう。

 五日後が楽しみだ。

 

 

 

 

◎◎◎◎◎◎

 

 

<メリアルの日記帳>

 

 

 今日は博霊神社へ行った。

 初めて敬語も使ったし、「商売」という楽しみも見つけたし、とても良い日だ。

 霊夢さんと魔理沙には感謝だ。

 気付いた事がある。敬語って思いの外、楽かもしれない。

 それに、なんか策士っぽくて格好いいかも。策士とか無理だけど。

 

 




 知らないキノコは食べちゃダメ、絶対。……はい。彼女は、魔法の胞子にやられて、判断力が鈍っていたのかもしれません。
 今回は原作設定を盛り込んだので、間違ってないか心配ですね。

 ではでは。次回でお会いしましょう。

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