デジタルワールド、デジタルモンスターが存在している世界の1つで空中に浮遊している「ラーク」という都市がある。その都市には究極体にして1つのデジタルワールドを管理しているクオンタモンが鎮座しており、デジタルワールドの未来を憂いていた。何度も繰り返されるシミュレーションにおいてデジタルワールドの平和は永劫ではなかった。それは突如の外的要因だけでなく密接している人間世界が原因だった。
長年デジタルワールドと人間世界は不干渉を貫いており、それは仮に人間がデジタルワールドへ迷い込むことがあってもクオンタモンの能力にて人間世界へ退去させることが出来たのが理由の1つである。そして1番大きな理由はデジモンが人間世界へ現れてもその存在を人間が認識できないことだった。元々別次元の存在であるデジモン、しかもデジタルという特質も相まって人間には見ることも触ることもできない。これがお互いに不干渉を継続される2つの世界の関係だった。
しかし、クオンタモンが存在しているデジタルワールドの隣にある人間世界ではホログラム技術の発達により、以前とは違いデジモンの姿が都市伝説として広まることになっていた。ホログラムを空中に映し出す技術はデジモンを条件下であるが人の目にデジモンを認識させる要因となった。人間世界へ突如出現するデジモンの数は今は少なくとも今後2つの世界にどういう影響を与えるかは未知数。この先の未来を億を超えるシミュレーションの結果、どうしても平和な未来の妨げになるのが人間という存在だった。クオンタモン自体に人間との接触が皆無なこともあり手をこまねいていた。そんなクオンタモンに異世界からの来客が来たことで話は進みだす。
「ん?なんじゃ、このラークに時空間の歪みを検知?我の力で常に監視されているこのラークに?」
ラークは特殊な雲によってデジタルワールドとはいえ外からの干渉を防いでおり、都市内はクオンタモンの能力にて空間そのものを監視されている。よって空間に何か異常があれば即座に処理を行うことが可能である。しかし、空間だけでなく時空間そのもに異常となれば話は変わってくる。未知のエラーかと判断し、すぐさま信頼できる護衛のブルムロードモンの足元にゲートを出現させクオンタモンがいる広間に転移させる。
「・・・これはクオンタモン様、どうなさいました?何の前ぶりもなく御身の前に召集させるなど、これまで1度もなかったことを・・・」
「うむ、すまぬが今は素早い対処を目的としておる。お主は我が自体の把握を終えるまでにここにて護衛を務めよ」
「御意!」
□ ブルムロードモン
・世代:究極体
・属性:ワクチン
・タイプ:妖精型
騎士の姿でありながらどこか植物を連想させるブルムロードモンはクオンタモンの話を聞き、即座に臨戦態勢で広間に留まる。そんなブルムロードモンを
「これはっ!?」
「ほう?」
ブルムロードモンは主を守る為にクオンタモンの目に出る。クオンタモンは未知のゲートに興味をそそられた様にしている。
「ご機嫌用、ラークの管理者クオンタモン。私は
「人間、だと?」
ゲートから現れたのは御神楽ミレイと自称した1人の人間の女性だった。まさか人間が来ると思わなかった2体は1体は警戒を強め、1体は興味をそそられていた。
「このラークに事前に何も連絡をしないとは、どうやら人間は礼儀を知らんようだ。去れ、主には指でさえ触れさせん!」
ブルムロードモンはゲートを独自に出現させるほどの力を人間が持っているのか彼女の背後にいるかもしれない存在に警戒を緩めずにいた。
「主を守るその姿勢に好感は持てるけど、失礼を承知の上でここに参上したわ。ことは世界の理に関係する事案かもしれないの」
「世界の理とな?ほう、ほうほう、ますます興味深い」
「主よ、前に出てはなりませぬ!」
ミレイの言葉に興味を示し、身を乗り出すクオンタモンに慌てだすブルムロードモン。しかし、そんなブルムロードモンをクオンタモンはたしなめる。
「すぐ頭に血は上るのはそなたの悪いところじゃぞ?それによーく観察してみよ、ゲートにこれはまた強大な存在の気配に気づかんのか?」
「ゲートに?・・・・・・ッ!」
ゲートからミレイにつづくように現れたのは1体のデジモンとさらに1人の人間だった。デジモンは全体を白と黒で色をわけており、背中の12枚の対の翼は天使と悪魔を連想させられる。
「このゲートはあのデジモンの能力か!主と同系統の能力だと!?さらに、また人間だと?」
「デジモンは私のパートナーであるマスティモン、そしてそちらにいらっしゃるのは『イグドラシル』よ、一言でいうなら『デジタルワールドの管理者』という『ホスト』よ」
□ マスティモン
・世代:究極体
・属性:ワクチン
・タイプ:天使型
デジモンに対して新たにゲートから出てきた人間は一見は子供のように見られる。金色の長髪は2つ結びにしており、服装は白い令嬢を思わせるロングスカートのドレスをまとっていた。
「その天使デジモンにも興味あるが、イグドラシルじゃと?デジタルワールドの管理者とはこれは大物じゃの・・・」
「信じられるのですか主!?」
「これこれ、ゲートの力があるに関わらず奇襲も何もなしに堂々と目の前から登場するなど、力の差がどれだけあるかの明白じゃろ」
「あら、平行世界の存在に対して案外と落ち着いているのね」
「我のシミュレーションには他の世界のデジタルワールドも含めておったわ。多少他のデジタルワールドかエリアからの干渉はあったしの。それにゲートは我だけの専売特許ということとはあるまい」
長いデジタルワールドの歴史の中で他のデジタルワールドからの訪問者というのは存在されおり、それを知っているクオンタモンは平行世界とい存在にはそこまで驚いていなかった。
「しかし、そこのイグドラシルという管理者には驚いてるぞ?我でも解析できんデータ構造、これは本体ではあるまいよ」
「頭は回るようね、話がややこしくなることがないようで何よりだよ」
先ほどから黙っていたイグドラシルが口をひらいた。どうやらクオンタモンたちを査定していたようだ。
「管理者となると我のことは?」
「勿論、ここのデジタルワールドのことも君のことも知っていたよ。私や他のホストのいないデジタルワールド自体に興味があったしね。まあ、デジモンと人間の間に問題なさそうだから放置されていたのかもしれないしね」
「放置とな・・・・・・。となると我はここに
「それは私には分からないよ、所詮わたしはホストだからね。でも、悲観することはないよ。今のところここの2つの世界の関係は良好みたいだしね。それに以外と私でも演算できないことは起こりうるから、主に人間のせいで」
「・・・これはますますシミュレーションを急がねばならぬか(主観が入っていそうじゃな)」
イグドラシルという高次元の存在とクオンタモンの話し合いにブルムロードモンはついていけず見ることしかできなかった。ミレイはイグドラシルの後ろで秘書のように立っていた。イグドラシルとクオンタモンの会話は2つの世界の管理に関する話といっても過言ではなく、それは2体の超高度な頭脳の中で完結しつつあった。
「君は自分がパーツの1つだと癇癪を起す訳ではないんだね」
「それを真に証明することは出来るのか?そんなこと真の神しかできん御業じゃ。我はそこに我という自我があるかぎり、存在が続くかぎり我のやりたいことをやろう」
「・・・いいね、その
「それはそれは、その者たちの管理は大変だろうじゃろ。いやその者たちの中に苦労人がいそうじゃな」
「そんなところが可愛いんだよ」
お互いの世界との干渉については本人たちの間でとくに問題がなく終わったようだ。見守っていたブルムロードモンは安堵し、ミレイはゲートへ向かっていた。
「で、ここに来た本当の理由はなんじゃ?」
「お、気づいていたの?」
「2つのデジタルワールドの関係はそなたたちが来ようと来ないとあまり変化はなかった。では、これまでの話はこちらの性格や思考を見極めるためのものであろう?」
今までの管理者同士の会談が本題前の前座だということに言葉を失うブルムロードモン。イグドラシルはクオンタモンの考察能力の高さに満足したのか微笑してゲートを振り返る。
「君に提案があってね」
「提案?依頼ではなく?」
「何も強制じゃない、決定権は君にある」
再びミレイがゲートから現れる。その腕の中には1体のデジモンが眠っていた。
「ん~?パンプモンじゃと?まさか、そのデジモンが提案のタネか?」
「そうだよ、解析してみるといいよ、その方が話が早いから」
ミレイに抱きかかえられていたのは完全体デジモンのパンプモンだった。
□ パンプモン
・世代:完全体
・属性:データ
・タイプ:パペット型
イグドラシルに言われるままにクオンタモンはパンプモンも解析しはじめた。スーパーコンピューターすら相手にならない処理能力で解析を進めていくなか、クオンタモンの表情が険しくなっていく。
「なんじゃこれは・・・」
「どうなさいましたか主?」
「なんじゃ、このコードの並びは?」
もはやクオンタモンの顔に余裕の表情はなく、汗をかいていた。この様子にブルムロードモンは寝ているパンプモンを警戒しはじめた。
「確かにデジコアも存在しておるし、正真正銘のデジモンじゃ。しかしなんじゃ、我らデジモンに存在しない外づけの
焦りを通り越して興奮しているクオンタモンにをイグドラシルとミレイは愉快そうに見ている。
「ええい!我でさえ解析できない領域を持っているこのデジモンは何者じゃ!?知っていることを話せ!」
しびれを切らせクオンタモンは解析の手を止めてイグドラシルとミレイに向き直る。
「一言でいえば、このデジモンは元人間よ」
「・・・何?それは人間の記憶をインストールされたということではなく?」
「正真正銘の元人間よ。デジタマにもならずパンプモンの姿で生まれた存在がこの子よ」
「馬鹿な!?デジタマを通さぬデジモンなど、もはやデジモンの姿をした何かだ!」
これまで会談を静観していたブルムロードモンが叫びだした。それはそのはず、デジモンという存在は必ずデジモンのタマゴである「デジタマ」から生まれるのが常識である。デジタマから生まれ長い年月の経験を糧に究極体へと至る、これが1体のデジモンとして完成する人生を送る。完全体とは究極体にいかずともデジモンの世代のなかでは上位に位置する存在でもある。ブルムロードモンは警戒度がさらに高まりパンプモンに自前の槍を向ける。
「矛を納めよ。根拠は?」
「突如として『時の狭間劇場』に現れたの」
「時の狭間劇場とは?」
「基本的にホストや時空の旅人しか干渉を許されていない場所よ。こちらも他のホストの協力のもと解析した結果、彼の記憶の中に人間の記憶がありデジモンとして自己処理が破綻もしないことが分かっているわ。今は人間のように夢を見ていると言っていいわ」
「なるほどのお・・・人間のような夢までみるか。そんなことが可能なのは
クオンタモンの疑問にミレイとイグドラシルは黙ってうなずく。クオンタモンはしばらくの間、黙って腕を組み思考の海に沈んでいた。
「デジモンではなく人間として部分が残っておるというのは?」
「先ほどアナタが言った水のように生まれる情報は感情よ」
「なんと!?これが感情なのか・・・。それはお主が人間だから分かることか」
「ええ、一応私も元人間といえるし、その情報量は記憶から生まれる感情に他ならない」
「生まれては消え、それなのに完全に消えることもなく次の生まれる情報の糧になっておる。これが人間の感情か、何という力の塊か・・・」
クオンタモンは人間の感情をデータとして初めて触れることができ戦慄していた。デジモンは経験から己を作り変えることはできでも、感情を力に変えるということを基本的にしない。それが出来るデジモンは『テイマー』という人間が関係してくる。過去に怨念と思われる情報が集まるデジモンもいるのは確認しているが、それは複数の個体が影響しているからだ。個人だけでこれだけの情報量を生み出すのは理解の範疇をこえていた。その感情という力を合わせて共鳴するデジモンと人間の関係を知っているミレイは黙って余計な事を吹き込まないようにクオンタモンを見守る。それはイグドラシルとの約束で、人間とデジモンの繋がりにどんな感想を持ち、それから人間をどう扱うかを本人に答えを出させるためである。
「この者を我にどうしろと?」
「別にどうでも、関心がなければこちらで処分しよう。何なら劇場の下働きにしてもいいさ」
「・・・我の心境もある程度知られておるか。こちらのデジタルワールドと人間世界の関係も混みでの提案か。・・・よし、この者は我が面倒を見るとしよう」
事情をすべて理解したクオンタモンは少し思考すると、この未知の塊であるパンプモンを引き受けることにした。
「我が主よ、危険です!」
「よいよい、もしも時はすぐさま処分を下す。何ならお主に処分は任せるのじゃ」
もちろん主第一のブルムロードモンは反対を出すがクオンタモンはそれを却下した。しかし主の決めたことと、いざとなれば自分が処分できることを約束されたブルムロードモンは折れるしかなかった。ミレイからパンプモンをブルムロードモンは巨大な片手で受け取った。パンプモンの眠りは深いようでまったく起きる気配すらない。
「ちょうど人間に対して知識を深めないと思っておったことだし、良い研究対象を見つけたと喜ぶことにしよう」
これから自分達の世界の未来を憂いていたクオンタモンにとってちょうどいい観察対象を得ることができる。何が何でも手にいれたいとクオンタモンは思っていた。イグドラシルは何の問題もなくこの特殊な会合が終えあることに胸をなでおろす。
「こっちが弱みに付け込んで押し付けた結果で申し訳ないね」
「なになに、お主たちのような存在とも関り会えたこともあり、こちらとしては利点しかないのじゃ。しかし、お主たちはこの者を利用しないのか?」
「この子とは違うけどデジモンの中に人間という存在に嫌悪感があってね、何らかの拍子に手にかけそうなんだよ」
イグドラシルの何とも言えない苦虫を嚙み潰したような顔から何かを察して深く追求しないクオンタモンであった。
「ミレイも悪いね、君が見つけて来たんだし後輩として劇場で下働きをさせていいだろうけどね」
「いえ、特に今の私の環境に文句もないし不満もないわ。クオンタモンもありがとう、感謝しているわ」
「さきも言ったがこっちに利点があるので気にする出ない」
自分もそうだが人間としてでなく新たな存在として受け入れてくれた世界にミレイは感謝していた。ミレイはこれからパンプモンに降りかかる問題を少し心配しているが、クオンタモンに任せれば悪いようにならないと確信し感謝をあらわした。
「じゃ、そろそろお暇するよ。長い時間の交流は危険だしね。もし何かあればこの『デジヴァイス』にメッセージ送るから」
イグドラシルが差し出したのはデジモンゲームのタイムストレンジャーでレンジャーが使っていたデジヴァイスの色違いだった。色は深緑である。クオンタモンは受け取ったデジヴァイスを興味深そうに手でいじる。イグドラシルから何も注意事項がないということは勝手に解析しても大丈夫だということも理解する。
「おお、すまんの。この機械はお主が?」
「いや上のお手製だよ、きっと
「うむ。ではまた会えるのは理が破綻したときか?」
「そうだね、普段は混じりあうこともない世界が干渉したんだ。これ以上の接触は無用だろ」
そう言ってイグドラシルは手を軽く振って、ミレイは綺麗にお辞儀をしてマスティモンと共にゲートに消えていった。
「よろしいのですか我が主?」
「お主も心配性じゃのう。あのような者たちが何も手を出さなかったのは理由があってのことじゃろ。消去や凍結、圧縮処理すらしないことを見るとこのパンプモンの記憶は上のモノにもお気にめしたことだろうて。とりあえず、そのパンプモンが目を覚ますまで待つか」
ブルムロードモンの手に収まっているパンプモンを楽しそうに見るクオンタモンにブルムロードモンはそれ以上何も言わず従うことにした。これからの未来どうなるかはダレにもわからない。
ちなみにこの後に
「え?なんでクオンタモンが目の前に?うわあああ!かわいいぃぃ!!声そのままだああ!!」←興奮して感情があふれ出しノーブルパンプモンへ進化
「なんと、究極体へ進化したじゃと!?」
「あ、すいません、落ち着きました」←パンプモンへ退化
「今度は自分で退化じゃと!?」
「ん?うぉいっ!?うちがパンプモンになってる!?」
というカオスな初会合があったようだ。
主人公が眠っている間に行われた、本人の意思なし売買の様子でした。
イグドラシルが人間体をとってくれたので二次小説に登場させやすくなったと思います。でもホメロスは口調が分からないので登場の予定は今のところなしです。ミレイもセットで出せるのが便利すぎます。
目を覚ましたパンプモンとの話は今のところ書くかは未定です。
このように前日譚をちょくちょく挟んでいくと思いますので、嫌いな方はご注意ください。楽しんでくれたらうれしいです。
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