葉隠傭兵団シリーズ   作:ビリーT

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戦闘編です。上手くメック戦が描けていれば良いのですが。



葉隠傭兵団の襲撃・後編

●惑星フナン極点観測所近傍:3025年1月28日深夜

 

「ブレイクリーダーよりブレイク03。調査部隊の状況はどうか」

「こちらブレイク03。リャオ人達は制圧したとの報告有り。引き続き調査を続行するとの事であります」

「ブレイクリーダー了解。それより、メックの熱源反応はどうか? そろそろリャオ軍も何らかの動きを見せる頃だと思うが」

「現在の所反応無し――いや、前方0時方向に僅かな感あり。恐らく中量級メック一機の反応と思われます」

「それで、こちらに向かってきているのか?」

「速度からみて10分後に視認できる距離に到達すると思われます」

「了解した。ブレイク02、ブレイク03。相手は一機だ。我々の火力ならば問題無いだろう。だが念の為警戒を厳にせよ」

「ブレイク02了解」

「ブレイク03了解」

 

 リーダーは乗機ウオーハンマーの操縦席で思う。索敵性能に長けたライフルマンを用意しておいて良かったと。さて、少し遊んでやろうか。

 そして10分が経過した。予想会敵時刻だ。

 

「ブレイク03より各位。敵メックの視認完了。恐らくリャオ軍の傭兵で機体はオストソルです」

「ブレイクリーダーより各位。射程に入ったら各機散会して包囲殲滅せよ」

 

 それにしても傭兵部隊が圧倒的に不利な状況で立ち向かってくるとは珍しい。余程ボーナスでも弾まれたのか、それともリャオへの忠誠が高いのか。

 その時だった。敵メックから何かが大量に発射された。それは地面に着弾し、大量のスモークを吹き出す。完全に敵メックの視認が不可能になってしまった。

 

「ブレイク03! レーダーで敵メックが捕らえられるか!」

「駄目です! レーダー波を乱す煙幕の様です!」

 

 ええい、小細工を弄しおって。

 

「仕方無い、煙幕へ突っ込め! 視認してしまえばどうにでもなる!」

「ブレイク02了解」

「ブレイク03了解」

 

 メック三機が煙幕へ向かっていった。しかしブレイクリーダーは知らない。これが罠で有る事を。

 

●惑星フナン極点観測所近傍:3025年1月28日深夜

 

「……Hotel03よりHotel01。敵メック三機が予想通りに煙幕へ突進を始めた」

「おーけー、予想通りだ。さあ、ジャンプ全開で接近するぞ!」

「Hotel02了解」

「……Hotel03了解」

 

 我々は敵の背後から急速接近する。先程までは敵レーダーの範囲外の窪地に伏せていたのだ。只でさえ敵の機動力はこちらより遅いのだ。あっと言う間に接近出来るだろう。そしてその時には背後から狙い撃ち放題だ。

 それからすぐに敵メックが視認できた。時折煙幕を切り裂いてレーザーが飛び交う。どうやらクルツの奴は上手いこと陽動している様だな。

 

「Hotel01より各位。射程に入ったら適宜射撃を開始せよ。他の作戦は追って指示する」

「Hotel02よりHotel01、その指示はどうかと思います!」

「良いんだよ。ラッキーヒットでも当たれば儲けもの。どのみち遠距離での撃ち合いはこちらに不利だ。接近してからが我々の本領発揮さ」

「ううー、信じてますからね」

 

 全く、中島君は心配症だなあ。

 そして敵は案の定混乱し始めた様だ。前に向かうべきか後ろの我々を攻撃するか戸惑っている。よーし、狙い通りだ。

 

「今だ、ウォーハンマーの下半身に火力を集中させろ!」

 

 二機のフェニックスホークの大口径レーザーとパンサーのPPCが、敵ウオーハンマーの脚部に集中する。我々の射撃は全弾命中した様だ。そして、一度に大ダメージを受けたウォーハンマーが転倒する。

 

「よし、私とHotel03はウオーハンマーの背に接敵する。一気に脚を蹴り折るんだ! Hotel02は牽制を頼む。加熱は気にするな! 一気に畳み込め!」

「Hotel02、了解」

「……わかった。Hotel03、格闘戦用意」

「Hotel04、聞こえるな? そちらはマローダーを陽動せよ」

「……Hote……4……了解」

 

 むう、煙幕の所為で通信にノイズが乗っているのか。ちょっと強力すぎたか。ともあれ、今がウオーハンマーを仕留める絶好の機会だ。

 私とマリーネブラウ君のフェニックスホークが、ようやく立ち上がったウオーハンマーの背後に着地する。

 元々ウオーハンマーは火力を重視している為に70t級としては装甲が薄い。しかも脚部は部分遮蔽に入る事が前提の為なのかかなり薄いのだ。

 先程の射撃で右脚の装甲が全て剥げ、機体中枢が露わになっている。今なら上手くすれば蹴り折れるかもしれない。

 我々の着地と同時に、ウオーハンマーの左腕に中島君のPPCが着弾する。装甲が派手に融解してゆく。

 

「今だ! 全力で蹴り込め」

「……えい」

 

 ウオーハンマーの右脚にフェニックスホーク二機の蹴りが命中する。先程迄のダメージと合わせて、とうとうウオーハンマーの機体中枢が耐えられなくなったらしい。人間で言うと太腿に当たる部分から脚が折れ、転倒する。

 しかし、丁度ウオーハンマーの右側面射界に入っていた私の機体には、ウオーハンマーの置き土産がダメージを与えていた。しかし、右半分だけだったため、致命的な損害では無い。

 

「Hotel04、一旦離脱。加熱が収まったら次はマローダーだ」

「……了解」

 

 敵は指揮官機が沈黙した事で余計に混乱している様だ。ライフルマンがこちらを向いてACを撃ち始める。しかし、フェニックスホークの全力ジャンプに命中させる事は難しい。我々は難なく距離を置くことが出来た。

 一方、マローダーはクルツ機と撃ち合いを続けている。どちらも装甲がかなり剥げてきている様だ。そして最初にばらまいた煙幕もそろそろ薄くなってきている。

 4対2となったが、まだ重量敵にはあちらが有利だ。転倒しているウオーハンマーも接近すれば射撃してくるだろう。さてどうする。

 その時、偶然ではあるが、敵ライフルマンの頭部へ中島君のPPCが命中した。ライフルマンの頭部装甲ではPPCには耐えられない。間一髪で敵パイロットは射出座席のスイッチを押すことに成功した様だ。寒空にパラシュートが開くのが確認できる。

 

「Hotel01より各位。後はマローダーだけだ。有利な位置を取りつつ片付けろ」

 

 そして程無く、マローダーのパイロットが降伏を申し出てきた。我々の勝利だ。

 

●惑星フナン極点観測所:3025年1月28日深夜

 

「取り敢えず所属と官姓名を名乗って貰おうか? 我々は無法者では無い。アレス条約に則って捕虜の扱いを行う事を保証する」

 

 主力のメック部隊が壊滅した事を知ると、観測所を制圧していたワスプのパイロット達も降伏した。我々は観測所の人員を解放し、臨時に会議室を借りて捕虜の尋問を行っている。

 

「……その件だが、フナンのコムスター司教に連絡を取って貰えないだろうか。残念ながら、その後で無ければ何も話す事は出来ない」

「何でまたコムスターに? HPG通信を使いたいのです?

 

 クルツが問う。普通のメック戦士ならばコムスターに用事があるのは遠距離連絡位だろうし、何よりHPG通信には金が掛かるので滅多に使う事は無い筈だ。

 

「……あなた達、ダヴィオン正規軍じゃないの?」

 

 マリーネブラウ君が重ねて質問する。小首を傾げている所を見るとまるで子供の様だ。確か、彼女が最初の偵察の時に今年1月1日付け編成表に無い部隊と言っていたな。

 

「我々はコム・ガード所属だ。ダヴィオン軍に偽装していた事は認めよう。その上で、司教と連絡を取らせて頂きたい」

「隊長、なんか面倒な事になってきた気がしますよ?」

「奇遇だな中島君、私もそう思ってきた所だよ。取り敢えず観測基地の人間に頼もう。マリーネブラウ君、一応妙な動きをしないか付きっきりで監視していてくれ」

「……分かった、隊長」

 

 しゅっ、しゅっ、と謎の動きをして彼女は答えた。

 それから20分程経っただろうか。コム・ガードの人間だと言った敵の隊長が戻ってきた。何でも、基地指令から我々葉隠傭兵団に通信が入っているらしい。

 

「やあお疲れ陳中尉。取り敢えず無事に生き残っている様で何より」

「いや、社交辞令は良いですから。で、我々は帰投して良いんですか?」

「ああそれなんだが――この戦闘は無かった事になったから」

「え? どう言う事なんですか指令!」

 

 中島君が叫ぶ。当然だ。戦闘が無かったなら報酬も発生しないからだ。

 

「本日観測されたダヴィオン軍のフナン襲来は無かった。ジャンプポイントの記録ミスと言う事で処理される。当然、君達の戦闘も無かった。それ故、報酬も無しだ」

「冗談じゃありませんよ! 我々のメックの装甲は剥げているし、オストソルの武器も破損しているんですよ! 修理代も出ないんですか!」

「そう起こるな中島少尉。良いか、戦闘は無かった。"メック部隊も居なかった"、この意味は分かるな?」

 

 あー、そう言う事か。コムスターめ、メック八機と引き替えに基地指令と取引したな。修理すれば使えるものだから、我が基地指令殿が首を縦に振ることも分かる。

 

「……つまり、全て接収して良いと?」

「いや――悪いが回収部隊はこちらから派遣する。君達も回収部隊の到着を待って帰投せよ。悪い様にはしない。私を信じてくれ」

「はいはい、分かりました基地指令殿。一機位は期待して良いんですね?」

「"悪い様にはしない”だ」

「と言う事だ、中島君。どうやら我々の部隊に新しいメックが派遣されるようだよ」

「むー、分かりました。そう言う事なら我慢します。指令、言い過ぎた事をお許しください」

「物わかりが良くて助かるよ。それでは基地で待っている」

 

 それから二時間後、我々は無事に基地へと帰り着いた。

 




何とか葉隠傭兵団は戦闘に勝利しました。
実際のボードゲームでも割と重量が上の部隊に勝てたりするんですよね。
私は一度、パンサーでマローダーを封殺した記憶があります(勿論他の機体の攻撃が無ければ倒せなかった)。
さて、襲撃編はあとエピローグを残して終わりです。
大体お約束なオチが待っていると思ってください。

最後になりましたが、この拙い文章を読んでくれる皆さんに感謝を。
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