葉隠傭兵団シリーズ   作:ビリーT

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葉隠傭兵団の冒険!!・後編

●惑星フナン・リャオ軍基地近郊の都市:3025年4月14日深夜

 

バーを出てすぐに接近する足音に気付いた私は、小走りに駆け出した。

路地を曲がると、足音もこちらの方向に近づいてくる。

これは完全に私がここに来ることが分かっていた動きだな。あのマスターが情報を売ったのか、それとも……いや、今は考えるまい。基地に帰ってからの話だ。

 

そのまま10分ほど追いかけっこを続けたが、ついに行き止まりだ。

やれやれと溜息を吐くと同時に、三人のサングラスにレインコートを羽織った男達が拳銃をこちらに向けて告げた。

 

「ガブリエル・陳中尉ですね。我々とご同行願いたい。もちろん返答は期待していません。なおこれはお願いではありません」

 

私は両手を挙げて男達の方を向く。

 

「……ダヴィオンの諜報員だろ? まったく、こちらも赴任して3ヶ月じゃなければもっと地理に詳しくなれたものだが。アレス条約は遵守してくれるのか?」

「我々はメック戦士ではありませんので。もちろん協力的な態度を取っていただけるのであれば暴力は使いませんよ。だが反抗的であれば……後は分かりますね?」

 

痛いのは嫌だなあ……。諦めて付いていくしかないのか。小隊はどうなるのだろう。

そう逡巡している時、路地の入り口に軽いホバー音が轟いた。我が小隊のスキマーだ。

 

「隊長、お怪我はありませんか!」

「……わたしもいる」

 

この声は……中島君とマリーネブラウ君! どうやってこの場所を突き止めたかは分からないが、これで状況は好転した。

諜報員のうち二名が拳銃を中島君達の方へ向ける。彼女達と諜報員の間合いは5m程。中島君の獲物は――先祖伝来の日本刀だ。だが精々間合いは2mほど。圧倒的に拳銃に対して不利だ。

そしてマリーネブラウ君は素手である。ただし、柔術の構えを取っていた。

 

「陳中尉、部下を止めるよう命令して貰えますか?」

 

諜報員のリーダーらしき男が私に告げる。

 

「だ、そうだ中島君。後は君達に任せた!」

 

そう言って私は地に伏せる。雨で濡れた路地は冷たかった。

 

「――了解、隊長。はあっ!」

 

中島君は5mの間合いを一度に詰め、諜報員の一人の拳銃を叩き落とす。

居合道の動きだ! 実は彼女の剣術は話だけ聞いていて、実戦を見たことが無い。それはそうだ、私達はメック戦士。基本的にメックで闘う事が主任務だから。

こんな達人級の所作が出来るとは……。益々頭が上がらないな、これは。

中島君の居合いが決まるのと同時に、もう一人の諜報員はマリーネブラウ君の背負い投げで宙を舞っていた。柔道の試合なら「一本!」と判定が下るだろう。彼女は変なポーズを偶に取っていたが、格闘技まで修めていたとは気付かなかった。

一気に不利になった諜報員のリーダーは、拳銃を発砲する。しかし、慌てて撃った弾丸は彼女たちには命中しない。

 

「ゲルト少尉、もう一人を始末して! あたしはこっちを片付けるから!」

「……分かった」

 

私は路地を転がって隅へ移動。服が汚れるのを気にしてはいられない。諜報員のリーダーが私を人質にする可能性もある。彼女たちの邪魔をしてはならない。

 

「ええい、拳銃を持たぬ相手に不甲斐ない! だが調子に乗るのもそこまでだ」

 

諜報員のリーダーが拳銃を中島君の方に向けて強がりを言う。

 

「怯えているのはあなたでは無くて? ダヴィオンの諜報員さん。あたしはこの間合いからでもあなたを殺せる。あなたはメック戦士では無いし、ここは”戦場”でもない。この意味は分かるわよね?」

 

おお怖い。

しかし、中島君の威嚇は効かなかった。諜報員のリーダーが拳銃のトリガーを引こうとする。

 

「――無駄よ。せい!」

 

中島君の居合いが決まる。5mの間合いがまるで意味の無いものかの様に。

残心を決める中島君の後ろで、諜報員のリーダーが倒れる。

 

「安心しなさい、峰打ちよ。あなたは後で沢山お話しして貰わなきゃいけないから」

 

残る一人もマリーネブラウ君が処理していた。こちらは柔術の絞め技だ。

あれ? うちの女性陣って強くないか?

もう起き上がっても大丈夫だろう。私は立ち上がる。

 

「隊長、お怪我はありませんか」

「中島君にマリーネブラウ君、助かったよ。君達が来なければ私は今頃この世にはいなかっただろうね。しかし、どうやってこの場所を知った?」

「ジャケットの裾を見てください、隊長。発信器を付けていたんですよ。隊長が基地を出て行く前に」

「え、なんで私が今日街に行くのを知ってたんだ?」

「いや、定時報告メールはあたしの所にも届いていましたので。で、隊長が出て行くのを見つけて発信器を付けた上、念の為ゲルト少尉と二人して街で待機していました」

「なるほどそう言う事か。メールの宛名欄を見落としていた私も駄目だな」

「これからは一人で行かず、必ず護衛を付けてください。いいですか、そもそも――」

 

いかん、これは長くなるパターンだ。

 

「まあまあ、濡れ鼠のまま話すのはどうかと思うよ、中島君。さっさと基地に戻って風呂に入ろう。話はそれからだ、いいね?」

「――分かりました。ゲルト少尉、無理して三人乗れる?」

「……頑張れば乗れる。三人目はちょっと苦しいだろうけど」

「だ、そうです隊長。三人目に甘んじて貰えますね?」

「はいはい、分かった分かった。頼むよマリーネブラウ君。安全運転で」

「……了解」

 

それから我々はスキマーに無理矢理乗り込み基地に戻った。

しかしスキマーの三人目は辛かった。振り落とされそうになったし。どこが安全運転だよマリーネブラウ君。

そしてこの後、基地で私がこってりと中島君に搾られたのは言うまでも無い……。

 

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