黒服がシャーレの先生になった世界線   作:黒服先生

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ゲーム開発部と日帰り旅②

 シャーレを出て、鉄道にて百鬼夜行連合学院の自治区へと向かう。

そこまで混雑していない車両内で、天童アリスと黒崎コユキは二人で対戦ゲームをして遊んでいた。この二人は入部時期も殆ど同時で部内でもSNS運用で同じ役割を担っており、またゲームの実力も大体似たようなものということで、よく一緒に行動しているらしい。そして、才羽モモイは物珍し気に、列車内部や窓の外の様子を眺めていた。そしてその様子もまた、随分と楽しそうでもあった。

 

「先生はよくいろんなところに行ってるんでしょ? いいな~」

私の視線に気付いたのか、振り向いた才羽モモイは私にそう話しかけた。

 

「ええ、まあそうですね。モモイさんはあまり行かれないんですか?」

「全然だよー。シャーレができるまでミレニアムの外に出ることも殆どなかったもん」

彼女がいつもの調子で大きな身振りで表現する。ゲーム開発部の中にあっては比較的社交的である彼女であっても校外への訪問というのは稀らしい。ともすればミレアニム生自体そういう傾向にあるのかもしれないが。

「そういうものですか。まあ、ミレニアム自治区は便利ですからね。」

「まぁねー。でも。こういう列車とか、別の学校とか! ゲームのシナリオに使えるかもしれないからわくわくするね!」

才羽モモイはそう言いながら、朗らかに笑っていた。

 

「うわあぁー!!? 逆転された!?」

「やりました! アリスの勝ちです!?」

どういうゲームをやっていたのか知らないが、遊んでいた二人も決着がついたらしい。

「モモイー! 敵を取ってください!」

「何ー!? ふっふっふー。任せておきなさーい」

今度は、黒崎コユキに代わり、才羽モモイが勝利した天童アリスと戦うようだ。何にせよ百鬼夜行に着くまではもうしばらく時間がかかる。私も車内で出来る作業に手を付けよう、そう考えた時、車両間をつなぐ扉が開いた。

 

「とうちゃくー」

「通報があったのってこの車両のことだよねヒカリ? まだいるかなー?」

入ってきたのは、ハイランダー鉄道学園の制服を身に纏った、よく似た二人組の生徒たちだった。

 

「おー? ふしんしゃ、はっけんー」

こちらの座席に近づいてきた二人の内、片方が私の姿を見るなり、そう言った。

「あ、本当だ。ねえ、そこのお兄さん、聞いても良い?」

もう片方が今の失礼な発言を咎めるでもなく、私に話しかけてきた。

「はい、なんでしょうか」

対象となりそうな私しかいなさそうなので、一応返事をする。ゲームをやっていたゲーム開発部の生徒たちも何事かと戸惑ってこちらの様子をうかがっていた。

「この車両で、不審な大人が子どもと一緒にいるって通報があったんだけど、お兄さんのことだよね?」

「それを聞いて同意する者がいると思いますか?」

「確かに! 面白いねっ、お兄さん! パヒャヒャッ!」

特徴的な笑い声をあげて乗務員と思われるハイランダー生が笑う。実際のところ、私が本当に関わってはいけない部類の不審者であった場合、そのような質問は危険だろう。

 

「ふしんしゃじゃないのー?」

先に近づいてきた方に改めて問われる。

「違うよ! ちょっと怪しいかもだけど、この人は先生だから!」

余計な一言を挟みつつ才羽モモイが私の紹介をする。ともあれ

「せんせー?」

「ああ、最近ちょっと話題だよねっ。あれ、あなたがシャーレの先生なの?」

「ええ、そうですね。あなた方はこの列車の車掌か何かですか?」

警戒されていたかどうかもよくわからないが、誤解は解けそうだったので相手の素性を確認する。

 

「あ、私たちのこと? ハイランダー鉄道学園、CCCの橘ノゾミ!」

「おなじくヒカリー」

私が尋ねると、妙な決めポーズで二人は名乗りを上げた。CCCというと、中央管制センター。ハイランダー鉄道学園における生徒会組織だったはずだ。何故通常運行の車両で不審者探しなどしているのだろう。

「偶々この路線の責任者とお仕事があって乗ってたんだけど、暇そうにしてるなら仕事手伝えって言われちゃったんだよねー」

「こっちはかんぶなのにー」

こちらが聞かずとも状況を説明された。そういうことのようだ。

「成程、自己紹介ありがとうございます。私はご理解いただいた通り、シャーレの先生をやっている者です。疑われるようなことをしたつもりはないのですが、誤解を与えてしまったようで申し訳ありません」

「こっちこそごめんね! 楽しそうにしてたから全然疑ってはいなかったけど、一応仕事だからね。パヒャッ!」

「いえ、職務を真面目にされていたのは御立派だと思いますよ。お二人は姉妹なのですか?」

「そうだよ! 双子なの。ちなみに私が妹で」

「ヒカリはノゾミのおねえちゃんー」

一見すると妹に見えるが、橘ヒカリの方が姉らしい。そして、顔立ちから想像していたが、やはり双子のようだ。

 

「えー!? あなたたちも双子なの!? 私たちも双子だよ!」

才羽モモイが自分以外の双子との遭遇にテンションが上がっている。

「え! そうなの!? 奇遇じゃん!」

橘ノゾミは驚き、姉のヒカリの方は私と才羽モモイを見比べて

「あんまり似てなーい」

と言った。

「……いやいや、先生と双子な訳ないじゃん」

真顔で才羽モモイが言い返す。

「パヒャヒャ! だとしたらウケる! でも、じゃあ二人のどっちかのこと? 二人ともあんまり似てないけど」

傍観者となってこちらを見ていた天童アリスと黒崎コユキの二人が手を振った。

「違う違う! 今日は来てないけど、双子の妹がいるの! 私に()()()()()()()()()だよ!」

「おおー、じがじさーん」

「何が!?」

文脈的には可愛い妹というのは才羽モモイにとって、妹のミドリが「可愛い」ということだと思うが、橘ヒカリは『そっくりで可愛い』という発言について言っているのだろう。

「パヒャヒャッ、まあ、確かにちまっとしてて可愛いけど!」

「あなた達もあんまり変わらないでしょ!?」

「あ、ねえそれ何のゲームやってるの? 私もゲーム好きだよ!」

「聞いてよ!?」

才羽モモイはすっかりこのハイランダーの双子幹部に良いように遊ばれている。社会経験の差だろうか。

 

「え? 私? これですか!? こ、これはポヨテトです!」

「ノゾミとヒカリもやりますか?」

黒崎コユキが少し慌てながらゲームタイトルを回答し、天童アリスが期待の目で質問する。彼女はいつも、新しいゲーム仲間を探し求めている。シャーレでもそのようにしてコネクションの輪を広げている光景をよく目にする。そしてそれは、恐らく彼女の助けとなっていくだろう。

「え? あー……また今度ね! 一応お仕事中だから」

「残念むねんー」

先ほども思ったが、この雰囲気で一応真面目に仕事をやるつもりはあるようだ。

「そうですか……では、今度シャーレで遊びましょう!」

「シャーレで? ゲームが遊べる場所があるの?」

橘ノゾミが首を傾げる。一応シャーレのカフェスペースの宣伝はSNS等で行っているのだが、やはり訪問していない学校ではあまり周知されていないようだ。

「はい! アリスはいつも部室かシャーレでゲームをしています」

「へー。ヒカリ、どうしよっか?」

「うーん? じゃあ、今度二人でいくねー」

「じゃあ、その時ミドリも連れてくるね! モモトーク、交換しよ!」

復活した才羽モモイの提案に、橘姉妹もそれくらいなら、と応じる。

 

「あ、後……これ、良かったらフォローお願いします! にははっ、うちの公式アカウントですよ!」

ゲーム開発部の広報担当である黒崎コユキが、忘れずにとSNSのURLが書かれた紙を手渡す。

「うん? 公式アカウント? そういえばあなた達って何の部活なの? 制服はミレニアムだよね?」

「はい! ミレニアムの、ゲーム開発部です! 一年の黒崎コユキです! 広報担当でSNS運用をやっています!」

黒崎コユキの自己紹介に、橘姉妹は目を輝かせた。

「ゲーム作ってるの!?」

「すごーい」

「にっはっはー。そうですか? 公式アカウントでは色々投稿してるので、フォローしてくださいい!」

黒崎コユキがそう言って、喜びながら改めて頭を下げる。

 

「うん、じゃあ……あ! そろそろ報告しに行かないとまた文句言われちゃうかも!?」

橘ノゾミは返事の途中で今自分が不審者探しをしていたことを思い出したようだ。この列車の車掌に何と報告するつもりなのだろう。

「それはー……面倒くさーい」

「というわけで、じゃあね! アカウントはフォローしとくから! 先生も! また遊びに行った時、お話ししよ!」

「ばいばーい」

橘姉妹はそう言って、慌ただしく入ってきた扉から出て行った。図らずもハイランダー鉄道学園であるCCCとのコネクションが出来てしまったのは、思わぬ収穫だった。時計を見るとまだ百鬼夜行に着くまでは少し時間が残っている。

 

私は改めて、座席で作業へと戻った。

 

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