黒服がシャーレの先生になった世界線   作:黒服先生

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RABBIT小隊②

「皆さん、自己紹介ありがとうございます。さて、続いては本題と言いますか、実際に新しい環境で学校生活が始まったわけですね。そのなかで、改めて質問や要望があればお聞きしたいのです。実際の活動方針は概ね皆さんにお任せするつもりですが、設備はシャーレの物を使っていただいているわけですからね。不備があれば言っていただけると助かります」

 

 自己紹介の後は、一旦質疑の時間とした。説明会の際にもその時間を設けたが、実際に始まってみないとわからないことがあるだろう。

 

「はーい。火器類の制限、もっと緩和できない?」

 風倉モエからある意味予想通りの質問が真っ先に上がる。

「現状、そこまで足りていないという話にはなっていないと聞いています。訓練での使用に関してはすぐに緩和と言ったことにはならないでしょう」

「……だよねぇー」

 こちらの回答は予想していたのか、残念そうではあったが彼女はすぐに引き下がった

 

「……私からも一ついいか?」

「どうぞ、サキさん」

「SRTでは訓練の一環として模擬戦をやってたんだ。人数が減ったから仕方ないが、最近は回数も減ったし、相手も固定化してしまっている。こんなこと、先生に聞くのはどうかと思ったんだが、どうにかならないか?」

 空井サキの質問は、言われてみればそこそこ大きな問題であるように思えた。現状このシャーレ支部に所属するチームは4部隊。その内2年生の2部隊に関しては、情報部隊と救難部隊であり、訓練はしているものの本来戦闘に特化しているチームではないということだ。

 そうなると、必然的に模擬戦はFOX小隊が相手となることが基本となる。格上の相手に挑むという点において、悪くは無いが相手がそれしかいないことはよくはないだろう。

 

「……そうですね。SRTの活動として取り入れるのは難しいというか、私の一存で出来る話はほぼないのですが、シャーレの方では出来なくもないかもしれませんね」

「……というと?」

「シャーレのクラブ活動として、小隊規模の銃撃戦クラブというのはできるかもしれませんね。人が集まるかは未知数ですが……」

募集してみれば、意外と人は集まるかもしれない。少なくとも、現状シャーレから出ることが出来ないアリウススクワッドには声を掛けてもいいのではないだろうか。

「それもいいかもしれないが……相手になるのか?」

「まあ、それは来る人によると思いますが……」

こんなものに興味があるのは大体戦闘慣れしている者がほとんどだろう。私自身が呼びかけて参加しそうなのは他だとアビドス生徒会や、トリニティの地下道進入チームだろうか。現状のRABBIT小隊の実力にそこまで詳しくは無いが、相手に不足する、ということは無いだろう。

 

「まあ、本格的なものは難しいですが、提案可能な施策としてはそんなものですかね。先輩方やカヤさんにも聞いてみてください」

「そうだな。ありがとう、先生」

空井サキはとりあえず納得したようだ。具体的なやり方に関しては今の状況が多少落ち着いた後にでも考えることにしよう。

 

「では私からも一つよろしいでしょうか。」

「もちろんです」

席順は霞沢ミユを飛ばして月雪ミヤコからも質問があるようだ。

「エデン条約の件でFOX小隊の先輩たちが先生の依頼のもと、作戦を遂行していたのは、私たちや他の先輩方の間でも話題になっています。ああいった任務が今後、私たちにも回される可能性がありますか?」

月雪ミヤコからの質問も、あるだろうと予想していたものだ。桐藤ナギサまで駆り出して協力を依頼したのだ。噂になっていない訳はなかった。

「そうですね……あの規模の物がそうそうあるわけではないですが、そういうこともあるでしょう。既に2年生の2部隊には依頼する予定もあります」

「私たちには、まだ予定は無いということですか?」

「そうですね。まだ依頼するかどうか決まっていないような案件もありますから、無くはないといったところです」

 彼女たちは、使い方を誤ればSRTにもシャーレにも批判が集まりかねない立場になっている。連邦生徒会長がその超人とさえ言われていた能力で使っていた時でさえ、批判はあったのだ。その上で、表に出せる業績、つまり「カイザーの不正を暴く」「狐坂ワカモの捕縛」といったものを、分かりやすく利用していたのだろう。それが脅威とみなされた原因にもなってはいるようだが。

 いずれにせよ、彼女たちに協力を依頼する場合は、ある程度はそのリスクを検討する必要がある。営利でやっている便利屋やヘルメット団とはまた別の種類の難しさが存在するのだ。

「分かりました。今はそれで結構です」

月雪ミヤコもまだ完全に納得した、という様子ではないがこれ以上強く要望するつもりはないようだ。

 

「さて、折角なので、ミユさんは何かありますか?」

唯一質問の出ていない霞沢ミユに話を振る。

「!?……わ、私ですか………な、ないです……」

彼女は何故か必死に首を振って質問が無いことをアピールした。

「……そうですか。もし今思いつかなくても、後で思いついたら聞いてくださって結構です。」

「は、はい……あの、あ、ありがとうございます……」

 

「さて、これで皆さんに一応一回ずつ聞いた事になりますが、他に何か質問がある方は?」

改めて、4人に尋ねる。しかし、次の質問は出てこなかった。

 

「では、質問でなくても構いません、何か不満点や、意見、困っていることなどがありますか?」

少し内容を変えたが、やはり誰からの言葉も無かった。こうなると、もう今回のミーティングを続ける意味が無くなってくる。そう思い

 

「では、今回の会議は……」

「……不満ならあるぞ」

ミーティングを終わらせようとしたとき、空井サキが口を挟んだ。

彼女は何故か少しバツが悪そうにしていた。

 

「どういう内容ですか?」

私が尋ね、空井サキが続ける。

 

「先生には関係ない話でごめんなさい。私は……この部隊のリーダーをミヤコがやっているのが不満だ」

彼女の不満は、言った通り本当に私やシャーレとはほぼ関係の無い内容だった。いや、そうとも言い切れないか。

「サキ……」

言われた本人、月雪ミヤコは表情こそ変えていなかったが、言い返すような態度ではなかった。恐らく、こういったことは初めてではないのだろう。風倉モエが空井サキに見えないように肩を竦めているのが見えた。

「どうして、そう思うのか聞いても良いですか?」

一応、理由を確認する。もしかしたら私にも関わってくる内容かもしれないのだ。

「確かにミヤコは入学したとき首席だった。でもそれはあくまで入学したときそうだったというだけだし、異議を伝える前にSRTが休校になっちゃったからそのままになっているけど。私はまだ納得していない」

空井サキが自らの考えを話した。言いたいことは分からないでもないが、この場で話すべき内容であったかはやはり疑問だった

「大体……あ……すみません。ここで今言うつもりは無くて……つい……」

彼女はなおも何らかの不満を言おうとしたが、ふと私の顔を見て、語勢が弱まった。本人の言う通り、ここでそういう話をするつもりはなかったのだろう。

 

「いえ、構いませんよ。サキさんの考えは伝わってきました。しかし今すぐ私がそのことについて意見するのは難しいですし……今日のところは、一旦これくらいにしておきましょうか。よろしいですか?」

「……はい」

 

空井サキがそう頷いたことで。今回のミーティングは終了ということになった。最後の件に関しては後で個別にもう一度、生徒たちに事情を聴いてみる必要があるだろう。月雪ミヤコが反論する様子が無かったのも気になった。

少なくとも今の状態では、作戦を依頼するのは難しいだろう。思わぬところに、厄介な問題が存在することが見えてしまった。

私は事務所に戻りながら、そう思った。

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