多少波乱はあったものの、一年生とのミーティングが終わり、続く2年生の2チームとのミーティングも恙なく終わった。となると、当然次は三年生の番だ。
「……というわけなのです」
「いや、何で一年生とのミーティングの相談になってるのよ」
話し合いの冒頭、一年生、RABBIT小隊のミーティングの内容について話すと、高倉クルミが呆れたようにそう言った。
「いえ、あなた方に今更自己紹介など不要だろうと思いまして。別の議題がもしあるのであればそちらでも構いませんが」
「そんなの別にないわよ。っていうかまあ、別にいいんだけどね……」
これで意外と後輩思いでもある高倉クルミは議題自体に不満があるわけではないようで、それ以上クレームをつけてくることは無かった。
「それよりさあ、何でカヤ支部長がここにいるの? 一応FOX小隊のミーティングって話じゃなかったっけ?」
天神山オトギが不知火カヤを指さし、別件について指摘する。確かにこれについては説明が必要かもしれない。
「
「コーヒーブレイク中に無理矢理連れてこられた記憶があるのですが!? 」
私の説明に、不知火カヤが吠える。まるで私が嘘をついたように話しているが、過程は省くが最終的に彼女が「
「ふむ……見解の相違というやつですね。いずれ改めてすり合わせの機会を作りましょう」
「また適当なことを……」
「まあ、話す内容が内容なので、意見は一人でも多く、多角的に聞きたいと思ったのですよ」
「ふーん……まあいっか」
天神山オトギも不知火カヤが参加するのが嫌だったという訳ではないらしく、理由を聞けばあっさりと引き下がった。
「先生とカヤちゃんって……なんというか、仲良しさんですよね」
これまでの流れを見ていた吉野ニコが、突然そう言った。
「な……どこがですか!?」
何故か不知火カヤが否定した。友好関係にあると捉えてもらった方がお互いに都合が良い気がするが、彼女にとっては不都合、あるいは不愉快なのだろう。
「あ、ごめんなさい。仲が良い、というより、何でしょう。先生の接し方が少し他の子とは異なってて、随分フランクというか……」
「雑に扱われているだけですよ。全く……」
「その雑さが仲良さそうに見えるってことでしょ? 分かる分かる」
天神山オトギは吉野ニコのその意見に賛同しているようだ。当時者である私にはあまり理解できなかったが。
「心外ですね……な、なんですかユキノさん?」
「いえ、別に」
理由は分からないが、七度ユキノが不知火カヤの方を見ていたらしい。
「何か睨まれていたような気がしたのですが……深堀りは恐ろしい予感がするのでやめておきましょう。それに割といつものことながら話が脱線していますね」
不知火カヤの言う通り、話が脱線してしまっていた。
「結局、カヤさんに同席いただくことに異論のある方はいますか?」
私が尋ねると、挙手したのは不知火カヤだけで、他の全員が首を振った。実質的には満場一致と言って良いだろう。
「それで、ミヤコとサキが喧嘩してるのはまあ
冒頭に話していた一年生とのミーティング時にあった内容の話に戻り天神山オトギがそう言った。
「私もそう思う。実際、私たちは学園外に出て任務をすることがあるのだから、色々な学園の戦い方を知ったり、強者と戦ってみたり、というのは必要だと思う。前の狐坂ワカモじゃないけど」
七度ユキノも同意する。実際、FOX小隊は在野に規格外の戦力を持つ人物が存在することを知っている。知識として知っているというだけでなく、そう言った相手と戦ったこともある。そのため、そのような人物に対し、どのように対抗するか、という視点を持っているのだろう。
「でも、そんなの人集まるわけ? 先生のコネで何とかする感じ?」
そしてまた、高倉クルミの疑問も当然の物だった。
「まあ、心当たりのある人物に声を掛けてみるつもりではありますが、実際のところは未知数ですね。どういう名前にするのが良いか、というような観点もありますが」
「楽しそうな名前にしたらいいんじゃない? 例えば、うーん、ファイトクラブとか」
「それじゃ格闘技サークルみたいじゃない。普通に模擬戦クラブでいいでしょ」
「それなんかダサくない?」
名前決め、というものは案外気に入られるらしく、紆余曲折を経て、最終的に「学園交流会」という詐欺のような名称が定着することになるこのクラブ名称に関し、生徒たちが話し始める。しかし、私がしたかったのは本来こちらの話ではない。
「まあ、それについては追々でしょうね。実際のところ、先ほどオトギさんが後回しにしたサキさんとミヤコさんの喧嘩、というより確執と呼ぶべきでしょうか。それについての相談をしたかったのですが……」
私が軌道修正を図ると、天神山オトギと高倉クルミの表情が露骨に面倒そうなものに変わる。そういえばこの二人もよく言い争いのようなものをしている気がするが、険悪な雰囲気は無い。
「そもそもお聞きしたいのですが、各小隊と、それぞれの小隊長というのは、どのようにして決められるものなのですか? 小隊の中から一人、選出するようなものだと思っていたのですが」
気付かない振りをして話を続ける。私の質問には七度ユキノが答えた。
「基本は連邦生徒会長が決めていたはずです。私たちの頃は、連邦生徒会長が失踪する直前と比べればまだ多忙ではなかったので事前に話は聞いていましたが後輩たちにはそう言った説明をする時間は無かったのだと思います。カヤは何か知ってる?」
回答の最後に、彼女は不知火カヤに問いかけた。この二人は連邦生徒会長の部下だっというポジションが似ており、当初の予想よりうまくやっているようだ
「知るわけないでしょう……と言いたいところですが、一度だけですが相談らしきものは受けたことがありますよ。後にも先にも、あの超人が私に『お願い』ではなく『相談』をしたのはその一回きりでしたから、よく覚えています」
不知火カヤはそう返事をした。情報を持っているのは当然のことではあるが、連邦生徒会長の情報がでてきた。七神リン以外からその名前が出るのを耳にするのは、久しぶりのことだ。
「機密情報だからと名前などは伏せられていましたし、具体的な内容に関しても言うつもりはありませんが、主に入学試験の内容から決めていたようですよ。相談といっても、あの人にとっては答え合わせのようなものか、あるいは暇つぶしのようなものだったのかもしれません。私の意見によって結果が変わったなどとは思っていませんよ。ただあの人なりの思惑があってミヤコさんが隊長として選ばれたのは間違いないと思いますよ。その理由を聞くことは今はできませんが」
不知火カヤが懐かしむように話す。隊長を選ぶプロセス自体は理解できたが、この内容では解決手段にはつながらないだろう。
「それともう一つ、サキさんとはあまり話す機会は無いですが、ミヤコさんをリーダーとして認めたがらない、となると理由が推測できないことは無いですよ。ミヤコさんには散々絡まれていますからね」
しかし不知火カヤは、ついでとばかりにそう言ってのけた。やはり、彼女をここに連れてきたのは正解だった可能性がある。
彼女の自信ありげな様子には多少不安を抱きながら、私たちは彼女が続ける言葉を待った。