黒服がシャーレの先生になった世界線   作:黒服先生

117 / 185
チームシャッフル

小隊毎のミーティングを行った翌日、私は再度RABBIT小隊のメンバーを呼び出していた。

 懲りずにゴミ箱に隠れていた霞沢ミユを引っ張り出し、全員揃ったところで話し始める。

 

「何度もお呼び立てしてすみません。昨日話していた件について、早速進捗がありましたので、皆さんにお伝えしようと思いまして」

 素直に集まりながらも怪訝そうな顔をしていた生徒達の表情が一層不審の色を濃くする。

「昨日の話って、どれのことですか?」

 月雪ミヤコに尋ねられる。私は昨日、FOX小隊と不知火カヤとのミーティングを終えた後作成した資料を取り出し、話をつづけた。

「サキさんの言っていた件ですよ。模擬戦の件が一つ」

「え? もう何か考えてくれたのか?」

 空井サキの目に期待の色が宿る。

 

「流石に学外の生徒を募集する話はまだ出ていませんが。ひとまずはそれの予行もかねて、FOX小隊とRABBIT小隊からそれぞれ2名ずつ選出した1年生・3年生の混合チームを2つ作り交流戦を行う、という話になりました。基本的にはやる方向で動いています。現在のSRTは少人数体制になっていますので、場合によっては現地の生徒達と協力体制を組むかもしれませんからね。これを機に臨時のチームを組むということに慣れてみるのもいいかもしれません」

 FOX小隊の天神山オトギが昨日提案したのは、チーム戦で戦わせてリーダーの素質を測る、というものだった。そこで生まれたのがこの混成チームでの模擬戦闘を行う、という方法だ。

「なるほど……それは面白いんじゃないか?」

「そんな……先輩に迷惑かけたらどうしよう……」

 空井サキと霞沢ミユの反応は顕著だったが、反応自体は真逆のものだった。

 そして月雪ミヤコは何か少し考えこむような仕草を取る。風倉モエの反応が最も薄く、彼女はそこまでこの模擬戦について興味がないのかもしれない。

 

「さて、この模擬戦に関して、重要なことが一つあります」

「重要なこと、ですか?」

 真っ先に反応した月雪ミヤコに頷いて、話を続ける。

「はい。このイベントの期間において、私とカヤ支部長、そしてFOX小隊のメンバーにより、皆さんの適正を再度確認することになっています。ポジションについてもそうですし、場合によっては改めてリーダー適正の高い人物は誰か、という話にもなるかもしれません」

 

「何だって!?」

「どういうことですか?」

 

 現リーダーの月雪ミヤコ、そしてそれが気にくわないという空井サキが、こちらを見上げ、驚きの声を同時にあげる。

「つまり、三年生の皆さんも、お二人がリーダーのことで揉めていることを問題視しているようです。なので、この特殊な模擬戦を通し理解を深め、よりふさわしい人物を推薦しよう、という話になったわけです」

「先生。それは……ユキノ先輩も賛成されたということですか?」

 月雪ミヤコが焦ったような様子でそう聞かれる。そのような反応になることも、その場合の返事も決まっていた。

「もちろん。FOX小隊全員と、私とカヤ支部長の全会一致ですよ」

「……分かりました」

 月雪ミヤコはあからさまに肩を落とし、頷いた。

「でも……そんなことしていいのか」

 一方の空井サキもまた、戸惑っているようだった。

「良いかどうかは分かりませんが、先輩としてはチームとしてまとまっていないことを問題と感じているのではないでしょうか」

「そっか……うん、頑張ろう」

 自分に言い聞かせるように、空井サキはそう言った。

 

「ミユさんとモエさんも、適性を見られるという意味では同じなので、その辺りは意識して参加して下さい」

 自分は蚊帳の外だろうと傍観していた二人にも声を掛ける。

「え……えぇ……わ、私じゃなんかじゃ到底抱えきれないプレッシャーがぁ……」

 ととりあえずと言わんばかりにネガティブ思考に陥るのが霞沢ミユ。

「あ、そうなの? じゃあ私も要望を通せるように活躍を示さなきゃってことだね……くひひ、ちょっとやる気出てきたかも」

 そして、自分の欲望を満たすためなら努力できるのが、風倉モエの特徴だった。

 

「さて、チーム分割に関しては、実はもう決まっています、まあ一回目に関してはですが。模擬戦までのスケジュールと、そのルールについて説明しましょうか」

 ほとんど間に合わせで作成した資料を配る。

 内容としては以下の通りだ。

 

 ・模擬戦は10日後に行われ、それまでの期間はチームでの特訓期間となる。

 ・模擬戦においては正面からの戦闘だけでなく、攻撃側と防御側に分かれ、それぞれ異なった目標を達成するという方式で行われる。

 ・上記目標の詳細については、本番3日前に発表される。

 ・ルールに明記されていないことに関しては、法の範囲内であれば何をしてもよいこととする。

 

 具体的なことはあまり決まっていないが、たったこれだけである。ほとんど何も決まっていないも同然だが、10日後に本番が行われることだけは確定している。なお、この内容に関しては昨日偶々シャーレに来ていたゲーム好きのミレニアム生たちに、具体的な内容は伏せて相談して決めたものである。

 

「うーん……これだけ読んでもよくわからない……」

「爆発物の持ち込み量の規制もないのー?」

「それは流石にルール詳細に書かれていると思う。そうですよね、先生?」

 生徒たちがルールを読みながらそれぞれに感想を話す。

 

「ああ、確かにそういうことについても考えなければなりませんね。ありがとうございます」

 そのあたりについては思いついていなかったが、確かに必要だろう。メモを取っておく。

「……大丈夫なんですか? 本当に」

 月雪ミヤコが呆れた目をこちらに向ける。

「こういった試みは初めてなので、やってみるしかないでしょうね。それよりミヤコさんは大丈夫なのですか? 少し複雑な表情をしていましたが」

 空井サキが昨日、リーダーの素質についての不満を投げかけてから、彼女の表情はあまりすぐれないように見えた。彼女がそれを自覚しているのか不明だが、私の疑問には至極真剣な表情で

「やるからには勝ちますよ。たまたまリーダーに選ばれた訳ではないと、証明して見せます」

 と答えた。

「普段からそのくらい自信があるならいいんだけどな。私だって負けないぞ」

 月雪ミヤコの発言を聞いていた空井サキもそう宣言する。

 

「なるほど、お二人の気合は十分伝わりました。では、最後に今回のチーム分けを発表しましょう」

 そういって1枚の画像を見せる。

 それは

 Aチーム! ニコ、オトギ、サキ、ミヤコ

 Bチーム! ユキノ、クルミ、ミユ、モエ

 と紙に手書きで大きく書かれたものだった。よく見ると下のほうにあみだくじらしきものが見えている。昨日のうちにスマートフォンで撮られたこの画像が送られてきていたのだ。

 

「ナニコレ!? 私とミヤコ同じチームじゃないか!?」

「ええ、そのようですね」

「っていうかこれ、あみだくじ!? くじで決めたのか!?」

 少なくとも画像を撮った人物はそう捉えられるように撮っているのだろう。

「仕方ありません、サキ、頑張りましょう」

 一方で、月雪ミヤコはこの組み分けをあっさり受け入れていた。そういう可能性があることを認識していたのだろう。

「それでお前は何でこんな時だけ物分かりいいんだよ!?」

「同じチームだからと言って、それぞれが評価されるのは変わらないでしょう? むしろ同じチームだからこそ、厳しく比較されるかもしれません」

「まあ……それはそうだけど、てっきり戦うものだと……」

 空井サキの感想もまた、流れからすると当然の感想ではあった。

 

一方、Bチームの二人はというと。

「み、ミヤコちゃん……」

「くひひ……頑張ろうね、ミユ。あ、あんたクルミ先輩のこと苦手だったっけ?」

「ひぃっ……」

 こちらは良くも悪くも変わらない様子だ。少なくともAチームの二人と比べて気が入りすぎているということもない。

「まあ、ユキノ先輩がこちらについているからには精一杯めちゃくちゃできるチャンスだよね。何かやらかしてもあの人がフォローしてくれるでしょ」

 いつも通り危ない表情を浮かべて笑っている風倉モエと

「ほ……本当に迷惑をかける想像しかできないよぉ……今からでも辞め……られないですよね……」

 いつも通り沈んでいる霞沢ミユである。

 

 このようにして、RABBIT小隊とFOX小隊の合同訓練が急遽、始められることになったのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。