前半戦が終わり、すぐに後半戦に入りたいところではあるが、破壊された拠点周辺の状況を修復する時間が必要となる。拠点Cの周りだけでも想定以上の破壊状況となっていたので、整備に暫くの時間がかかることになった。
この整備についても2年生が買って出てくれたおかげで無駄な費用を掛けずに済んだのはありがたいことだ。
私と不知火カヤはその手伝いと監督のために2年生たちに合流しているが、RUBY小隊、FLAME小隊の2チームは休憩及び、後半戦のためのブリーフィングを行う時間になっている。
今頃はそれぞれのチームメンバーで作戦会議を行っているころだろう。
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FLAME小隊
「全員、よくやった」
FLAME小隊のリーダー、七度ユキノはチームメンバーを労った。
彼女の今回の模擬戦における基本的な作戦は正攻法というものだった。それぞれが自分の役割のみを忠実にこなすことに専念するやり方こそが、急造のチームでは有用だという考えがうまくはまった、と彼女は考えていた。
「おつかれ。割と危なげなく勝てたわね! 最後はちょっと焦ったけど……ミユのお陰で変な負け方しなくて済んだわ。ありがとね」
「……あ、あれはその……ユキノ隊長が指示を出してくれたので……」
ミユは賞賛を控えめに受け取った。
「それでも、オトギとサキの撃破と最後の宝物回収、序盤から終盤にかけてミユは重要な要素になっていた。私の見込んだ通り、試合の要になる存在になっていた」
しかし、隊長の七度ユキノにまで続けて褒められて、彼女は嬉しいような居心地が悪いような、そんな気分になり
「でも、ユキノ先輩の采配はやっぱりすごかったよー。私も攻めに集中できたしやりやすかった」
風倉モエもまた、七度ユキノの指揮能力を評価した。結成してから1週間のチームにしては、完成度の高いチームだと感じたようだ。
「慣れないチームだったから、得意な行動に集中してもらう方が良いと思っただけだ。モエは破壊工作、ミユは隠密行動」
七度ユキノが普段指揮しているFOX小隊は、適性に多少の際はあれどオールラウンダーとして様々な局面をカバーできる能力が備わっていた。
特にオペレーターでありながら銃撃戦も得意としている吉野ニコと、精密射撃と威嚇・牽制の使い分けが可能なスナイパーの天神山オトギはその傾向が強い。
その二人が抜け、オールラウンダーとは程遠い後方支援特化、隠密特化の二人が加わったことは、ユキノにととっても良い刺激となっていた。
「勝ちはしたけど、ミヤコ達も思った以上に作戦を考えてきているようだ、前半戦とは立場が入れ替わるのだから、油断はできない。特にミユとモエは前半とは全く異なる役割が求められる。頼んだぞ」
ユキノの期待を込めた念押しに、モエは飄々とした様子で、ミユはプレッシャーで気絶しそうになりながら、SRT生らしく規律正しく返事をした。
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RUBY小隊
「負けましたね、すみません。私がもう少し粘れれば良かったのですが」
RUBY小隊のリーダーの月雪ミヤコは、チームメンバーにそう言って頭を下げた。相手チームのリーダーであるユキノに1対1で負けてしまったことを敗因と認識しているようだった。
「いやいや、それを言うなら私がスナイパーの癖に最初に落ちるのが敗因でしょ」
オトギが後輩に責任を押し付けるわけにはいかないと、自らの責任を指摘する。
「なら、それの原因を作ったのが私がクルミ先輩に押されてたからだ。今日のミヤコの作戦自体は、問題なかったと思う」
サキもそれに倣って本心からフォローする。
「はい、責任の奪い合いはその辺にしておこう。ミヤコちゃん、正直なところ、この結果は想定通り……とまではいわないけど、十分想定内なんでしょう?」
そしてモエからの猛攻に耐え抜き、最終的に1対3で籠城戦をしていたニコがその流れを打ち切った。観戦者側にはあまりわからなかったが、彼女は拠点の防御を固めながらもドローンによる状況収集なども同時に行っており、かなり忙しく動いていたのだ。
「……はい、そうですね。運よく一人を落とせれば、時間切れによる勝ちが辛うじてあるかな、位のつもりで考えていました。本命は攻撃側でしたし、それが後半に来るこの状況を望んでいました。なので、この状況自体は大きな問題ではありません。ただ……」
「ただ?」
「思ったよりもずっとユキノ先輩が強くて、そこだけは結構想定外です」
直接対峙した先輩の強さに、ミヤコは自信を失いかけていたが、結局のところ自分が粘れるよう振舞うしか無いのだ、と持ち直した。
「あー、ユキノちゃん最近絶好調って感じだもんね。何というか、壁を一枚超えたみたいな感じがあるから」
「あのトリニティでの任務以降ね。私たちも気合入れた作戦ではあったけど、隊長……ユキノはあれ以降何というか、最盛期が来ているって感じだよね」
3年生たち2人が、最近のユキノについて語る。今は敵同士ではあるにせよ、二人はそのこと自体は悪く思っていないようだった。
「そうですね、私もいろいろ詳しい話を聞きたいところではありますが。まずは次の攻撃側で勝たないと、ですね」
ミヤコがそう言うと、チームメンバーたちは頷いた。
「まずは、ミユについてです。私の予想からすると──」
ブリーフィングはより具体的な内容になっていく。彼女の考える作戦の結果は、もうすぐ実を結ぶのかもしれない
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無事に整備が終わった。2年生たちが場外に撤収すれば、すぐに後半戦が開始となる。
「午後も、分かりやすい解説を期待しています、カヤさん」
私は不知火カヤにそう呼びかける。何かに気を取られていたのか、彼女の反応はやや遅れた。
「ええ……そうですね。私も楽しみにしていますよ。ミヤコさんが達がどういう立ち回りを見せてくれるのか。どうせならユキノさんが一泡吹かせられるところが見たいですね。先生もそう思いませんか?」
何故か不敵な笑みを浮かべる彼女のその様子が、私は少し気になった。
裏方作業を頑張っている2年生2部隊。小隊名は決まっているのですが、いつか出す機会はあるのだろうか…