黒服がシャーレの先生になった世界線   作:黒服先生

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 チームシャッフルにて行った模擬戦から数日後、現在シャーレへと集まってきている狐坂ワカモに関する依頼や関係する可能性があると思われる依頼、そして情報についてまとまったので、RABBIT小隊を呼び出した。

 

 指定した集合時間に会議室に向かうと、既に4人とも揃っていた。

 

 珍しく霞沢ミユが席についていたが、隠れるのを諦めたのか、それともすでにゴミ箱から引っ張り出された後だったのかは分からない。

 

 最近になって気づいたのだが、SRTの生徒達が事前連絡なく遅刻する姿を見たことが無い。霞沢ミユの姿が見えないこと自体はあったが、それでも彼女は常に室内にはいた。校風から来るものだろうか。

 

 ゲーム開発部が寝坊で全員遅刻したというケースがあったことを思い出した。

 

 予め「シャーレに届いている依頼について、RABBIT小隊に請けてほしい」という点については説明していたため、生徒たちに困惑の様子は無かったが、表情はそれぞれだった。

 

 具体的には、月雪ミヤコと空井サキの顔には期待が浮かんでおり、霞沢ミユは困ったような表情をしており、風倉モエは怪しい笑みを浮かべていた。考えてみると()()()()()()()()()

 

「さて、全員集まっていますね。先日のイベントはお疲れさまでした。今日集まっていただいたのはお伝えした通り、シャーレに来ている依頼がいくつかあるのですが、それらの解決を行っていただきたいのです。」

「いくつか? SRTを頼らざるを得ない大きな案件なのかと思ってたけど」

 

空井サキが私の説明に対し、期待外れであるかのような反応を示す。

 

「その辺りはこの後説明します。その前に、一点。先日の模擬戦ではチームの体制を再考する可能性があるとお伝えしていましたが……」

月雪ミヤコがはっとした表情になる。空井サキも同様だ。恐らく忘れていたのだろう。

 

「観戦していた2年生の隊長2人と3年生とで相談したのですが、1年生から特に要望が無ければそのままでいいのではないか、ということになりました。」

相談が始まって5分で決まった結論を伝える。

 

「なんだ……驚かせるなよ」

「あれ~? サキは隊長になりたかったんじゃないの?」

 

風倉モエがわざとらしく尋ねるが、空井サキは「もういいんだよ」と軽く言い返すに留めていた。

実際に、解決した問題なのだろう。

 

「では本題ですね。結構な量がありますので、いくつか抜粋して説明していきます」

落ち着いたところで、説明を始める。

 

File① 「謎のお面の生徒に襲われました」

 

情報提供者:百鬼夜行陰陽部

場所:百鬼夜行自治区

情報:百鬼夜行内の山道にて、お面をつけた女生徒と思われる人物に襲撃された。犯人は直前に買ったばかりの菓子類(羊羹、饅頭)を強奪し、逃走した。と陰陽部に通報があった。現在治安維持を務めている百花繚乱紛争調停委員会が活動停止中のため、シャーレに調査願いたい。

 

「えーこれ、ウチ案件でいいの?」

「確かに、ヴァルキューレに頼めばいいじゃないか」

 

 風倉モエがが尋ね、それに空井サキが同意した。

 

「陰陽部って……百鬼夜行の生徒会ですよね? そこがわざわざシャーレに頼んでくるということは、何かヴァルキューレには頼みづらい理由があるのかもしれません」

 

 月雪ミヤコは情報提供者に注目したようだ。

 

「では、次のファイルを見てみましょうか」

彼女らの反応にはコメントすることなく、新たな資料を提示する。

 

File② 「友達を助けてくれた人を探しています」

 

情報提供者:()()()()()

場所:トリニティ自治区

情報:先生、お久しぶりです。あの調印式の日の2日後、仲の良かったアリウスの生徒が私と同じように保護されたそうです。

 その子が言うには、お面をつけた不思議なお姉さんがご飯を食べさせてくれ、救護騎士団まで届けてくれたとそうなんです。お礼がしたいという事なのですが、誰に頼めば良いか分からなくて連絡しました。ご迷惑だったらすみません……

 

「んん? 何だこれは」

「またお面の話ですか……」

生徒達の顔に疑問が浮かぶ。二つの資料には共通点がありながら、性質が真逆の物だった

 

「ではもう一つ、とりあえず最後のファイルですね。」

3つ目の資料を取り出す。

 

File③ 「狐坂ワカモに襲撃を受けた」

 

情報提供者:ヴァルキューレ警察学校(実際の通報者の情報は非公開)

場所:ブラックマーケット近郊

情報:とある経営者からの通報です。その人物が経営している商店に、何者かが襲撃を仕掛け、破壊と略奪の限りを尽くして去っていったという被害届が出されました。当初ヴァルキューレで捜査を行いましたが、通報者が「犯人は狐坂ワカモであった」と主張を始めたことから、情報を共有します。

 

「狐坂ワカモ……」

 月雪ミヤコが呟く。

 他の生徒たちは黙って顔を見合わせた。3つのファイルを連続で出した意味が分かったのだろう。

 彼女たちはもちろんその名前を知っているだろう。連邦生徒会長とFOX小隊が狐坂ワカモを捕縛したというあの有名な顛末を、SRTに入った生徒たちが知らない訳がない。

 

 故にこそ、彼女たちの表情には不安が浮かんでいる。FOX小隊の先輩達から話を聞いていたのだろう。狐坂ワカモは、「厄介」と言うには厄介すぎるほどの存在だ。

 

「さて、3つのファイルを見て想像はできたでしょうが、改めて説明します。最近、矯正局を脱走して以来姿を見せていなかった七囚人の1人、狐坂ワカモの目撃情報や、被害報告などが多くみられるようになりました。皆さんにお願いしたいのは……」

 

生徒達が息を呑むのを見ながら、話しを続ける。

 

「彼女の捕縛、ではありません。少なくとも()()()()()()

「……え? そうなんですか?」

 

私の言葉の予想が外れたのか、月雪ミヤコが気が抜けたようになる。

 

「最終的にそれが必要ならその可能性もありますが、今のところは調査ですね。連邦生徒会を通してヴァルキューレにも情報提供を依頼したり、シャーレに届いた依頼や、目撃情報などを精査して、関係のありそうなものを集めましたが、それがそこそこの量になりましてね。まずはそれなりに有力そうな情報からいくつか調べてみよう、と思いまして」

 

 実のところ、狐坂ワカモの犯行と特定できている事件というのは、現時点では存在しないのだ。彼女は、私と会った時もそうだったが仮面を被っている。

 だからと言って仮面を被っている人物が必ずしも狐坂ワカモであるとは限らない。当たり前の話だ。様々な可能性を検討しなければならない。

 

「まあ、一旦はフィールドワークの訓練だと思っていただければ結構です。勿論、実際に襲撃事件などは起こっているので、警戒は必要ですがね。どうでしょう、この調査、うけてみますか?」

そう言って、生徒たちの方を見る。

 

「私は……当然受けたいです。SRTに入った目的にも近いので。みんなはどう思う?」

月雪ミヤコが、率先して隊員に尋ねる。

 

「私も異論は無い。リーダーの意志に従うよ」

「結構ヤバそうな事件じゃん? 全然やるよ~?」

空井サキと風倉モエはすぐに賛同を示した。

 

残る霞沢ミユに、視線が集まる。

「……あ……あの……やり、ます。何の役にも立てない……かもしれないけど」

彼女も目を瞑って同意した。

 

「分かりました。ではとりあえず、何から調べるか、というところから皆さんに決めていただきましょう。この3つのファイルからでも良いですし、他にも目撃証言などもありますし、そちらから調べてもらっても結構ですよ。」

 

私がそう言うと、生徒たちはおずおずと、3つのファイルを見比べながら相談し始めた。

そして、最初に選ばれたのは……

 

 File① 「謎のお面の生徒に襲われました」

File② 「友達を助けてくれた人を探しています」

 File③ 「狐坂ワカモに襲撃を受けた」




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