黒服がシャーレの先生になった世界線   作:黒服先生

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今回から、ベアトリーチェ決戦編となります。


ベアトリーチェ決戦編
調査報告会①


 エデン条約の調印式以降、関係していた各校と我々シャーレはそれぞれ、独自の手法で、時に連携しながらアリウスと、その先に存在する黒幕に対する調査を行っていた。

 今日はその調査報告会を、中立であるシャーレの会議室を利用して行われる。

 

 各校の参加者は以下の通りだ。

 

 トリニティ 

 ティーパーティー ホスト 桐藤ナギサ

 シスターフッド 代表 歌住サクラコ

 

 ゲヘナ

 風紀委員会 委員長 空崎ヒナ

 万魔殿 議長代理 棗イロハ

 

 SRT特殊学園

 シャーレ支部長 不知火カヤ

 小隊長 七度ユキノ

 

 アリウス分校 錠前サオリ

 秤アツコ

 

 ―

 

 

 この通り、各校から平等に2名ずつ参加してもらっている。

 

 トリニティからは、エデン条約を中心的に推し進めてきた桐藤ナギサは当然だろう。歌住サクラコは古聖堂跡地の修復とそのカタコンベに繋がる地下通路の調査の責任者となっており、今回は主に地下通路についての状況報告に来た形だ。

 

 ゲヘナ側の実質的な調印までの準備を進めてきた空崎ヒナ、そして全体の代表者として羽沼マコトを呼ぶつもりだったのだが、羽沼マコトは多忙を理由に出席を拒否。新たな肩書のついた棗イロハを代表としてこの場に寄越してきた。

 とことん非協力的な人物だが、実際のところ羽沼マコトが会議の場にいるよりも、棗イロハの方がずっと話が早いだろう。結果的にはこちらの方が良かったかもしれない。棗イロハ本人は非常に不満そうだったが。

 

 アリウスからは順当に錠前サオリと秤アツコが参加することになった。彼女たちから報告することがある、というよりは調査内容の確認などについて協力してもらうためだ。本人たちも進んで参加することを受け入れてくれていた。

 

 そしてSRTでは、アリウスに関する調査チームとしては2年生のHAMSTER小隊が、トリニティに協力する形での調査を進めてきたが代表として調査報告をまとめたものを調印式での作戦リーダーでもあった七度ユキノが報告する形をとった。本人たちの希望によるものだ。

 また、不知火カヤは連邦生徒会への報告の必要もあるため、当然参加してもらっていた。

 

 ―

 

 調査報告会の開始まではまだ若干の時間があったが、会場には既にゲヘナとトリニティの参加者が揃っており、和気藹々、という訳にはいかなかったが、多少の交流が行われていた。

 

 その中で、桐藤ナギサがゲヘナからの参加者である二人の方に近づいていくのが見えた。桐藤ナギサはその二人と交流があるのだったか。少なくとも片方は、つい先日親交を深めていたのを目にしていた。

 私も空崎ヒナと顔を合わせるのは久しぶりだった。今回の報告会の主催として、3人の方へ挨拶に向かう。

 

「おはようございます、ヒナさん。それから、イロハさんも、また、お会いしましたね」

 3人の元に到着すると丁度桐藤ナギサが二人に挨拶をしているところだった。

 

「おはよう、ナギサ。今日はよろしく」

「お、おはようございます。ナギサさん」

「……あなたたち、知り合いだったの? いえ、初対面でないのは分かるのだけど……」

 空崎ヒナは二人の様子が気になったのか、二人にそう尋ねる。そしてそのタイミングで、私にも気づいたようだった。

 

「あ……先生も、おはよう。」

「ええ、おはようございます。ヒナさん、ナギサさん、イロハさん。本日はお越しいただき、ありがとうございます。」

 

 3人に挨拶をする。

 

「おはようございます、先生。こちらこそお招きいただき、ありがとうございます」

「おはようございます……私はまだ、あまり納得していませんが」

 

 2人もこちらに気付き、表情は異なるが頭を下げた。桐藤ナギサは笑顔で棗イロハは表情に不満感がありありと出ていた。

 

「それで……ヒナさん。イロハさんとは先日『お友達』になったのです」

「え? ああ、さっきの質問の……お友達?」

 桐藤ナギサが先ほどの空崎ヒナの疑問に関する回答を述べた。その通りだが、トリニティのトップがそれを言うと誤解が生まれかねない。事実、空崎ヒナは発言の意味を探るように二人を見た。

 

「風紀委員長、ナギサさんの『お友達』にはお友達という意味しかないので……」

 スパイ疑惑でもついたらたまったものじゃないとばかりに、棗イロハが補足する。

 

「いえ、別に何かを疑っているわけではないけれど……」

 空崎ヒナはどちらかというと棗イロハの方を意外そうな様子で見ているようだった。

 棗イロハは少し居心地の悪そうに眼を逸らした。もしかすると、棗イロハはどちらかというとエデン条約には反対の立場、あるいはトリニティに対する隔意のあるタイプだったのかもしれない。

 

「でも、良いことだと思うわ。いがみ合っていてもしょうがないもの」

 空崎ヒナは結局、そう言って微笑んだ。

 

「それと、先生。私は今回、報告するようなことはあまりないから聞きに来たのだけど、もし私たちに協力できることがあれば、また言って欲しい。それを言いに来たの」

 

 そして彼女は改めて私の方を見て、そう言った。非常に心強い物だ。

 

「ありがとうございます。出来る限り戦力については学校間の関係に影響しないよう努めますが、もしもの場合にはお願いするかもしれません」

 

 今回、私は私自身の報告として、改めて今日集まってもらった生徒たちに、黒幕、ベアトリーチェについての話をするつもりだった。

 私の回答に、空崎ヒナは確りと頷いた。

 

 ―

 

 

「では、会議が始まるまでもう少しお待ちください」

 

 そう言って3人の元を離れ、もう一人のトリニティ生であり、一人着席し、静かに目を閉じていた歌住サクラコに話しかけた。

 

「おはようございます、サクラコさん。本日はお越しいただき、ありがとうございます」

「あ……おはようございます、先生。お久しぶりですね」

 

 私に気付いた歌住サクラコが、柔和な笑みを浮かべて頭を下げる。噂によると、どうも歌住サクラコは独特の威圧感を放っており、誤解されやすいところがあるようだが、私はあまりそれを感じてはいなかった。少なくともゲマトリアのメンバーよりはマシだろう。

 

「古聖堂の跡地の方はどうですか。直接この目で確かめるべきなのでしょうが、なかなか足を運べずに、申し訳ありません」

 

 あの大規模破壊に関しては、私は実行犯でこそないが、落ちると分かっていて止めず、寧ろ状況を利用したという点で、責任は十分にある。故に気になってはいたが、それ以外にやるべきことが多すぎた。

 

「詳しい話はあとで報告いたしますが、瓦礫などの撤去は順調に進んでいます……ヒナタさんが大活躍していて、特に重機が入りづらい場所などを瞬く間に片づけていくんですよ」

 彼女はその様子を思い浮かべているのか、笑顔でそう言って、私を見つめる。

 

「ですから、先生。このことはあまり、お気になさらないでください。建物が壊れたのが残念な気持ちはありますが、建物はいずれ直すことはできます。ですが、人はそうではありません。先生が古聖堂と引き換えに、多くの方たちを救ってくださったことは、大変うれしく思っています」

 

 そして私の心中を見透かしたかのようにそう言った。逆に気遣われてしまったようだ。

 

「お気遣い、ありがとうございます。シャーレや、私個人で出来ることがあれば、何でも仰ってください。お力になれるよう、尽力します」

「うふふっ、では、その時が来れば、甘えさせていただきますね?」

 

 私のほぼ全面降伏と言える返事にも、彼女はただ微笑んでそう返すだけだった。私はこのキヴォトスにおいて、現状で彼女にだけは全く太刀打ちできる気がしなかった。

 

 ―

 

 

 それからすぐ後に、会議室の扉が開いた。

 不知火カヤがまず入ってきて、そして七度ユキノがアリウスの二人を伴って現れた。

 今日の参加者がこれで全員揃ったことになる。

 

 それに気づいた全員が席に着いたことを確認し、壇上に立つ。

 

「皆さん、本日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。アリウスに関する報告会を始めましょう」

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