黒服がシャーレの先生になった世界線   作:黒服先生

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調査報告会②

「さて、順々に報告をしてもらうのですが、まず、本件についての連邦生徒会の意向のご説明をカヤさんにお願いします」

 

 おおよその段取りは事前に説明していたので、予定通りにそう述べる。何か言ってきそうな者も今回は代理を寄越しているので、異論は特に出なかった。

 私に代わって、不知火カヤが壇上に立つ。

 

「連邦生徒会防衛室長兼SRT特殊学園、シャーレ支部長の不知火カヤです。初めて会う方もいらっしゃいますが、よろしくお願いします」

 

 不知火カヤはよどみなく話し始める。と思いきやいきなりやや言葉に詰まり始めた。

 

「それでですね……実のところ、連邦生徒会は本件についてあまり関与するつもりはないようです。とりあえず、防衛室と、SRTで何とかするように、とのことです」

 

 不知火カヤが話したのはそれだけだった。まあ、内容としては想定内のことではあるが。

 

 実際、ミサイル着弾直後の何日かは不知火カヤもかなり忙しそうに連邦生徒会と話をしていたようではあるが、その内落ち着いていた。人的被害があまり出なかったことから、連邦生徒会としては『よくあること』と処理されてしまったのかもしれない。

 

 とはいえ、他の参加者は呆気にとられた様子だった。しばらく沈黙が続いた。

 

「……まあ、変な横槍が来ないのであればいいんじゃないかしら?」

 空崎ヒナがフォローらしきものを言い、ようやく場が正常に戻り、不知火カヤも

 

「ええ、まあ、そうとも言えますね。SRTの活動に制限がかかることが無さそうなことと、追加の予算はいくらか回せるよう手を回したので、ある程度は協力できるとは思います。私からは以上です」

 

 と言った。本人も現在は現場を見ている方であり、不満を隠せていないようではあったが、そこは元々あったコネクションなどを駆使して、最低限邪魔をされないだけの下地を作ってくれていたので、彼女の出来る範囲で十分の仕事をしてくれたと言えるだろう。

 

 そして、明確に連邦生徒会側であると認識されていた不知火カヤのそのような様子には、特にゲヘナやトリニティの生徒達から意外そうに見られていた。

 

「ありがとうございます、カヤさん。では、次に、トリニティでの地下通路調査チームの話を聞かせていただけますでしょうか」

 

 私の言葉に歌住サクラコが立ち上がる。シスターフッドが外交の場で表に立つことは過去にほとんど例を見ないと言われている。

 しかし、今回の報告会への参加要請は、スムーズに受け入れられた。

 こちらの危機感と協力体制は、確実にトリニティに浸透していると思えた。

 

「皆様、おはようございます。シスターフッドの歌住サクラコです。古聖堂跡地の復興作業と、地下通路探索の責任者として、この会に参加させていただきました」

 

 大きくはないものの、よく通る声で歌住サクラコが話し始めた。恐らく教会での説教で慣れているのだろう。慣れていない子供であれば、怖い、という印象を抱くこともあるのかもしれない。

 

「まずは通功の古聖堂の復興に関して簡単に説明いたします。ミサイルの直撃を受けた建物は殆どが瓦礫となっており、前回のように修復、というような形で直すことは不可能と思われます。また、瓦礫の跡を調査して分かったことですが、カタコンベの入り口とは別に地下通路へつながっていると思われる穴が発見されています。恐らくこれは、古聖堂に存在した隠し部屋に存在していたのだと推測されています」

 

 歌住サクラコが現場写真と聖堂の見取り図を照らし合わせながら説明する。本来は壁で埋まっているはずの部分が、地下通路とつながっていたようだ。

 

「この通り、現存する設計図や外観図だけでは判別できない点がいくつかありました。これらは調印式の為の修復作業を行っていた時ですら発見できませんでした。きっと、必要に迫られて隠され、そして長い年月で忘れ去られたのだと思います」

 

 歌住サクラコの話は現在のアリウスやベアトリーチェに直接関わりがあるわけではないが、非常に興味深いものだった。

 

「そして、本題である地下通路の捜索に関してですが……カタコンベの入り口及び、アリウスの方の証言によって判明した3つの入口について調査しましたが、いずれも、アリウスへの到達は不可能でした。SRT特殊学園の生徒の方にも協力していただき、内部の精密な地図を作成しましたが……何らかの方法で構造を変化させられたのだと思います……」

 

 一度、彼女の視線が、七度ユキノの方を向く。頷くのを確認したうえで、彼女は話をつづけた。

 

「現在は他の入口の捜索を続けているのと、先ほど話した別の通路の調査も検討しています。ただ、こちらはとても長い間使用されていなかったと考えられているため、安全性などの調査が必要になります。何か危険なものがあり、封鎖されていたという可能性も捨てきれませんから」

 

 全ての通路が封鎖された、という訳ではないだろう。ベアトリーチェも補給が必要なはずだ。閉じこもっていてはこちらも手出しが難しいが、彼女の目的を考えると、入り口はどこかにあるだろう。

 

 新しく見つけられたという通路も気になるが、あまり時間をかけるわけにはいかないという事情もあった。残された生徒がいるはずなのだ。

 

「この通り、アリウスへの道筋については、あまり成果を挙げられていないということになります。申し訳ありません」

 

 歌住サクラコはそう言って頭を下げた。

 

「謝罪の必要は無いと思うぞ。サクラコさん。新たな通路を見つけた、前使っていたところは使えないと分かった、それだけでも十分な情報だろう。 ……捜索で、一人の命を救った。それは非常に大きい」

 

 七度ユキノが彼女をフォローするようにそう言った。

 

「……温かいお言葉、ありがとうございます。捜索の途中で、アリウスの方と思われる人物を救助しました。意識は無く、非常に衰弱していました。救護騎士団のミネ団長によると、命の危機は脱したとのことですが、意識の方は未だ回復していないとのことです」

 

 歌住サクラコは一瞬だけ、弱弱しい微笑みと礼を七度ユキノに返し、その件についての説明をした。言い方だけでも、その人物のことが気がかりであることが見て取れた。

 

「……通路で救助された? 誰の事だろう……」

 そしてその報告に反応した者がいた。秤アツコだ。調印式の日、実際に通路に閉じ込められた人物でもある。

 

「あ、ごめんね、いきなり。あの日のことはよく覚えてるけど。私たちが最後尾にいたはず。だから、閉じ込められたのはあの時一緒にいた私たち3人だけだと思っていたの」

 

 秤アツコがそう続けた。

 

 あの時、七度ユキノが連れて来た、秤アツコを含めた3人、それ以外に地下通路にはいない、というのは私自身も共通認識として持っていた。そのため、地下通路内でアリウスの生徒が救助されたという話を初めて報告されたときは驚いた。

 

「はい、アツコさん。恐らくそれは間違いないのだと思います。これは入院しているべつのアリウスの方の証言ですが、救助したその方は、あの時の皆さんの作戦に参加していなかったようなのです。はっきりしたことはご本人が目を覚ましてからでないと分かりません」

「そっか……うん、分かった。ありがとう」

 

 

 秤アツコは、歌住サクラコの返答に、何か考えるような仕草をしていたが、そう言って頷いた。

 

「私からの報告は以上となります。詳しい調査資料などは、ティーパーティーから共有があると思いますので、よろしくお願いします」

 

 最後に歌住サクラコはそう言って一礼し、講壇を離れた。

 

 次はゲヘナ万魔殿からの報告になる。




 FOX小隊のフルネームが判明したので過去投稿分とりあえず修正しましたが、ミスや抜けがあるかもしれませんのでご了承ください。

多世界解釈とかの話をやっていたら本編がそういう匂わせをしてきてるのがちょっと怖いです
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