小鳥遊ホシノを除く対策委員会の生徒たちに種明かしをした後、彼女を探していると、
とある空き教室にいるのを発見しました。
彼女の様子は今までで最もおかしく、錯乱状態に近い状態でした。その際の対話記録です。
私:ホシノさん?
ホシノ:(無言で立ち尽くしている)
私:皆さん、お探しでしたよ。
ホシノ:……何を企んでるの?
私:は?
ホシノ:答えろ、黒服。(こちらに振り向き、銃を構える)
私:ホシノさん……その呼び名
ホシノ:良いから、答えろ! (私の心臓部分辺りに銃をつきつける)
私:……何も企んでいませんよ。この間お話した通りです。
ホシノ:信じられない。だってお前は、あの大人と一緒に……
私:あの大人……あの理事のことですか。それは……
この時点で小鳥遊ホシノの視線が定まっていないことに気づきました。正常な精神状態ではないことが明らかです。
ホシノ:そうだ。お前はあの時私の身柄と引き換えに借金を……
私:落ち着いてください、ホシノさん。
ホシノ:アビドスを守らないと……だって、ユメ先輩が……私が
私:……
ホシノ:黒服。あの時の話って今も有効だよね?
私:あの時の?
ホシノ:私の身柄と引き換えに借金を受けもってくれるって話だよ。
私:それは……ホシノさん、それは一体、いつの話をされていますか?
ホシノ:いつって……
しばらく小鳥遊ホシノが独り言のように何かを呟きますが、内容は聞き取れませんでした。恐らく彼女の記憶に齟齬が発生しており、それを整理しようとしていたものと思われます。
私:分からなければ大丈夫です。ホシノさん。
ホシノ:……
私:聞いてください。他の皆さんには説明しましたが、利息が急に上がるという話は起こりません。
ホシノ:……え?
私:借金について、急に状況が変わることはありません。ですから、すぐに考えなくても良いことなのです。
ホシノ:……信用できない。だったらなんであんな提案を……
私:ホシノさん。よく考えてください。それは本当に……今の貴女が体験した記憶ですか?
ホシノ:何を言ってる。だって、お前は、自分で悪い大人だって……でも借金を借り換えするのは私たちのためだって言ってくれて……
私:……
ホシノ:…………先生? あ、あれ? 私何で先生に銃なんて。
私:……大丈夫ですよ、ホシノさん。私は大丈夫ですから、落ち着いてください。
突然正気を取り戻したかのように小鳥遊ホシノは『先生』呼びに戻り、まだ混乱している様子でしたが、こちらに敵意を向けている状態からは脱しました。
その後、彼女と話をしましたが、原因については分かりませんでした。彼女の言っていたことは間違いなく以前の時間軸のものに近しいものであり、
極めて重要な現象であると言えるでしょう。
記録は以上です。
──
「落ち着きましたか、ホシノさん」
小鳥遊ホシノが正気を取り戻したあと、混乱のあまり、謝罪を繰り返すのをなだめていると、ようやくそれが収まった。
「うん……」
「先ほどまでのことは覚えていますか?」
「うん、多分。何だか突然先生のことが悪い大人なんだって思いこんじゃって、借金の件も、私の中でおかしい話になっちゃってて、せっかく先生が焦らなくても良い案を出してくれたのに、今すぐ解決しなきゃって……うへー、何だったんだろ」
「そうですね……すみません」
小鳥遊ホシノの話を聞いているうちに、私の中に『罪悪感』に近い感情が湧いてくる。
彼女にとっては訳の分からない話だろう。私にとってもそうだ。
「何で先生が謝るの?」
「……ホシノさんの言っていたことは起こり得る話だったのです。話すことができるようになれば、お話します」
「そっか。うん、じゃあ、いつか話してね」
そう言って、小鳥遊ホシノは小さく笑った。それに安心してしまうのも、本来ありえない感情だったはずだ。
そして翌日、彼女に起きた現象に近いものを私も体験することになるのだった。