黒服がシャーレの先生になった世界線   作:黒服先生

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続 預言者同盟 夏の相談編①

 夏が近づいてきたある日のシャーレの会議室に、生徒たちが集まっていた。

 

「ワカモ! 次はアリスもやってください!」

「うふふ。少しお待ちくださいな。もうすぐ終わりますから」

「それより私の髪、今どうなってるんだい? 鏡もないから不安で仕方ないんだが」

 

『預言者同盟』。ある種の秘密を共有しているサークル活動であり、()()()()()()()()()()()

 

 今は、狐坂ワカモが百合園セイアの髪を楽し気に結っており、天童アリスはそれを羨ましがっているようだった。

 されるがままの百合園セイアは文句こそ言っているが、おとなしくしているため、嫌がってはいないようだった。

 

 そして、小鳥遊ホシノはその様子を、近くの席から、机に顎を付けながら眺めていた。非常にリラックスが出来ているようだ

 

 

「あの……先生? これはどういった集まりなのでしょうか」

 

 疑問の声が一つ上がる。

 今日私がこの集まりに連れて来た生徒、梯スバルの物だ。

 

「お、スバルちゃんじゃーん、久しぶりだね~」

 小鳥遊ホシノが姿勢をそのままに、片手をひらひらと振った。

 

「え? あ、確かあのときアリウスに来ていた……あの時と、随分、雰囲気が違いますね」

「え~、そうかな~?」

 

 アリウスに訪れた際の小鳥遊ホシノはかなり気を引き締めた状態であった。脱力しきった今の状態と比べるとギャップがあるのは事実だろう。

 

「こんにちは、皆さん。今日はまた一人見学に連れてきました。アリウスの梯スバルさんです」

 

 まだ挨拶や説明をしていなかったことを思い出し、生徒たちに話しかける。

 

 梯スバルは、自らが特殊な記憶を持っているわけではないが、そのような世界があることを知っている生徒であり、また、彼女にとって特別な存在が、それと関係のある現象のある意味被害者になっている、という点でこのサークルを紹介する意義があると判断したのだ。

 

 梯スバルは余りに牧歌的な雰囲気のこの様子に、少し混乱しているようだった。

 

 

「はい、アリスは、天童アリスです! スバルもパーティメンバーになる、ということですか?」

 

 天童アリスが梯スバルに駆け寄り、笑顔で話しかけた。

 

「ぱ、パーティ? い、いえ。今日は見学ということで、特に何をするとも聞いていないので分からないのですが」

 

 特に何も説明をせずに連れて来たが、実際のところ特に何も聞かれもせず、彼女は普通にこの誘いに乗ったので仕方のない事でもあるのではないだろうか。

 

「そうなのですか? 大丈夫です! スバルもきっと仲間に入りたいと思うはずです!」

「そ、そうですか?」

 

 梯スバルは純粋なタイプの年下生徒には弱いだろうと思っていたが、予想通り、天童アリスの真っすぐな期待に押されていた。

 

「やあ、この間の打ち合わせの時以来だね。こんな格好で申し訳ないが、よろしく頼むよ」

 

 これからパーティーにでも行くのかというような大仰なヘアースタイルになりつつある百合園セイアがそれに続く。

 

「セイアさん……あなたもこのグループの一員なんですね」

「これでも創立メンバーの一人だよ。もっとも、追加メンバーは今のところ私の髪で遊んでるこの()()()()()しかいないんだが」

 

 梯スバルは意外そうな顔をするが、淡々と百合園セイアは返事をした。そしてついでのように自分が()()()()()()()()()()()()()()()ことを伝える。

 

「し、指名手配?」

「あら、わたくしの紹介をしてくれるんですか、セイアちゃん♡ うふふ、今ほど話をいただいた狐坂ワカモです。先生のご紹介という事であれば……」

 

 困惑している梯スバルに、狐坂ワカモは自己紹介をしかけて、途中で止めた。彼女は暫く、梯スバルの姿を品定めしているように見えた。何を想っているのだろうか。

 

「ええ、よろしくお願いいたしますわね?」

 

 そして何かを納得したかのように頷き、言葉を告げた。

 

「狐坂ワカモ? 丁度この間、ニュースになっていましたが……まさか『七囚人』のご本人ですか?」

 

 梯スバルが冷や汗をかきながらそう言った。七囚人『災厄の狐』のトレードマークである仮面をつけていないため、見た目で判別できるものはあまりいないだろう。

 一方で、彼女がそこそこの頻度でシャーレを出入りしていることを今では一定数の生徒が知っていた。

 

「あら、ご存じですか? うふふ、それは光栄なことですね」

「不名誉、ではないのだね、それ」

 

 相変わらず髪をいじられながら、百合園セイアは呆れたように指摘する。

 

「ワカモ。では、スバルにもあれをやるんですね!?」

 

 天童アリスが笑顔で狐坂ワカモに尋ねる。

 

「あれ、とは?」

「えーと、アリスちゃん、何の話ですか?」

 

 しかし、梯スバルはもちろん、狐坂ワカモも何の話か分かっていないようだ。

 

「あー、あれだね。あれ、やっぱスバルちゃんにもやっちゃうの~?」

「……本当に分からないのかい? 前回あれだけ見るに堪えない姿にしておいて」

 

 小鳥遊ホシノと百合園セイアは、何のことを言っているか分かっているようだった。

 そして、私はこの二人の反応から何のことを言っているのかが分かった。狐坂ワカモもそれは同じようで

 

「あ、あー……アレのことですか……そうですわね……」

 

 そう言って、彼女は少し赤面して腕を広げた。まだ困惑している梯スバルの背中を見た目からは全く想像できない怪力の持ち主である天童アリスが押す。

 

「えっ?」

 

 不意を突かれた梯スバルは押されるままに、狐坂ワカモの腕の中に入っていく。狐坂ワカモは、そのまま彼女を抱きしめた。

 これはつまり、彼女が初対面の百合園セイアにやった行動の再現、ということだろう。そもそも身体的接触に意味があるのかもよく分かっていないのだが。

 

「…………な、なんだかスバルちゃんみたいな子と抱き合っているのを見るとちょっといけないシーンをみているみたいだね」

「前もそうだったが、ホシノはそういう趣味でもあるのかい」

 

 小鳥遊ホシノが妙に嬉しそうにそう言った。百合園セイアがそんな彼女をやや呆れたような顔で見る。

 

「…………うーん、やはり、あまりしっくりはこないですね。やっぱりこれはセイアちゃんが一番です」

 

 そう言って、狐坂ワカモは梯スバルを放した。そもそも、梯スバルを今回呼んだのは彼女自身の体質に影響していないため、そうなるのも当然ではあると思うが。

 

「……な、な、何だったんですか今のは!?

 

「えへへ! これでスバルも仲良しですね!」

 

 動きを停止していた梯スバルが、彼女にしては珍しい表情で吠えた。

 しかし、それを詳しく説明できるものは、この場に誰もいないのもまた事実なのであった。

 

 ──

 

 

「こほん……それで、今日のこの集まりの目的は一体何なのですか?」

 

 ややあって、ようやく落ち着いた梯スバルが席に着き、そう尋ねた。

 

「実は私もよく分かっていないのです。何か提案があるから集まってほしい、と呼ばれたので、スバルさんを連れて来ただけでして」

 

 今回の集まりの提案者は私ではなかった。私自身も、グループチャットで私も来てほしいと言われただけだ。そしてそれを言ったのは……

 

「わたくしも同じです」

「私も、まだ聞いていないね。というより、今回の集まりを言い出したのは……」

 

 視線が、天童アリスの方を向いた。

 

「はい! アリスが皆を呼びました。提案があります。ホシノと話していて思いつきました」

 

 天童アリスが天真爛漫な笑顔で頷いた。こう続けた。この後彼女が何を言うのかを知っているのだろう小鳥遊ホシノが、にやにやと笑いながら見ている。

 

「皆さん、私と一緒に冒険に行きませんか?」

 

 そして、彼女は私たちに、何やら壮大なことを私たちに要求した。

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