「ヘルメット団っていうのは当然学校ではない。誰が言い出したのかもよく分かってないけど、まあ不良組織みたいなものね。うちらも不良と呼ばれることを否定はしないわ」
渋々話し始めた割に、彼女は真っ当に自分たちのことについて話し始めた。
「不良みたいな奴らなら百鬼夜行にもいましたよぉ?
テマが意地の悪そうな顔で笑い、空井サキに頬を抓られていた。
「ああ、あれでしょ。魑魅一座。うちも知り合いはいないけど、聞いた事はあるわ。でも……あの子達って」
河駒風ラブはそう言って私を見た。噂ではなく、正しい情報を言って欲しいのだろう。
「魑魅一座のメンバーは、皆百鬼夜行連合学院の生徒ですね。そもそも学籍を持たないヘルメット団の方たちとは異なります」
学校に所属している、ということはその学校に保護されていることを意味する。殆どの場合、学校は生徒たちの生活を保障している。仮に殆ど登校していなくても、校則や法律に違反していたとしてもそうだ。SRTの生徒たちも、今はシャーレの予算の中で生活をしている。
「そういうこと。うちらは学校に入っていない。だから、自分たちで生活する必要がある。生活するのに最も必要なのはお金。でも、
「うーん? そういうものですかぁ?」
河駒風ラブの話に、テマは実感が持てていないようだ。
「そういうものよ。だから、私たちはなんでもする必要がある。見つかるのはあんまり割の良くない仕事か、あるいはやりたくない仕事が多いけどね……あ、ううん。今は違うんだけどね、前は、の話。今は、偶然にも先生と知り合って、シャーレに来るお仕事を貰ってる」
「それに関しては偶然ではなく、ラブさんが仕事を探しに自らシャーレへ訪れたのがきっかけですね。自らの行動の結果です」
一点だけ、訂正する。彼女が最初に訪れたから、彼女に依頼した。些細な事ではあるかもしれないが、偶然ではない。
「う、うん……ありがと。とはいえ、それはうちの、ジャブジャブヘルメット団だけで、他の団の子達は今も似たようなものだと思うけど」
「ふむふむ。大変そうですが、何だかカッコいいですねぇ!」
そして、恐らく河駒風ラブの思惑とは裏腹に、テマはヘルメット団に興味を持ってしまったらしい。
「……まあ、どうしても入りたいって言うなら拒否はしないけど、普通にきついわよ。シャーレの仕事っていっても基本的には肉体労働が多いし。工事現場とか、いけそう?」
「うっ、それはあんまりやりたくないですねぇ」
テマが正直すぎる反応を返し、河駒風ラブはため息を吐いた。
「はい、これでうちの話はおしまい」
そして、河駒風ラブがそう締めくくると、生徒たちから拍手が起こった。一番手を務めた彼女への労いだろう。
「いやそういうの良いから! 次誰なのよ。これ学校紹介なんだから、これからが本番でしょ!?」
そしてそれを、彼女は大声でかき消し、強引に話を進めた。
――
「はいはーい! じゃあ私が話しますね! くじ引きはこの通り、2番です!」
河駒風ラブの話に乗ったのは元宮チアキだった。
「改めて自己紹介しますね! ゲヘナ学園の2年生、万魔殿の元宮チアキです!」
「ゲヘナは行きませんから次に行っても良いですよぉ」
「なんでですか!?」
テマがゲヘナという名前を聞いてすぐに拒否反応を示した。出鼻をくじかれた元宮チアキが大げさに叫ぶ。
「だって、ゲヘナって危ないところだって聞いてますよぉ? 学校やお店が爆発するのは当たり前、変な怪物が現れたりもするって聞いてますし」
「お前も変な怪物出してたじゃないか」
「あれは変な化け物じゃありませんよぉ!?」
首を横に振りながら拒否を続けるテマに、空井サキが指摘する。残念だがあれは変な化け物で間違いの無いものではあった。
「はいはい。でも、とりあえず話は聞いてみないか? 別に聞くだけならタダだろ?」
「……うーん、しょうがないですねぇ」
色々と文句は言うが、それでも空井サキの言う事には従うようだった。
「えーっと、とりあえず話しても良いんでしょうか!? では、始めますよ!?」
めげない様子の元宮チアキが話し始めた。
「まず、テマちゃんの言っていた、爆発や変な化け物については本当なので、言い訳のしようがありません!」
そして折角仕切り直しから入った彼女は、先ほどのテマの発言を開き直ることにしたようだ。
「とはいえ、それだと誰も入りたくないと思うので、私がゲヘナの魅力を簡単に話しますね! ゲヘナはですね……自由なんです!」
「自由……?」
あまりにもはっきりと言い切る彼女に、テマが釣られて反復してしまう。
「そうです! 爆発も化け物も、まあ言ってしまえばその副産物です。ゲヘナでは学校に行くも行かないも自由! 部活に入るも入らないのも自由です! 私は生徒会なんか入っちゃってます。少数派ですが、それもありってことです」
「爆弾テロや強盗も自由ってことですかぁ? 化物をけしかけたりするのも?」
テマが当然の疑問を尋ねる。元宮チアキは笑顔で頷いた。
「そうですね! そう捉えている人もいるのは確かです! でもあまりに人に迷惑をかけすぎてはいけませんよ? 怖ーい風紀委員が来てしまいますからね!」
「風紀委員?」
「はい! ゲヘナにおいて圧倒的な軍事力を持つ治安維持部隊です。
ゲヘナの内部情報をそこまで話してしまっても良いのかと思ったが、あの二人の関係性はトリニティにすらよく伝わっている情報でもある。大きな問題は無いのだろう
「まあ、そんなわけで、風紀委員が治安を保つために動いているのでゲヘナにもルールが無いわけではありません。でも、それはあくまでルールがそうなっているというだけで、自主的に守っている人もあまりいません! なので多くの生徒は少なくとも2、3回は風紀委員のお世話になっています! あ、一応私は無いですけどね、あはは」
元宮チアキは視線を感じたのか、慌てて直前の自分の意見を翻して自分の疑惑について否定した。
「まあ、そんな感じの場所なので、学校に行きたくない人にもおすすめできる、そんな学校が私たちの学校、ゲヘナ学園です! まあ、危険なのは否定できないところではありますよ? それでも、私はゲヘナが好きです。好きが高じて、ゲヘナや万魔殿を紹介する週刊誌編集してますし」
彼女はそう言って言葉を止めた。どうやら、言いたいことは言い切ったらしい。
「どうですか? テマちゃん。ゲヘナに興味は持てましたか?」
彼女がテマに尋ねる。テマは考えるそぶりを見せた
「うーん、まあ、そうですねぇ。ただ危ないと言うだけの学校ではない、ということは理解できましたよ? でも手前、あんまりうるさい場所は好きではないんですよねぇ……」
テマのその回答に、元宮チアキは肩を落とした。ゲヘナは自由だが、静寂とは程遠いのはまた事実だろう。
「あははー、まあ、じゃあ一応検討だけはしてみてください! 次は誰ですか?」
元宮チアキが他の生徒を見回すと、2人の生徒が立ち上がった。
「は、はい! 次は3番の私たちですね」
「くじ引きはこれ。さあ。ヒフミ、言ってやれ」
阿慈谷ヒフミと白洲アズサ。つまり、次はトリニティの番のようだ。