黒服がシャーレの先生になった世界線   作:黒服先生

235 / 235
魔王城①

 ゲーム開発部に暗号文を送ってから、暫くの時間が経った。十分な準備を行う時間、という訳では無いが、ミレニアムでもトップクラスのエンジニアが複数揃っているだけあったこと、そしてこのエリドゥという施設が、調月リオによって作られた柔軟性の高い場所であることもあり、下層部の準備は出来つつあるようだった。

 

「そろそろ到着するようですよ。勇者御一行、いえ勇者の『()()()()』御一行ですか。」

 

 明星ヒマリがそう言って、エリドゥの入口付近に設置してあるカメラの映像を映す。

 

『うわー!? おっきな建物ですね? ミレニアムにこんなところがあるなんて、知りませんでした!』

『な、何なのこの建物。会長が一人でこれを……? ノアは知ってた?』

『いえ、私も……少なくともこの場所は民間企業が商用ビルを建築工事中、ということになっていたはずです』

 

 

 最初に早瀬ユウカと生塩ノア、セミナーの幹部である二人の声をマイクが拾い上げた。生塩ノアがここにいるのは、セミナーを探しに行った黒崎コユキが彼女に見つかったからであり、そして、彼女のように、ゲーム開発部に協力するメンバーがいた。

 

『こんなものがあるのを知っていたのはウチの部長くらいじゃないのかな?』

『そのはずです。リオ様は、この件を極秘にされていたので』

 

 特異現象捜査部の和泉元エイミと、調月リオの直属で行動していたC&Cの飛鳥馬トキ、彼女達二人は仕掛け人でもあるが、戦力として協力するようにそれぞれの先輩から指示を受けていた。そして、合流したタイミングは暗号が解き終わり、ミレニアムの校舎を出たところだ。

 

 偶然を装った二人の演技は、特別流暢と言える物でも無かったが、少なくともゲーム開発部の生徒たちを誤魔化すには十分なようだった・

 

『凄いねー……でも、現代版魔王城って感じでちょっとワクワクしちゃうかも!』

『お姉ちゃん、今そんなこと言ってる状況?』

『で、でも……確かに、今後の作品の参考にはなるかも……って! えっと、ここにアリスちゃんたちがいるのかな?』

 

 ゲーム開発部の残りの3人も姿を見せた。

 

『これ、ミレニアムの極秘施設だとしたら私が来ても本当に良かったの?』

『今更だと思いますけどねぇ……随分な学校見学になってしまいましたが』

 

 嫌なものを見てしまった、と言いたげな、高倉クルミ、そして、テマ……本名は()()()()()、というらしいが、彼女の姿も見て取れた。

 総勢10名、随分な大所帯になっていた。

 

『わわっ!? な、何か来たよ!?』

 

 調月リオが用意していた案内用のロボットが彼女たちを出迎え、驚いた才羽モモイが叫んだ。

 

『何だろう、これ……こっちに来い、って言ってるのかな』

『大丈夫ですか? 罠じゃないですよね!?』

 

 突如現れた機械に、ゲーム開発部の生徒たちは警戒していた。保護者の三人、早瀬ユウカと高倉クルミ、そして生塩ノアの三人は彼女達の様子を見守っているようだった。

 

『……行ってみよう、皆。ここで立ち止まってても、アリスちゃんとは会えないよ』

そして、最初に足を踏み出したのは花岡ユズだった。

 

『さっすが、部長だねユズ! 行こう!』

『うん、アリスちゃんがどうしてあの暗号を考えたのかは分からないけど、このロボットがいたってことは、きっとこの先にいるんだよ、ね?』

『ほ、ほんとにいくんですかー!?』

 

 才羽姉妹は、すぐに花岡ユズの後に続いた。ただ、黒崎コユキはまだその勇気が持てないようだった。

 

『テマはどうする? 行かないなら、私は一緒に残るんだけど?』

『え、行きますよぉ? 罠でもクルミちゃんが守ってくれるんでしょ?』

『……多少は自分の身を守る努力位しなさい』

『あたっ!? 何でチョップするんですかぁ!?』

 

 締まらない様子で、ゲストの二人も入っていく。

 

『私は付いて行くけど……』

 早瀬ユウカが、黒崎コユキの方を気にしながら、先を行く生徒へとついていくように先に進む。その際、彼女は同期の生塩ノアの方を見ていた。

 

『コユキちゃん、私と一緒に待っていますか?』

 その意味を十分に理解した生塩ノアが、黒崎コユキに問いかけた。

 

『え!? い、行きます。行きますよ! ノア先輩と待ってるのもちょっとあの……』

『あら、どういう意味ですか?』

『いえ、何でもないです! 急いで追いかけますよ~! はっちゃー!』

『あ、いきなり走ったら危ないですよ!』

 

 口を滑らせた黒崎コユキが誤魔化すように走り去っていき、それを追いかける生塩ノアが、一瞬、()()()()()()()()()()()()()()()。気付いていたのだろうか。

 

『じゃ、私たちも行こっか、トキ』

『はい。追いかけましょう、エイミ』

 

 最後に残った二人が歩み始める、かと思いきや、一歩で踏み出したところで、すぐに止まる。

 

『あ、でもその前に』

『ああ、そうですね、喧嘩を売っておきましょう』

 

 2人はそういってから、和泉元エイミが舌を出すような仕草をし、飛鳥馬トキが銃を取り出して、一発、カメラに向かって弾を発射した。

 

「……とっても仲良しで、生意気な子達になってしまったみたいですね♪」

 

 壊されたカメラからの映像が途切れたのを確認し、明星ヒマリが何故か嬉しそうに呟いた。

 

――

 

『魔王の迷宮……? 凄いね、なんか遊園地のアトラクションみたい!』

 

 ロボットの案内に従って、ゲーム開発部の生徒たちは白石ウタハが短時間で作り上げた迷路型のステージに到着した。

 総勢10名の集団だ。とりあえず天童アリスが無事である、という予測が立っていることもあり、緊迫した空気は少し薄れているように見えた。

 

『あれ、でもこの扉、どうやったら開くんだろう……』

 花岡ユズのつぶやく。その呟きに答えるように、このフロアの仕掛け人である白石ウタハが答える。

 

『ようこそ、囚われの勇者の仲間たちよ。私は()()()()()()()()()()()U().()S().()だ。勇者を救いたければ、この迷宮を攻略してもらおう』

 

 白石ウタハは、全く聞いたことの無い設定を述べていく。とりあえず私たちは魔王軍、ということになったらしい。

 

『四天王!? そんなベタな!?』

『っていうか魔王って何なの? いつからそんな設定になったんだっけ』

『というか、何か聞いた事ある声ですね。う~ん』

 

 緊迫感の無い驚きがゲーム開発部に広がる。口上を述べている方にあまり緊張感が無いのが原因だろう。

 

『そういえば、この辺りの設定は全部こっち側で考えたものだったね。とりあえず、アリスと会いたいなら、この迷宮を抜けなければいけないというのは本当だよ。』

 

 そして、設定を維持することを早々に諦めたらしい白石ウタハは、いつもの口調に戻り、淡々と話し始めた。

 

『あ! 思い出した! この声、ウタハ先輩だよ!?』

『ええ!? なんでウタハ先輩が魔王軍なんてやってるの!?』

『そんなこと聞かれても知らないよ……どうしてなんですか?』

 

 才羽ミドリが声の主に気付き、姉妹で騒ぎ始める。

 

『……さて、勇者のところにたどり着く方法だが、ここには3つの……』

 

 白石ウタハはそれに答えることはせず、ルール説明を進めるようだ。

 

『無視された!? ウタハ先輩、無視したよ!? 酷い!?』

『いや、もういいからちゃんと聞きなさいよあなた達……』

 

なおも騒ぐ才羽モモイと、呆れた声の高倉クルミの声をマイクが拾う。

 

『……ともかく、3つの試練がある。そのうち一つがこの迷宮という訳さ。そして、この迷宮を抜けた先に二つの試練に繋がる扉がある。全て突破することで、君たちはアリスの元にたどり着くことが出来る、そういうことになっているのさ』

 

『何だか本格的にゲームみたいな話になってきましたねぇ……ミレニアムも思ったよりヘンテコな学校ではないですか?』

『テマちゃん。ミレニアムがいつもこんな感じという訳じゃないから、誤解しないでね?』

 

 暢気に呟くテマに、早瀬ユウカが慌てている。

 

『さあ、それでは扉を開こう。諸君らの健闘を祈っているよ』

『仮にも魔王軍の幹部が()()()()()()()()()を祈っても良いの?』

 

ともあれ、彼女達の脱力しそうな魔王城攻略が、本格的に始まった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア(作者:マスターBT)(原作:ブルーアーカイブ)

 枝分かれの先まで見る事が出来る目を持つゲマトリアが、ただ眺める事にも飽きて『物語』を経験しようと、新たな世界のキヴォトスへと降り立ち、初めて出会ったアル社長との出会いを皮切りに、便利屋68の面々と青春を謳歌するお話。


総合評価:10863/評価:8.84/連載:146話/更新日時:2026年08月16日(日) 12:24 小説情報

転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする(作者:popoponpon)(原作:ブルーアーカイブ)

いろんな娯楽はあるけど前世の娯楽もこの世界で楽しみたい!ということでTS転生したけど諦めずに自分の好きなものを作っては皆で遊んだり、本編に絡んだりしてくる女の子、夢見モルフォのお話。


総合評価:14498/評価:8.8/連載:248話/更新日時:2026年08月20日(木) 12:00 小説情報

降格回避√カイザーの野望(作者:ハヤモ)(原作:ブルーアーカイブ)

ある意味で生まれ変わった悪徳大企業の理事が、知ってるようで知らない学園都市で、降格されないよう足掻いたり女の子とイチャつきたくて戦犯顔になる話。▼キャラ崩壊や今更なネタバレが含まれます。▼注:作者は素人なので生暖かい目でお読み下さい。他作者様の書き方等を参考に進めますが、解釈違いもあります。場合により削除します。ご了承下さい。


総合評価:1880/評価:8.35/連載:32話/更新日時:2026年06月08日(月) 17:15 小説情報

キヴォトスinドブカス成り代わり(作者:ソリダコ)(原作:ブルーアーカイブ)

朝起きたらブルアカの世界で禪院直哉になっていた男の物語▼ブルアカ未プレイで右も左も分かんない主人公はこの先やっていけるのか▼そんなお話です▼ついでに主人公はブルアカ未プレイで旧ツイッターやpixivで軽くキャラがわかる程度の知識です▼そういう作者も未プレイで二次創作でのふわっふわ知識なので間違っている箇所が多々あるかもしれないのでご注意ください▼『ウルト兎』…


総合評価:19915/評価:8.66/連載:216話/更新日時:2026年04月06日(月) 19:00 小説情報

ゲマトリア(偽)(かぼちゃ)の青過ぎる空(作者:それがダメなら走っていこう)(原作:ブルーアーカイブ)

「やって見せろよ先生、なんとでもなるはずだ!」▼ネットミームで有名な踊るカボチャ偽マフティーの姿でブルアカ世界に転生してしまった男。▼ヘイローも無ければシッテムの箱ことアロナちゃんもおりゃん。▼清廉さの欠片も無く原作知識を悪用し小金を稼ぐことを思いつくが……▼天国にも地獄にも行けないカボチャ。▼偽物の偽物の偽物の明日はどっちだ。▼あ、偽マフティーになってしま…


総合評価:27085/評価:9.12/完結:84話/更新日時:2025年03月09日(日) 22:30 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>