『これ、どうなってるの!? キリが無いよ!?』
才羽モモイが叫んでいる声が聞こえる。
最後のグループとなる、ゲームの才羽姉妹と花岡ユズ、そして引率役の早瀬ユウカの4人は銃を構えて、戦闘を行っていた。
相手は当然、人間ではなく
『ああ、またいなくなっちゃった。どういうことなんだろう?』
1発の銃弾がロボットの内の一体に当たると、それも含め、すべてのロボットが壁の中へと、性格に言えば壁の中にある格納スペースへと消えてしまう。
カメラをよく見ると、入り口のところにボタンが一つあった。
『ユウカ、もう一回お願いしても良い?』
『え、ええ。じゃあ押すわよ』
花岡ユズに頼まれて、傍に立っていた早瀬ユウカがそのボタンを押す。
再度、格納スペースから無傷のロボット9体が出てきて、彼女達に銃撃を開始する。
才羽姉妹が応戦し、やはり銃弾が一発あたるとロボット達は元の場所へと戻っていく。
私たちがこれをカメラ越しに見始めた段階で、彼女達は既に何度かこの戦闘に挑戦していたようだ。
『うーん……全然駄目だぁ』
『うん、最初は大したことないと思ったんだけど……』
才羽モモイがへたり込み、才羽ミドリも、座りはしなかったものの、銃を下げて落ち込んでいた。
『そういえば……、ねえ、ユウカ。最初の時、どんな感じだったか覚えてる?』
その時、何かに気付いたように花岡ユズが、早瀬ユウカに尋ねた。
『え? あの時は突然だったからちょっと自信がないけど……いきなり出て来たロボットに、びっくりしたモモイが一番手前の真ん中のロボットを撃ったのよね。その後はミドリが、確かその奥にいたロボットを撃った。その後2発目をその右のロボットに撃ったところで、やり直しになったんじゃなかったかしら』
『ありがとう、ユウカ。モモイ、ミドリ、次は私の言う順番で撃ってもらって良い?』
花岡ユズが早瀬ユウカに礼を言い、それから才羽姉妹へと提案した。
『何か分かったの、ユズ!?』
『ユズの言う通りにすればいいんだね?』
花岡ユズの言葉で、才羽姉妹が立ち上がり、再度銃を構えた。
『じゃあ、ユウカ、お願い』
『ええ。じゃあ、行くわよ』
早瀬ユウカが、再度指示に従いボタンを押す。
『撃ってきたよ!?』
『うん、やっぱり。モモイ、一番手前の真ん中』
『おっけー!』
才羽モモイの射撃が、指示通りにロボットを撃ち抜く。ロボットが格納スペースに戻ることは無い。
『ミドリ、その奥の、真ん中のやつ』
『うん!』
才羽ミドリが射撃を行う。早瀬ユウカの記憶通り、そこまではロボットが消えることは無かった。
『よし! 次は私! その後モモイは左の一番手前! 』
そう言って、花岡ユズは右側一番奥のロボットを撃ち抜く。
『すごい! 何で分かるの!?』
才羽姉妹は驚きながらも、花岡ユズの指示通りにロボットを撃ち抜いていく。
そして、9体全てのロボットが倒され、部屋の反対側に別のスイッチが出現した。
『やったー!! ユズ、すごーい!!』
『うん、凄い。結局、何だったの?』
歓声が上がり、花岡ユズに才羽姉妹が抱き着いた。早瀬ユウカも小さくを拍手している。
『ひゃぁっ!? え、えーっと、殆ど勘なんだけどね、同じ種類の奴を手前から順に倒していくのかなって。4体目はどっちが先か分からなかったから運だったけど……』
そう言って解説する彼女本人も珍しく嬉しそうな表情だ。作戦がうまくいったことが嬉しいのだろう。
『よし! じゃあ、先のボタンを押してみよう!』
そして、才羽モモイが先ほど出現したスイッチに触れると、扉が開いた。
『あ、ゴールかな! 数字で2って書いてる扉があるよ!?』
先の部屋に勇んで進んだ彼女の声に、残りの3人も追いかける。
明星ヒマリがカメラを追いかけさせると、才羽モモイの言う通り、そこには②と書いている扉があった。
『ここが、ウタハ先輩の言っていた第二の試練、なのかなあ?』
『ウタハ先輩じゃなくて……えーっとなんだっけ魔王軍の四天王のなんとかさんでしょ?』
『そういえばそうだったね。どうする、進んじゃう?』
試練をクリアしたことに興奮している才羽モモイが勢いのまま扉に手をかける。
『ちょっと待ちなさい。他のグループがどうなっているか、確認した方が良いんじゃない?』
それを早瀬ユウカが止める。
『あ、それもそっか。ここが当たりなら、他のところはどうなんだろう』
それに才羽モモイも納得し、4人は来た道を戻り始めた。
――
「さて、無事一つ目の試練を突破したようですね。そろそろ、先生も準備をした方が良いのではないですか?」
共に映像を見ていた明星ヒマリが、私に問いかける。
「そうですね……確かにそうかもしれませんが、残り2つの試練は、聞いている限りだと1つ目の試練よもかなり難しいですから、そこまで焦る必要もないかと」
片方については、何かしらのアクシデントでもない限り、正攻法での突破は殆ど不可能に近い内容だ。
「その辺りは、2人が上手にやってくれることを期待するしかありませんが……」
「期待できるんですか?」
その言葉に、訝しそうな表情でケイが尋ねる。
「…………さて、皆の様子を見てみましょうか」
明星ヒマリはそれには答えず、すっかり慣れた手つきで端末を操作し、画面を切り替えた。
――
『こっちは外れでした! まったく、酷い目にあいましたよ!?』
『コユキちゃんが先走っちゃったからじゃないですか』
『こっちは多分、当たりだったのかな、3って書かれた扉があったよ。位置は……正面向かって右側かな』
『はい、私も確認しました』
『こっちは②って書かれた扉があったよ! 変なロボットと戦わされて大変だったー!』
『ちなみに、扉は向かって左だったわ。2と書かれていたわね』
別れていた3つのグループが合流し、それぞれ報告を行っている様子が映し出される。
『3つの試練って言っていたけど、それぞれ全員で挑めばいいのかな?』
花岡ユズが呟いた、丁度その時、その部屋に存在するスピーカーから音が入った。
『諸君、無事第一の迷宮を突破したようだね。君たちは二つの扉を見つけたはずだ。ご想像の通り、これら二つの扉の先には第二の試練、第三の試練が待っている。君たちはそれぞれ、どちらか片方の部屋にしか入ることができない。また、二つの試練をどちらもクリアする必要がある』
説明係が板についている白石ウタハの声が、スピーカー越しに聞こえてくる。
『つまり、手分けしてそれぞれの試練を突破すれば良いってこと?』
『その通りだ。詳しい試練の内容については、それぞれの部屋の主に確認してくれ。説明は以上だ。健闘を祈っているよ』
『また健闘祈ってくれてる……』
白石ウタハの声は、それ以上もう聞えないようだった。
『ど、どうする? どうやってわける?』
『うーん……と、とりあえず覗いてみない? 部屋に入らなければ、皆で確認することはできるんじゃないかな?』
即席の作戦会議が始まり、すぐに花岡ユズが提案する。ゲームのことであれば彼女に従うべき、という認識があるのかは分からないが、メンバーはそれに粛々とそれに従うことに決めたようだ。
程なく、参加者たちは②の扉がある部屋まで戻ってきた。
『じゃ、じゃあ開けるね? 失礼しまーす』
そう言って、才羽モモイが扉を開いた。
『お、ようやく来たか。待ちくたびれ……』
『し、失礼しましたー!!?』
開きかけた扉の中を一足早く確認した才羽ミドリが急いで扉を閉めた。
中から聞こえた声は、間違いなく美甘ネルの物と思われた。
『ど、どうしたのミドリ!? 何があったの!?』
『無理無理無理! 無理だよお姉ちゃん!? 中、ネル先輩が一人で立ってたよ!?』
『えーー!?』
才羽姉妹が大騒ぎする。第二の試練は美甘ネルが担当、ということになっていたが、恐らく彼女は複雑な準備はしていないのだろう。
『まだ、戦って勝たなければならないと決まったわけでは無いのでは?』
『もしそうだったら引き返せないんだよ!? さっきあれだけいてクルミさんしか動けてなかったのに、勝てるわけないよー!?』
『……まあ、確かに私でもタイマンで勝てって言うのはほぼ無理だと思うわよ』
飛鳥馬トキが、他の可能性も口にするが、才羽モモイが嘆き、高倉クルミも呆れたような表情で頷いた。
『確かに。C&Cのダブルオー相手だとちょっと厳しいかもだけど……もう片方のものも見てみる?』
和泉元エイミの提案はつまり、問題の先延ばしにしかならないものだったが、集団は1も2もなくそれに同意した。
そして、③と書かれた部屋の前、再び才羽モモイが扉を開いた。
『失礼しまーす』
『やあ、待っていたよ。ここでは私がチューンしたこの……』
『失礼しました!?』
そして、才羽ミドリが再び扉を閉める。
『何か、ウタハ先輩と見たことあるロボットがいたよ!?』
『同じ四天王なのに、二つの試練を兼任してるの!?』
『そういう問題じゃないよお姉ちゃん!?』
『モモイちゃんとミドリちゃん、さっきから大はしゃぎですねぇ……』
『楽しそうで何よりじゃない』
騒ぐ才羽姉妹と、それを他人事のように眺めるテマと高倉クルミの声がマイクに入ってくる。
『ちなみに、皆さんが以前戦ったロボットとは異なりますよ』
『え、トキ、何か知ってるの? って、もしかしてあの時の謎のメイド服の人って』
『ええ、実はあの謎の仮面メイドは私でした。それで、あの時のロボットはあくまで試作機だったのですが、リオ様が改良を施した完成版です。それに恐らくエンジニア部の部長がさらに改造を施していると思われるので……』
『思われるので……?』
声を震わせながら、才羽ミドリが最後の言葉を待つ。
『つまり、あの時とは比べ物にならない位強くなっていることが想像できます』
『『聞きたくなかったよ!?』』
才羽姉妹の叫び声がノイズとなって聞こえてくる。。
ミレニアムが有する最高クラスの武力が二つ、それが彼女たちに与えられた試練だ。果たして、本当に私たちに出番があるのだろうか。私はしなくても特に困らない心配を胸に感じていた。