『じゃあ、誰がどっちに行くか決めようか』
『どっちも嫌だぁ……』
元の分岐へと戻った一行が、チーム分けの相談を行っている。
『でも、アリスに会えないのも嫌だよ』
『それはそうだけど……うん! みんなで頑張れば大丈夫だよね!? ネル先輩もウタハ先輩も、ちょっとは手加減してくれると信じよう!』
才羽モモイは妹の言葉で奮起したようで、締まらない発言をした。
『なんだか後ろ向きな期待ね。まあ、どちらにせよ二つ攻略しなければならないってことなのだから、やるしかないわよね』
『どうやって決める? くじ引きとか?』
和泉元エイミが、とりあえずといった提案をする。彼女としてはどちらに行っても問題ないという考えなのだろう。
『もうちょっと考えようよ!?』
才羽モモイがそれに反対する。逆に彼女はどちらでもいい、とは考えていないのだろう。
『じゃあどうするの?』
『えーっと……さっきの感じだとネル先輩と戦える人って限られてくるんじゃないかな? ロボットの方はまだ的が大きいし、ウタハ先輩を狙ったりできるかも?』
才羽モモイが自分でも根拠がないと分かっているだろう提案をする。
『ウタハ先輩って戦ったら強いのかな?』
才羽ミドリがそれに応じて、新たな疑問を呈した。
『うーん……3年生なら能力測定をしていると思うけど、どうだったかしら。ノアは覚えてる?』
『そうですね……身体能力は比較的高い方だったかと。総合戦闘力では上の中くらいだと思います。勿論ネル先輩やC&C、保安部員の方のような戦闘に慣れた人ほどではありませんが……』
セミナーの二年生二人がそれに答える。私も彼女自身の戦闘能力については知らなかったが、十分戦える、ということだろう。
『少なくとも私たちよりは戦えそうだね……うーん……でもやっぱりどちらかというとウタハ先輩の方がマシ、ということになるのかな?』
『結局、どうするの? 私はどっちでも良い、というか流れだとネルさんの方に行くことになるわよね?』
『私もそっちでいいよ』
『では私も。リーダーの実力を直接知っておきたいというのもあるので』
高倉クルミ、和泉元エイミ、飛鳥馬トキの3人が美甘ネルの側へと立候補する。流れからすると妥当なところではあるだろう。
『じゃあ、残りの7人はウタハ先輩の方?』
『そ、それはちょっとバランス的に良くないんじゃ……』
『じゃあ、どうする?』
『え!? うーん、じゃ、じゃあそっちの3人に残りの1人を決めてもらうとか……』
花岡ユズが控えめに提案すると、美甘ネル組の3人が目を合わせた。
『じゃ、ちょっと相談するね』
『え?はーい』
そして和泉元エイミが相談すると言い、3人が少し離れた場所で残りのメンバーを誰にするかの相談を始める。程なくして、彼女から最後のメンバーの名前が告げられた。
『じゃ、ユズ。よろしく』
『え……わ、私!?』
相談の結果、選ばれたのは花岡ユズだったようだ。本人は不本意そうな顔で驚いていたが。
『うん』
『動体視力なら一番良さそうだし、一流ゲーマーならではの視点とか参考になりそうよね。私がこっちだからテマっていうのも考えたけど、こっち嫌でしょ』
『
『はいはい……じゃ、ユウカ、悪いけどテマの事頼むわよ』
『はい、勿論です』
テマに即答された高倉クルミは複雑な表情をしている。しかし予想はしていたのか特にコメントはしなかった。いずれにせよ、これでメンバーが決まったのは間違いないだろう。
『では、私たちは行ってまいります。ご検討を』
そして、花岡ユズは3人に引きずられるようにして有無を言わさず連れていかれていった。。
『……よーし、私たちもがんばろー!』
残された6人の生徒たちは、才羽モモイのふわりとした号令に従って白石ウタハの待つ部屋へと進んでいった。
――
2と書かれた扉を開き、4人は中に入っていく。先程は扉が開いた直後に口を開いた美甘ネルだったが、今回は実際に入ってくるまで疑うような様子で入口を睨んでいた。
部屋にはいくつか什器のようなものが置かれていたが、戦うためか十分なスペースが開けられており、彼女はそこに一人立っていた。
『今度こそ、ちゃんと入ったな? ホント、寸止め食らったから待ちくたびれたぜ。1、2、3、4人で良いのか?』
そして、全員が入ったのを確認し、ようやく口を開いた。
『さっきぶりね。何でかミレニアムのゴタゴタに巻き込まれてる感じがするけれど、乗り掛かった舟だし、挑戦させてもらうわ』
『よろしくね、先輩』
『あ、あの……私は……あ、なんでもないです……』
『……』
まだ納得しきれていない様子の者と特に何も言わず会釈するだけの者もいたが、挑戦する4人も挨拶を返す。
『んじゃ、早速やるか。そっちの、ウチの新入りの実力もみてみたいしな』
『待って。先にルールを説明してくれない? さっき、中にいる人が説明してくれるって言われたんだけど?』
『んあ? ああ、そういやそうだったな。本当はどっちかが全員起きれなくなるまでやり合っても良いんだが……』
美甘ネルが、ポケットからカードのようなものを取り出し、4人に見せた。
『これ、あたしの後ろにある扉、鍵がかかってて、
彼女はそのカードキーを転がっていた箱に入れ。奥に一つだけ置かれている棚に放り投げた。
『あたしを倒して悠々と取っても良し、誰かと戦っている間にあたしを出し抜いて取っても良し。親切なルールだろ? じゃ、始めようぜ!』
そして、二挺の愛銃を構え、彼女による第二の試練が始まった。
――
「随分と悪役が板についてませんか?」
「……普段からネルはああいう感じよ」
映像を共に見ていたケイが、どこか感慨深げにつぶやき、それに調月リオが素で返事をした。
「いえ、それはまあ、何となく知ってはいましたが……口調と役割がマッチしているというかなんというか」
ケイは直接的な悪口にならないように言葉を選んでいるようだった。
「恐らく、あの子達でも厳しい戦いになると思いますが、とりあえずウタハの方も見てみましょう」
そして明星ヒマリはその辺りのことについては口を挟むことなく、カメラを切り替えた。
――
『今度こそ参加するメンバーが決まったのかな? えーと、私が魔王軍四天王の1人、魔人ウタシロだよ』
『別人設定!?』
『というか、ロボットも2体いるんだけど……』
『まあ、それはどうでも良いか。とりあえず、今回の試練について説明しようか』
驚いている才羽姉妹を横目に、魔人などと言い出した白石ウタハは、手元のスイッチを押した。
白石ウタハの前に存在する2体のロボットの内、一体が、挑戦者たちの方に近づいていく。慌てて彼女達は銃を構えたが、そのロボットは180度回転し、白石ウタハの方へと武器を構えた。
『あれ? どういうこと?』
『そのロボットの名前はカスタムアバンギャルド君。君たちの味方だよ』
白石ウタハが楽しそうに説明を始める。
『そこに1~10まで書かれたボタンが二つずつあるだろう? 赤い方が攻撃用、青い方が防御用だ。』
彼女の言う通り、カスタムアバンギャルド君の後ろには文字盤が存在し、赤いボタンと青いボタンがそれぞれ10個ずつ存在した。
『君たちは、順番にその攻撃と防御のボタンを使ってカスタムアバンギャルド君に命令を行う。私も同じ条件で戦う。先に相手のカスタムアバンギャルド君を倒そう、そういうことさ』
白石ウタハの説明で、挑戦する6人の生徒たちは顔を見合わせた。そして、才羽モモイが恐る恐る、と言った様子で口を開いた。
『そ、それって……つまり』
『つまり?』
『ゲームをするってことだよね!?』
才羽モモイが白石ウタハを指さし、叫ぶように尋ねる。
『うん、その通りだね』
白石ウタハはニヤリと笑って首肯した。
『そんな!? ユズ、ネル先輩の方に行っちゃったじゃん!? どうするのさ!!?』
『はっはっは。ユズ一人で来られたらどうしようかと、実はこちらもヒヤヒヤしていたのさ!』
『そうすればよかったーーー!!!!』
才羽モモイが後悔の念を叫ぶ。
『……いや、流石にそんないじめみたいなことは出来なかったと思うわよ』
早瀬ユウカの言う通り、そのような采配は未来予知でも出来なければ不可能だっただろう。
『というか、私たちもゲーム開発部なんだから頑張ろうよお姉ちゃん』
『そうだけどーー……このメンバーノア先輩以外心理戦強くなさそうじゃん!? 私も含めて!』
『それは結構心外ですねぇ……』
才羽モモイの清々しい嘆きに、テマが控えめに文句を言っている。
『……そろそろ、詳しいルールの説明をしても良いかな?』
そして白石ウタハは、騒いでいるゲーム開発部の生徒たちを楽しそうに見ながら、改めてそう告げた。