黒服がシャーレの先生になった世界線   作:黒服先生

241 / 241
魔王城⑦ ウタハのゲーム 後編

⑥テマ

 

 テマが早瀬ユウカの膝の上で気持ちよさそうに寝ている。

 このままではゲームを予定している続行することは出来ない

 

『ウタハ先輩? この場合はどうするんですか?』

『いや、うん、そうだね……まあ、その子がゲームに参加できないのであれば5人で続行するしかないんじゃないかな?』

 

 生塩ノアに尋ねられた白石ウタハは、歯切れ悪くそう言った。

 

『ん……ん、んん? あれ、手前の番ですかぁ……?』

 

それと同時に、タイミングよくテマが動き始めた。

 

『あ、テマが起きたよ!』

『テマちゃん、おはよう。大丈夫?』

 

 才羽姉妹が喜び半分、心配半分で、起き上がったテマを覗き込む。

 

『んん……大丈夫ですよぉ』

 

 テマが目を擦りながら、ボタンの方へと向かう。どうやらルールなどは頭に入っているようだったが、しかし疲労がたまっているのであれば少し気になった。

 

「大丈夫でしょうか……」 

 横からケイの呟きが聞こえてきた。彼女もテマを心配しているのだろうか。

 

「本人が大丈夫、と言っているので問題ないでしょう。もし負けたとしても、そこまで大きな問題があるわけではないですし」

 

 私がそう答えると、ケイは首を振った。

 

「いえ、そういうことではなく……()()()()()()()、ということです」

 

 そして、ケイは少し表情を険しくして、画面に映るテマの事を見つめた。

 

――

 

『んにゅあぁ……最後の順番なんて、手前、待ちくたびれて居眠りしてしまいそうでしたよぉ?』

『いや、君はしっかり寝ていたと思うけど……、まあ、君……テマ、というのかな? テマが参加できてよかったよ』

 

 テマが欠伸をしながら言った言葉に、白石ウタハが何気ない言葉を返す。

 その言葉を聞き、テマが白石ウタハの方を眺めた。

 

『……』

 

 そして、今まで見たことの無い、悪意のこもった表情でニヤリと笑った。

 

『ん?』

『あはは。ええ、嬉しいでしょうねぇ、手前様は。』

 

 テマが話し始め、白石ウタハはそれに困惑している様子だった。そして困惑しているのは彼女だけではなく、他の生徒たちもまた、怪訝な表情でテマの方を見ていた。

 

『なんせ、手前がいなければ手番が一周して、またノアちゃんやユウカちゃんと戦う羽目になるんですから。でも、ここで手前から7点以上を取りさえすればそれで終わりですもんねぇ?』

 

『……いや、別に私はそんなことは……』

 

『本当ですかぁ? あははっ、まあそれならそれで良いですけど、精々頑張ってくださいねぇ? 7,8,9の三択、もし外してしまえば、結局ノアちゃんやユウカちゃんと戦うことになりますよぉ? また運だけで乗り越えられると思ってるんですかぁ?』

 

 一度、否定しかけた白石ウタハに、マウントするように畳みかける。

 

『ま、よく考えて決めてくださいねぇ、ウ・タ・ハちゃぁん! あはは、あはははははっ』

そして、最後に笑いながら、テマはボタンを押した。

 

『……』

 そして、白石ウタハはそんな彼女に一言も返すことができないまま、どうにかボタンを押したようだ。

 

 結果が画面に表示される。

 

---

 

 魔王軍(ターンプレイヤー 魔人ウタシロ)  攻撃 ⑥ 防御 ⑨ ⑩ 攻撃不成立

 

 勇者の仲間(ターンプレイヤー テマ) 攻撃 ⑧ 防御 ③ ⑥ 攻撃成立

 

 Result 3秒後に、勇者の仲間が8秒間攻撃を行います。

 

---

 

『…………は?』

 白石ウタハが画面を見て、目を見開いた。

 

 結果は一目瞭然。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『うふふふっ、残念でしたねぇ、ウタハちゃあん…… 何か変な事がありましたかぁ?』

 テマは楽しそうに笑いながら、白石ウタハを煽るようにそう言った。

 

『いやいや……攻撃を通したのは、まだ理解できる。でも、どうやって君は6を止められたんだい?』

 

『ああ、そんなこともわからないんですかぁ?』

『だって、君が言ったんじゃないか。7から9を通せば、勝ちだから、ちゃんと狙って通せって。

確かにその通りだと思ったんだ、だから……』

 

 そこまで言って、白石ウタハが言葉を止める。完全に誘導されていた、ということに気付いていたのだろう。

 

『だから、ウタハちゃんは手前のことが怖くなったんですよねぇ? だから、()()()()()()()()()6()を選択した。あはは、見事にひっかかってくれましたねぇ。そんなに手前から逃げたかったんですかぁ?』

 

そして彼女は心底楽しそうに笑った。

 

「…………はぁ、参ったよ。本当に」

 

 白石ウタハは肩を落とし、負けを認めた。

 

 

 魔王軍 損傷率 92%

 勇者の仲間 損傷率 76%

 

――

 

「成程、こういう事ですか。ケイさんが言っていたのは」

 

 テマにこういった部分があることを、私は把握していなかった。ケイの知っている世界では、彼女はどういった役回りを演じていたのだろうか。

 

「……はい。寧ろ、先生は知らなかったんですね」

「そうですね。記憶を失っていることと特殊な本を持っていたこと以外は、普通の少女だと思っていましたから」

 

 しかし考えてみると、彼女は保護されるまで一人で、他人を驚かしながら生きていた。相応に頭がよく、人の心理に長けているのは不思議では無い。とは言え、あのように振る舞うのは……

 

 

「ま、あの子が()()()()()()()()()、という点は議論の余地があると思います。狐坂ワカモを慕うようになってからは、割と天真爛漫な様子も見せていましたし……ただ、今はこれで終わりという訳でもないかと」

 

ケイは未だ、画面を注視していた。どうやら、まだテマの舞台は終わっていないようだ。

 

⑦テマ

 

『さて、気持ちを切り替えないとね。こうなったら運ゲーでも心理戦でも、本気でやって勝って見せるさ』

 

 白石ウタハは頭を上げて、どうにか笑みを浮かべながら気丈に言った。

 

『あはは、そうですかぁ? ですが、さっきと状況は変わっていますよぉ? 手前様はちゃぁんと、分かってますか?』

 

 それすらも楽しそうに、テマが白石ウタハに尋ねる。

 

『……勿論。これで君たちのチームもリーチした。しかも、こっちの損傷率は92%。私が7以上の攻撃を通しても、そっちに3以上の攻撃を通されてしまったら、先にこちらの損傷率が100%を超えて破壊されてしまう。相当不利な状況だね』

 

『あはは、いいですねぇ。ちゃんと分かってるじゃないですかぁ? あ、そういえばこのゲームはウタハちゃんが考えたんでしたねぇ』

 

 テマはそこまで言ってから一呼吸おいて、

 

『じゃあ、()()()()()()()()()()()()

 

 と、今までで一番の笑みを浮かべてそう言った。

 

『……は? 君のターンは、今終わっただろう』

『そうですねぇ……つまり、一周したので、次の手番が手前でも問題ありませんよねぇ?』

 

 そう言って、テマは後ろを振り向いた。どこか不安そうに見ている者もいたが、異を唱える者は誰もいなかった。

 

『……あ』

『じゃあ、これが最後になるかもしれませんが、よろしくお願いしますねぇ、ウタハちゃん?』

 

 全てを理解して膝から崩れ落ちた白石ウタハを見て、テマは笑顔でボタンを押した。

 

---

 

 魔王軍(ターンプレイヤー 魔人ウタシロ)  攻撃 ⑦ 防御 ⑦ ⑩ 攻撃不成立

 

 勇者の仲間(ターンプレイヤー テマ) 攻撃 ③ 防御 ⑦ ⑨ 攻撃成立

 

 Result 3秒後に、勇者の仲間が3秒間攻撃を行います。

 

---

 

 魔王軍 損傷率 104%

 勇者の仲間 損傷率 76%

 

 魔王軍の損傷率が100%を超えたため、勇者の仲間の勝利です。

 

――

 

 攻撃が終わり、白石ウタハの傍にいたアバンギャルド君が完全に破壊された。

 一時、完全な静寂が室内を訪れた。

 

 ゲーム開発部の生徒を始めとした、テマのチームメイトたちは、状況をよく呑み込めていないのかもしれなかった。

  3年生の先輩を一方的に翻弄して完全な勝利を収めた少女のことを。

 

……や……ヤッター!! 見てましたかぁ!? 完・全・勝・利・ですよぉ!!

 

 そして、その雰囲気を察している様子もなく、テマがチームメイトの方を振り向いて大喜びで戻っていった。既に彼女に感じていた()()()()()()は霧散しており、ただの無邪気な少女に戻っているようだった。

 

『て、テマー!! 凄かったよ! ユズとはちょっと違うタイプだけど、テマってあんなに心理戦得意なんだね!?』

 

『驚いたわ! あのウタハ先輩を一方的に追い詰めるんだもの。でも、ちょっと口が悪かったような気もするから、もう少し優しくしてあげたらいいかもしれないわね』

 

 戻ってきたテマを最初に歓迎したのは才羽モモイで、早瀬ユウカがそれに続いた。

 

『あー……ちょっと楽しくなりすぎちゃいましたかもですねぇ……』

 

『でも、一応相手は魔王軍ですから、ボコボコにしても良いんじゃないんですかー?』

『いや、でもウタハ先輩はちょっと可哀そうだったような……』

 

 黒崎コユキと、才羽ミドリも、テマの豹変についてはあまり気にしていないようだ。直接やられた白石ウタハの方を気にかけてはいるようだったが。

 

『まあ、でもこれで第3の試練はクリア、ということでしょうか』

生塩ノアがそう言って、白石ウタハの方を見た。

 

『…………ふぅ、本当に、言葉も出ない位の完敗だったよ。ユズもいないのに、本当によくやったね、君たち。ノアの言う通り、私としてはこれ以上は無いよ。君たちは見事、第3の試練をクリアした。ネルと戦っている方もクリアすれば、アリスの元に行けるよ』

 

 2連続の敗北に打ちのめされていたように見えた彼女は、どうにか立ち直ることは出来たようで、元の解説役風のキャラクターに戻っていた。

 

 そして、残る美甘ネルの方は、未だ戦いが続いているようだった。




偶には元ヴィランらしいところも見せないと。
黒服にも言えることですが。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

便利屋68に降り立つは、傍観者のゲマトリア(作者:マスターBT)(原作:ブルーアーカイブ)

 枝分かれの先まで見る事が出来る目を持つゲマトリアが、ただ眺める事にも飽きて『物語』を経験しようと、新たな世界のキヴォトスへと降り立ち、初めて出会ったアル社長との出会いを皮切りに、便利屋68の面々と青春を謳歌するお話。


総合評価:10904/評価:8.85/連載:146話/更新日時:2026年08月16日(日) 12:24 小説情報

転生したので前世の知識で生徒達と遊ぶことにする(作者:popoponpon)(原作:ブルーアーカイブ)

いろんな娯楽はあるけど前世の娯楽もこの世界で楽しみたい!ということでTS転生したけど諦めずに自分の好きなものを作っては皆で遊んだり、本編に絡んだりしてくる女の子、夢見モルフォのお話。


総合評価:14517/評価:8.79/連載:259話/更新日時:2026年08月31日(月) 12:00 小説情報

何かがおかしいブルーアーカイブ(作者:千ノ宮チノ)(原作:ブルーアーカイブ)

『ブルーアーカイブ』の世界の先生に憑依した。▼ただし、原作知識として知っているキヴォトスとは何かがおかしい。▼生徒達と交流していく中で気が付く、登場人物の所属が入れ替わった、少しおかしなキヴォトス。▼これは、知っているようで知らない生徒達と共に歩む、少しおかしな青春の物語。▼※所属表はネタバレ注意です。▼


総合評価:687/評価:8.88/連載:50話/更新日時:2026年08月27日(木) 18:20 小説情報

ゲマトリア(偽)(かぼちゃ)の青過ぎる空(作者:それがダメなら走っていこう)(原作:ブルーアーカイブ)

「やって見せろよ先生、なんとでもなるはずだ!」▼ネットミームで有名な踊るカボチャ偽マフティーの姿でブルアカ世界に転生してしまった男。▼ヘイローも無ければシッテムの箱ことアロナちゃんもおりゃん。▼清廉さの欠片も無く原作知識を悪用し小金を稼ぐことを思いつくが……▼天国にも地獄にも行けないカボチャ。▼偽物の偽物の偽物の明日はどっちだ。▼あ、偽マフティーになってしま…


総合評価:27138/評価:9.12/完結:84話/更新日時:2025年03月09日(日) 22:30 小説情報

キヴォトスinドブカス成り代わり(作者:ソリダコ)(原作:ブルーアーカイブ)

朝起きたらブルアカの世界で禪院直哉になっていた男の物語▼ブルアカ未プレイで右も左も分かんない主人公はこの先やっていけるのか▼そんなお話です▼ついでに主人公はブルアカ未プレイで旧ツイッターやpixivで軽くキャラがわかる程度の知識です▼そういう作者も未プレイで二次創作でのふわっふわ知識なので間違っている箇所が多々あるかもしれないのでご注意ください▼『ウルト兎』…


総合評価:19948/評価:8.66/連載:216話/更新日時:2026年04月06日(月) 19:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>