黒服がシャーレの先生になった世界線   作:黒服先生

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魔王城⑦ ウタハのゲーム 後編

⑥テマ

 

 テマが早瀬ユウカの膝の上で気持ちよさそうに寝ている。

 このままではゲームを予定している続行することは出来ない

 

『ウタハ先輩? この場合はどうするんですか?』

『いや、うん、そうだね……まあ、その子がゲームに参加できないのであれば5人で続行するしかないんじゃないかな?』

 

 生塩ノアに尋ねられた白石ウタハは、歯切れ悪くそう言った。

 

『ん……ん、んん? あれ、手前の番ですかぁ……?』

 

それと同時に、タイミングよくテマが動き始めた。

 

『あ、テマが起きたよ!』

『テマちゃん、おはよう。大丈夫?』

 

 才羽姉妹が喜び半分、心配半分で、起き上がったテマを覗き込む。

 

『んん……大丈夫ですよぉ』

 

 テマが目を擦りながら、ボタンの方へと向かう。どうやらルールなどは頭に入っているようだったが、しかし疲労がたまっているのであれば少し気になった。

 

「大丈夫でしょうか……」 

 横からケイの呟きが聞こえてきた。彼女もテマを心配しているのだろうか。

 

「本人が大丈夫、と言っているので問題ないでしょう。もし負けたとしても、そこまで大きな問題があるわけではないですし」

 

 私がそう答えると、ケイは首を振った。

 

「いえ、そういうことではなく……や(・)り(・)過(・)ぎ(・)な(・)い(・)か(・)、ということです」

 

 そして、ケイは少し表情を険しくして、画面に映るテマの事を見つめた。

 

――

 

『んにゅあぁ……最後の順番なんて、手前、待ちくたびれて居眠りしてしまいそうでしたよぉ?』

『いや、君はしっかり寝ていたと思うけど……、まあ、君……テマ、というのかな? テマが参加できてよかったよ』

 

 テマが欠伸をしながら言った言葉に、白石ウタハが何気ない言葉を返す。

 その言葉を聞き、テマが白石ウタハの方を眺めた。

 

『……』

 

 そして、今まで見たことの無い、悪意のこもった表情でニヤリと笑った。

 

『ん?』

『あはは。ええ、嬉しいでしょうねぇ、手前様は。』

 

 テマが話し始め、白石ウタハはそれに困惑している様子だった。そして困惑しているのは彼女だけではなく、他の生徒たちもまた、怪訝な表情でテマの方を見ていた。

 

『なんせ、手前がいなければ手番が一周して、またノアちゃんやユウカちゃんと戦う羽目になるんですから。でも、ここで手前から7点以上を取りさえすればそれで終わりですもんねぇ?』

 

『……いや、別に私はそんなことは……』

 

『本当ですかぁ? あははっ、まあそれならそれで良いですけど、精々頑張ってくださいねぇ? 7,8,9の三択、もし外してしまえば、結局ノアちゃんやユウカちゃんと戦うことになりますよぉ? また運だけで乗り越えられると思ってるんですかぁ?』

 

 一度、否定しかけた白石ウタハに、マウントするように畳みかける。

 

『ま、よく考えて決めてくださいねぇ、ウ・タ・ハちゃぁん! あはは、あはははははっ』

そして、最後に笑いながら、テマはボタンを押した。

 

『……』

 そして、白石ウタハはそんな彼女に一言も返すことができないまま、どうにかボタンを押したようだ。

 

 結果が画面に表示される。

 

---

 

 魔王軍(ターンプレイヤー 魔人ウタシロ)  攻撃 ⑥ 防御 ⑨ ⑩ 攻撃不成立

 

 勇者の仲間(ターンプレイヤー テマ) 攻撃 ⑧ 防御 ③ ⑥ 攻撃成立

 

 Result 3秒後に、勇者の仲間が8秒間攻撃を行います。

 

---

 

『…………は?』

 白石ウタハが画面を見て、目を見開いた。

 

 結果は一目瞭然。テ(・)マ(・)は(・)考(・)え(・)う(・)る(・)最(・)高(・)の(・)攻(・)撃(・)を(・)通(・)し(・)、(・)そ(・)し(・)て(・)防(・)御(・)を(・)成(・)功(・)さ(・)せ(・)た(・)。

 

『うふふふっ、残念でしたねぇ、ウタハちゃあん…… 何か変な事がありましたかぁ?』

 テマは楽しそうに笑いながら、白石ウタハを煽るようにそう言った。

 

『いやいや……攻撃を通したのは、まだ理解できる。でも、どうやって君は6を止められたんだい?』

 

『ああ、そんなこともわからないんですかぁ?』

『だって、君が言ったんじゃないか。7から9を通せば、勝ちだから、ちゃんと狙って通せって。

確かにその通りだと思ったんだ、だから……』

 

 そこまで言って、白石ウタハが言葉を止める。完全に誘導されていた、ということに気付いていたのだろう。

 

『だから、ウタハちゃんは手前のことが怖くなったんですよねぇ? だから、絶(・)対(・)に(・)通(・)せ(・)る(・)は(・)ず(・)の(・)6(・)を選択した。あはは、見事にひっかかってくれましたねぇ。そんなに手前から逃げたかったんですかぁ?』

 

そして彼女は心底楽しそうに笑った。

 

「…………はぁ、参ったよ。本当に」

 

 白石ウタハは肩を落とし、負けを認めた。

 

 

 魔王軍 損傷率 92%

 勇者の仲間 損傷率 76%

 

――

 

「成程、こういう事ですか。ケイさんが言っていたのは」

 

 テマにこういった部分があることを、私は把握していなかった。ケイの知っている世界では、彼女はどういった役回りを演じていたのだろうか。

 

「……はい。寧ろ、先生は知らなかったんですね」

「そうですね。記憶を失っていることと特殊な本を持っていたこと以外は、普通の少女だと思っていましたから」

 

 しかし考えてみると、彼女は保護されるまで一人で、他人を驚かしながら生きていた。相応に頭がよく、人の心理に長けているのは不思議では無い。とは言え、あのように振る舞うのは……

 

 

「ま、あの子が普(・)通(・)の(・)少(・)女(・)か(・)ど(・)う(・)か(・)、という点は議論の余地があると思います。狐坂ワカモを慕うようになってからは、割と天真爛漫な様子も見せていましたし……ただ、今はこれで終わりという訳でもないかと」

 

ケイは未だ、画面を注視していた。どうやら、まだテマの舞台は終わっていないようだ。

 

⑦テマ

 

『さて、気持ちを切り替えないとね。こうなったら運ゲーでも心理戦でも、本気でやって勝って見せるさ』

 

 白石ウタハは頭を上げて、どうにか笑みを浮かべながら気丈に言った。

 

『あはは、そうですかぁ? ですが、さっきと状況は変わっていますよぉ? 手前様はちゃぁんと、分かってますか?』

 

 それすらも楽しそうに、テマが白石ウタハに尋ねる。

 

『……勿論。これで君たちのチームもリーチした。しかも、こっちの損傷率は92%。私が7以上の攻撃を通しても、そっちに3以上の攻撃を通されてしまったら、先にこちらの損傷率が100%を超えて破壊されてしまう。相当不利な状況だね』

 

『あはは、いいですねぇ。ちゃんと分かってるじゃないですかぁ? あ、そういえばこのゲームはウタハちゃんが考えたんでしたねぇ』

 

 テマはそこまで言ってから一呼吸おいて、

 

『じゃあ、次(・)の(・)タ(・)ー(・)ン(・)を(・)や(・)り(・)ま(・)し(・)ょ(・)?(・)』

 

 と、今までで一番の笑みを浮かべてそう言った。

 

『……は? 君のターンは、今終わっただろう』

『そうですねぇ……つまり、一周したので、次の手番が手前でも問題ありませんよねぇ?』

 

 そう言って、テマは後ろを振り向いた。どこか不安そうに見ている者もいたが、異を唱える者は誰もいなかった。

 

『……あ』

『じゃあ、これが最後になるかもしれませんが、よろしくお願いしますねぇ、ウタハちゃん?』

 

 全てを理解して膝から崩れ落ちた白石ウタハを見て、テマは笑顔でボタンを押した。

 

---

 

 魔王軍(ターンプレイヤー 魔人ウタシロ)  攻撃 ⑦ 防御 ⑦ ⑩ 攻撃不成立

 

 勇者の仲間(ターンプレイヤー テマ) 攻撃 ③ 防御 ⑦ ⑨ 攻撃成立

 

 Result 3秒後に、勇者の仲間が3秒間攻撃を行います。

 

---

 

 魔王軍 損傷率 104%

 勇者の仲間 損傷率 76%

 

 魔王軍の損傷率が100%を超えたため、勇者の仲間の勝利です。

 

――

 

 攻撃が終わり、白石ウタハの傍にいたアバンギャルド君が完全に破壊された。

 一時、完全な静寂が室内を訪れた。

 

 ゲーム開発部の生徒を始めとした、テマのチームメイトたちは、状況をよく呑み込めていないのかもしれなかった。

  3年生の先輩を一方的に翻弄して完全な勝利を収めた少女のことを。

 

『……や……ヤッター!! 見てましたかぁ!? 完・全・勝・利・ですよぉ!!』

 

 そして、その雰囲気を察している様子もなく、テマがチームメイトの方を振り向いて大喜びで戻っていった。既に彼女に感じていた悪(・)人(・)の(・)雰(・)囲(・)気(・)は霧散しており、ただの無邪気な少女に戻っているようだった。

 

『て、テマー!! 凄かったよ! ユズとはちょっと違うタイプだけど、テマってあんなに心理戦得意なんだね!?』

 

『驚いたわ! あのウタハ先輩を一方的に追い詰めるんだもの。でも、ちょっと口が悪かったような気もするから、もう少し優しくしてあげたらいいかもしれないわね』

 

 戻ってきたテマを最初に歓迎したのは才羽モモイで、早瀬ユウカがそれに続いた。

 

『あー……ちょっと楽しくなりすぎちゃいましたかもですねぇ……』

 

『でも、一応相手は魔王軍ですから、ボコボコにしても良いんじゃないんですかー?』

『いや、でもウタハ先輩はちょっと可哀そうだったような……』

 

 黒崎コユキと、才羽ミドリも、テマの豹変についてはあまり気にしていないようだ。直接やられた白石ウタハの方を気にかけてはいるようだったが。

 

『まあ、でもこれで第3の試練はクリア、ということでしょうか』

生塩ノアがそう言って、白石ウタハの方を見た。

 

『…………ふぅ、本当に、言葉も出ない位の完敗だったよ。ユズもいないのに、本当によくやったね、君たち。ノアの言う通り、私としてはこれ以上は無いよ。君たちは見事、第3の試練をクリアした。ネルと戦っている方もクリアすれば、アリスの元に行けるよ』

 

 2連続の敗北に打ちのめされていたように見えた彼女は、どうにか立ち直ることは出来たようで、元の解説役風のキャラクターに戻っていた。

 

 そして、残る美甘ネルの方は、未だ戦いが続いているようだった。




偶には元ヴィランらしいところも見せないと。
黒服にも言えることですが。
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