黒服がシャーレの先生になった世界線   作:黒服先生

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対策会議②

 ヘルメット団による黒見セリカ誘拐未遂事件の翌日、その黒見セリカを加え、ゲストとして私も参加し、

 改めてアビドスの借金をどうするか、という議題の会議が始まった。

 

 これに関してはアビドスを支援すると決めた段階、つまりアビドスからの支援依頼を見つける前から一つ考えがあったが、

 一先ずどのような進行なのか静観することにした。

 

 会議は、酷いものだった。

 

 詐欺まがい商法に引っ掛かりかけていた黒見セリカはまだいいほうで、他校の生徒を襲撃して生徒を誘拐する案(昨日誘拐未遂事件があったところである)、

 以前の時間軸で計画が活かされた銀行強盗を行う案、そして即効性と確実性に欠けるアイドル売り出し案。

 

 いずれの案も、黒見セリカ以外は真面目に考えたとは到底思えない荒唐無稽さと無計画さで、つまるところ、恐らくこの会議は彼女たちにとっての日常そのものなのであろう。

 

 研究対象が自分自身とそれを取り巻く問題へと変化し、キヴォトスの生徒たちを主たる研究対象として見なくなって以降、逆に生徒たちへの理解が深まっているのは大きな学びである。

 

「──先生、これまでの意見で、やるならどれがいい? 先生? 聞いてるー?」

 いつの間にか、会議が進行し、私の意見を求めるタイミングになっていたらしい。つまり、私の考えを伝える時が来たようだ。

 

「どれも魅力的な案ですが……、一つ私の話を聞いてもらえませんか?」

 立ち上がり、提案を開始する。

 

「えっ、先生も何か案があるんですか?」

 まず奥空アヤネが反応した。聞きたいと誰かが言い、他の生徒たちも頷く。

 

「借金についてですが、シャーレへの借金に借り換えしませんか?」

 

「え……」

 生徒たちの表情が明るいものから戸惑いのものに変わる。特に小鳥遊ホシノは厳しい視線へとなる。想定の範囲内の反応だ。

 

「それって、ウチが連邦生徒会に吸収されたりするんじゃないの?」

「あくまで金銭面での支援ということになりますので、立て直しに関して連邦生徒会が口出すことはありませんよ」

 小鳥遊ホシノがアビドスの維持を第一に考えているのはよく知っている。

 

「シャーレってそんなにお金持ちなの? 10億近い金額をそんな簡単に払えるんだ」

「当然今すぐに私の一存で渡すことが出来る金額という訳ではありませんが……皆さんの希望があれば不可能という金額ではありません」

 

 そもそも、10億という金額は学生が返済する借金としては途方もないものであるが、学校運営という観点から見ると大した金額ではない。

 キヴォトスの三大校と呼ばれるミレニアムやゲヘナ、トリニティの1か月の予算にも満たないだろう。

 

「すみません。借り換えをしたとして、何か変わるんでしょうか。借金が減るわけではないんですよね」

 進行を担当していた奥空アヤネが気を取り直したのか、質問に加わる。

 

「そうですね、では、話を続けても良いでしょうか」

「うん。私は、先生の話が聞きたい」

 黒見セリカがまっすぐにこちらを見ながら追随する確認し、説明を続ける。

 

「まず、皆さんが得られるメリットについてですが。条件はまだ確定ではありませんが、金利を低くするつもりです。営利目的ではありませんからね。勿論0という訳にはいきませんが」

 消費者金融よりはずっとマシな金利に設定できるはずだ。

 

「そして、その金利が発生する時期ですが、3年程度の猶予期間を設けたいと思っています。その3年間で砂嵐の問題や、生徒数の増加施策などに集中して取り掛かれるような支援も行うつもりです」

 客観的に、アビドスに取り巻く問題は借金問題に留まらない。砂嵐やそれに伴う、生徒、住民の減少。そして直に明らかになるだろう土地権利問題など、多岐にわたる問題がある。

 本来であれば、毎月の利息返済に追われている場合ではないだろう。

 

「……ごめん、先生。疑う訳じゃないんだけど、なんでそんなにしてくれるの? 聞いた感じそっちにメリットが無いと思うんだけど」

 しばしの静寂の後、黒見セリカが質問をしてくる。当然の疑問。

 

「そうですね……。そもそも支援であるということを抜きにすれば……私が皆さんと実際に関わってみて、十分返済計画が立てられると判断したためです。そういう意味で、どんな方たちにも提案できる方法ではありませんね」

 

 私がそう言い切ると、再び静寂が訪れた。

 

「ああ、ここまで言っておいてなんですが、今すぐ決めてほしいという訳ではもちろんありません。そもそもこの話、誰にも相談していないので、確実にできるという保証もありませんし、最短でも数か月は先の話になるでしょう」

 実際のところ、これは私にとっても時間稼ぎなのだ。精神的に不安定な小鳥遊ホシノをはじめ、アビドスの生徒たちが早まった行動を起こさないために、悠長が許される別のプランを示すこと。

 それは以前の時間軸で私が小鳥遊ホシノに提案した内容の丁度反対の内容と言えるだろう。

 

 私の最後の発言が功を奏したのか、場の空気が少し緩む。

 

「うへ。じゃあ結局お金を稼ぐ方法は考えないとってことだね。先生、そっちは何かいい案無いの?」

 そしてその空気を察した小鳥遊ホシノが会議を元の流れに戻そうとしているのだろう。私に目くばせをしてくる。

 

「そうですね……実は参加するだけでお金をもらえて超能力者になれるかもしれないという実験があるのですが……」

「わぁっ、それって魔法少女になれたりするやつですか?」

「ん。やっぱり先生はマッドサイエンティスト?」

 

 私が適当に話を合わせると即座に雰囲気が元の会議と同様のものに戻る。

 それからほどなくして、奥空アヤネの怒気が頂点を迎え、会議はお開きとなった。

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